ふと靴元を見ると、散った桜の花弁が降り積もっていた。
私は無意識につま先をトントンと地面にたたき、花弁を地面へ戻す。
意識してしまうブレザーの制服は着ているだけで落ち着いていられない。
たまにクルッと回ってプリーツスカートを風に踊らせると気分がいい。
「おはよ!」
隣へと駆け寄った先にいる彼にそう言った後すぐ、胸の鼓動がうるさくなる。
「おぉぉ、びっくりした、陽葵か」
「もう私達も中学生だね」
「…そだね〜」
「いつしか聞いた言葉だなおい」
何気ない会話を続けながら校門へと歩いた。
私は、朝日奈陽葵(あさひなひまり)。
上代中学校の新一年生だ。
好きなことはイラストを描くこと。
昔からの特技でもある。
そして隣にいる男子、一ノ瀬翔(いちのせかける)は、同小の同級生。
アシンメトリーの髪がどこか爽やかだ。
ネクタイを縛ったブレザー姿も様になっている。
私は翔に6年間片想いをしている。
6年間とは、もちろん小学1年生から。
「翔、私たちのクラスって何組だっけ?」
「2組に決まってんだろ」
翔は「ハハハ」と軽く笑いながら言う。
そうなのだ。
私と翔は奇跡的に同じクラスだった。
仲のいい友達とはクラスが分かれてしまったが、それ以上に嬉しい。
(嬉しいの、顔に出てないかな)
「おはよう、瀬奈〜〜!」
「陽葵おはよう!どうよ、一ノ瀬くんと?」
そう言っていたずらっぽくニヤつく女の子は、成未瀬奈(なるみせな)。
小学校2年生の頃に仲良くなった友達だ。
瀬奈は4組でクラスが分かれてしまった。
でも、お昼休みは瀬奈と同小の女子と集まっている。
ネットで見たサイト曰く、入学した直後あるあるらしい。