3話 2/2
そこはとても平和で明るい国だった。
そこは自然が美しく豊かな国だった。
そこは夢のような幻想的な国だった。
________そう、
悪夢も絶望もなく
心のある者が集い、
互いに傷を癒しあう『 優しさ 』に満ちた国
『 夢 』をいう名の象徴、
___ __ __ドリームズワールド___ __
そんな夢を物語った国の高原に青く広い背中がポツリ
その人物は美しい装飾が施された金色の剣の剣先を天に向け、その照り輝く堪能しながら目を細めた。
彼の名をハルといった。
彼はこの国がまだ赤き闇の世界だった頃に生まれ、親という温かさ早くに失った。
生きる場を失い、希望を失った彼は、ただ動くだけの冷たい人形にしかすぎなかった。
______だが彼は闇に堕ちてでも希望を拾い上げた。
絶望にまみれてでも剣を振れる気力があったから。
憧れの一つ上をひたすら目指すことができたから。
__傷口を癒してくれる者がいたから。
今はもう、霧掛かっていて見えない、そんな記憶に毎日脅されながら生きていた彼は立派な騎士、守りの堅き盾となった。
かつて赤く鉄臭かった草原をフサフサと音をたてながら、取り戻すことのできた平和に思わず笑みが漏れてしまう。
すると足元で何か濡れた音がした。
足元を見下ろせば革靴が紅に染まっていた。
まぁ、平和が戻ってからでも血を見るのはそう珍しいことでもない。
足元の赤色を慣れた目付きで見下しながらハルはその線に沿って駆け出した。