ガチャッ
疲れのせいか、いつもより重く感じる
家のドアを開けながら、少し遠慮がちに
一人呟く。
『 ..ただいま。』
なんだか夕飯を食べる気も湧かず、
そのままベッドのある寝室に直行する。
いっそこのまま寝てしまおうかと思い、
ベッドの方を見ればそこには、先客。
本人曰く伸びるのが早いという髪。
すらっと高い鼻に、鼻までしたマスクに
乗っかるくらい長くて綺麗な睫毛。
すこし生やした髭。
そして薄くてほんのり色づいた唇。
それはどれも綺麗すぎるほどに整って
いて、貴すぎて触れられないような
気がしたりもする。
しかし、小さく丸まって静かに寝息を
立てるその姿はまるで小さな子供の
ようで、無意識に頭を撫でていた。
『 ..ん 』
うっすらと目が開く。
『 あ、ごめん、起こしてもぉて 』
私の声が届いたのか届いていないのか
その瞳は視点が定まらないまましばらく
ぼーっと私を見つめ、
『 ..おかえり。』
それだけ言い残して再び閉じられた。
私はそれを確認すると、
彼の使っていないブランケットだけを
ベッドから持ち出し、今日の寝床となる
リビングのソファーに向かった。