朝起きる。
眼鏡をかける。
前を見る。
「……なんだ、お前」
俺の身体にのしかかっているのは、ストロベリーブロンドの長い髪の女性。
黒い薄手のワンピースに、頭に生えているのは鋭利な角、そして大きな黒い翼。
むせ返る程甘ったるい、薔薇か何かの香りがする。
「私はサキュバスのシャリア・ロゼと申しまぁす!この度はぁ〜真見祐太郎さん、あなたの魂を頂きに、参りましたぁ〜!」
あ、これ精神が異常な人だ。
関わったらダメなやつだ。
「出てけ。通報するぞ変態」
「嫌よ〜!せっかくの初仕事なのに!長い時間をかけて下調べもしたんだから!真見勇太郎、16歳。成績優秀、スポーツ万能で、モデルスカウトも来るほど端正な顔立ちにも関わらず、自覚なし。眞城学園生徒会長兼学級委員長を務める。真面目すぎて女子からは近づきがたいと思われている。身長178cm、体重52kg、足のサイズは27.5、視力0.1、好きな色は青と黒、好きな歌手はビートルズ、好きな教科は数学と理科……好きな女の子は、ワ・タ・シ!」
彼女は早口で、気持ち悪い程細かい俺のデータを口走った。
「おいまて、大抵正しいが、最後のは調査ミスだ」
「えぇ〜そんなぁ〜!ま、いーや。時期にワタシが魂を奪うんだしぃ〜?」
彼女、シャリア・ロゼと名乗った女は、俺の顔の輪郭に指を滑らせた。
「貴方が私とキスをすれば、私は貴方の魂を吸い取ることが出来るわ。ただ、相手が私に対して恋愛感情を持っていればの話だけれど」
彼女はそう言うと、不敵な笑みを浮かべ、俺に顔を近づけてきた。