《 親愛なる透明人間に捧ぐ 》
__私の名前は境野雷羅、ちょっとみすぼらしい見目だけれど、これでも元は社長令嬢なのよ。
最初は御父さんも御母さんも私の事を愛してくれた、遊園地にも連れていってくれたし、美味しいモノも沢山食べさせてくれた。今思えば、私は「愛されている子供」という実感に溺れていたかっただけなんだと思う。じゃりじゃりとした砂糖の感触のするドーナツを噛み締めていられる内に気付くべきだった。でも愛してくれたのは妹が生まれる前だけ、私より出来のいい妹が生まれた瞬間、私の価値は地の果てまで落ちていった。
毎日続く殴る蹴るの暴力、精神を痛め付ける様な暴言。実の親から本気で敵意を向けられるって、辛い事なんだよ。妹は一度も私を庇ってくれなかった、まぁ、大して話した事もなかったしね。何よりも辛かったのが、「 殴ってる方が辛いんだ 」とかのあからさまな綺麗事を吐きながら怒ってくる事。一番いじましくってやってられなかった。
「 どうして私ばっかり 」
不平不満を胸に抱きながら唯一私に出来た事と言えば、嵐が過ぎ去るまでギュッと目を瞑っている事だけだった。
こんな生活に甘やかされて育った私が耐えきれるワケもなく、私は家出した。幸い私には機械系の才能があったらしく、食うに困る事はなかった。非合法組織の依頼もたまに受けながら、私は着々と自分の技術力を高めていった。
△月○日、私の勤めている組織の組員は私含め、一人残らず逮捕された。聞いた話によると《 ノクターナル刑務所 》という世界有数の刑務所に捜査された結果、過去の後ろ暗い繋がりがボロボロ出てきたらしい。そして、どうやら組員は全員死刑に処されるとのこと。それを聞いても、私は「 ふぅん 」という程度の感想しか抱かなかった。
元々はボロ雑巾の様に棄てられていた筈の命だ、今更惜しくもなんともない。
そう思っていた。
__刑務所にて、華麗に宝を盗み出す彼女と出逢うまでは。
【匂わせナナライ】
読む直前
私「あっすみれさんナナライ書いてくれてる。マジ感謝×10!!!!!」
読んだ後
私「ウェア*ッッッ!!!ヴヴヴヴァンッッッッ!!!(要約:神越えてマリア)」