胸キュン!?VOCALOIDの恋ーーとか。

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4:みるくてぃ:2015/11/14(土) 21:50 ID:BUI









「ただいま」

みかんを収穫し、フォルダに戻ってきたリンはすぐに仕事の準備を始める。

今日は確かソロのはずだ。誰にも会わなくて済む、リンの心は少し軽くなる。

……このまま会えば、誰かを傷つけそうで、怖かったから。

リンには仕事なんて滅多に入ってこない。それは、リンが『めんどくさい』から。

リンの身体は弱い。つまり、VOCALOIDの出来損ない。そんなリンの仕事は、他の誰かの代理とかしかなかった。

しかしそんなリンにだってちゃんとした仕事は来る。今日は元からリンの曲なのだ。

歌うのは、「恋のコード」という曲。

2人の女の子は同じ人を好きになってしまう。

1人は席が隣で、授業中に手紙を交換し合う仲。

もう1人は小学校からの縁で、部活も同じ。

隣の席という関係を持った女の子はもう1人の子よりも彼との距離は遠い。

そこから始まる三角関係。友達だから、辛いんだー

ーーそんな曲。

リンは追い討ちをかけられたような気分だった。

自分も同じ環境にいるんです、そう怒鳴りたくなるような感情が心を支配する。

「もう、やめてよ……」

心臓がキリッと痛む。同時にズキリ、と痛む。

1つは身体が弱いため。2つめは…2人を思ったため。

「もう、行こう…」

いつもの行ってきます、がフォルダの仲に響かないまま、ドアは閉じていったーーー




「お疲れ様でした!」

仕事を終え、帰宅するリン。早く家に帰りたい、そう願うもその願いはあっさり玉砕してしまった。

「リン?」

え?聞こえた声にリンが顔を上げると、そこには大好きな人。

そう、レンだ。レンも仕事帰りらしく、衣装を見にまとっていた。

「レンも仕事?お疲れ様。」

「そっちも、お疲れ様。」

レンは笑顔を向けてくれる、数少ないのリンの友達。

レンの言動1つ1つで心臓が高鳴ってしまう。

(お願い、やめてよ…ミクちゃんが…ミクちゃんの、好きな人なんだよ…)

「あ、そうだ。家、来る?」

リンの気持ちを知らないレンは明るい声で声を発した。

「リンのためにみかんのパイ作ったんだ。食べてく?」

みかん。その言葉にリンは強く反応する。

「良いの?!」

リンの輝く目を見てレンは心の中でため息をつく。俺じゃこの笑顔をつくれないのか、と。

「じゃ、行くか。」

自然に出されるレンの手。自然とそれを握るリンの手。こんなの、通常運転だ。

何を話すわけでもなく2人は並んで歩く。リンはみかんのことを考えて、顔を綻ばせている。

そんなリンを見てレンも微笑む。 それはもう、心から幸せそうな顔で。



フォルダに着くとリンは今までよりも明るい顔になる。

椅子に腰掛け、今か今かと花のオーラをぱあぁと咲かせる。

そんなリンを横目で見て少し急ぐ。

「はい、どうぞ」

「ありがとう!」

美味しそうに頬張るリンを優しい瞳で見つめるレン。

「美味しいぃ〜」

ほらまた、こうやってレンにハマっていく。こんなの苦痛でしかないのに…………

嬉しくなってしまうのは、自分が最低だからなのだろうか。

でも、そんなのも気にならないくらい幸せだと、リンは感じる。

「すき、だよ…」

ポツリ、リンは呟いた。が、すぐにハッとする。

慌ててレンを見てみると何か考え込んでいた。

(きっと伝わってない、大丈夫)

伝わっても迷惑だから、困らせるだけだから。伝えてはいけない。

気持ちを封印するの。あと、少しだけ、ね。


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