「ルーシィ、なんか最近正規ギルド増えてないですかー?」
「確かにね。まあ、その分闇ギルドも増えてるみたいよ?」
洞窟の奥深く。街が一個入りそうなほど広い空間にポツリと建物が立っている。
その和風な建物の中で三人が椅子に座って何やら話している。
「幹部も暇じゃないですねー。」
一人の少女は机に突っ伏し、一人の少女は何か地図に書き込んでいる。
もう一人は突っ伏す少女の話し相手。この三人以外の人は見当たらない。
「幹部って…まぁ、そうだけど。私たち以外にいないじゃない」
「もー、幹部でいいじゃないですかー。ねーね、ルーシィ。次はどこ狙う?」
突っ伏す少女は地図を書き込む少女--ルーシィに声をかける。
すると、ルーシィは顔を上げて少し悩む。
「うーん、独立ギルドだから人も少ない…っていうか三人しかいないし…」
そうして頭で悩みながら地図を見た。地図にはこれから正規ギルドが向かう仕事現場などが書かれている。
「あ、そうだ。これから妖精の尻尾が仕事に行くのよね。だからそこを狙おうかしら。」
ルーシィはまだ18歳。それなのに頭が賢く、作戦もルーシィが考えれば成功率は100%に近い。
そして突っ伏す少女ことレイアロが15歳、話し相手のイミテイシアが19歳。
「ルーシィ、そろそろ出ないと間に合わないわ。」
「あ、そうね。よし、行くわよ!」
ルーシィは立ち上がって洞窟の入り口へと走っていった。
「わわっ、ルーシィ〜〜!」
「ちょっ、姉さん!」
それに続くようにイミテイシアとレイアロが慌てて駆けていった。
「うーん、結構疲れたね、ジェット、ドロイ。」
妖精の尻尾、レビィは背伸びをしながら後ろを歩く二人に声をかける。
ちょうどさっき、仕事が終わったところだ。
「そ、そうか?俺は別にこんぐらい…」
「俺だって…!」
そう言って二人は睨み合う。こんな二人でも、仲はいい。
「あ、いたいた!おぉ〜い、そこの三人さ〜ん!」
のんびりと歩く三人に掛かってきたと思われる可愛い声。
レビィ達が声のした方へ振り返ると、手を振りながら歩く少女を先頭に、三人組が歩いてくる。
「やっほー、それじゃ、遊ぼっかぁ!」
レビィ達はぽかんとする。…そりゃあ、無理もない。
初対面の人に『遊ぼう』なんて言われているんだ。誰でもびっくりするだろう。
「----誰ですかーーー。」
そう聞こうとした次の瞬間、身体に何かが潜り込むような感覚。
それと同時に襲いかかる吐き気。三人は「かはっ…」と少量の血を吐いた。
ここは妖精の尻尾、ギルドの前。助けを呼べばすぐに来てくれるが、そんな力、三人には残されていない。
「よし、とりあえず目的は達成でいいのよね?じゃ、ノックしてくるわ」
そう言いながらドアの方へ歩くルーシィにレビィは手を伸ばす。
助けて欲しいのだろう。初対面ではあるが、彼女の心は澄みきっていると感じた。
瞳が、心の美しい人の持つ瞳がだったからだ。
「ま、待って……」
「待ってくれぇ……」
「おい、待てよ、っ…」
か細い声で助けを求める三人に目もくれず、ルーシィはドアの方へ歩いていていく。
そしてドアをコンコン、と二回だけノックすると、背中に羽が生え、空へと飛び立った。
他の二人も、いつの間にか消えていたーーーーーー