続き。
「とりあえずさ、この木の実でも食べよう?俺、お腹空いちゃったよ…」
すっかり暗くなり、太陰と身を寄せ合うようにして大きめの木の下にうずくまっていた昌浩が、情けない声を出した。
「あっ…そう…よね。あんたは人間だものね。しょうがないわ………晴明にあげようと思って集めてたんだけど、また集めればいいもの。食べていいわよ」
「えっ、じい様の?ごめん、じゃあ貰えないよ。俺は我慢する」
「食べなきゃ倒れるわよ。いいわよ、ここから動かなければ今から採ってくるし。寝ててもいいし」
「ぅう〜…じゃあ、頂きます」
丁寧に手を合わせて、口の中に放り込む。
木の実のじんわりとした甘さが口の中に広がって、よく考えたら昼餉前に出てきてお腹が空いていたので、ひどく美味しく感じた。
「美味しい…。やっぱ食事は大事だねぇ…」
「そう?よかった。倒れたら困るもの。じゃあわたしはちょっともう一度探してくるわ」
「あ、うん。ここにいればいいんだよね?迷子にならないでね」
「わかってるわよっ。………じゃなくて、気を付けるわ…」
「いってらっしゃい」
はたはたと手を振る。
小柄な昌浩が木の実を頬張りながら手を振るので、なんだか栗鼠みたいだ。
太陰はくすりと微笑んで、駆け出した。
あー…長くなる(確信)。
気長に待ってね………。
>>248 続きです!!
「………ふぅ、こんなものかしら?」
太陰は、再び木の実でいっぱいになった両手を見つめた。そして、ほんのりと微笑むと顔を上げて辺りを見回した。
帰り道は、なるべくまっすぐ進んできたから分かっている。
「早く戻らなきゃ、昌浩が可哀想ね」
そう呟き、歩き出した。
木が邪魔で飛べないし、両手が木の実で塞がっているので下手に走れない。
それでも早く戻ろうと気持ち急ぎ足で太陰は歩いた。
「ーーーーあ、いた…」
そうしているうちに、漸く昌浩を見つける。
しかし、見ると木の実は殆ど残っていて、昌浩はどうやら数個食べただけのようだった。それに、眠ってしまっている。
思わず呆れて溜息が出た。
「お腹空いたって言ってたじゃない。何してるのよ、昌浩………」
言ってから、はたと気がつく。
わざと、残してくれたのではないかと。
自分が、晴明にあげると言ったから。
昌浩は、そういう優しい子だから。
気を使ってくれたのかもしれない。
「………馬鹿ね…」
言葉とは裏腹に、太陰はひどく優しい瞳で昌浩を見つめ、木の実を他のと一緒に置くと昌浩の頭をくしゃりとひと撫でした。
「付き合わせちゃって…ごめんね…」
明るくなったら帰り道を探さなくては。
太陰は膝を抱えて空を見上げた。
まだ、夜明けまで刻はあるように思える。
何事もないように、と自分と昌浩を守る結界を作り、太陰は気持ちだけでも休もうと、目を閉じた。
ーーーー朝。
「昌浩、起きなさいっ!ほら、朝よ!」
「んん…………。ぅん…おはよ………」
「ほーらー、しゃきっとする!帰り道を探すわよ!」
「あっ!そうだった…。…ぁ、おはよう、太陰」
「ええ、おはよう。じゃあ、木の実を持って」
「わ、いっぱい採ってきたね」
「それはいいから、さっさと行くわよ!東はこっちよね?」
「うん。じゃ、行こうか」
漸く、帰れるかもしれない。
いや、帰らなくては。
二人は昨日よりは明るい気持ちで歩き出した。
久しぶりすぎる………!!
ごめんっ…忘れてて………!!