「だーかーらー! 事故だって!!」
世間は仕事中、子供はおやつ時。
そんな時間帯に、職にも就かず親のスネをかじって過ごす松野家六つ子____
もとい、ニート達。
さて、そんな松野家の二階……むさ苦しい男六人の部屋。
そこに響き渡る怒号。
松野家長男、希望はビッグでカリスマレジェンドな人間国宝、松野おそ松。
そう、この怒号はおそ松のもの。
そして更に部屋に轟く大声。
「おそ松兄さんには分かんないんだよ! にゃーちゃんの可愛さが!」
アイドルオタクなチェリーボーイ、松野家三男松野チョロ松の声である。
そんな二人が言い争う理由。
それは、チョロ松の手の中にある……壊れたフィギュアが物語っていた。
____ある日の昼下がり。
おそ松は競馬に行き、カラ松は空を飛び行く小鳥に話し掛ける。
一松は猫と戯れ、十四松は空気椅子耐久、トッティ___いや、トド松はスマホに夢中。
そしてチョロ松は、アイドル橋本にゃーの限定版フィギュアを眺めていた。
「可愛いなぁ、にゃーちゃん……」
恍惚とした表情で語り掛ける。
はっきり言うと気持ち悪いのだが。
ふと、すらりと襖が開く。
長男が帰って来たのだ。
特に誰がお帰りを言うでもない。
のしのしと部屋の奥にある本棚に向かって歩くおそ松。
その時。
どん、とおそ松の手が派手にフィギュアの置かれた棚にぶつかった。
____全ては、ここから始まった。