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教室に足を踏み入れると、これからクラスメートになるであろう人達が皆こっちを向いた。
……仕方ないか。転校生だからね。
その視線にたじろぎつつ、私は教壇に立った。
「はい、七瀬さん。黒板に名前を書いてもらえるかしら」
「分かりました」
黒板に名前?珍しいな。
前の学校では転校生が来たときなんてざっと自己紹介させて終わりだったのに。
私はチョークを左で持ち、綺麗とも汚いとも言い難い普通の字で自分の名前を書いた。
周りの反応は、「左利き?」とか「あれなんて読むんだろ」とかだった。
名前は初対面で読まれることは少ないかな。
左利きで珍しがられるのは仕方ないか。実際、クラスに一人二人いるかいないかだしね。
「では、自己紹介をお願いします」
来ると思ったよ……しょうがないか。
「えーと、七瀬星です。東京から来ました。これからよろしくお願いします」
そう言い終えると、自然と拍手が起こった。成功かな。
「では、七瀬さんは一番右の……窓際の一番後ろに座ってください」
「あ、はい」
あ、一人席?ラッキー。
そう思いつつ、私は一番後ろの席に座った。
前に座っている人から話しかけられるのを、一つ一つ対処しながら、授業が始まるのを待った。
「では、残り時間は質問タイムにしましょうか」
「イエーイ!」
……しかし、そう簡単に休ませてはくれなかった。