レシーブもトスもスパイクも、ぜんぶ俺一人がやればいい。
俺なら拾える
俺なら上げられる
俺なら打てる
もっと速く動け!もっと高く飛べ!!
もっと、もっと!!
そして
トスを上げた先
そこに誰も
いなかった
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「国見!!勉強教えてくれっ!」
「…なんで?勉強する必要なくない?推薦じゃないの?」
「…ごめん、それに関してはまだ言えねぇ」
申し訳なさそうに俯く影山に、国見は何も言えなくなった。
頭の悪さが口では言い表せないほどの彼女が、いきなり勉強を教えて欲しいと頼んできたのだ。きっと何かあるに違いない。
(それを言ってもらうのを待つのが、“友達”なんだろ…)
しばらく待っておこうと考えて、あまり考えないようにしていた。
のに、彼女はいつも斜め上のことをする。
「俺さ、推薦受けねぇんだ。烏野っつー高校に行く」
「…なるほどね。だから最近真剣に勉強してたんだ。」
「ああ。…言うの遅くなって悪かった。」
勉強を見てあげて2週間ほど経っただろうか。帰り道、影山が国見と金田一に打ち明けた。
「別に謝ることじゃないだろ。それに烏野行ってもバレー続けるんだろ?」
「…それなんだけどさ。俺、もうプレーしないって決めたんだ。」
「……は?」
「何だよそれ。なんで…」
そして彼女の打ち明けた内容もまた、斜め上を行く。
「…悪い。けど、もう決めたんだ。」
「もう、その意見曲げるつもりないの?」
「ああ」
「…そう。なら今更なに言っても無駄だな。」
「おい国見、なんでそんなアッサリして…!」
「影山が自分で決めたことだし、俺たちが口出しできることじゃない。…それに女子と男子じゃ立つコートが違う訳だし。」
「っ…。そりゃ、そうだけど…!」
「バレーで手助けはできなかったけど、他の部分でカバーすりゃ良いじゃん。」
「手助け…?」
「ちょ、おい国見!?」
「最近勉強頑張ってるけど、それでも一人じゃ限界あるじゃん。俺と金田一で良かったら勉強教えるよ。」
ニコリと小さく微笑みかけると、彼女は嬉しそうに、彼は呆れたように笑った。
その日から国見と金田一で、空いた時間に影山に勉強を教える日が増えた。
そして、努力の甲斐あって見事に影山は烏野高校に合格した。