( かなり長い時間、いつもより狭くも広くも感じる箱の中にいた気がする。いくらスマホの明かりで照らしているとは言え、停電で止まってしまったエレベーターの中というのは恐ろしく怖いものだった。 …しかも、春から気にかけていた意中の相手と2人きりとなれば尚のこと。いくつか言葉を交わしたと思うが、相手の香りの近さについ浮ついてしまう。生唾を飲み込んだところでパッと灯りがついた。 ) …あぁ、よかった。これで帰れるな、( 引き寄せていた腰の手を弛め、目尻を垂らすがどこか名残惜しそうに不自然な歪みを見せる口元。スラックスのポケットから取り出したハンカチで額の汗を拭いつつ、横目で相手の様子を確認して )