―蟹のまんまん
私は今宵、此処を先途と奮い立つ。
もはや人智を超えたキンパククァンドラグーンが漂う劇甚たる魂は対峙する。
迎えるは不倶戴天の敵、かに。
「よおかにくんじゃけんしよ」
先方は唯、アルテミスの弓矢の如き眼差しを湛えていた。
「うんいいよお」
現時点こそが瀬戸際と判じての承諾だろうか。
そして疑惑は確信へと変わる。
泡。
彼は泡を吹いた。
エラ呼吸である。
平常心ではいられないのだ。
このリミットブレイク状態に於いては。
――グーを出しさえすれば必勝の私を除いて。
「じゃんけんぽい!」
私は痛切なる勝利を確信した。
より正しく言うのならば、確信していた。
この瞬間の為に、あらゆる敗因を排除し、シ=クハックしてきたのだ。
目に映るは彼の消魂、耳に入るは私の勝鬨。
そうなる筈であった。
彼の手は灼熱の魔眼にも留まらぬ全てを超越する動きで下半身に到達――
――それを己の性の象徴たる秘部に翳しッッ――
無音の世界で、くぱぁ、という音が、確かに響いた。
「ぼくの、かちだね」
彼は笑っていた。私も笑った。
現実は常として想定外であり、非常である。
だから人生は、面白い。
誤字です!
ラストを彼ではなく彼女と表記する予定なのでした。
それもまたクソスレの一興か。