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「水を流しっぱなしにしていてはいけません」
これは僕の住んでいる地域で昔から受け継がれている風習だ。
いつからかは分からないけど、ずっと昔から言われてるみたい。
お父さんやお母さんに「どうして?」って聞いても曖昧に笑うだけ。
お兄ちゃんに聞いても知らないって。
誰に聞いてもみんな答えてくれないの。
だから、僕はクラスメイトの健くんと一緒に真相を突き止めようと思ってるんだ。
もちろんお父さんやお母さんには内緒でね。
お菓子も持った。水筒も持った。あとは懐中電灯かな。
あ、水着と水泳帽子と……あと目に水が入ったら痛いから水中メガネも持って行こう。
それからお菓子! 鞄いっぱいに詰め込んで気分はちょっと豪華な遠足。
あ、チョコレートは溶けちゃうから保冷剤も持って行こう。
そう色々考えているうちにどんどん約束の時間が迫ってきている。
バタバタと廊下を走り一直線に玄関へ向かう。
僕は靴のかかとを踏んで外へ飛び出した。まだ夏だからか日差しが強い。お母さんがよく紫外線はお肌の大敵って言ってるけど、僕もあの白いクリーム塗ったほうが良いのかな……?
待ち合わせの場所だったバス停の前には健くんの姿はない。
もしかして、怒って帰ってしまったのだろうか。
しかし、そんな僕の心配は杞憂で健くんはすぐそこにいた。
なぜか蹲っているが、何かあったのだろうか。
僕はおもむろに健くんに話しかけた。
(……ここで力尽きた。こんな感じでゆるーく楽しんでいってくれ)