「よっと」
ストン、という軽快な音とともに、少年は地面に降り立った。
年は16か17といったところか。
15は越えていても、まだ20には届いていないだろう。
初夏の爽やかなそよ風が、彼の短髪と戯れるように、その薄い紫がかかった髪を舞い上げながら通り過ぎて行く。
気持ちの良い日差しだった。
快晴の空で輝く太陽は、その光を余すことなく地上に与えている。
今はまだ朝の早い時間であるから、外の気温も丁度良い。
しかしあと数時間もすれば、この太陽は空の真上にまで移動してしまうに違いない。
そうなると少し厄介だった。
いくら夏が始まったばかりだとはいえ、真昼の焼けつくような暑さはやはり避けたいものだからだ。
少年は、自分が暑さに弱いということをよく承知していた。
「面倒くさいけど、急がなくちゃ」
彼は辺りをさっと見回すと、背中の翼を素早く畳んだ。
この少年の背中には、純白の翼が生えていた。
彼の背丈のほとんど半分を占めるほどに大きな白鳥の翼である。