少年が翼を畳むと同時に、何枚かの羽がひらひらと抜け落ちた。
しばらくの間、彼はその数枚を名残惜しそうに目で追っていた。
髪と同じである紫色の瞳が、まるで天空から降り注ぐ日の光から逃れようとするように、枯れた地面に落ちた白い羽を映している。
やがて大きなため息を一つつくと、少年は気怠げに歩き出した。
向かう先はすぐそこだ。
彼の眼前には、都市の亡骸が横たわっていた。
見渡す限り、亡霊のように立ち並ぶ高い建物。
あちこちに打ち捨てられている家具の残骸。
これほどにまで大きな都市だ。
ここはきっと数十年前まで、数え切れないほどの人で賑わっていたに違いない。
だが今は、少なくともこの少年には、生き物の気配など少しも感じ取ることができなかった。
死者のための街と言われてもなんら違和感のない、静寂に支配された廃墟である。
「なあ、君は本当にこんな所にいるの?」
墓場のような重苦しい空気に耐えかねたのだろうか。
少年の口から言葉が漏れた。
けれども、それに応える者は当然いない。
彼がさらに何か言おうとした途端、一羽のカラスが鳴き声を響かせながら頭上を通り過ぎた。
ひどく耳障りな音だ。
「ちぇっ。分かったよ、急げばいいんだろ、急げば」
カラスに急かされでもしたかのように、少年は不満そうな表情で、再び廃墟に向かって歩き出したのだった。