ファンタジー系リレー小説

葉っぱ天国 > 匿名 > スレ一覧
5:匿名:2020/05/28(木) 00:10

少年が翼を畳むと同時に、何枚かの羽がひらひらと抜け落ちた。

しばらくの間、彼はその数枚を名残惜しそうに目で追っていた。

髪と同じである紫色の瞳が、まるで天空から降り注ぐ日の光から逃れようとするように、枯れた地面に落ちた白い羽を映している。

やがて大きなため息を一つつくと、少年は気怠げに歩き出した。

向かう先はすぐそこだ。

彼の眼前には、都市の亡骸が横たわっていた。
 
見渡す限り、亡霊のように立ち並ぶ高い建物。

あちこちに打ち捨てられている家具の残骸。

これほどにまで大きな都市だ。

ここはきっと数十年前まで、数え切れないほどの人で賑わっていたに違いない。

だが今は、少なくともこの少年には、生き物の気配など少しも感じ取ることができなかった。

死者のための街と言われてもなんら違和感のない、静寂に支配された廃墟である。

「なあ、君は本当にこんな所にいるの?」

墓場のような重苦しい空気に耐えかねたのだろうか。
少年の口から言葉が漏れた。
けれども、それに応える者は当然いない。

彼がさらに何か言おうとした途端、一羽のカラスが鳴き声を響かせながら頭上を通り過ぎた。

ひどく耳障りな音だ。

「ちぇっ。分かったよ、急げばいいんだろ、急げば」

カラスに急かされでもしたかのように、少年は不満そうな表情で、再び廃墟に向かって歩き出したのだった。


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ