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艦隊戦・海上版
それは夜のソロモン海でのことだった。突如として、米艦隊の前に、日本艦隊が現れたのだ。夜戦に手慣れた日本艦隊麾下の駆逐艦は一糸乱れず、米艦隊との距離を縮めていく。翻って、夜戦に不慣れな米艦隊は、突然の会敵であったことも災いして、艦列は大いに乱れてしまった。
いよいよ両艦隊の距離は1万mをきり、9千mまで縮まった。熟練乗組員のいる日本艦隊にとって、この距離は探照灯なしで命中弾を得れる距離であった。しかし、米艦隊にとっては全く不利な位置であった。
しかし、意外なことに日本艦隊の戦艦「比叡」は探照灯を照らした。「比叡」から伸びた数条の光は、米艦隊指揮官の一人、スコット少将の座乗艦「アトランタ」を捉えた。即座に砲撃命令が下った。この時、両艦の距離は6000mであった。しかし、米兵にとっては目と鼻の先に見えたのだろう。当時の米軍の記録には2000mでの砲撃だったとされている。即座に36cmの砲弾が「アトランタ」を襲った。昼間でも難しい初弾命中である。さらに、不幸だったことが、この初弾が指揮官スコット少将以下司令部を瞬時に葬り去ってしまったことだ。
この時、36cm砲弾は三式弾という散弾のようなものであった。これが功を奏し、一発の過貫通も出さずに、「アトランタ」を火達磨にした。何にせよ、距離が近いので、撃てば当たるのだ。
次に日本の戦艦「霧島」が現れて、同じく36cm砲弾を発射した。それでも「アトランタ」はできるだけの反撃をしたが、か弱い「アトランタ」の12cm砲弾は戦艦の堅固な装甲に弾かれてしまった。
もはや反撃もままならなくなったところで、日本の駆逐艦「夕立」が肉薄してきた。同艦は素早く魚雷を放つと、さっと離脱した。多数の魚雷が航跡を見せず、「アトランタ」へ突き進んでいった。夜の海面に二本の水柱が躍った。同時に、「アトランタ」はすべての動力を失い、浮かぶ鉄屑となってしまった。