初めまして。
お目を通していただきありがとうございます。
素人ながらにも小説を書いてみました。
一部分を切り取り引っ張ってきたものです。
〜ルール〜
もし宜しければ、感想でもください。
そしてそしてさらに欲を言うのでしたら悪い点と良い点が書かれたアドバイスが欲しいです。
悪口など人が不愉快になる行為は控えてください。
どうぞ。
題名:1メートルの行方の先には
六月初めの酷暑のころの、社会人が歓楽街を酔って楽しむ時間帯、一人の女性が路地裏からのそりと顔を出した。
彼女は行き場を決めるわけでもなく、ゆらりと水上が揺蕩うようにどこにあるかもわからない目的地をおぼつかぬ足取りでのろのろと目指していた。
彼女からはひどく血なまぐさい悪臭が漂っており、近くを歩いていた男はちらりと彼女に一瞥を与え視界の中に彼女を入れれば男は「ほう」と惚れ惚れとした声をこぼしうっそりと見惚れる。
男は腕を組み、シャーロック・ホームズのような名探偵のように顎を指の上に置きその腕を支えるように片方の腕の上に置いて何かを考えるようなポーズを取り誰もが一度は盗み見る大層美しいその顔立ちを、なぜか強い血の匂いが引き立てるような気がしてならなくて《なぜ彼女は、こうも美しいのだろうか? 血の匂いがほんのりとする。けれども、それがまた彼女を引き立てる一種の材料となる。ああ、ここまで美しいものは見たことがない》と嫌味なほどに彼女を内心ほめたたえた。
彼女が息を吐くようにベンチに腰を降ろせば「なんと、これは彼女に近づく良いチャンスが出来たではないか」と心の奥底で呟いてよろよろと足を崩し額に太陽を遮るよう片手を当てひどく体調が悪いように顔を真っ青にさせて息を切らせ、ベンチに近づいて片手を置き、腰をゆったりと下ろし「ああ、頭が痛い」と彼女に聞こえるほどの大きさで平然と嘘を言ってのけた。
先ほどから気になっている彼女は一切反応という反応を見せてくれず、こちらをちらりと一瞥することはおろか、夕焼け空を縫い付けるような飛行機雲が浮かんでいる遠くの空を弛緩きった表情で見つめている。
「……ああ、今にも倒れそうだ」
まるで一つの劇のように、ひどく咳き込ませ「怠い、熱が出たかもしれない」ともう一度彼女に伝えるように言ったのだが、彼女はそれでも遠くのほうを見つめている。
男はとても不快な気持ちになり、「……君」と口を開いて肩を叩いた。
「……なんでしょう?」
「人が今にも倒れそうだというのに薄情な奴だな」
男は彼女に好意を寄せていたことなんてすっかり忘れ、顔を仏頂面にしていかにも不機嫌だというように喉の奥を大きく鳴らし、少し鋭い目でいう。
彼女は、一度男から視線を外し地面に投げかけた。
「うむ」腕を組み足を己の太ももの上に乗せ思考を巡らせ熟考させる。男女はどことなく顔を向けあったのだが、一切目は合わない。互いに口を開かないでいると、「……そうですね」と女が呟き薄気味悪い笑みを作った。
「貴方は自分の演技力というものに過信を持ちすぎたようですね? はは、そんなもんで一つの舞台で踊るような演劇者の気持ちになられちゃ困る。演劇者は最後まで己の劇を通すものである。途中でやめたりするだなんてもってのほかだ」
にこりと、食事の後を珈琲で締めくくるように笑顔で最期を飾れば男は酒を飲んだように顔を真っ赤にさせ口をはくはくと何度も開け大きく狼狽える。
そして、震えながら指をさし「なんていやらしい奴だ! とても不愉快きまわりない! ああ、貴様のようなことを世間様は愚者と呼ぶのだな!」と大声で吐き捨てふんっと鼻を鳴らしベンチから立ち上がって、わかりやすく靴音を鳴らして踵を返した。
「……さて……愚者はどちらだろうか」
ぼんやりと、彼女は外套を見つめ、先ほどの出来事を頭の中で描かせた。
彼女は運よく追手に合わずに済んだ。
先ほどまで、路地裏で大きく銃声を響かせ、殺し合いを繰り広げていた。兄という立場を立ち続けている男から誕生日プレゼントとしてお揃いの外套を貰ったのだが、それは銃撃戦で赤い染みを作り馨しい匂いを放っていた。
丁度、立ち寄った姐さんと慕われている女、如月琴葉と視線が交り、背中に羽織っていた外套を見られ気まずさともまた訳が違うのだけれどもなんとなく重苦しい気おくれを感じて隠れるようにして顔をくしゃりと歪な形になるようにしかめた。
しかし、それでも思苦しく感じ彼女は彼方の地平線で橙色と紫色が争っているのを憎たらしく双眸を当て強く睨みつけたのだった。