神曲 code:0

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1:エルミリア:2023/08/28(月) 01:53

ぼくは逆さまに堕ちて行く 堕ちて行くように昇って行く
天と地の分かたれた蒼穹の中へ
沈むように浮かんでは この翼を羽ばたかせ
「此処」ではない"何処か"へと
"何処"にもない『彼方』へと···


リンゴォーン、、リンゴォーン、、、


響き渡る鐘の音とともに虹色に開かれた門の奥、壮麗荘厳な大いなる玉座が据えられており、
その玉座の周りには額に「偉大な神」と印章を押された二十四人の長老の座が据えられ、
天使たちとともに神を讃える祝詞や詩を絶え間なく謳っていた。

···しかし、『神』と呼ばれる御方は、その玉座にはおられなかった。

天使が近づいて来て、わたしに言った。
「あなたは、「玉座におられる方」を"神"だと信じるのか?」

天使は「付いて来なさい」と言ったので、わたしは彼に従った。

···そこは壁も床も白一色で染まったお城のような場所であった。
その天井は見晴かすほどに天高く、光が降り注いでいた···
天使たちは衣を纏っている者もいない者も、素肌が透けて見えないように光を纏って、
煌めきを残しながら飛び交っていた。
···そこで、隣りで一緒に歩みを進めていた天使が立ち止まって聞いてきた。

「あなたは、"沈黙する神"をどう思うか?」

わたしは、先ほど見た玉座を思い出した。
天使は続けた。

「そうすると、「神はいない」と感じるだろうか。
それとも「ただの傍観者」だとしか思えないのだろうか。」

そう訊ねる天使の顔には少し憂いの色が見て取れた。

「正直、われわれ天使といえど、神のお姿をその目に見た者は少ない···
しかし、われわれは神の存在を信じることができる。それはなぜだと思うかね?」

わたしは正直に「わからない」と答えた。

「われわれが『神の名』を口にするとき、そしてまた、その御名を賛美するとき
「言い知れぬ喜び」に包まれる···なんとも言えない高揚感とともに、幸せそのもの
でもある。そういうとき、御父である神は、片時も離れず、いや、むしろ「われわれの
中に現存なさる方」であることを知る。"神を見つけた"ときほど幸せなときはないのだ。」

そう話した天使の顔は、さきほどと売って変わって少し頬が紅く紅潮しているように見えた。
天使の純粋さに、また輝きが添えられたかのように···
天使は続けた。

「御父である神は、われわれの全てを知っていてくださる。われわれがどこから来て、
どこへ向かうのかも何もかもを。われわれが『神』という御方を知らないだけなのだ。」

天使は、その彼方にある天井を見上げた···

2:エルミリア:2023/08/28(月) 02:58

❰地獄編❱

「さあ、掛けたまえ。」

わたしは天使に促されるまま、応接室のふんわりと心地の良いソファに腰掛けた。
天使はまるで、人間がそうしているかのように、お湯の入ったポットに茶葉の入ったティーパックを沈めて運んできた。
お供に香ばしく焼き上がったクッキーも添えられている。

「客人をもてなすことも忘れてはならない神の教えだ。」

そう言って、紅茶を注いだカップとクッキーをテーブルに並べ
「主よ、ここに用意されたものを感謝とともに...わたしたちの主の御名によって。アーメン。」と祈りを捧げ、
天使は「どうぞ」と、わたしにお茶を勧めて話を始めた。

「さきほどの見事な玉座は、どうでした?」

とても壮麗で、、、

「でも神お姿はなかった...そう思われたのではありませんか?」

はい。

「ふふっ。"いない"のではなく、神の業が深淵なために、あなたの目には映らなかったのですよ。」

天使はおもしろ可笑しそうに笑っている。
一体どういうことなのだろう?

「神のお姿は"神聖そのもの"で、罪人がそのお姿を目にするなら「死ななければならない」のです。
だから神は"隠れられた"...あなたが、死ぬことのないように。」

天使は紅茶をひとくち口に含むと話を続けた。

「神は至高の守護者なのです。
ところで「神のいない玉座」をあなたは見た。❮地獄❯と呼ばれる場所も実はあのような場所であるのです。
神ではない偶像を拝んだり、信じてはいけない迷信を信じて行ったり、そうするように教えたり、父や母や上に立つ権威者を侮辱する
者、他人のものを自分のもののように扱う邪な心の者、貪欲であり強欲な者、財力や力に物を言わせて弱者を踏みにじる者、偽りの誓
いを立てる者、人を悪し様に扱う者、憐れみの無い者、賄賂を受け取って真実を歪める者、隠れて悪意に従う者、正しいことを行う勇
気の無い者、悪口を叩き陰口を言い振らす者、怒るのに早い者、率直に物を言わず真実を歪める者、わがままで横暴な者、義務を蔑ろ
にする者、肉体のふしだらな楽しみにふける者、嘘偽りを好む者、盗みを働く者・・・そういった悪徳を積んだ者の辿る末路です。
彼らは「神などいない」、「神などいても見てるだけだ」とたかをくくり、自分たちの富や力を頼りにしたために、至高の守護者である
方の怒りに触れ、その御手に陥ったのです。しかし、神は被造物を憎んではおられない。
むしろ全き愛を以て見守っていてくださる。人が一人でも滅ぶことは御心ではない、むしろ悲しみそのものなのだ。
人がその愛に気付き、神の愛を体現して生きることが神が人間をお造りになった目的であり、ルシファーが人間に知恵の実を食べるよう
に唆そうと唆すまいと神のご計画に狂いはなかったのだ。
・・・しかし、そのルシファーにも神を畏れる心があったなら、、、
だから、われわれ天使にとって、人間というのは友なのだ。
道を行くとき、倒れても助け起こすために付き従っている共なのだ。
ルシファーは大量殺戮者であって、ただの「人殺し」だが、彼も神の指す「駒」の一つに過ぎない。
・・・神の恐ろしさを侮ってはならない。神は慈悲慈愛深き方であるが、神を試みるような者に対してはその怒りを顕にされるからだ。ですから、どんな小さな者にも親切や礼儀を尽くすことです。
その小さな者たちのみ使いは主の御前にいて、彼らの訴えを聞いています。」
憐れみ深き神が、その憐れみを棄て無慈悲な神として顕現なさるなら、どれほど恐ろしいでしょう。

3:エルミリア:2023/08/28(月) 03:10

天使はこうも言った。

「怒るときは厳しく怒る。また恵みを求めれば気前良くなさる。「ありがたい神様」なのだ。
子供が間違っていることをしていれば、そのまま滅ぶことのないように、厳しく叱責なさる。
また困難が訪れても、乗り越えられるように鍛練してもくださる。そしてまた、子どもが求める物には子どもたちにとって
最善を考慮されてお与えになる。慈悲慈愛深き神様なのだ。」

4:エルミリア:2023/08/28(月) 03:46

天使は満面の笑みを浮かべて
「ですから、地獄という場所は、神に「呪われた」から落ちるところではない。
神の教えに聞き従わず、悪いことをして身上を削っていると自分が不幸になるという戒めです。・・・ですから神は正しいのです。真理に基づいて、神は正しい裁きを行っているまでな
のです。しかし、その裁きに於いても、神は慈悲を優先されます。」

つまり、悪いことをして人を苦しめていると、自分を苦しめることになるから、
止めなさい、と。

「そうです。イエスの教えられたことです。「互いに愛しあいなさい」と。
人は幸せであるべきです。そうであるなら、他者の幸せをも願って生きるべきです。
誰かを不幸にしたり、犠牲にしていて、自分の幸せがあるなどという傲慢な心でいては
いけません。それは幸せなことではなく、その実、不幸なことであるのです。」

5:Elmirya:2023/08/29(火) 19:54

ぼくは逆さまに堕ちて行く 堕ちて行くように昇って行く
天と地の分かたれた蒼穹の中へ···
虚の翼を羽ばたかせ
「此処」ではない、"何処か"へと、"何処"にもない『彼方』へと···


『神曲 code:0』


リンゴォーン、、リンゴォーン、、、


響き渡る鐘の音とともに虹色に開かれた門の奥、壮麗荘厳な大いなる玉座が据えられていた。
その玉座の周りには額に『偉大な神』と印章のある二十四人の長老の座が据えられ、
天使たちとともに神を讃える祝詞や詩を絶え間なく謳っていた。

「神の御名は代々とこしえに。アーメン、アーメン。」

···しかし、『神』と呼ばれる方のお姿は、その玉座にはなかった。

天使が近づいて来て、わたしに言った。
「あなたは、神が"玉座におられる"から、神は在ると信じるのですか?」

天使は「付いて来なさい」と言ったので、わたしは彼に従った。

···付いて行くと、
そこは壁も床も白く染まった「お城」のようなところで、
その天井は、見晴かすほどに天高く、そこから光が降り注いでいた。
天使たちは、衣をまとっている者もいない者も、素肌が透けて見えないように光を纏い、
煌めきを残しながら飛び交っていた。
···そこで、隣りで一緒に歩みを進めていた天使が立ち止まった。

「あなたは、"沈黙する神"をどう思いますか?」

···わたしは、さきほど見たあの玉座を思い浮かべた。
天使は続けた。

「そうすると、「神はいない」と感じるのだろうか?それとも、「ただの傍観者」であると
しか思えないのだろうか?」

そう訊ねた天使の顔には、少し悲しみの色が見て取れた。

「正直をいえば、我々「天使」といえど、本物の神のお姿をその目で見ることを許された者は
少ない···。しかし、我々は神という存在を常に「感じる」ことができる。
···それは、どうしてだと思いますか?」

わたしは正直に「分からない」と答えた。

「···我々が、『神の名』を口にするとき、またその『御名』を讚美するとき、言い知れぬ
喜びに包まれるのです。···何とも言えない高揚感とともに幸せそのものでもある。
そういうとき、御父である神は、片時も離れず···いや、むしろ「我々の中に現存なさる方」
であることを知る。"神を見つけた"ときほど幸せなときはないのです。」

そう話した天使の顔は、さきほどと売って変わって少し頬が赤く紅潮しているようだった。
天使の純粋さに、また輝きが添えられたかのように···
天使はさらに続けた。

「御父である神は、我々の全てを知っていてくださる。我々がどこから来て、どこへ向かうの
かも···我々が『神』という御方を知らないだけなのです。」

天使は、その彼方にある天井を見上げた···

6:Elmirya:2023/08/29(火) 20:49

❲地獄編❳

「さあ、お掛けください。」

わたしは、天使に促されるまま、応接室のふんわりとした心地の良いソファに腰掛けた。
天使は、まるで人間がそうしているかのように、お湯の入ったポットに茶葉の入ったティーパックを沈め、こちらに運んで来た。
御供に香ばしく焼き上がったクッキーまで添えられている。

「客人をもてなすのも、忘れてはならない神の教えです。」

そう言うと、祈りを唱えた。

「主よ、ここに用意された物を感謝とともに···わたしたちの主の御名によって。アーメン。」

天使は「どうぞ」と、わたしにお茶を勧めると、彼もソファに腰掛けた。

「さきほどの見事な玉座は、どうでしたか?···「神がいない」というのが、あなたの心に浮かんだことでしたが?」

ああ···はい。

「ふふっ。"いない"のではなくて、神の業が深遠なために、あなたの目に"見えなかった"のです。」

天使はおもしろ可笑しそうに笑っている。···一体、どういうことなのだろう?

「神のお姿は『神聖そのもの』で、罪に穢れた者が目にするなら、その者は死なねばならないのです。
それで神は"隠れられた"···あなたが死ぬことのないように。」

天使は「笑ってしまって、失礼しました」と一言謝って、お茶をすすった。

「神は至高の守護者なのです。
ところで···「神のいない玉座」をあなたは見ました。
《地獄》と呼ばれるところも、あのようなのです。
神を畏れず、自分たちの腹を神のようにして、悪を行っても悔い改めもしないで、むしろ「そうするように」と人に教える···
そういった悪徳を働いて生きた者の辿る路です。
彼らは「神はいない」「神など観ているだけ(で何もしない)」「神に何ができる?」と鷹をくくっていて、自分たちの富や力を頼りに
し、至高の守護神である方を侮り、その御手に陥ったのです。···しかし、神は被造物を憎んではおられない。
むしろ、全き愛をもって見守っていてくださる。人が一人でも滅ぶことは御心ではないのです、むしろ悲しみそのものなのです。
人がその神の愛を知り、その愛で地上を統治することが、神が人間をお造りになった目的です。
いと高く在す御方のご計画とは、いと高く純真で、あの知恵の天使ルシファーでさえも凌ぐことはできなかったのです。」

では、ルシファーがアダムとイヴに知恵の実を食べるように誘惑することは?

「ご承知のことであったに決まっています。神のご算段に狂いはなかったのです。それに、もし狂いがあったとしても、あの御方の知恵
の前に不可能はないのです。基より裏切り者のルシファーが自ら墓穴を掘って、そこに陥ったまで。···神を出し抜こうなど愚かなこと
を考えるものではない。···しかし、たとえルシファーにも、神を畏れる信心があったのなら、神の御手に陥ることもなかったろうに
···」

天使はクッキーを食べていた手を止め、深くため息を吐いた。

「だから、我々「天使」にとって「人間」というのは「友」なのです。
道を往くとき、倒れても助け起こすために付き従っている「共」なのです。
ルシファーは「ただの人殺し」ですが、彼も神の指す「駒」の一つに過ぎない。
···神を畏れて生活しなさい、そうすれば、何も悲しい目に遭うこともない。
神を信じなさい、そうすれば救われます。救い主である方を信じる道のほかに救いの道はないのです。
つまり、神は『平和の神』であり、善にしても悪にしても、すべてはその神の『調和』のために常に働いているのです。
悪からも善を引き出される至高の賢者である方の御旨に従っていれば、なにをも恐れる必要はないのです。
恐るべきは、神おひとりで十分なのです。」

7:Elmirya:2023/08/29(火) 21:39

わたしは、紅茶をすすった。
紅茶は、地上のそれと似ているが、砂糖を加えなくても、ほど良く甘味を含んでいて芳醇な香りが楽しめた。
···とても美味しかった。

「宗教のために人々が相争っているが、、、
···人の"欲望"というものは、いつのときも争いの火種となる。
人は、その欲望のままに神を求めたとしても、そこに神はおられない。
···そして、そこで人はその罪のために死ぬことになる。
宗教とは、争うために神が与え給うたものではなく、異なるものだとしても、互いのために、互いを尊重し高めるようにと、
それぞれの民族、それぞれの時代に下された天啓です。互いに言い争って滅ぼし合うことではありません。
···"神"は「どのような方」であると、あなたは思いますか?」

え、えーと···?

「いつも怒っている厳しい御方か、はたまた何でも願いを叶えてくれるお優しくて気前の良いおじいさんか、と。」

うーん、、、分かりません。

「ははは!、どちらも、そうと言えます。」

え?!

「我々が悪い道に迷い出てしまわないように戒めを与えられたり、悪いことをしているなら、そのまま滅びることのないように、
厳しく叱責なさったり、罰を下されたりもする。また、困難に遭ったとき、そのまま打ちのめされてしまわないように乗り越えるよう
鍛練してもくださる。我々に必要な物を何でもご存知で、求められるなら我々にとって、最善なように考慮されて何でも気前良く与えて
くださる、「ありがたい神様」なのです。···それは神は「無私無償の愛」だからです。」

天使は満面の笑みを浮かべた。

「ですから···地獄という場所も、神に「呪われたから」行く場所ではありません。神の教えに聞き従わず、悪いことをして身上を
削っていると「あなた自身が不幸になってしまうのですよ」という戒めの場所なのです。···ですから神は正しいのです。
神は真理に基づいて、正しい裁きを行っているまでなのです。
しかし、その裁きに於いても、神は慈悲を優先されます。たとえ、多くの者を苦しめた者であっても、反省の色があるなら、
神はそれを蔑ろにはされません。
···ほんとうに慈悲深く慈愛に満ちた偉大な神なのです。」

つまり、人を苦しめたり、悪いことを行っていると、「自分を不幸にするだけだから"やめなさい"」という、、、

「そうです。イエスの教えられたことにもあります。「互いに愛し合いなさい」と。人にしてもらいたいと思うことは何でも人にもし、
また、自分が他人からされたくないと思うことは他人にもしないことです。人は幸せであるべきです。
そうであれば、誰かを不幸にしていて、自分の幸せは許されているものという傲慢な心を持っていてはいけません。
それは幸せなことではなく、むしろ不幸なことです。」

香ばしく焼き上がったクッキーは、見た目によらず、しっとりとしていてバターの風味とほんのりとした甘味を楽しめた。

「···神の厳しさを侮ってはならない。
神は確かに慈悲慈愛深い方であられるが、神を試みるような者に対しては、その怒りを顕わにされるからです。
···正義、慈悲、誠実に基づいて、日々の苦しみを捧げて生きる忠実な者にはとてもお優しくあられるが、神に信心を捧げる小さな者を
悪し様にあしらったり、躓かせるような者には特別厳しくあられる。その小さな者の御使いは主の御前に立っていて、
神は彼らの訴えをお聞きになられます。
憐れみ深い神が、その憐れみを棄てられるなら···どのような恐ろしい無慈悲な神として顕現なさるか。
"沈黙"が、せめてもの救いです。···しかし、その御怒りから逃れられようはずもない。
神を神と認め、悔い改めて、より良く生きることです。そうすれば、幸せにもなり、悲しみに遭うこともないでしょう。
···それでは、庭で散歩でもしましょうか。」

8:Elmirya:2023/08/29(火) 23:05

❲天使の庭❳

廊下を歩く、わたしと天使の靴音が響く、だが、どこからか楽器の音色や天使たち、聖人たちの歌う讚美歌も聞こえ、
それぞれが調和を成して心地好い音楽となって、耳に響いてくる···

「ですから、人間一人一人の魂···つまり、人生とは、互いに影響し合っているものであり、誰が取るに足りないから必要ないとかで
はなくて、互いに「生かし合っている」···尊い存在なのです。
そうして、互いを尊んで、互いに至らぬ点があるとしても、よく忍耐し、また反省を怠らず精進して生き、そうして神の御許に還る。
それが人の生涯です。成功するか、何の実りの無い人生を送るかは重要ではありません。
どれだけ「愛に生きたか?」を問われ、たとえ、成功者として、人から称賛された人生を送ったとしても、愛に生きることがなかった
のなら「マイナス(不合格)」であることの方が多いのです。ですから、裕福で富が多くあることは却って魂には不利益です。
むしろ、貧しさを知ることこそ、神の慈しみ深い恵みの中で生きるための知恵なのです。
「神の子」として、互いに愛し合って生き、神に仕えて生きることを愛していれば、それこそ幸いなことです。
神はそういう人々を愛され喜ばれます。」

天使は「こちらです」と通路を右に案内してくれた。

「『貧しい者に仕えて生きなさい』とは、インドの聖女マザー·テレサにくだされた神の召命でしたが、貧しい人たちには仕えられても
それに相応しい賃金を払うお金など持ち合わせていません。しかし、マザーは修道女として、神に仕えるように彼らに仕えることを
むしろ喜びとして生きました。「喜んでいる人と共に喜び、悲しんでいる人と共に悲しみなさい」という言葉にもあるとおり、
"愛"とは『寄り添える』ことです。」

彼に案内されるまま進むと、急に視界が開け、眩しさに目を瞑った。
目を開くとそこには、陽だまりの中、色とりどりの美しい花々が咲き誇る広大な庭園が広がっていた。
天使は、庭に置かれたベンチにわたしを呼んで、彼も隣りに座った。

「清貧、貞潔、従順とは、多くの修道会で掲げられているものですが、これは正しく「人の道」です。"神を知るための道"です。
···貧しさの中で神を知り、神を知ることで神のものとなり、神のものと成ることで自由を得る。
···しかし、この道に至るために人は"怒り"を棄てなければなりません。」

天使は澄み渡る空を見上げて言った。

「しかし、どんな偉大な人物であっても、人は皆、罪人です。我々、天使と呼ばれるような者にもシミや曇りはあるものです。
ですから、苦しみ、辛さを経験することで、そういった穢れを浄化します。浄化がなされなければ、神の御許に宿ることは許されませ
んから。···神とは"焼き尽くす火"です。
相応しくないものは、その火で焼き尽くされ滅びるだけです。我々「天使」と云えども「穢れ」が酷ければ「堕天使」となり、
地獄で永劫の罰を受けます。本当に「善い方」は、神おひとりなのです。」

···では「救われる方法」というのはあるのですか?

天使は、慈しみを湛えた微笑みを浮かべて答えた。

「それは、純粋に神を信じることです。生まれたばかりの赤子のように純真でありのままに。」

9:Elmirya:2023/08/29(火) 23:34

···それは、どういうことなのですか?

「神を信じるとは、神の御心を行うことです。
しかし、地上では、日々の思い煩いに悩まされて、不安や恐れを抱いて生活している人がほとんどですね。
『愛』というのは不安や恐れを締め出すのです。神を知る、ということが第一です。
神との親しい交わりが悪霊や悪魔を退けるのです。···特に讚美と感謝の祈りが良いでしょう。
そうやって神に心を向けることは人が「幸せに生きるための道」なのです。「神を畏れることは知恵の初め」と聖書にもあります。
イエスは言われました。「互いに愛し合いなさい」と···それが「掟」であると。
イエスは、"罪人"である人々のためにも、その罪科を贖うためにご自身を捧げられました。
そのように、隣人のため、また親しい兄弟のため、しかし敵であるような人のためにも、自分の大切なものを棄てるなら、
その人はイエスの許に復活し、永遠の命としての生命に与り、多くの報いと共に天国の福楽に招かれるのです。
しかし、正しい人たちがそのように報いられるなら、悪いことをして生きた人たちも相応の報いを受けることは然りです。」

しかし、正しくあるにも悪に陥るのも、神の御心によるのでは?

「···全ては神の慈しみによるのです。人がどのように労苦したか、努力したかによるのでもありません。
神は全てを与える権能を持っておられるが、それを取り去ることもおできになる。
ですから、傲慢を戒めなさい。いつも、神の前にへりくだっていなさい。自らへりくだる者への神の慈しみは大きいからです。」

天使は、目の前に飛んできた蝶々を片手で握り潰してしまった。
「ご覧なさい」
天使は微笑むと、手を開いて見せた。
手の中の蝶々は何事もなかったかのように、またひらひらと飛んで行った。

「神のお許しなくしては、鳥も虫も、その地に落ちることを許されないのです。
神がそのような小さなものに憐れみ深いのであれば、人間たちにはどれほど憐れみ深いことでしょう。
ですから、どんなに苦難の襲い来る困難な時であっても、神を試みたりしないで、むしろ、そのような時ほど神は力強く顕現なさる
方だと思いなさい。しかし、心配は要りません。憐れみ深い神は、乗り越えられないような困難をわたしたちの前に置くような悪い方
ではないから。」

天使は澄んだ空気を吸い込んで深呼吸をした。

「神が人に求めることは、自由であることです。
人が自分の人生を、そしてその自由を謳歌して生きることです。
···しかし、そのためには《罪の奴隷》でいてはいけません。愛することは全ての罪を覆います。」



リンゴォーン、、リンゴォーン、、

「···ああ、あの鐘の音は地上でも鳴っているのだろうか?」

10:エルミリア:2023/08/30(水) 04:05

全ての人は愛されています。
愛は全ての罪を覆うのです。


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