縁側の昼

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1:大和◆5.c:2015/01/06(火) 09:22 ID:Llg

皆さんこんにちは。

前回書いていた微炭酸がどこかにいってしまったので…
新しく書かせてもらおうかなと思いました。

更新はものすごく不定期だと思います。

一応前に書いていたものを…
「秘密警察特殊部隊」
http://ha10.net/novel/1318412500.html
「special秘密警察特殊部隊」
http://ha10.net/novel/1334568947.html

感想、アドバイスなど喜びます〜

今回はゆる〜くスレを進めたいと思います。

それと、たまに二次小説があります。(おそらく瀬尾まいこさんの作品が主です)


それでは少しでも楽しんでいただければ幸いです。

2:大和◆5.c:2015/01/06(火) 18:45 ID:MCg

「名残」

その人は突然舞い込んできた。

大学生になって初めて一人暮らしをすることになった私は新居となるアパートで
自分の部屋の扉を見つめていた。
とりあえず荷物は部屋に運んでもらったし、あとは整理するだけだ。
きっと変わるのは一緒に住む人の人数と少しの手間が増えたぐらい。
どうってことはない。
そのとき私はただただ新しい気持ちでその扉を開けた。


夕飯のしたくは一人分でいいから楽。
高校生のころは毎日とはいかなくても家族四人分の料理を作らなければならなかった。
今日は少し豪華にしよう、せっかくの日だから。
ホワイトソースを作るのは少しめんどくさいけど大好物だしいいかななんて。
オーブンに入れたラザニアを待ち遠しく思いながら赤ピーマンに手をつけようとすると、
ふいに部屋のインターフォンが鳴る。
そういえばおとなりさんにあいさつをしてなかった……。
まさか怒りに来たのかと思い私は慌ててドアを開ける――
玄関に立っていたのは宅配便のおじさんでもなく、お隣さんでもなく、

「あの……夜分申し訳ありません、泊めてもらえませんか?」

訪問者にしては珍しい若いお兄さんだった。

3:大和◆5.c:2015/01/06(火) 23:02 ID:Llg

「へ?」

思わぬ出来事に硬直する私に男の子は話し続ける。

「本当に申し訳ありません……あっ、いや、ぼく……」

男の子は私になにかいいたそうに言葉を濁した。
見た目からするととても気品のある礼儀正しい男の子で、正直泊めても問題はなさそうだった。
しかし一つ屋根の下に男女が……というのはやはり危ない。
男の子がいくら私にそういう気が起きないとは言っても少し怖い。
私がどうすべきか悩んでいると男の子は意を決したように言った。

「あの、へんなことは本当にいたしません。
 僕、家から逃げてきたんです……」
「そうですか……」
「やはりだめでしょうか……?」

ダメとは言いずらいこの状況。
いやべつにだめなわけではないがこういろいろと準備ができていない。
ましてや見ず知らずの男の子。
なにかあったら大変だ。
そんな私を察してか男の子は私に生徒手帳やら何やらを見せてきた。

「これは……なに?」
「警戒されているようでしたので、身分を証明するものを……」
「はあ……」

一応と思ってみると驚きだ。
なんと目の前に立っている男の子は学生だ。
しかも中学三年。
あまりの驚きと、中学生ということに安堵したのか私は彼を部屋に入れた。


「わぁ、きれいにされてるんですね」
「まだ荷物整理してないんで……」

言葉づかいがとてもきれいなその男の子は私の部屋を見回してそういった。
私服だからなのか身長が大きいからなのかはわからないけれど、男の子はとても大人びて見える。
中学校のころの男子ってこんなに大人に見えたっけ、と思い出してもそんなことはなかったはず。
そんなことを考えているともうすでにラザニアはできあがっていた。

「良いにおいがしますね、なにを作ったんですか?」
「今日は引っ越し祝いもかねてラザニアとパエリアのつもりだったんですけど、
 パエリアはまだ作ってません」
「パエリア……僕、つくります」

キッチンの赤ピーマンを切ろうと包丁を持った手が軽くなる。

「これ、僕切りますね」

そういった男の子は私に微笑み手際よく切っていく。
どういうわけかさっき玄関で話したときよりもずうずうしい気がする。
もっとこう泊めてもらうとなると肩身狭くするものではないのか?

「いや、赤ピーマン私切るから座ってていいよ?」

私がここまで言えばおとなしく座るだろうと思ったとき、
急に男の子は笑い出した。

「……なに?」
「……赤ピーマンって、言いましたよね?」
「それが?」
「これは、赤ピーマンではなく、パプリカですよ?」

私の言ったことがずいぶん面白かったのか、
男の子は笑いを含ませながらしゃがんで私に視線を合わせる。
自分で切ったばかりの赤ピーマンを私に見せて満面の笑みを見せた。

「やっぱり赤ピーマンは僕がきりますね」

まるで私をからかうように言った。
いや、確実にからかっていた。
この簡単にも部屋に他人を入れた主を。

4:大和◆5.c:2015/01/07(水) 09:03 ID:Llg

「いいってば、私やるよ」
「僕のほうが手際がいいと思いません?」

確かに。
確かに私より男の子のほうが手際がよさそうだ。
まてまて、さっきに比べてやっぱりずうずうしい。
これはまさか手の内を返したらとんでもない子でした、なんていうのは洒落にならない。

「ちょっと、私がやるから座ってて。
 それにまだ名前も教えてもらってないし」

そうだ。私はこの男の子の名前を知らない。

「え、名前見なかったんですか?さっきの生徒手帳にあったでしょう?」
「君が中学生っていうことにびっくりしてみてないの」
「そうですか……なんていう名前だと思います?」

なんていう名前も何もわからないものはわからない。
考えるだけ無駄だ。
そうすると男の子は手に取ったトマトを半分に切り、一口でぱくっと食べてしまった。

「なにするの!?」
「僕、焼いたトマトって好きじゃないんですよ。
 だから、生のまま半分食べればトマト減るかなって」

えへへ、と笑う男の子は中学生を感じさせるように無邪気だった。
一人暮らし用のキッチンでそこに二人は狭いし


なによりも――


「まさか、このにおいは、グラタンですか?」
「グラタンじゃなくて、ラザニアね」
「ラザニア!僕大好物ですよ!」
「えええ!やだよ!」
「え、やだってどういうことですか!?」


ラザニアが大好物と答えた男の子になぜか私は叫んでいた。
なんでこんな男の子と好きなものが同じなんだ……
それにラザニアはひとつしか作ってない。

「……すいません、僕はパエリアをもらえればそれで十分なので大丈夫です」
「あ……」

二人で料理をするとペースははやい。
私と話しているうちに男の子はどんどん進めていくものだからパエリアはすぐ出来上がった。



「さて、食べよっか」
「いただきます」
「……半分あげるよ」

大好物といわれてあげないわけにはいかない。
私は小皿に半分よそい、男の子にあげた。
すると男の子は私に笑顔を見せて「ありがとうございます」と言ってラザニアをほおばった。

「それより、名前……」
「あぁ、名前ですか?」
「うん」
「そうですね、僕の名前は――」


その名前はすっと私の中に入り込んできた。
そしてなぜか男の子はガラス越しに見える空を見て、「星がないですね」と微笑んだ。

男の子はまるで形状のない液体のように溶けて入り込む。

5:大和◆5.c:2015/01/07(水) 20:38 ID:Hl2

「朝ですよー?起きてくださいー」

寒い冬の朝、目が覚めると遠くから声が聞こえた。
この凍りつくような天井を見上げても誰もいないはずなのに。

「ほらもう9時ですよ。朝ごはんは昨日の残りものと卵ですよ」

ふと横を見るとそこには昨日の男の子がたっていた。
いつ着替えたのかはわからないけれど、ジーンズにVネックのカーディガンを着てラフだ。
そういえば、と思い出す。

私は昨日とんでもないものを部屋へ入れてしまったのだ。

「あぁ、瀬戸くん……いたのね」
「どうせなら出雲って呼んでください、名字嫌いなんで。
 布団たたみますから、はやく居間に行って朝食済ませちゃってください」
「うん……」

私はしかたなく瀬戸くんに従い居間へ向かう。



――昨日、「瀬戸出雲です」と生徒手帳を再び私に見せた瀬戸くんは
よくみると大きなボストンバッグを持っていた。
どこからきたのと尋ねると「近くからですね」と答えたきり違う話に摩り替えられた。

でもなんか、それでもいい。
瀬戸くんが十分いいこなのはわかったし、
なにかそれ以上詮索しちゃいけないような気もする。
とにかく、必要なことだけ聞けばいい。

「そういえば、学校は?」
「もうこの時期僕の中学では三年生は家で受験勉強ですよ」
「へえ……」

布団をたたみ終えた瀬戸くんが居間にもどってくる。
高校生でもないのに今の中学はそんなことするんだ。
でもまあ瀬戸くんは頭がよさそう。
がさがさとボストンバッグを探っていた瀬戸くんは中からポテチを取り出した。
朝食をとってる私の前に座りおいしそうにたべる。

「僕、これでも中学受験したんですよ?」
「なんとなくそうだとはおもったかな」
「もう僕、高校は決まったのでお祝いしてください」
「は……?」

あまりの驚きに、食べようとした卵焼きが箸から落ちてしまった。
瀬戸くんはそれを手でとりぱくっと一口。
口をもごもごさせたあと、瀬戸くんはこう言った。

「なにかをおごれってことじゃないんです。
 ただ、僕と一緒にどこかに出かけてくれませんか?」
「なにがいいたいの?」



「……直接的に言うと、デートしてください」



まさか中学生にデートを誘われるとは。

6:大和◆5.c:2015/01/08(木) 13:09 ID:Hl2

「またなんで私と?瀬戸くんなら学校で一人くらいは捕まえられるんじゃないの?」
「そんなことないですよ」

冗談めかして言う私に瀬戸くんは冷め切ったように答える。
なにか気に触れるようなことを言ってしまったのだろうか。

でもべつに私の言ったことは嫌味でも何でもない、むしろ褒め言葉のようなもの。
瀬戸くんの顔はどちらかというと女の子っぽいきれいな顔立ちをしてる。
言葉遣いも気品があるからそこそこ人気はあるはず……
まあ、顔立ちのいい人っていうのはときどきわからない悩みがあるから私には理解できない。

すると瀬戸くんは急に立ち上がって部屋のカーテンを大きく開けた。

冬だけど暖かい光が私の背中を暖めてくれる。
やっぱり太陽の光が一番いい。

「こんなに天気もいいですし、それに今日はお出かけ日和って言ってましたよ」
「へえ……別に出かけてもいいけど、荷物片付けないとなぁ……」

玄関のすぐそばにおいてあるダンボールが山積みになって今にも開けてくれるのを待ってる。
昨日越してきたばかりとはいえはやく開けなければ。

「明日は雨らしいですから、そのときでいいと思いますよ?僕も手伝いますから」
「……え、まって」
「はい?」

僕も手伝いますからって、どういうこと?
それはつまり……
私の戸惑いに気づいたのか瀬戸くんは再び私の前に座った。

「明日もいるの?」
「嫌ですか?」
「……や、いいんだけど、ただ今日で帰ると思ったから」
「じゃあ甘えさせてください、できることはしますんで」
「うん……」

私はもう、完全に瀬戸くんに安心しきっていた。
この中学生とは思えない物腰の柔らかさだとか、少しの遠慮の無さに。
ただでも、それ以上の感情はなかったし、もちろんそれ以下でもない。

「昨日越してきたばかりなんですよね?
 僕この辺詳しいんで案内がてらいきましょうよ」
「うん、じゃあ案内お願いしようかな」
「わかりました」

瀬戸くんはにこりと笑った。

7:大和◆5.c:2015/01/11(日) 12:02 ID:/ps

別に都市部というほどではないこの町は私が住むにはいいところだった。
生活に困らないぐらいの静かさがある町。
瀬戸くんは本当に詳しく町のことを話してくれた。
それから私たちは必要なものを買いに行くために電車に乗って二駅先まで行った。

「ここはどちらかというと栄えてるところですかね」
「確かに人が多い……」
「はぐれないでくださいね?」


――え?
瀬戸くんは私に微笑みかけると私の手をとって歩き始めた。
別に今まで手をつながれたことがないわけじゃない。
けど、私と瀬戸くんは恋人でもなんでもない。

「ちょ、瀬戸くん」
「はい?」
「なんで、手つなぐの?私一人で大丈夫だよ?」

私がそういうと瀬戸くんは小さくため息をついて苦笑い気味にこう言った。

「はぐれないでっていう口実は古いですかね?」
「口実も何も!」
「……手、つなぎたいんですよ」

私のほうが年上のはずなのに。
身長のせいがあるとしてもおかしい。
私の手を引きながら楽しそうに歩く瀬戸くん。
きっと今の私たちはどこもへんなところはない、「恋人」という視点から見れば。

8:大和:2015/02/26(木) 21:14 ID:2Ww

と、とりあえずあげ


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