短い小説をじゃんじゃん書いていきます。
主に恋愛ですが楽しんでほしいです
*^^*
よろしくお願いします!
【_想い〜オモイ〜_】<1>
「ふぅ…あったあった」
まさか窓から消しゴムを落とすとは…
ま、見つかったからいいけど♪
「あの!好きです!私と…つ、付き合ってください!」
んん!?これって告白!?
ガサガサっと草を分けて告白現場を覗く。
あ、あれって!
学校1可愛いって噂の2年春日埼円さんと…学校1カッコいいって噂の3年の桜ノ宮飛鳥先輩だ!
実は私も好きだったりします。
う…お似合いってこういうのを言うんだろうなぁ…
__ズキッ
いてて…また胸が…
「ふ〜ん…で?俺にどうしてほしいわけ?」
んん!?
なにいってんだ?
「えと…付き合って欲しい…です」
くっ…あの上目遣い!
私には到底マネできない!!
「俺はお前を抱けばいいの?」
「えっ…いや…あの…」
「悪いけど、俺、恋愛に興味ねーから」
「……え…」
「じゃ」
……ひどい
なにあの態度!
春日埼さんがどれだけ勇気を出して告白したと思ってんだよ!
百年の恋が冷めるってこういうこと!?
なーんて…ずっと好きだったから…急に冷めるなんてできないし…
悔しいなぁ…
「何?覗き?」
「ひぃぃぃ!?…って桜ノ宮先輩!?」
「いい趣味してんな」
「い、いや!私は!消しゴムを拾おうとしただけで決して覗こうとは…!」
「ふ〜ん…でもさ…」
__ドサッ
「…キャッ」
背中には草のチクチクした感触、目の前には桜ノ宮先輩の顔。
って近っっ!
桜ノ宮先輩の顔が!!
「…顔…真っ赤だけど?」
<2>
「…い、え…そんなっ」
「ふ〜ん…なに?オレのこと好きとか?」
……えぇ!?
えっと…こーゆー場合何て言えばいいの!?
まさか!今が告白のチャンス!?
ってあの春日崎さんが振られたのに…私なんかが…
「ハッ図星か!」
「…っ」
うぅ〜こんな告白って…!
私って一体…
えぇい!もう心の準備はできたから早く振って!
「…許可してやる」
「はい?」
「オレの彼女にしてやるっつってんの」
はぁいぃぃぃ!!??
今この人何て!?
私を彼女にするって言った!?
え?え?空耳だよね?
「オレの言葉が聞こえなかったとかねーよな?」
「い、いえ!でもさっき…恋愛には興味ないって…」
なのに私を彼女にするって…
意味が分かりませ〜ん!!
「ねーけど?」
「ならどうして…」
「さっきの告白現場見てたくせにそれでもオレのことが好きって言うお前に興味を持ったから」
「え、でも…それなら私じゃなくても…」
「は?なに?お前はオレの彼女になるのがイヤなわけ?」
「い、いえ!よろしくお願いします!」
「じゃ、けってーな」
…ん?てことは私…
今から桜ノ宮先輩の彼女ってことぉぉ!!??
<3>
先輩は満足したのか「よっ」と言い、私の身体から離れた。
私が…先輩の…彼女…
でも!やっぱり私でいいのかな…
「あのっ桜ノ宮せんぱっ…「飛鳥」
「へ?」
「オレのことは飛鳥って呼べ」
えぇ!?
そんな!先輩だし…なにより呼び捨てとか上からなの嫌いそうだし…
「えと…いいんですか?」
「嫌ならいーけど。あと敬語ウザイから止めろ」
「ウザッ…わ、分かりま…分かった!」
「じゃーよろしく」
「あ、待って!」
立ち去ろうとする飛鳥を私は慌てて呼び止めた
「何?」
「私のっ…名前…!」
「2年の水無月茜」
へっ!?
なんで…知ってるの?
まさか前々から私のこと…
「なんで…知って…?」
「消しゴムの名前見ただけ。じゃ」
うぅ…やっぱりそうですよね…
自惚れた私がバカでした…
まぁいいや…私も教室もどろ…
「あ〜か〜ねっ」
「わぁっっ!!」
廊下を歩いてると私の心友、雛野星架(ヒナノ ホノカ)が飛びついてきた。
小6からリア充デビューをしてるんです!
明るくて裏表がない恋バナ大好き少女なんです
星架とは幼稚園からの幼馴染み
だから星架の大体のことは知ってる!かな?
「ねぇねぇ!さっきさ!中庭で桜ノ宮先輩に襲われてたよね!叶斗といたら偶然窓から見えたんだよね!?何があったの!?」
「ちょっ…星架…落ち着いて…あ、叶斗くん」
「いきなりごめんね」
叶斗とは浦賀叶斗(ウラガ カナト)のことで星架の彼氏なんです。
おっとりした感じで星架とは良いバランスです(笑)
「うぅ!星架聞いて〜!!」
「ほう!何だね!?」
私は飛鳥との出来事を一から全部話した。
さりげなく叶斗くんも聞いてたけど。
「えぇぇぇぇ!?じゃあ茜、桜ノ宮先輩の彼女になったってことぉ!?」
「シーッ!星架声が大きい!」
いくら屋上でも…もしかしたら聞かれるかもしれないし…
飛鳥の取り巻きに聞かれたらさすがにヤバい…
「ごめん!でもさ!スゴいじゃん!茜、桜ノ宮先輩のことずっと好きだったし!」
「う〜ん…そうなんだけど…いきなり過ぎて…」
「そっかそっか〜!あ、じゃあWデートできるね!ってかしよ!?今週の土曜日!ね!?叶斗!」
「僕は星架といられるなら何でもいーよ」
「じゃー決定!あ、ちゃんと桜ノ宮先輩誘うんだよ!?」
…え?
私の許可は?
…あれ?
____………
「……てことで今週の土曜日に星架達とWデートすることになったんだけど…ダメかな?」
「ふ〜ん…」
今現在、私は飛鳥と一緒に帰っています。
飛鳥が「帰るぞ」と言いに私の教室に来たときの女子の反応と星架の反応はスゴかったけど…
今の私はとても幸せです!
だってずっと好きだった桜ノ宮飛鳥先輩と帰れるなんて!
夢みたいだよ〜…
でもさすがにWデートはいきなり過ぎたかな…?
「いーけど」
「えぇ!?」
「日程、場所、時間詳しく教えろ」
「えと…今週の土曜日に…朝9時に…青空遊園地の入り口前に集合…です」
「…分かった」
ホントに…?
飛鳥とデートできるの!?
(Wデートだけど…)
やったぁぁぁ!!!
フフッ私気合い入れちゃお!
精一杯おしゃれして行くんだ!
そして…ちゃんと飛鳥に好きになってもらうんだから!!
「あ、家着いたぞ」
「うん、送ってくれてありがとう」
さぁー土曜日の準備でもしようかな〜♪
「待て」
「へ!な、なに?」
「出かけるなら連絡先がないといろいろ不便だろ。だからアドレス教えろ」
「あ、あぁそっか!待ってね」
鞄から携帯を取り出して飛鳥に私のアドレスを見せた。
「…ん、じゃあ土曜日に。遅刻すんなよ」
「うん!またね!」
『連絡先に 桜ノ宮飛鳥 さんを追加しました』
飛鳥の背中を見送った後、
そう表示された携帯を握りしめ、私は家の中に入った。
<4>
「よし!髪型オッケー服装オッケー持ち物オッケー!じゃー行ってきまーす!」
「はーい。楽しんでくるのよ〜!」
ガチャンと家の扉を勢いよく開けた。
……え?
「な、んで…飛鳥が?」
目の前には壁に持たれながら腕組みをしてる私の大好きな人。
桜ノ宮飛鳥の姿があった。
うわぁ…私服姿だ…かっこいい…
ってかまさか…待ってくれてたの?
「行くぞ」
「えっあ、うん!」
頭の中が整理できないまま飛鳥の後ろをついていった。
えぇ!あの飛鳥が??
うそ…?
だって待ち合わせは入り口だって言ったのに…
「…お前さ…足出しすぎ」
「え…?そ、かな?」
遊園地ってことで短パンをはいてきたんだよね…
スカートじゃ乗れるものが限られちゃうし…ジーパンは暑いし…
変…だったかな?
「ん。なんかエロい」
「え、エロっ…!??」
引かれた?
引かれたかな??痴女って思われたかな??
「引…いた?」
「は?なんで?別に引いてねーよ」
「良かった〜…」
「…あ、ここでいいのか?」
あれれ!?もう着いたの!?
ちょっと話しただけなのに…
あぁもう!ホント好きなんだなぁ私…
飛鳥は…分かんないけど…
弱気になるな!頑張るって決めたんだから!
「…おい!まさか…無視してんの?」
「えぇ!違っ!あ、ここで大丈夫だよ!」
「ふーん…じゃあ待つか」
ひぁぁ…私今絶対赤いよ…
…あれ?なんか見られてる気がする…
特に女子の視線を感じる…
まぁこんなにかっこいいんだもんしょうがないよね…
「あー!!茜!ごめん待った!?」
「二人とも早いね」
<5>
「星架!叶斗くん!」
って!えぇ!?
二人ともラブラブすぎだよ!
もう手ー繋いでる!
羨ましいなぁ…
「遅れてごめんね!あれ?なんか今日の茜可愛い!」
「え!ホントに?」
うわぁ…オシャレな星架から言われるとなんか嬉しいな♪
「あ、そうだ!飛鳥、二人を紹介するね」
「…ん」
「えと、こっちが私の心友、雛野星架でこっちが星架の彼氏の浦賀叶斗くんだよ」
「今日は来てくれてありがとうございます!楽しみましょうね!!ってことで行こっか」
「そうだね、星架」
星架に手を差し出す叶斗くん。その手に頬を赤らめながら自分の手を重ねる星架。
なんか可愛いなぁ…
私も…って暑苦しいの飛鳥は嫌いかな…
「ほら」
「え?」
私に手を差し出す飛鳥。
な、にかな?お金出せとか?
訳がわからずその手を眺めていると…
「チッ…行くぞ」
「えぇ!?」
パシッと私の手を掴み引っ張った。
えぇ!?今…私…飛鳥と手を繋いでるの!?
「なにニヤニヤしてんだよ。気持ち悪い」
「だ、だって…」
まさか飛鳥から繋いでくれるなんて…
夢みたいだよ…
しばらく歩いていると目の前を歩いていた星架が振り返り私たちに向けて手を振りながら叫んだ。
「二人とも〜!!ここお化け屋敷あるみたいだよー!」
お!お化け屋敷!?
ヤバイ…ホラー好きの星架のことだから…
次に来る言葉は絶対…
「入ろうよ〜!!」
…言うと思いましたぁぁぁ!!
ってか星架!私がホラーが大の苦手って知ってるくせに〜!
さすがにここだけはムリだ…
「なに?お化け屋敷怖いのか?」
「え?あ、うん」
「ふ〜ん…」
な、なに?
もしかして私が入らなくて済むように星架を説得してくれるの!?
期待を膨らませながらお化け屋敷の前に立つ二人のところへ行った。
「やっと来たー!早く入ろ!?」
「え、いや私は…」
「あ、そっか…茜…ホラー苦手だったね…どうする?待っとく?」
良かった…入らなくて済みそうだな…
「う、んそうしよっ「ダメだ」
「かなぁ!?え!??」
なんで!?今入らなくて済みそうだなって思ってたのに…!
「でも…私…」
「オレと入れば怖くねーだろ」
「そーゆー問題じゃ…」
「なに?オレの言うことが聞けないとか?」
「とんでもございません…」
「じゃー決定な」
なんていうドs…
いやまあ、それは前から知ってたんだけどね…
ここは…覚悟を決めて行くしかないか…
「じゃーしゅっぱーつ!!」
ひぃぃ!もう行くの!?
<6>
「キャァァァ!!」
「うおぉぉぉ!!!」
この待ち時間大っ嫌い!
こんなに叫び声を聞いて怖がらないなんてムリだよ〜…
「次の方、どうぞ〜」
「ほら、行くぞ」
「う、ん。手…離さないでね」
私は半泣きで訴えた。
はぐれるとかもっとヤだよ!!
星架達はどれくらいかな…
__カタンッ
「ひぃっ…な、に?」
ギュウッと飛鳥の腕に抱きついた。
ホントヤだ…
恐る恐る前に進むと…
__カタカタカタカタッ
「ガ、ガガガガイコツ!?」
ひぃぃぃっ!!
も、もうムリ…
「あ、おい!」
私はペタンとその場に崩れ落ちた。
「動けるか?」
「や、む、ムリ…」
__ガタガタガタッッ
「ひぃぃっ…う、うぅ…」
「ったくしょうがねぇな…」
「え、えぇ!?」
飛鳥は呆れながら私の体をヒョイッと持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこ。
な、なななに!?
こっちの方が心臓もたないよっ!
「腕、首に巻け。落ちるぞ」
「え、あ、うん」
私は飛鳥の首に腕を巻きつかせた。
飛鳥の匂いだ…
なんか落ち着くな…
___………
「ほら、着いたぞ」
「うん…ありがとう」
お化け屋敷を出ると、星架が心配したように私達を待っていた。
飛鳥は私を優しく下ろして、大きく背伸びをしていた。
私…重かったかな…
「茜ぇぇ〜!?大丈夫だった!?」
「うん。飛鳥のおかげでなんとか無事だったよ」
「そっか〜良かった〜。次、私達ジェットコースター行くけど茜達は観覧車行きなよ。精神的にもキツいでしょ?」
「うん。そうするよ」
「あ〜!そだ!良いこと教えてあげる。ちょっと…コソコソ」
それからは私達は二人と分かれて観覧車に向かった。
よし…ここで言おう。
ん?そう言えばさっき星架が…
『ここの観覧車でね。一番上でキスをしたカップルは一生一緒にいられるっていうジンクスがあるんだよ!だから頑張ってね!』
って言ってたな…
キスはできなくても、自分の想いは伝えよう…
「では、次の方〜お足元に気をつけてお乗りください」
私は飛鳥の後に続いて乗った。
ゆっくりと観覧車が動き始める。
てっぺんまで約5分。
この5分が私の勝負。
ふぅ…心の準備はできた。
「あの…飛鳥」
「何?」
「なんで…あの時私を彼女にしてくれたの?」
「だからそれは…」
「私に興味があったから…だよね」
「わかってんじゃねーか」
はぁ…やっぱり私は飛鳥にとってただの暇潰しなんだ…
でも…
「私、あの時、嬉しかったんだよ?」
「?」
「ずっと好きだった飛鳥の彼女になれてスゴく嬉しかったんだ」
「…」
「でも…飛鳥にとっては私はただの暇潰しなんだよね」
「は?ちがっ」
「分かってるけど…やっぱり私は飛鳥に」
「おい!」
「ちゃんと好きになってもらいた…んっ」
へ?
何?今の…?
話している途中で…唇に暖かく柔らかいものが…
「少しは黙ってオレの話を聞け」
キスだ…
私、飛鳥にキスされたんだ…
「いいか?よく聞け」
飛鳥はまっすぐに私を見つめて話し出した。
「オレは確かにあの時、お前に興味を持ったからと答えた。でも」
「?」
「ホントは…」
<最終話>
「ホントは…」
「…」
「ずっと想ってた、2年の水無月茜を」
「おもってた…って?」
「だから…」
飛鳥は向かいの席からスッと立って私の顔の横に手を添えた。
グラッと揺れたけどそんなの気にもしなかった。
私はどんどん近づいてくる綺麗な顔に釘付けだったから。
私は目を静かに閉じた
そして、優しく重なったお互いの唇に私の顔は真っ赤になる
なんだろ…温かいキス…だ
「…さすがにこれで分かったろ」
「なんで…飛鳥顔真っ赤なの?」
ホントは知ってる…
飛鳥が伝えたいこと分かってる
でも飛鳥の言葉で聞きたい。
ちゃんと受け止めるから…
「〜っ!お前のことが好きっ…てこと…だ」
初めて聞いた飛鳥の素直な心。
私に開いてくれた心。
君は私にたくさんの心の扉を開いてくれた。
真っ赤な顔で目をそらしてる愛しい君。
ずっとそばにいるからね…
私は座席から立って飛鳥の首に向けて腕を伸ばした。
ギュッと抱き締めると飛鳥の体温を感じてまた温かくなった。
「私もっ大好き!」
「…っ」
飛鳥は私を力強く抱き締めた。
苦しかったけど愛を感じた。
てっぺんに達したとき、
私達は顔を少しだけ離してお互いを見つめてからもう一度キスを交わした。
__大好き…
【完】
【_苦い恋〜ニガイコイ〜_】<1>
「こ〜うくん!これ食べて♪」
ボク、坂下光汰(サカシタ コウタ)は目の前で可愛くラッピングしたお菓子を差し出している江藤蘭(エトウ ラン)の幼馴染み。
家も近所でアポなしで(一方的に蘭が)よく遊びに来る関係。
ボクはずっと蘭のことが好き。
でも蘭は…
「いーけど。廉にあげるの?」
「そう!だから感想聞かせてね!バイバイ!」
「じゃー」
蘭は…彼氏がいる。
中1の時、告白したらOKもらったらしい。
名前は久我山廉(クガヤマ レン)。
イケメンでスポーツマン。
ホントはもっと前に告白しとけば良かったんだけど、あんなに幸せそうに廉の話をする蘭の顔を見ていたらできなかった。
それに、廉に比べて…ボクは…
ひょろひょろのもやしっこのガリだから…
蘭を泣かせたら…って言おうにも今じゃ廉の方が蘭にベタ惚れだから言えないし…。
あれ?ボクが廉に勝ってるとこ…って
「……ない」
でも…ずっとズルズル引きずってたから今こんな状況なんだよな…
「光汰〜ご飯だよ〜」
「うん、分かった〜」
あれこれ考えてもしょうがないし今更って感じだ…。
それでも…蘭のことが好きなんだ…
<2>
「こ〜うくんっおはよん♪」
「おはよ」
朝から蘭の声を聞けた。
良かった。今日も元気だ。
ボクは冷静を装って返事をした。
「ねぇねぇ!昨日のクッキーどうだった??」
「なかなかだったよ。廉も喜ぶと思う」
言いたくもないセリフを言うと、蘭はパァァァともっと明るくなって両手を自分の顔の前で合わせた。
な、んだその笑顔!反則だよ!
キュゥゥと苦しくなる胸の痛みをボクは必死に隠した。
「ホンとに!?やったぁ!今日廉くんにあげるやつ持ってきたんだ!あ、先生には秘密だよ」
口の前で人差し指を添え「しーッ」とイタズラっぽく笑う蘭の顔は廉への愛情を感じさせた。
蘭は満足したのか「じゃね」と言って教室に入っていった。
ボクがずっとさせたかったその笑顔は今じゃ廉がさせてるんだよな…
___……
昼休み、ボクはいつも通りガヤガヤとした教室で勉強をしてた。
すると、バタバタバタっと廊下を走る音が聞こえてきた。
「光くん!あれ?また勉強してるの??勉強しすぎるとおかしくなっちゃうぞ〜」
意味のわからない言葉を笑顔で言ったのは蘭だった。
あの顔は…渡せたのかな?
「どうだった?」
「バッチリ!渡せたよん♪」
ニカッと笑ってピースサインをする蘭。
カァ…と赤くなりそうな顔を抑えた。
「おーい蘭さん!渡せたってなんのこと??」
ある一人の男子が蘭の名前を呼ぶ。
蘭は優しくのほほんとした性格のせいか、驚くほど男子に人気がある。
年上年下関係無く。
彼氏ができた今でもだ。
本人は廉のことばっかりで全く気づいてないけど。
「あのね!クッキー作ったんだ〜!それを廉くんに渡したの!」
「えぇ!廉腹壊さねーかな!」
一人の男子が蘭と話始めると、もう一人、もう一人と男子が増え始める。
これなら女子に嫌われてもしょうがない。
そう思うかもしれないけど、蘭は女子の中でも絶大な人気を誇る。
こういうのを
“ 憎めないキャラ ”
って言うんだろうな…
「失礼だな!ちゃんと美味しかったもん!ね、光くん!?」
そして、蘭は必ずボクを会話に入れてくれる。
だから自然と友達もできた。
「う〜ん…正直…どうだったかな?」
「えぇ!?光くんさっき美味しかったって言ったのに!」
「美味しいとは言ってない。なかなかって言った」
「うわぁーひどーい!アハハハッ」
『好きな人をイジメる男子』
蘭を好きになる人は全員“ それ ”だ。
だって、フツーに猛アタックしても蘭は気づかないから。
そうしないと蘭に近づけない。
「そんなに不味いの?オレ食ってみたい!」
一人の男子がそう言った。
おーやるな。
でも当の蘭は…
「あ、ちょーどあまりあるから明日持ってくるよ!」
全ッ然気づいてない。
でもその男子は嬉しいという気持ちも出ていた。
好きなんだろうな…蘭のこと…
「じゃー俺もー」
「あ、俺もー」
その男子からまた一人また一人と次々と俺も俺もと言い出した。
蘭も“ あれ? ”って顔をしてるだけ。
ド天然&超鈍感の代表だな。
「…残念だけど、先着一名様だから舜くん以外はダメでーす」
舜(シュン)、はさっき蘭のクッキーを欲しがった男子。
周りの男子はガックりと肩を落としていた。
すると、隣の2年の男子がこっちを見ているのに気づいた(ちなみにボクらは3年)。
あ、アイツは確か、蘭と同じ委員会でよく蘭をいじめてるやつ。
名前は確か…
「おー日向!どーした?」
そうだ、日向(ヒナタ)だ。
たぶん蘭のことが好きな男子の一人。
「いや、別に。舜くんの雄叫びが聞こえたから来ただけ」
「あー蘭さんからクッキーもらう約束したんだ」
「マジで?ずりー」
「ひーちゃんも欲しいの?また今度ね」
「ひーちゃんはやめろっていってんじゃん」
「だってこの呼び方可愛いんだもん」
変な理由〜…
こっからは言い合いの始まりだった。
主に呼び方の。
蘭は日向の勢いに負け、渋々呼び捨てにすることに決めたらしい。
え、じゃあ…蘭の初呼び捨て男子は日向ってことか。
なんか悔しい…
たぶんもっと廉の方が悔しいだろうけど。
とまぁ、実況中継みたいなのしてきたけどホントにずっとこういうのばっかりだ。
他の男子がガンガンすぎておいてけぼりになる。
はぁ〜…ますます自信なくなってきた…
<3>
「……でね〜!…って光くん聞いてる〜?」
「あ、ごめん、何だっけ?」
気付けば放課後。ボクは久しぶりに蘭と帰ることに成功した。
いつも蘭の生徒会の仕事や委員会の仕事で一緒に帰れなかったから。
うっわーボク、ボーっとしすぎてた…
「も〜!だーかーらー、もうすぐ廉くんの誕生日だから、何あげればいい?っていう話ー!」
誕生日…
誕生日プレゼントあげるんだ…
ま、まあカレカノだし、しょうがないよね。
「男子が欲しいものってなんだろな…」
たぶん…廉は蘭からもらったものなら何でも嬉しいと思うけどな…
ボクが蘭からもらえたら何でも嬉しいけど!
「あ、そうだ!光くん!一緒に買い物行って選んでよ!うん!そうしよう!じゃ、さっそく明日の十時に駅前に集合ね!」
「……え?」
一緒に…買い物?
えと…それって…
「二人きりで?」
「ん?そだけど?…あれなら友達誘うけど…」
「い、や大丈夫!」
やっ……た。
やっと二人きりで遊べる!!!
あぁ!なんかすごく緊張してきた…
あ、でも…
「廉は…大丈夫かな?」
<4>
「え?廉くん?んー…どうだろ…でも、前に『光汰なら仲良くしてもいいよ』みたいなこと言われたから大丈夫だと思う!」
「へ、へ〜」
今さりげなく呼び捨てしてたよね…
ってそこじゃないか。
それってボクのことライバルとしてみてないってことだよね!?
うぬぬ…ボクだって蘭への気持ちなら負けないのに…
なんで…蘭は…廉を選んだんだ…?
「あり?どしたの?」
「え?」
「なんかボーっとしてたから」
「あ…何でもない…」
「そう?なんかあったらいつでも言ってね」
…蘭はいつもそうだ。
自分のことはほったらかしで、いつでも人のことばかり。
男女関係無く、誰かが落ち込んでたら直ぐに近くにいて、話を聞いてあげてる。
ボクは…それをたくさん見てきた。
“ 蘭は無理をしてる… ”
分かってたけど…何もできなかった。
唯一、蘭のそばで支えていたのが…
……廉だった。
蘭が落ち込んでいたら隣に寄り添って、笑わせて…
ボクにはそれができなかったんだ。
もっと蘭を傷つけるんじゃないか…
どうしてもそう思ってしまった…
突き放されても仕方のないはずなのに蘭はいつもボクを助けてくれた。
なんで…ボクなんかを…?
今でもそう思ってる…
「あ、光くん。またね!」
「う、うん。ばいばい…」
ニコッと笑ってブンブン手を振る大好きな姿。
きっと、ボクが見えなくなるまで振ってるんだろうな…
ボク…このままでいいのか…?
「ううん、良くない…」
伝えよう。
今までの蘭への気持ちを伝えるんだ。
じゃないと廉にも失礼だ…
もう…自分に負けたくない……っ
<5>
「は、早かったかな?」
時計を見ると、約束の時間の30分前。
緊張しすぎてあまり寝れなかったからなぁ…
うぅ…ボクの心臓…持つかな…?
「あー!光くん!!」
「あ、ら……ん?」
な、ななななななななな!?
うわわわわわわっ!
カァァァとボクの顔はやかんのように赤くなった。
「早いねぇ光くん……って…どした?」
ヤバイよ!
蘭の私服姿…こんなに可愛かったっけ!?
髪もいつもと違うし…
か、かかか
「かわっかわわっ」
「かわ?あぁ!川野線そろそろ出発だね!早くいこ!」
な”ぁぁ!!!???
い、いま!
ららら蘭と手ー繋いでる!?
もー心臓がぁぁ!
「ふー間に合った。早く来て良かったねぇ。私時間間違えてたみたい」
「アハハッ」と苦笑いする蘭を目の前にボクは余計に顔が赤くなった。
「えっと〜…あと…一時間くらいだから…あっあそこ空いてる!座ろ!」
「う…うん」
引かれるままにボクたちは座った。
しばらく、ボクはガタガタンと小刻みに揺らされる体に心地よさを感じながら左半身の愛しい彼女と話をしていた。
「…だから…タオルとか…いっかな…って……おも、うん…だぁ…」
あれ?…蘭の様子がおかしいな。
時々カクンと揺れる頭とうつろな目。
もしかして…
「蘭…眠いの?」
「んぅー…だい…じょ…ぶー…スー」
えぇ!?大丈夫って…寝ちゃってるよ…?
寝顔……可愛い……!!!
けど…寝づらそう…
ぬぬぬ…
しょうがない!
…………許せ!廉!!!
ボクは蘭の頭を自分の肩に優しくのせた。
すると、蘭は枕を見つけたように気持ち良さそうに寝始めた。
「スー…プスー…スー…」
時折変な寝言を言いながら蘭は目的の駅までぐっすり寝ていた。