ミント味.  

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1:  茅光  ◆iI  :2016/03/31(木) 22:58 ID:woU




先輩から貰った飴の味を、
私はきっと忘れることができない。



 

2:  茅光  ◆iI  :2016/03/31(木) 23:01 ID:woU




>>0002.

なんか前のやつ放置しちゃってて、
流されてたから新しく作った()
すみません(´;ω;` )

内容的には前回と変わりません。
温かい目で見守ってくれれば幸いです。
よろしくお願いします!!

コメント・質問などぜひぜひ( *´-ω-`)b

3:  茅光  ◆iI  :2016/03/31(木) 23:06 ID:woU




先輩は、綺麗好きだった。
先輩は、緑色を好んでた。
先輩は、眼鏡が似合った。
先輩は、成績が良かった。
先輩は、飴が好きだった。

先輩は、好きな人がいた。

わたしは、きっと、そんな貴方が好きだった。

よく分かんないけど、見てるだけで
本当に幸せだったのです。

 

4:  ちあき  ◆iI:2016/04/01(金) 17:16 ID:Jaw




「 先輩、そこ強火じゃなくて弱火ですよ。 」

少し夕日が差し込む部屋の中、私は
まるで子供に言うように優しく注意してあげました。ですが、私の声は、オレンジ色の空に吸い込まれてしまったようです。

すっかり部活のことなんて忘れて、
愛用の黒い眼鏡を拭きまくる先輩。きっと火を使ってたから、眼鏡が曇ったのでしょう。
だからって無視するのは、と
私は少しカチンとしました。

しかも、私が座っている席から
いつも見えるその横顔が、今日も無駄に整ってて、
私はさらにカチンとします。
きっといつもよりかっこよく見えるのは、
優しい逆光のせいです。


・・・って。


「 先輩っ、ハチミツ入れてないじゃないですか・・ええぇぇ、待って、焦げてるよ、先輩!混ぜて!混ぜて!てか火弱めてよ!? 」


「 えっ、うわぁ!ごめんごめん、うっ、あっつ!! 」 


「 ちょ、なにして・・馬鹿なんですか!?もういい私が火止めます! 」


私は先輩の代わりに、
夕日と同じ色の火を止めました。

まったく、ハチミツは入れ忘れるし、 
鍋の中は完全に焦げそうです。
見た目だけでも分かるほど、
キャラメルは堅くなっていて、
鍋に近い側なんか、もう焦げ始めています。

先輩は慌てた勢いで、熱してる真っ最中の
鍋に触ってしまったらしく、
ほんのり赤く腫れた指を、水で一生懸命冷やしました。

この人はかなりの馬鹿だと思います。
1年と少し、先輩と過ごしてきて、
一体、彼は家庭科部において何を学んだのだろうと、
つくづく感じるのです。

 

5:  ちあき  ◆iI:2016/04/01(金) 17:19 ID:Jaw




 
本来ならとろけそうになるほど甘く、
程よいミルクの味がたまらなく美味しい
キャラメルなのですが。


わたしは、本心を口にします。


「 なにこれ、かったい。 」


先輩が作ると、堅すぎる謎のお菓子、
少なくともキャラメルではないものが
出来上がってしまいました。


「 あはは、ごめん。 」


「 軽すぎます。絶対そう思ってないですよね。」  


この日のために、わたしはとあるお店まで行って、花柄の可愛い包み紙を20枚セットで買っておいたのです。
余ったとき用に、持って帰れるように。
先輩が作ったものは、残さずたくさん食べたいのです。


先輩は、そんな乙女の甘い期待を、
"あはは、ごめん"という思ってもない言葉で、
さらっと裏切ってしまいました。


「 まったく先輩は・・ 」


「 あ、じゃあさ、これ顧問に全部あげちゃおうよ。 」


「 あ、それいいかもです。 」


今日のところは、顧問の恭子先生にあげるという
ナイスアイデアを出してくれたので、
先輩の大失態を許してあげます。


「 じゃあさ先輩!包み紙にくるんで、ついでに包み紙を買ったときについてきたメッセージカードにも、なんか書いて渡しましょうよ。 」


わたしは、先輩のアイデアを越える
ナイスアイデアを提案しました。


「 おー、なかなかやるね。 」


あとから先輩は、俺のおかげだけどね、
と要らない一言を付け足したのですが、
わたしは華麗にスルーしました。

 

6:  ちあき  ◆iI:2016/04/03(日) 10:34 ID:9FQ


 
 
この家庭科部は、部員二人に顧問一人。
部員二人っていうのは、
もちろん私と先輩のことです。 

先輩は3年生で、私は2年生。
1年生はいません。
3年生の真( まこと )先輩は、
生徒会に入っていて、部活に来れるのは
週二回くらいです。
私は、特に委員会も生徒会にも入ってないので、
部活がある日は毎日ここに来ています。
部員が私だけしか来てない日も、
そう珍しくはありません。
そのときは、顧問と一緒に、
御裁縫などをしています。

私は普通に料理ができるのですが、
先輩はまるで駄目です。
なのになんで家庭科部に入ったのかと
疑問に思ったことがあったので、
前に一度聞いてみたことがありました。

そしたら先輩は、「 俺の一個上の女の先輩が美人で入ったんだよ、肌が白くて、目が大きくて・・ 」と、限りなくどうでもいい美人の定義を言い始めました。
ので、私はそれ以降、先輩との会話のなかで
美人の話題は出さないようにしました。

黙ってればかっこいい人なのに、本当に残念です。


それはそうと、顧問の恭子先生が言うに、
来年にはこの家庭科部は
廃部になってしまう予定らしいです。
わたしはまだ家庭科部にいるつもりなのに、
酷いことです。

7:  ちあき  ◆iI:2016/04/03(日) 13:08 ID:9FQ


 
 
「 "いつもありがとう"とか、そういう感じで書けばいいですかね? 」


私は、恭子先生へのメッセージカードを
書き始めました。

キュ、とマジックペン特有の音が辺りに響きます。
私はマジックペンの音と臭いが
あまり好きではありません。
でも、これも恭子先生のため。
そして、先輩との楽しいときのためなのです。


「 お、いいんじゃね?先生、喜ぶよ 」


先輩が発する肯定の言葉を聞いてから、
無言で花柄の包み紙を取りだし、
二人の間に置きました。
先輩はなにも言わず、
堅く不味いキャラメルを包み始めました。 

私は、静かなこの部室が大好きです。
そして、なにも言わなくても通じる先輩も好きです。

 

8:  ちあき  ◆iI:2016/04/03(日) 13:14 ID:9FQ


 
 
少し時間が経って、
私と先輩の間にあった包み紙がなくなりました。


「 終わった!葵ちゃんお疲れ! 」


自分の名前を忘れているわけではないのですが、
先輩に名前を呼ばれると、
"あ、わたしは葵なんだ"と思います。

"あおい"は元々嫌いじゃない名前ですが、
先輩の呼ぶ"あおい"は、とても透き通っていて、
私なのに私じゃないみたいでした。



まるで青い空を眺めてるみたいだと思いました。

・・やっぱり今のは嘘かもしれません。
私の目には先輩しか見えてないんですから。


「 職員室行って、先生に渡してこよう。 」


先輩は言いました。
私は静かに頷きました。

調理器具を片付けてから、
家庭科室の戸締まりをして、
私たちは部屋を出ました。

職員室まで、上履きをぱたぱたと鳴らしながら
歩いていきます。



「 あら、珍しいわ。私にくれるの? 」 


恭子先生は、嬉しそうに受け取ってくれました。
どんなキャラメルかも知らずに。

恭子先生が喜ぶ中、
私と先輩の視線が交わったとき、
先輩はクスッ、と笑いました。
それはそれは、とても悪い笑顔でした。
でも、私はその悪魔みたいな顔も
けっして嫌いじゃありません、
なぜなら先輩だから。

9:  ちあき  ◆iI  :2016/04/03(日) 14:46 ID:S1A



 
職員室から下駄箱まで移動する間、
私は先輩の後ろについて歩きました。
家の方向は違うので、
一緒に入れるのもここまでです。



「 また明日ね 」


私が知っているなかでいちばん、
"また明日"という言葉は切ないものです。
まあ、私の語彙が貧困なだけですが。



「 あ、 」


先輩は思い出したように
つぶやきました。


「 今日もお疲れ。はい、いつもの。 」


そういうと先輩は、
私に白い飴をくれました。ミント味の。
このときの飴は、私の手と先輩の手を
くっ付けてくれる、万能なものです。


「 お疲れさまでした。ありがとうございます! 」


私は先輩にしっかりとお礼を言いました。

前に、「 君は"ありがとう"というと顔が赤くなるね 」と先輩に言われたのですが、きっとそれは先輩だからです。
私の頬は、今もきっと夕焼けより赤いと思いました。

10:  ちあき  ◆iI  :2016/04/03(日) 15:00 ID:S1A



 
帰り道、私は先輩がくれた甘く爽やかな飴を、
舌で転がしていました。

先輩がくれるこのミント味の飴は、
とても美味しいです。
透き通るような色と、 
すっ、と喉を通るような感じの味。
嫌なことまで一緒に喉の奥へと
連れていってくれるような感覚が、
私はたまらなく大好きです。

きっかけは去年の夏ごろ。
部活で必要なお菓子の材料を買いに、
近くのスーパーに行ったときのことです。

甘いものが大好きな先輩は、 
材料とは関係ないのに、
チョコレートと飴を買っていました。
そして私に、どの味がいい?と、
飴が入っている袋のパッケージを見せてきたので、
私が「 ミントで。 」というと、
その袋の中にあったミント味の飴を、全部くれました。
そんなに要りません、と断ったのですが、
「 僕、ミント嫌いだから 」って、
まるで大阪のおばちゃんみたいに
手のひらに飴を乗せてきました。

それからというもの、買った飴の中にミント味があると、私にくれました。
なので私は、ここ半年以上、
飴といったらミント味しか舐めていません。

でも、先輩がくれたものなら
なんだって嬉しいので、私は幸せです。


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