嘘は、人間の始まり!

葉っぱ天国 > 小説キーワード▼下へ
1:おかゆ:2016/11/05(土) 12:59

…いつだって「嘘」は、私を守ってくれた。すごく広いお家に住んでいるだとか、母がすごい美人だとか、最新式のゲームを持っているだとか、お金持ちだとか。
「嘘」が居なければ、きっと今頃クラスの輪の中にはいなかっただろうし、ましてや友達なんていなかったのだろう。
顔の「嘘」だってつけるようになった。確か小学三年生になった時だ。嘘の上に嘘を。真実の上にもほんの少し嘘を。それが当たり前であり、それが人間だ。
いつだったか、どこでだったか、マザー=テレサさんは人の美しいところをまず見るようにしている、と語っていた気がする。私には疑問でしかなかった。なぜ人の美しいところを見つけられるのか。本当に素晴らしい人なのだと確信した。でも、それが彼女の本当の心だったのだろうか。私は「嘘」の塊である。汚く薄汚れている。
「嘘」とは人間であり、にんげんとは「嘘」である。

2:おかゆ:2016/11/05(土) 13:12

「優子ちゃんひどーい!」
「え?」
事は突然、私の前に突き出された。
「何でいつも、お家に連れて行ってくれないの!?」
「今日はお父様の…お客様がいらっしゃるからって…」
「いつもそうじゃん!誰も優子ちゃんのお家、見た事ないんだよ!この学校の校区内にそんな凄いお家無いよ!」
「…。」
「優子ちゃん、ずっと嘘ついてたの!?嘘つき!」
「そんな…事無いもん!お父様はよく、お客様をお家に入れるから、ダメなだけだもん!嘘なんかついてないもん!花純こそ嘘つき!」
駄目だ。
「違うもん!…だってみんな、優子ちゃんの言っている豪華なもの見た事無いもん!うーそつきっ!うーそつきっ!うーそつきっ!」
手拍子がクラス中に鳴り響く。
「やめてよ、みんな今まで私の宿題とか見てきたじゃん!宿題、見せてあげたじゃん!一緒に先生に謝りにも行って、やってもいない事に頭を下げてきたのに…」
「もともとそこから不自然だったんだよ!お金持ちのお嬢様ならそんな頭を下げたりなんかしないし、だいたいそんな安そうな服着てないよ!」
「これは…フランス製の、ブランドのお洋服…なんだし。価値もわからずケチつけんな!花純ちゃんのバカ!」
「っ!」
花純は、一瞬口元だけ少し笑った。
「ぐすん、なんでそんな事言うの?みんな、私が正しいって言ってくれてるのに。」
「そーだぞー優子ちゃん、お前サイテー!」
「優子ちゃんの方がバーカ!」
「さっさと消えろ!バカ優子!」
「きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!きーえーろ!」
消えろ、その言葉と手拍子は長く続いた。

3:おかゆ:2016/11/05(土) 13:23

私の足は、教室のドアに向かっていた。逃げるの?
「みんな大っ嫌いなんだから!優子ちゃんの事!」
そう教室から聞こえた。



「優子…?」
私は家に帰り、部屋に閉じこもった。もちろん鍵なんてものが付いているわけではなかった。
「優子?早退してきたの?どこか具合が悪いの?」
母は優しかった。でも今の私には優しさよりもバカッ!そう言って叩いてぶってもらったほうが気が落ち着く気がした。
「五月蝿い!黙ってて!お母さんなんか大っ嫌いなんだから!」
「優子…?優子!あなた、もう六年生でしょう!?しっかりなさい!」
母はそう言うと私の部屋から離れていった。
「お母さんがブスで太ってて、お金持ちでもなくて、お菓子も作れなくて、お人好しなせいで男に捨てられたから…。」
母は昔私がまだお腹にいる頃、当時付き合っていた男に浮気相手がいる事に気づいていたにもかかわらず、何も言わなかったそうだ。愛なんて二人の間になかったのだ。そのせいで今お金はなく、貧乏な生活を強いられている。最悪だ。優しい人ほど辛い目にあう。その事を幼い頃から理解していた私は「嘘」で全てを隠した。自分の性格も、自分の表情も、すべて。


書き込む スレ一覧 サイトマップ ▲上へ