雲の上の上には、神様が住んでいるらしい。
人間はその神様の手によって生を授かっているんだ。
神様は今までたくさんの人を創ってきた。
頭のいい人、正義感ある人、運動神経の良い人、優しい人、努力家な人……
稀に上出来な人間が完成すると、その人は天才と呼ばれるようになる。
そう、みんな必ずなにかを持っている。
そんな中、たった1人だけ。
失敗作と言われている人がこの21世紀にいるんだって。
>>02 人物file
・黒宮 颯 Kuromiya Hayate♂
勉強もできず、運動もできない、腐った性格、容姿もよくない
要領も悪く、何一つ特技もない
神が創りあげてしまった、唯一の失敗作
・シェローリア Shelolia♀
颯、美奈衣を創った神
失敗作をこの世に送り出してしまった責任をとるため
颯を一人前の人間にするべく人間界にやってきた。
・クリプトリアン Culiptrian♀
陽を創った神
この世の天才と呼ばれる人間の8割は彼女の手によって創られた
シェローリアとはライバルで、シェローリアの失敗作、颯を見下している
・白城 陽 Shiragi You♂
クリプトリアンによって作られた人間
成績優秀、運動神経抜群で性格もよく、容姿も整っている
クリプトリアン曰く、自信作であり最高傑作
・桃月 美奈衣 Momotsuki Minai♀
シェローリア作の女の子
陽に好意を寄せており、颯を嫌悪している
美術部で、芸術の才能に長けている
神といえば聞こえはいいが、実際は人間管理局の一労働者に過ぎない。
シェローリアにとって女帝神、ナミタリエに呼び出されるなんて前代未聞の事態だった。
「失敗作を世に送り込むとは何事だ、シェローリア・フィネットマータ」
低く、威圧感のある男のような声にシェローリアは気圧された。
「大変……申し訳ございません……『才能オイル』を……入れ忘れました」
「入れ忘れた、で済むと思っているのか?人間を創る場合、才能オイルを必ず適量に調合しなければならない。これは絶対に違反してはならない規約だ」
ナミタリエの言っていることは正しすぎた。
人間を創る場合、最低でも1種類の才能オイルを使う必要がある。
調合が難しいので複数使ったり、大量に使うことはあまりないが、腕のいい神は複数使ったり大量に使うこともある。
そうして完成したのが、天才だったり秀才だったりするのだ。
もちろん欠点オイルも比例した量を使う必要があるが、その説明は省略する。
けれどシェローリアは未だ腑に落ちない点があった。
確かに入れたのだ、才能オイルを。
頭脳のオイルと身体能力のオイルなどその他もろもろの才能オイルを完璧に調合したはずなのだ。
これはクリプトリアンの傑作をも超える人間なると期待した。
『製造番号S-1031』と名付けた人間が。
育ってみると、どうだろう。
「汚れた心を持ち、知恵もなく、身体能力も低い。そしてそれを改善しようという向上心もない。なんて失敗作だ」
ナミタリエは深いため息をつき、シェローリアを睨みつけた。
「しかし、異常があれば天使が人間界に送り込む前に天界へ戻すはずですが……」
「黙りなさい!」
ナミタリエは声を荒らげた。
「あなたに50年の職務停止を命じます。その50年を使い、S-1031を一人前の人間にしなさい!」
こうして、シャローリアは人間界に飛ばされたのだった。