わたげのように。

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1:朱莉♯:2018/06/11(月) 23:59

ちいさなおん

2:朱莉♯:2018/06/11(月) 23:59

なのこが

3:朱莉♯:2018/06/11(月) 23:59

死ん

4:朱莉♯:2018/06/11(月) 23:59

だ。

5:朱莉♯:2018/06/12(火) 00:01

ある、小さな女の子が死んだあとの世界の話です。
そこはとてもふわふわしていました。
小さな女の子は走ったりくるくる回ったりします。
ゆるい日常が、始まります。

6:朱莉♯:2018/06/12(火) 00:33

「まま」
「ぱぱ」
呼んでも、誰もいません。
お母さんの布団にくるまってお昼寝していた小さな女の子は、
気がつくと草原の上に座りこんでいました。
上を向くと、布団をかぶっていたから真っ暗だったはずなのに、そこにあったのは青白い空と、ふわふわ浮いている真っ白な雲、そしてすべてをあたたかく包む太陽が。
辺りを見渡すと、沢山の花が色とりどりに咲いていました。
女の子は、しばらくその風景を見つめていました。

雲は少しずつちぎれながらゆっくりゆっくり動き、そよ風が周りの花を揺らします。空はどこまでも青白く、太陽はまるで眠りを誘うかのような心地よいあたたかさを持っていました。

ある時、女の子は突然怖くなりました。
「ままとぱぱはどこだろう」「ままとぱぱに会いたいよ」
女の子の目に涙が浮かび始めます。
女の子はもう一度お母さんを呼びましたが、返事はありません。お父さんを呼んでも、返事はありません。
女の子は走り出しました。
お母さんもお父さんもどこかで自分を待っているのだと、女の子は信じていました。
だけど、いくら走っても、空と雲と太陽と草原が広がっていくだけで、何も変わらないようにさえ見えました。
女の子は泣きながら、鼻水を流しながらお母さんとお父さんを探し続けました。
何度も走り続け、わんわん泣きながらお母さんとお父さんを呼び続けます。

女の子はどこかにあった小石につまずきこけてしまいました。

7:朱莉♯:2018/06/12(火) 21:45

小さな女の子が顔をあげると、目の前にはひらひらしたものがとんでいました。
「ちょう…ちょ?」
周りを見ると、たくさんの蝶が羽ばたいています。
1羽が、女の子の鼻にピタリと止まりました。女の子はそれをじっと見つめていたのですが、そのうちくすぐったくなってきて、首をぶんぶん振り回しました。
蝶はひらひらとどこかへ飛んで、そして、消えました。
周りをとびまわる蝶をじっと見つめていると、女の子は、転んですりむいたひざこぞうが全然痛くないことに気づきました。
恐る恐るレースのついたピンク色のスカートをたくしあげると、そこには何の傷もついていませんでした。

女の子が手をついて立ち上がると、蝶はみんな消えてしまい、その代わりに空の遠くからしゃぼん玉が漂い始めました。
女の子ははしゃぎながら、しゃぼん玉を指でつついてぱちんぱちんと割っていきました。

女の子はお母さんやお父さんのことは少しずつ忘れていきます。涙は乾き、空はまっすぐ見えるようになっていきました。

もう、にじんでぐらぐらとした世界を見る必要はなくなったのです。永遠に。

8:びび☆:2018/06/14(木) 11:29

しばらく遊んで疲れてきた女の子は、草むらの上にぱさりと倒れ込みました。
青い空に白い雲、優しい太陽。
少しずつ瞼が閉じていき…
どのくらいが経ったでしょうか…。目を開けると
女の子よりもずっと年上くらいの女の人が見えました。
女の人は少し古びて茶色くなりかけたセーラー服を着て、ふらふらとあちこちを歩き回っていました。そして、地面に寝そべる女の子を見ました。
「…なんだよこのガキ。」女の人は確かにそう言いました。
女の子にはガキの意味がわからず、自分の名前ことかな、と考えました。
「わたしぷりん!」
「は?何言ってんの……?」

女の人は困惑した。ぷりんという何かのキャラクターになりきってるのか、ぷりんが好きなのか、それとも…。女の人は、色々考えて、とりあえず子供なんだから優しく対応してあげようと思った。
「あなた、おなまえは?」
「ぷりん!」
「えっ?」
「ぷりん!」さらに困惑を深めていく女の人。そして、ある結論に至った。
この子の名前は、ぷりんなのだろう。俗に言うキラキラネームか、可哀想だな、漢字はどうやって書くつもりなんだろうと思い、彼女は自分の名前をぷりんだという女の子を見つめた。
「そう、ぷりんちゃん。ぷりんちゃん、どこから来たの?」
「う〜ん、ぷりんね」
「ぷりんお布団から来た!」
「…は?」

9:びび☆(朱莉◆qo:2018/06/14(木) 11:37

ここで一息。キャラクター紹介といきます。
女の子…本名高橋舞蓮(たかはしぷりん)
布団にぐるぐる巻きになってくるまっていた結果窒息死。
典型的な5才児の性格をしていて、無邪気。
女の人…本名日村朱瑠(ひむらあかる)
死因は後に明かされます。中学3年生。口が悪く、幼児が結構苦手。

10:朱莉♯:2018/06/17(日) 15:01

朱瑠は動揺した。布団でどうやって死ぬことができるのか?
この子は、夢を見ているのか?それとも、本当に…。
くりくりとした目の舞蓮を訝しんでみつめる。嘘をついているわけではなさそうだ。
やはりこの子は布団の中で死んだのか…

『あーー、めんどいわお前』
『みんな楽になるんだからさ、さっさと死んでくれない?』

暫く沈黙が流れる。
きっとこの小さい子は、みんなに愛されていたのだろうな…
愛されているうちに死ぬことができて良かったねと、
言いたくなった。
「お姉ちゃん、ママとパパはどこにいるか知ってる?」
沈黙をやぶったのは舞蓮だった。
「あー、知らないなー」

『あんたはなんでそんなにできないの!』
思い出したくもない母の声。
父親のところに行けば、もっとマシな生活できたかな。
青空をみつめながら、小学生の時に頭を撫でてくれた父の顔を思い出す。
この小さな子は、母親にも父親にも愛されて幸せだったんだろうな…。わかってはいるんだけど、ニコニコした顔をした彼女を見ると、苦しんで死んだ自分が、ばかばかしく思えてくる。
妙に、いらだちを覚えるのだ。
「あなたはもうお母さんにもお父さんにも会えないよ」
ためらいもなく、朱瑠は言った。

11:朱莉♯:2018/06/17(日) 15:28

「どうして?ママとパパに会いたいよ」
舞蓮は表情を変えずに言った。
この子は悪くない。そんなことわかってる。
わかってるけど、悔しい。
どうしてそんなかんたんに死ぬことができるの?
私もこんな人生になるくらいなら死にたかった。
あんたみたいに布団かぶったまま、あったかいまま死にたかった。椅子投げられて、痛い思いもしたくなかった。殴られて笑われたくもなかった…
私はいったいなんのために死んだの?

「お迎えの時間だよ。おしゃべりは終わったかい?」
「!」
気づけば後ろに初老くらいの男性がいる。ベレー帽にタキシード。茶色い杖をついている。
「おじちゃん、だあれ?」
「おじちゃんはね、おくりびとって言うんだよ」
「おくりびと…?なぁにそれ?」
「おちびちゃんと、あのお嬢さんが幸せに暮らせるところに連れていく人だよ。さあ、おいで」
おくりびとを名乗るおじさんは、私と小さい子を呼び寄せた。
「今まで辛かったろう…もう大丈夫だよ。」
「まって!」止めたのは舞蓮だった。
「ママとパパも連れてきて!」
「!!」
「ほう、そうか。…悪いねぇ…。おじちゃん力がないからそういうことはできないんだよ。相当、苦しかったんだね」
おじさんは、困ったように笑っていた。でも、おじさんはどこか、何か勘違いしているようにみえた。
「ママとパパも幸せにしてほしいの!」
「……」おじさんは目を丸くした。なるほど、おじさんはぷりんという子が、自分の家族に対して恨みを持っていると思っていたのだろうが、それは全く持って違う。
私と違って、この子は、人を恨めるほど不幸に育ったわけではない。小さい子だし、人を恨む感情すら、持ってはいないだろう。この子は、家庭に恵まれながら、偶然死んだだけだと、朱瑠は思い込んでいた。
でも、勘違いしていたのは朱瑠も同じだったのだ。
「ママとパパ、いつも苦しそうな顔してるの…ママもパパも幸せにしてほしいんだと思う」
「そうかいそうかい、ぷりんちゃんは優しいね。でも、君も苦しかったろう。……おとうさんにぶたれたところはまだ痛むかい?よければこのおじちゃんが、治してあげるよ」
「ううん、痛くないよ。」
ぶたれたところ…?
朱瑠は気づいた。ニュースで見た。この子と同じ子ではないが、5才位の子が虐待を受けて殺されたことを。

12:朱莉♯:2018/06/17(日) 15:57

この子も、そうだったのだ。
朱瑠は、自分がどれほど自分だけのことを考えていたか、他人の苦しみや悲しみを思いやることができていなかったかを思い知った。にこにこして幸せそうにしても、実際はわからないんだ。辛い思いをしている人はいるんだ…。
「おじちゃん、パパとママは幸せになれるかな?」
「うぅーん、それはわからないね。幸せになれるかもしれないし、なれないかもしれない。世の中わからないもんだよ。でも、ぷりんちゃんはこれから絶対に幸せだよ。ずっと、幸せだよ。」
「朱瑠ちゃんももちろん、幸せになれるよ。」
急に振られてどきりとした。
「そうですか。」
「今まで辛かったろう。体も汚れただろうし、死の世界に行ったら地図を渡すよ。温泉に行くと、君の辛かったことや悲しかったことも、みんな流せるから、1度行ってみるといい。」
おじさんは、優しい目をしていた。瞳の輝きはすでに失われていたが、もしずっとみつめていたなら時間が経っていることを忘れてしまうだろう。それほどまでに、深かった。
「ありがとうございます。」
「…さてと。そろそろおじちゃんと一緒に行こうか。それとも、まだ、ここにいたい?」
「ぷりん…パパとママのところに行きたい…それから、パパとママにごめんなさいって言いたい……」
「………」
「………」虐待を受けてなお、父と母を愛している彼女に、私もおじさんも言葉を失った。
「…じゃあ、約束だねぷりんちゃん。」おじさんは、細くてシワが少しある手で舞蓮の頭を撫でる。
「今から行くところで、いっぱい遊んでいっぱいいろんなことするんだ。ともだちとおしゃべりしたりままごとをしたり、ひとりあそびをしたり、なんでもいい。そうしていたら、きみのおとうさんもおかあさんも、きっとぷりんのところに来てくれるよ。」
「それでいいの?良い子にしなくてもいいの?」
「いいんだよぷりんちゃん。いいんだよ………おじちゃん弱いから、ぷりんちゃんのこと助けられなかった……本当にすまなかった…………」おじさんはたしかに笑っていたが、舞蓮を撫でる手は小刻みに震えていた。2人の顔は、どこか似ていた。
「そろそろ、行こうか。」
「うん!」
「はい」
「さあ、目を閉じて。開けちゃだめだよ……」

3人の姿が消えた。
暖かい風が運ばれ、草花がそよそよとなびく。
広くて青い、ふわふわした雲が漂う空に、地面を照らす太陽。
ある日世界のどこかで消えた命。まるでわた毛のように儚い命たちが、今日もあの世への通り道をゆく。
第1送 終了

13:朱莉♯:2018/06/17(日) 16:03

第1送終了。おくりびとの紹介です。
浜田和俊
会社で過重労働を強いられ、同僚からもいじめを受け、中学生だった一人息子を残し自殺。
高橋舞蓮と何らかの関係を持っているように見えるが、その関係について言及する必要性はないだろう。


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