いじめの芽を摘んでくれた。

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1:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:25

いじめの話を投稿します。

救ってくれた話です。

2:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:32

いつでも下を向いて歩いていた。
暗い影がいつでも僕に憑きまとっていた。
いつからか,モノクロの世界に飛び込んでしまったのだろうか。
天然色(カラー)の世界に戻れるのだろうか。



そんな日々から連れ出してくれた。
彼女は勇者だ。






僕は,小学校を卒業すると同時に引っ越した。
父の仕事の都合だった。
中学校の入学式はどこをみても知らない人。
孤独だった。
この時かもしれない,色が見えなくなったのは。
もちろん,制服が学ランで黒だし,その下のワイシャツも白,下着シャツも白,パンツは黒のボクサーパンツ,靴下も上履きも白。
そんなことが理由なんじゃない。
世界の全てがモノクロになってしまったんだ。

なんとなく,聞こえてくる会話を聞いていると周りはみんな,同じ小学校の児童だったようだ。
それと同時に,「あの子誰?」とか「転校生かな?」という声があちらこちらから聞こえてくる。

担任が入ってくる。
入学式の話をしていた。
僕は孤独で,上の空だった。
いつのまにか流されるままに時は過ぎ,入学式が終わって家に帰っていた。
明日も学校。
友達もいないのに…。
学校へ行くのが憂鬱だった。
明日は給食もなく,半日で終わるからまだ,気楽だった。
明日はオリエンテーションと掃除をして帰るだけだ。

3:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:33

朝,誰にも会いたくなかった僕は早く登校して机に突っ伏した。
隣の生徒が登校してもそのままだった。
お調子者らしき男子生徒が高いテンションで突っついてきた。
雑にあしらった。
気に触れてしまったのか,不機嫌そうだった。

オリエンテーション,ホームルーム。
自己紹介をした時,「やっぱ,転校生じゃん!」という声があちらこちらで起こった。

ホームルームが終わると,担任が僕を呼んだ。
転校生だからそれまで買えていなかった教科書,体操着,その他の用具を受け取った。

次の集会が終わったら,掃除をして帰れる。

それまでの辛抱だった。

4:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:33

終わった。
あとは掃除をして帰るだけ。
掃除のためには,体操着に着替え、体操着のまま下校するのがこの学校の決まりである。

「それでは着替えをして,掃除をしてください。分担は黒板に貼っていますので各自確認してください。終わったら,担当の先生に報告して速やかに下校すること。」
と担任が言って教室を出ていった。

僕は疑問だった。
着替えをするのに,更衣室はどこなのか指示されていない。
まさか,全員,下着姿になって着替えるのか。
いや,そんなはずは…

と思っていると,目の前の女子が制服を脱ぎ始めた。
え、と思って僕は目を逸らすと,
その女子は制服の下に体操着を着ていた。
周りを見ると,みんな自席で制服を脱いで体操着になっていた。
まさか,制服の下に体操着を着ているなんて思ってもみなかった。
そもそも僕は,さっきもらったばっかりなんだ。

でも,着替えるには制服を脱がないといけない。
でも,そのためにはパンツが見えてしまう。
そんなことはできない。
着替えのために,体操着を持ってトイレへ行こうとした。

すると,さっきのお調子者らしき男子に呼び止められた。
「どこに行くんだい?着替えて掃除だよ」
「あ,ちょっとトイレに」
「トイレに行くのに,体操着はいらないんじゃない?」
「あ、いや、下に体操着着てなくて,下着が……」
「そんなの関係ないだろ。ここで着替えるんだよ。トイレは用を足すところだろう?しかも,トイレも掃除をするんだから邪魔になるよ」

言い返せなかった。
女子もいる中で着替えざるを得なかった。
屈辱的だった。
みんな,体操着を着ているのに。
僕だけ下着を見られてしまうんだ。

でも,意を決してワイシャツを脱ぐ。
白の下着になった。
タンクトップの下着だから,脇毛も見える。
女子に下着姿が見られるなんて,想像もしてなかった。
隣の女子が離れた。
急いで体操着を着る。

問題は次。ズボンを脱がなくてはならない。
パンツ一枚になるんだ。
女子は離れて目を逸らし、男子はガン見してる。
逃げられなかった。
どうしようもなかった。
体操着と下着を限界まで伸ばし,見えないようにした。
ベルトを緩め,チャックを下ろした。
幸い,黒のボクサーパンツだ。
目立ちづらい。
周りを気にしながらズボンを下ろした。前は体操着のズボンでガードして見えないように……

と,その時だった。
後ろから男子が忍び寄ってきて両手を押さえられた。
隠そうとして引っ張っていたシャツが捲れ上がる。
パンツが見える。
必死にパンツを隠そうとした。
それも出来なかった。
パンツは丸出しになった。
「やめて!!」と必死にいった。
その声が周りの注意を引いて、こっちを見てしまった。
隣のクラスの生徒もいた。
僕は,多くの人の前で恥ずかしい姿を晒してしまったんだ。
泣いてしまった。
悔しかった。

さらに,孤独になった。
学校へ行きたくなくなった。
でも,家に帰れば,「楽しかったよ!」
というしかない。

気の休まる場所は僕にはないんだ。

5:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:39

次の日,僕はもう恥ずかしい姿を晒すまいと制服の下に体操着を着た。
母親からは,なんで下に体操着なんかきるんだい?
と聞かれたが無視をした。

休み時間に,あの男子からトイレへ呼び出された。
逆らえず付いていくと,
「制服脱げよ。」
「え,やだよ」
「逆らったらどうなるかわかってるよな?」
その言葉が全てだった。
また,やられる。
逆らえなかった。制服を脱いで体操着になった。
体操着を着ているので躊躇いはなかった。
「やっぱり着てくるんだな,体操着」
「もう下着みせたくないから」
「脱げよ」
「やだよ」
「選べ。掃除の時,パンツ晒すか,ここでもっと恥ずかしい姿を晒すか。カメラあるんだぜ?」
ポケットからカメラが出てきた。
校則違反だ。
こんなの持ってくるなんて。
でも,これを先生に言えばもっと強い報復があるに違いない。
言えなかった。
「ごめん。裸は無理。下着になるよ」
体操着を脱いだ。
そして,制服を着た。
「お前,学ランは着ていくなよ?」
肌寒いが,まあ,裸を撮られるよりマシだったので学ランは着なかった。

6:健人(たけと):2021/02/12(金) 09:44

教室に戻って,授業を受けた。
後ろの男子に声をかけられた。
「お前,今日も下に体操着着てないのか?トイレでもいいから着てこいよ。ワイシャツから下着の形が丸出しだぞ。」
あの男子の狙いがわかった。
タンクトップの下着が透けやすい,ってことがわかっていたのかもしれない。
後ろの席の男子に
「ありがとう。でも,着られないんだ」
とだけ言って,休み時間は席に突っ伏した。

掃除の時間になった。
今日もパンツ晒すしかなかった。
端でこっそりと着替えた。
隠しきれていなかった。
周りから,「またパンツになってる」
「恥ずかしくないのかな?」
との声も聞こえてきた。
聞こえてきた声の中には,
「パンツ見せたいんじゃない?」という
心ない声もあった。

味方はどこにもいない。

7:健人(たけと):2021/02/12(金) 12:31

次の日。
この日は,身体測定がある日だ。
朝から体操着になり,午前中いっぱい,身体測定を行うことになっていた。
朝のホームルームで,担任から,ホームルームが終わったらすぐに着替えるように言われた。
僕はあの男子からの言いなりになって,また体操着を下に着ることはしなかった。
また,パンツを見られる,とも思ってはいたが,内心慣れてしまっている部分もあった。
下着はいつも同じものだし,パンツも黒かグレー。
目立たないものだから,恥ずかしさもそこまでなかったけれど,やはり自分だけ下着を晒すことには抵抗はあった。
その日は朝から担任がクラスに連れ沿って移動させるので,着替えの時に担任もいた。みんな体操着を着てきているから大丈夫だろう,という考えもあったと思う。

でも,僕は下は下着だけだ。
僕は恥ずかしさをよそに制服を脱ぎ,下着姿になった。
担任も目を疑ったのだろう。
二度見された。
初めて,下着姿を見られてしまったことは,恥じらいもあったが,もはや気にも留めなかった。
急いでパンツを見られないようにズボンを履き替えた。

担任も,気づいたようで教室を出て廊下で待っていた。

身体測定は何事もなく終わった。

8:健人(たけと):2021/02/12(金) 12:40

身体測定が終わったあとは,午後の授業に備え,制服に着替える。
それまでは制服から体操着に着替えることはあっても,体操着から制服に着替えることはなかったので,多少は困惑したが,例の男子に絡まれるのは面倒だったので,体操着は下に着なかった。

午後には英語と数学の授業があり,オリエンテーション的なことをした。

帰りのホームルームをやり,掃除のために着替えの時間になった。
着替えようとしたその時,担任から僕は呼び出された。

個室に呼び出され,椅子に座らされた。
担任の女性教諭と2人だったので緊張した。
担任から発された言葉は衝撃的なものだった。
「制服を脱いでご覧なさい」
担任は,僕が下に体操着を着ていないことを知っているはずだ。なのになぜだ。
「できません」
「なぜですか」
「嫌だからです」
「なぜ嫌なのですか。周りをご覧なさい,普通にみんながいる場所で着替えているでしょう。なぜそれができないの。下に体操着だって着ているでしょう」
「嫌です」
「なぜですか」
「先生に下着姿は見られたくありません。下着しか着ていないので」
「なぜ体操着を着ていないのですか」
「そんなの校則にないじゃないですか」
「そうかもしれません。でも,周りはみんな、下に着ているでしょう。着替えの時に恥ずかしくないのですか」
「恥ずかしいです。下着は見られたくないですし」
「じゃあなんで着ないんですか」
「僕にだって理由があるんです!」
泣いてしまった。いつのまにか,その部屋を飛び出していた。
泣き顔を晒していた。掃除をしなければならなかった。だから,泣き顔のまま教室に戻り,パンツを晒しながら着替えることになった。

9:健人(たけと):2021/02/12(金) 12:47

次の日。
僕はもう篭りたくなった。
1人で居たくなった。
でも,親に心配をかけるわけにはいかなかった。
もう,どうでも良くなった。
日に日に変な目で見られるようになる。
どうしようもない。
休み時間は机に臥しているだけだ。

1時間目から体育だった。
朝のホームルームが終わると,体操着に着替える。
着替えの時,僕の周りには女子はいなくなった。
パンツを見えてしまうのが嫌なのだろう。
でも,隣の席の女子だけは動かなかった。
そして,ズボンに手にかけた時,彼女は僕にこう声をかけた。

「パンツ見せて恥ずかしくないの。嫌でしょう。これを使って隠したら」
大きめのタオルだった。いや,いいよと僕がいうと,いいから,と言って,僕の前でタオルを広げた。
「こうやって隠してるから早く着替えな。時間になっちゃうよ」
僕は軽くありがとうと言って,急いでズボンを脱ぎ,体操着を履いた。
体育が終わった後も、同じようにしてくれた。

感謝ははっきりと伝えられていなかったけれど,やっと,味方がいるという感覚が芽生えた。

10:健人(たけと):2021/02/12(金) 12:51

彼女に聞かれた。
「なんで体操着着てこないの?」
僕は答えられなかった。黙り込んだ。
「やっぱりあいつでしょう。小学校の頃もそうだったの。そのせいでやられた子が不登校になって転校しちゃって。その子はプールの着替えの時にタオルを取られて……。それ以上は言わないでおくわ。気にしないで。いつまでもキミが我慢する必要はないよ。いつでもわたしに相談しな」

本当に信じていいのか怪訝そうな顔つきをしてしまった。
でも,とりあえずありがとうとだけは言った。


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