牢固闘技場

ここで戦え。

とても強硬な闘技場ですね。
刹那…僕は嘱目し詠嘆した。
ここで繰り広げられる殺し合いや罪人の処刑、誅戮は素敵な披露宴になるでしょう。

輓近、この世界では禍々しい震撼がずっと続いている。
どのような因果で禍根は災いへと紡がれるのでしょう。
刹那…僕は疑念を抱き、鑑みる。

旧来より伝わりし天賦の書にて、災いの源は悪魔より来たるべき紛擾と叙述されています。
即ちこれは、悪魔が諸悪の根源であるという意味でしょう。
刹那…僕は驚愕を募らせ、狂乱の心を弾ませた。

ならば悪魔を殺してしまえ

それは無理でしょう。
なぜならば、すでに、悪魔はヒトの弱き心に佇んでいるからです。
ゆえに無理に激烈を与えて、悪魔がその弱き心を発端として人間そのもの支配…憑依するというのは決して、珍しいことではありません。
そして、この世界に於いて、七つの大罪の悪魔が二つ停滞しています。
一つ目は強欲の悪魔。二つ目は色欲の悪魔。
この二つを殺傷するというのには、多大なる犠牲を配慮したうえで討伐を臨まなければなりません。
刹那…僕はあなたにとっての冒涜的な御噺を紡ぐ。

私は虚偽の悪魔です。
後は孤独の悪魔とかもいましたよ。

すなわち、あなたは尋常の悪魔なんですね。
刹那、僕は婉曲を短絡的に言い換える。

皮を剥いでにくを引き千切って内臓を抉り出して骨をバラせば皆悪魔だよ。

宅急便さん、それでは人間です。
悪魔は人間の心にて残虐性を追求するモノです。
刹那…僕は真実を通告する。

人間自体残虐だと思いますが……
刹那、僕はそう告げる。

宅急便さん、あなたはどちらの本質を告知しているのですか？
肉体的残虐性ですか？それとも心情的残虐性ですか？
刹那、僕は質疑を問いかける。

心情的な残虐性です。
普通、人間は自分のてを汚そうとは思いませんから。
刹那、僕は笑ってそう答える。

そういえば刹那は七十五分の一秒であってますよね？

冷酷…あるいは冷血ともいえますね。
ですが、人間はその残虐性を内に秘め、露呈することはあまりないでしょう。
その残虐性を大幅に顕とさせるのが悪魔の役割です。
刹那…僕は意欲した態度で貫禄する。

宅急便さん、よく知っていますね。
刹那…僕は感心する。

僕と契約して魔法少女になってよ!

ですが肉体を捨て力を得ればその人間の答えも変わってくるのでは?
刹那、僕はキメ顔でそう言った

ウッホ、いい男。

肉体を捨てることなど人間には無理難題です。
刹那、僕は真実を告知した。

蛆の集いだな。

アスモデウス、お前も還るぞ
阿鼻叫喚へなぁ。

強欲さん、いたのですね。お久しぶりです。
強欲さんは還るようですが、僕は煉獄へは還りませんよ。
なぜならば、大罪は浄化することはおろか、弾劾や咎めをその身に受けたとしても、七つの大罪の悪魔である以上、煉獄では永久という時を不浄の罪を浄化することだけに駆使されることでしょう。
なんという不合理。
罪を抹消することは不可能であるというのに終わりなき罪滅ぼしなど無意味であり、合理性に欠けています。
刹那…僕は還らないと断定的に告げ、合理的な理屈をマモンに示す。

色欲の悪魔…嫉妬の悪魔レヴィアタンと傲慢の悪魔ルシファーは何処かしら？
お茶会でも開こうと思うのだけれど。

匿名さん、レヴィアタンさんの行方や末路は分かりません。
今節、ルシファーさんは夥多たる悪魔を率いる堕天の王として地獄より、神への叛逆を再び、企てているそうです。
匿名さん、あなたは一体何者なんです？
クリスチャン？それとも祓魔師？
はたまた、熾天使でありますか？
刹那…僕は不可思議なる疑念を問い出す。

やだわ、私はそんなに良い者じゃないわよ…ま、暇だから教えてあげるわ。退屈だったもの。

…私は怠惰の悪魔、ベルフェゴールよ。貴方は聞いた事ないかしら？
まあ、ずっと顔を出さないから分からないでしょうけど…
あと、マモンは元気？良く私の事をババアだとか言っているのだけれど…

黙れババァ!女はなぁ〜初潮迎えたらババァなんだよ!

おっと失礼しましたご婦人、私はマモンさんと懇意にさせていただいていた運び屋です。以後お見知りおきを。

やれやれ…若くて美しい私に何を言うのよ…
宅急便と言ったわね？以後、覚えておくわ。

怠惰の悪魔…ですか。
伝説では、神の被造物の欠陥を解き明かした悪魔ベルフェゴール。
素晴らしいですね。
…やはり、ベルフェゴールさんと強欲さんとは関係していたのですね。
強欲さんは今、大罪の深みに囚われています。
そして無意味な行いを成そうと混迷しているところです。
刹那…僕は真実を明言する。

関係って言っても、そんなに深くないわよ？それより、あの生意気な小僧が大罪の深みに囚われているってどういう事かしら？

僕も真相は分かりませんが、強欲さんはある日を境に、己の大罪を拒むようになった。
悪魔として愚者として、罪悪と厭悪を抱いたあかつきには呪わざる欲望が己自身を蝕んでゆく。
つまり、強欲さんは贖罪を求めた結果、本能である大罪がそれを拒否しようと強欲を強調しているのですよ。
悪魔の誇り…とも言えますね。

ふうん…あの小僧、何しでかしてんのよ…
私は自分の大罪、気に入ってるわよ。怠惰に生き続ける、面倒事がないもの。

全く次々と強者が消えてゆくのは………素晴らしい!
やはり我々愚者はこうでなくてはつまらない、無秩序という混沌のなかで最後に立っていられるものは誰だろうなぁ〜〜

さあね…私は無駄な争いなんて願い下げだもの。
立っていられるいないの問題じゃないわ。

時にベルフェゴールさん、なぜ人間の世界へと訪れたのです？
あなたは大の人間嫌いと逸話で継がれてきましたが、何か目的でもあるのですか？
刹那、僕は疑念を解き放った。

なに、暇だったんで能力者を見に来ただけよ…あまり気にしなくて良いわよ？

ベルフェゴールさん、あなたの目にとまるような異能力者は存在しましたか？

さあ…正直、目にとまった異能力者はゼロと言っても過言でもないわ。
ただ…『狐都』という能力者……多重人格らしいけれど、いったい何なのかしらね？

ベルフェゴールさんのおっしゃる通り、狐都さんは多重人格者です。
また、これまでの経緯を望遠する限り、狐都さんは主人格であろうと推測ができるユキさんという肉体で共存をしているようです。
ちなみに、ユキさんには、猛威なほどの独善性をほこる強欲さんを跪拝させるなど、凄まじい力を有しています。

そう…あのマモンがね…ま、でも特別気にする程じゃないわね。
あとアスモデウス、同じ立場にあるんだから、敬語じゃなくても良いのよ？それが貴方の性格ならば仕方ないけれど…

皆主張を二転三転させすぎですよ、私はユキさんみたいな正義気取ってる偽善者には虫唾が走るんですよね。

宅急便さん、なぜユキさんが偽善者であると慮るのでしょう。