ヴェローナ街(近郊には円形闘技場)

コンゴ共和国からバチカン市国に掛けて多くの人々の罪過をわたくしが赦令と共に、創造主様の誓約とお望みに基づいて、断罪致しましたの。
あぁ、創造主様…あなた様の御導きを賜ることこそに、また、あなた様の寵愛が、わたくしを幸で満たす度に、わたくしは、胸が張り裂けそうになるのですの。
だから……わたくしは創造主様の御心通りに、使命を全うさせますの…！！
(赤く艶めく鎖を四方八方に、靡かせ、街中の人々の腹部に巻きつける。そしてそのまま腹部を締め付け、断裂させる。
あたりには、血と臓器が飛び散り、夜の街には悲鳴と恐怖がもたらされる。)

こんにちはー。

はーい、ストップ。街の人になにしてるのー？

あはははは！創造主様…！ご覧になってくださいまし。わたくしは、あなた様からの使命を怠ることなく、全うしているのですのよ？
あの時の出来事は、天界から堕としたのではなく、わたくしを地上に派遣したのですのよね？そう、わたくしは、創造主様によって認められた存在…、
だから、わたくしはもっと仕事に勤しむべきですの！
(鎖を四、五人の人間たちに巻きつけ、そのまま、締め付けるように、圧迫してゆく、そして、一人、二人と、徐々に上半身を断裂してゆく)

ちょっと冷静になったらどうかなー？

わたくしは、創造主様に代わり、罪への糾弾を執行し、愛しき人間たちに赦しを下しているのですの。

わたくしはいつだって冷静ですの。
(鎖を引っ張り、生々しい破裂音を立てながらサリエルの背後に佇む人間がまた一人死んでゆく)

大好きな人間を殺しちゃったら、意味ないよねー。想像主様って誰なのー？

ダメだよー。一旦止まってねー。

(開眼された突如、渦巻く氷の壁によって町中の人間が保護される。)

創造主様は創造主様ですわ。
…それに、愛しきものが犯した罪をわたくしは見逃せるはずがないですの、わたくしは、愛しきものたちの為に、空蝉に殉じて、輪廻の淵に昇天させているだけですの。

無駄ですの。(鎖を巧妙に扱い、輪っかをいくつも作る、そして、その輪っかより、百、二百、否、夥多たる人の腕、目、口、足などが、氷の壁へと同化する。
そして、その氷の壁が、人為的に砕け散り、多くの人々の命を奪う)

残念だねー、僕の能力ってただ単に氷ってわけじゃないんだよねー…

(十字架を握り、天に向かって祈りを捧げる。すると、辺りを淡い光が包み、虐殺された人々の命が芽吹く。)

わたくしの使命はきちんと全うさせなければならない天命ですの。
ですから、わたくしは、輪廻の淵に空蝉を還してあげ、堕落する前に、わたくしが、彼ら、彼女らを、救済する責務があるのです、
これも創造主様の勅令、愛、わたくしへの博愛と寵愛…。
わたくしは、認められているのですの、だからこうして一生懸命に、勤勉に主様に尽くしているのですわ。

人々の中にはさー、まだ生きたい、やり残したことがある。そういう人もいるんじゃないかなー。輪廻の輪を潜るということは、運命の巡り合い。それ以外の方法じゃ、ダメなんだよー。

救済はいいことだよー。でも僕は、生きてる人を救済する君が見たい。

あなたは禁忌ですわ。
輪廻に還った空蝉の尊き命をあなたは、無作為に、ここに戻した、すなわち、彼ら、彼女らの、魂は跡形もなく熄滅…、
あぁ、なんてかわいそうな人間…哀れな人間…(一人二人と、蘇った人間たちが、輪廻に還るために知と理をなくし、互いに殺し合いを始める)