純悪の救済者

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1:ハイド:2021/05/13(木) 08:04


──結局のところ、正義ってのは──

コインに裏と表があるように、人間の言の葉に本音と建前があるように、残酷なまでに対をなす。

『──純悪にもなりうるものさ』

2:ハイド:2021/05/13(木) 08:07

俺はなんの変哲もないごく平凡な家庭に生まれた。王都から離れた集落で、青空と雲の下、藁葺き屋根と土の香りに包まれて、なに不自由ない生活がそこには広がっていた。そんな俺には幼い頃からの夢があった。それはヒーローになることだった。

3:ハイド:2021/05/13(木) 08:09

泣いている幼子がいれば手を差し伸べ、萎れた花があれば水をやり、生活もままならない老体を気遣う。俺は村の英雄になりたかった。誰かを救うことが天命だとも幼心に思ったものだ。しかし、その淡い夢も長くは続かなかった。村には奴がいたからだ。

4:ハイド:2021/05/13(木) 08:12

奴はいつも俺の先を駆けていった。俺が気づかない小さな穴でさえも目を通し、取りこぼさないよう善をまっとうする。だからいつも村の連中に慕われていた。奴は生まれながらのヒーローなのだと気づいた。それと同時に、俺の心の中にはあるひとつの感情が生まれる。

それが純悪の種だと自覚したのは、ある晴れた日のことだった。


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