>>938
「え、でも、それ 上杉君に迷惑なんじゃ……」
立花らしい、遠慮がちな返答が返ってきた。
迷惑なわけがない。
否定しようとするが、いい言葉が見つからない。
「……別に、息抜きも必要だろ」
結局俺は ツン、と横を向いて、可愛くない言葉を吐いただけだった。
黒木とか、他の奴ならもっと上手く言えたんだろうが。
「う、上杉君がいいんなら、行きたいな……」
頬を赤らめて言ってくる立花は、とてつもなく愛おしい。
……
可憐な体を引き寄せて そっと包んでやりたい。
今すぐにでも、この胸の中の想いをぶちまけたいと思った。
そしたら、お前はどんな反応をするだろう……
確かめてみたくて口を開きかける。
しかし、理性によってその口は 閉じられた。
今は、立花にとって KZが一番なんだ。
その気持ちに付け入る隙なんて微塵もない。
だから、この想いには蓋をする。
それが、KZ内での暗黙の了解。
……
「んじゃ、決まりな。明日18:00に、お前の家に迎えに行くから」
「え、家まで来なくっていいよ。自分で行けるから」
慌てて首を振ってくる。
夜道、危ねぇから言ってんだろうが
……こいつ、絶対自覚ねぇよな。
「別に……俺が行くっつてんだからいいだろ。
それとも、迷惑なのか?」
「う、ううん。全然。
むしろ、嬉しいっていうか……」
「!」
立花の一言で、心拍数が一気に上がる。
多分立花は、深く意味は考えてないだろう。
でも、俺は顔はどんどん熱くなっていく。
落ち着け……
いつも通り接するんだ……
「そんじゃ、明日迎えに行くから」
それだけ伝えて、俺は足早にその場を去った。
《続》