『忘れられた思い出は知っている』
2,どうしたんだろう【彩side】
はぁ…。
今日も結局、KZの集合かからなかったな…。
最近、また停滞気味なんだよね。
そんなことを考えていると。
「うわ、KZだ!」「やった、嬉しい。会えた!」「やっぱりカッコイイ…!」
背後が盛り上がり始めた。
『KZ』という単語に、思わず振り返ってしまう。
…若武と上杉君、そして黒木君。
騒がれているのがその3人だと理解したときには、既に私の足は早くなっていた。
若武と目があった気がするけど、そんなのはいい。
見つかる前に、さっさと退散しなければ。
足を止めて振り返っている塾生たちの合間を縫って塾を出る。
そこでやっと、チラリとだけ後ろを見ても追いかけて来ている気配はしなかった。
ホッと一息をつき、早めていた足を少し緩める。
…若武たち、私に用があったんじゃないよね?
うん、ないよね。そうだよ、小塚君いなかったし。
あーもう考えるのやめ、大丈夫だもん。
色々と考えながら歩いていると、いつの間にか駅に着いていた。
__ドン!
「…あ、ごめんなさい!」
ぼうっと歩いていたら、誰かにぶつかってしまったらしい。
慌てて顔を上げると、同い年くらいの女の子が立っていた。
その子は長い前髪で目を隠していたけれど、その視線は私の顔に向いていた。
「え、あの…何か?」
耐えられずにそう尋ねると、その女の子は落としていた大きな荷物を掴み、何かに怯えるかのように走り去って行った。
どうしたんだろう、あの子。
…私、何かしたっけ?
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小説、更新!
良かったら読んでね。