プロローグ
もうすぐアラフォー、around 40なんて呼ばれるようになる私だが、未だに色濃く残っている記憶がある。
――母が亡くなった日のことだ。
当時まだ中学1年生。
ついさっき小学校を卒業したような私にとって、その事実は衝撃的だった。
昔は――いや、今でもお昼ご飯に大量のおにぎりをもぐもぐしているような楽天家の私だが、その時ばかりは……号泣したのを覚えている。
般若心経か、それとも他の宗派だったのか……そこら辺はよく覚えていないけど、とにかく難しいお経が響く葬式会場、
――には全く近づかず、トイレの隅で泣きながらおばあちゃんが作ってくれたおにぎりをもぐもぐしていた。
……あれ? 結局もぐもぐしてたね、今思い出してみると。
――ま、それは置いといて。
そんな訳で母を亡くし、生まれる前に父を亡くしていた私は父方の祖母の家にお世話になることになった。
中学校もその時に転校して、ただでさえ周囲から浮いていた私は本格的に人から避けられるようになった。
……でも、寂しくはなかった。
だって、何の因果か私には多くの『モノ』が語りかけてくれたから。
これは、私に語りかけてくれたモノ達――白(Tukumo)の物語。
人ならぬ者――モノが語る、『モノ語り』
こんにちは、猫又(ねこまた)と申します。
前に、というかさっきまでrumiaという名前で『〜このティッシュ水に流せます〜』という作品を書いていましたが、名前を打つのが面倒なので猫又に改名しました。
さて、この『白語り〜tukumogatari〜』は、前作『〜このティッシュ水に流せます〜』の続編、というよりあっちが番外編で、こっちが本編のようなものです。
(まぁ、もしかしたらこっちの方が早く終わってしまうかも知れませんがw)
ちなみにこの物語(モノ語り)は『〜このティッシュ水に流せます〜』を読んでいなくても、楽しめますが、できれば読んでいただけるとうれしいです。←露骨な誘導↓
http://ha10.net/test/read.cgi/novel/1392144914/l50
ちなみにどちらかというと短編集風ですがたまに長くなるので、たとえ『面白くない』『邪魔』
と言われようと小説版の方で書かせていただきます。←断言
もちろんコメントは大歓迎です。そして荒しは絶対にやめて下さい。
……では、スタート!
第一話 〜白(Tukumo)と凪ぎりて福を成す〜
「ねぇ……ここ分からないん、だけど……」
6月某日。神屋(こうや)東中学校。
「ねぇ! 分かんないんだけどっ!」
一学期、期末試験間近の学生が詰め込まれた3年2組の教室で、数学の授業が行われていた。
「ねぇねぇ! 聞いてる!?」
そんな試験前の緊張状態にある教室で……。
「ねぇ! ねぇ! ねぇっ!!」
とある女子学生が声を張り上げていた。
だが、すぐにその声は授業を担当していた女性教師によって打ち消される。
「いい加減にしなさいっ! 白凪さん。……授業中の私語は厳禁と、何度言ったら分かるんですか!?」
かすれた、もう言い飽きたとでも言いたげな教師の声に、しかし白凪(しらなぎ)と呼ばれた女子学生は首を傾げた。
「……? 分からないから、安田さんに尋ねてる……」
傾げながら、今まで話しかけていた安田という名字の気の弱い女子生徒を指差す白凪。
どうやらその指差した先にいる生徒が、涙ながらに震えていることには全く気付いていないようだった。
その光景を見て「はぁ……」とため息を吐く数学教師。
そう、彼女の――白凪千里(しらなぎちさと)の暴走は、なにも今日に限ったことではない。
テスト中に話し出す。
授業中、堂々とおにぎりを食べる。
急に歌を口ずさみ始める。
蝶がいたからと言って窓から外に出ようとする。
等々、挙げてゆけば限りないが、とにかくこの白凪という生徒は教師の間でも『不良よりもタチが悪い』『一回精神病院で精密検査を――』と言われるほどに危険視されているのだ。
「……とにかく、今は授業中ですから。……静かにして下さい」
これほど悪名高い生徒に対して、これ以上何を言っても無駄だ。
そう判断した女性教師は、とにかく授業を再開するために色々と言葉を飲み込んだ上で沈黙を促す。
「……なんで?」「なんででもです!!」
それが一切教育でないと言われようとも……。
この生徒はもう無理だと切り捨て、教師生徒共々それを無言で了解し、
千里を――白凪千里を置き去りにしたまま、今日も『いつも通り』授業は続けられた。
「はい。今日はここまで……」
「きりーつ」「れい」『ありがとうございました〜』
そうして教師が疲労困憊しながらもようやく授業が終わり、放課後となった。
それと同時に、まるで天敵に会った虫のようにそそくさと教室から出る教師と歌い出す白凪。
それらを見て顔をしかめる生徒達という奇妙な光景が生み出される。
「いま〜わたしのぉ〜。ねが〜いごとがぁ……。かなう〜な〜らば〜。つば〜さ〜が〜、ほしぃ〜い〜」
「さぁ帰ろ」と言いたげにカバンに教科書を詰め込みながら、歌を口ずさむ白凪千里。
それを見た女子生徒数名、おそらく先ほど千里に質問攻めにされていた安田の『関係者達』が、千里、そして安田に聞こえる声量で話し始めた。
「ほんっと、安田ってかわいそうだよね〜」
「あんな障害児(がいじ)の隣とか……私だったら即登校拒否するわw」
「いやホント、ちょっと『お願い』しただけで隣になってくれて助かったわ〜マジで」
「いやマジあんなのの横とかナイ……。多分あたしあそこに座ってたら、受かる高校も受からなくなってた。馬鹿がうつる前にアタマが狂うし〜」
『だよね〜』
そう言いながら笑う集団に、千里の隣に座っている安田はただ、ただ沈黙する。
ぎゅっと唇を噛みしめ、落ちそうになる涙を必死に押し戻す。
だが千里はその集団をちらっと見ただけで、また歌の続きを口ずさみながら教室を出た。
新作キターー!
次の作品はアラフォー女性が主人公なんですか?
それにしても、猫又さんが作る話は面白いですね。
今後はrumiaさんではなく、猫又さんっということで読んでもいいんでしょうか?
それはともかく、次も待ってます!頑張って下さい!
コメントありがとうございます、ミケさん。
rumia改め猫又になりましたので、猫又と呼んでくれて全然大丈夫です!
(打ちにくいですしね、rumia……)
プロローグのは主人公が昔のことを回想しているだけなので、
本編での主人公は美咲と同じ中学3年生です。
話としては、前作の本編(美咲中3)とエピローグ(美咲高1)の間(あいだ)の話になります。
あれから美咲はどうなったのか、紙代の行方とは?
そんなことを、前作のエピローグにも出てきた白凪千里を中心に書いて行こうと思ってますので、
よかったら、読んでいってくださいっ。では
続けます。
「このぉ〜、せかなにぃー。とりぃーのように〜。しぃろーいつーばさぁ〜。つけーてーくぅださぁ〜いぃ〜」
すると、教室がある南校舎から職員室のある北校舎へと渡る渡り廊下でさっき教室を出て行った女性教師が別の男性教師2人と話しているのが、窓越しで千里(ちさと)の目に入った。
「もう、あの子は無理ですよ……っ。どうにかして特別教室か別の施設に移動できないんですか……?」
教室を出た時と同じく、疲労困憊した様子でそう語る女性教師。
しかしそれを片方の男性教師が、何とも言えない表情で諭した(さとした)。
「そうか、君は今年この学校に来たんだったね……。僕達も何度か試みたんだけど、なにせあの子の保護者が頑な(かたくな)なんだ。
『うちの子はそんな人間じゃない』ってね……」
「そんな……ただでさえ登校拒否になりかけている子とか、親がクレームをつけに来る子までいるのに……何で……っ!」
「学校側だけであの子に精密検査を強制するわけにはいかないんだ……分かってくれ……」
そう言われて沈黙する女性教師。その苛立ちを汲み取ったのかもう片方の男性教師が小さく唸った。
「まったく、子も子なら、親も親だ……どっちもイカレてやがる……」
「おいっ! まだ生徒達が残ってるんだ。……そういう発言は控えた方がいい」
「……すまん。――まぁ、なにはともあれ僕達も親に掛け合ってみるから、あなたもできる限り対応して下さい」
「……はい、分かりました」
やり取りを終えた教師達が職員室へ帰って行く。
それを最後まで見届けた千里は、また歌の続きを口ずさみながら昇降口へと向かった。
「この大空にぃ……翼を広げ、飛んで行きた〜い〜よ〜」
なぜだろう……息が苦しい。
「……悲しみの無いぃ……自由な空へ〜」
心臓がうるさい。頭の中がうるさい。
「翼は、め……か、せぇ〜」
そう感じながらも千里は歌い続けた。
分からないから。……理由が分からないから。
何で苦しいのか、何でうるさいのか……何で『涙声』なのか、全く分からないから。
ただ歌った。せめてこの歌だけは『分からない』けど歌い切りたかった。
――なのに。
「ゆぅ〜き〜たぁい〜。……な〜んてな」
最後の最後で誰かに歌を横取りされてしまった。
なぜだか腹が立った千里はその犯人をきっと睨む。
するとその犯人は悪びれずに口を開いた。
「……よぉ白凪っ! 元気だったか?」
が、千里はそれを無視して前進する。
「和人……どいて、邪魔……」
「な、ちょ……会ったそばからその対応はねぇだろ、おい!」
それを引き止めようと、和人(かずと)と呼ばれた男子生徒は千里に手を伸ばすが――まるでそれを予知していたかのような速さで千里に手を払われた。
「待てって!」
それでも諦めずに千里に声をかける通りすがりの男子生徒こと、和人。すると予想外の返答が千里の口から出た。
「……キコエナイ」「……はぁあ?」
何が!? というか子供かっ!
そんな言葉が口からこぼれそうになった和人だったが、それよりも早く千里が口を開いた。
「人の歌取った人の声なんて、キコエナイ……っ」
ふてくされた表情で、不機嫌そうな声を発する千里。
それを見て大体のことを察した和人は「はぁ……」と大きなため息を吐いた後、短い髪を掻き回しながら言った。
「あぁ、はいはいそっか〜先に歌っちゃダメだったか〜」
「……そう」
それを聞いた千里は仕方ないとばかりに足を止め和人の方を向く。
それから、ちょっと申し訳なさそうに「もしかして分からなかった?」と、上目使いで和人を凝視した。
「あぁ……単細胞の俺じゃ、お前の自分ルールはよく分からなかったわ〜あっはっはっは〜」
照れ隠しなのか、そうでないのか。和人は千里の視線から目を逸らし、大袈裟な笑い声を上げた。
それを見た千里がまた眉を吊り上げる。
「……それ、もしかしてバカにしてる?」
「さぁ? どうだかな……?」
しかし和人は――千里のたった一人の親友は、仕返しとばかりにそっぽを向き、にやにやと笑いながらそんな千里を煽る。
そんないつもの挨拶を終えた二人は廊下のド真ん中に立ち、周囲から浴びせられている軽蔑の目も全く気にせず談笑した。
いつから知り合ったのか、どこで仲良くなったのか、そんなことはお互いどうでもいいし、覚えていない。
ただ楽しいから一緒にいる、ただそれだけの理由で今日も話が弾んで行き、その最中で和人が唐突に切り出した。
「でさぁ……俺のクラスで理科の試験対策プリント出たんだけど全く分かんねぇんだよぉ〜。教えてくれ〜い白凪ぃ〜」
そう言ってどこからか取り出したプリントを差し出す和人。
「ん……分かった。分かる範囲でなら……」
いつものことなのか千里は真顔でそれを受け取り、和人が指し示す問題をぼんやりと眺めた。
「え〜っと、問3。 二酸化炭素中で物を燃やすことは可能か?
また、可能であるなら燃焼させる物質の名称を答えなさい」
「可能(できる)。2Mg+CO2→2MgO+C……。マグネシウムを二酸化炭素中で燃焼させると酸化マグネシウムに……二酸化炭素は還元されて炭素に、なる」
眠たそうな声で、即座にそう回答する千里。
知り合った仲とはいえさすがに驚いたのか、問題の音読を止め、千里を凝視する和人。
「相変わらず理科はすげぇな……」
「ううん……計算できないから物理系は、無理」
やはり何食わぬ顔でそう言う千里。
その様子に少し腹が立ったものの、物理系が一体どこの分野なのか分からない和人は無言のまま問題の音読に戻った。
「……問5 原子を構成している粒子を答えよ」
「電子、陽子、中性子、通常の原子であれば同数ずつ存在……」
「問8 太陽の中心温度は何℃か?」
「約1600万℃ 主に水素からヘリウムへの核融合により発熱」
「問11 皆既日食において、太陽が完全に隠れる前後に発生する現象の名称を答えよ」
「ダイヤモンドリング……内部コロナが――」「よし、分からんっ!」
何かを悟ったようにプリントを引込め、勝手に頷く富山和人(とみやまかずと)、十四歳。
コイツハトクベツナンダーキットソウダー、と謎の呪文を唱えた後、一部では爽やかだと評判の笑顔に明らかな怒りを乗せて、忌まわしい天才へと向き直った。
「まぁ赤点ギリギリのラインまで理解したし良いかぁ……って白凪?」
するとそこには、先ほどしぼめたはずの頬をまた膨らまし、見るからに不機嫌そうな千里の姿があった。
「……和人、ずるい。私も問題出す」
「え? いや、何が?」
訳が分からずそう突っ込む和人。
だが声が全く聞こえていないのか、千里は「うーんとね、うーんと」としばらく何かを考え、その後何かを閃いたのか嬉しそうな笑顔で和人に問題を出した。
「問12 私は試験が苦手……。ナゼ?」
――とても意味不明な問題を……。
そのあまりの意味不明さに思わず「はぁ?」と言いかけた和人だったが、ふと思い当たることがあり、それをそのまま口に出してみた。
「あ〜多分、お昼ごろに終わるのに給食がないからだろ? お前試験がある度にお腹すいたって言ってるもんな……」
その瞬間、千里が目を丸くする。
「正解……まさか当たるとは思わなかった……」
いつもぼんやりしている千里のめずらしい顔に優越感覚えたのか、和人は「ふふ〜ん」と胸を張る。
「やっぱりか。……というかお前いつもおにぎり持って来てるのに何でそんな時だけないんだよ……」
「試験終わる前に全部食べる、から」
「……それでお腹が空くお前の構造を知りたい所だが。それより俺からもう一つだけ別の質問していいか?」
そう言いながら、ニカッと笑う和人。
その様子に何か嫌な予感がしたのか、千里はあからさまに嫌そうな顔をする。
「ぇ、私、もう帰りたいのに……」
「まぁ、そう言うなって。すぐ終わる」
「……分かった」
「んじゃ、問13だ」
――問13。
悪魔の数字、死の数字と欧米では悪名高い13という番号を背負った質問。
しかしそれを発した瞬間、二人を襲ったのは、悪魔でも……もちろん死でもなく――。
「何があった? ……白凪」
――死ぬほど重い沈黙だった。
どうも!
今回も読ませてもらいましたが、本当、今更ですが、文章力凄え……一つも駄目な所なんてないし、私みたいに字をミスすることもない……
本当に猫又さんの小説は改めて凄いと思います。
それと、私が馬鹿なだけなのか、問題……さっぱり分かんねwwいや、本当に私が馬鹿なだけなのか、忘れたのかですがw
理解の問題がさっぱりでしたwやはりこういうのも頭が良くなきゃ出来ませんねw
更新遅れてすみません。
そして、ミケさんコメントありごとうございます。
理科の問題ですが私もちょっと知ってるだけで、結局ネットで答えを確認しましたw
一応中3の教科書から出してますが、応用の応用問題――というかもはや雑学の分野なので知らなくて当然だと思いますよ〜。
千里の「極端な才能」描写なので、内容はともかく難しそうだと感じさせるためにやってみましたw
(そういうことなのでミケさんが落ち込む必要なんてありません!)
というか小説を書く上で頭の良さなんて必要ないです。
小説に必要なのは文章力と偏った知識! どんなに相手が興味無くても一晩中語れる知識!
アニメ? BL? 受け? 攻め? 鉄道? 化学? 何でもいいのでそういう知識があると、オリジナリティが出やすい!
(と、個人的に思ってます)
人間なにかしら偏ってますから、ミケさんも素敵な小説が書けると思いますよ? では、
*続きから行きます。
ついさっきまで楽しそうに話していたというのに、その質問を口にした瞬間、その場の空気が凍り付く。
和人は冷や汗を流しながら嗤い(わらい)、千里は必死に表情を消しながら黙る。
そんなどうしようもない時間がしばらく続いたのち、最初に言葉を発したのは質問された千里だった。
「質問の意味……分からない」
なんの話? と言わんばかりに一切の感情を排除した冷たい声で威圧する千里。
が、和人はそれに臆することなく嗤った。
「とぼけんなよ……」「……とぼけてない」
負けじと千里が言い返す。
「何があった?」「何もない」
「お前にしては焦ってんな?」「焦ってない……」
「……言えないのか?」「言えなくない……」
反論が反論を呼び、結果的にそんな意味のない言い争いを続ける2人。
将棋であれば千日手と判断されそうなその攻防の最中、和人は唐突に笑うと、こう言った。
「大丈夫か?」「大丈夫じゃない……っ」
言った瞬間「ぁ……」とその発言の意味と和人の罠に気付き、声を漏らす千里。
必死にごまかそうとするも「ほら、やっぱり動揺してんじゃねぇか……」と目の前の友人に諭され、そのまま沈黙する。
「ひねくれんなよ白凪……『あんな顔』して歩いてたくせに、分からないわけないだろ?」
もう観念しただろう、とでも言いたげに千里の頭を撫でる和人。
千里は一瞬その手を払おうとするも、この腐れ縁にいまさら誤魔化しても無駄か、とそれを受け入れ、胸のうちを語り始めた。
「和人は……私と話してて平気?」
和人に抑え付けられてるから、なんて言い訳をしながら、うつむきがちに千里はそう話を切り出す。
「みんなね……私と話すと嫌な顔したり、泣き出したりする……」
「……そうか」
舌足らずで大人しく奇妙、そう親戚からも言われる千里の言葉を自分なりに解釈し、うなずく和人。
千里は見えないながらも気配でそれを察したのか、さっきよりも大きな声で続きを語った。
「分からない……何でそんな顔するのか、分からない……」
小さい頃から、お前は人と付き合うのが苦手だと言われてきた。
でも自分はそんなこと気にしなかった。
最初からみんな友達で、みんな仲間。それが当たり前だと思ってたのに……。
この頃なんかおかしいの……。
言いたいことは出てくるのに、言葉にできない。
そんな千里の――親友のことを知っている和人はその言葉をただじっと聞いた。
「私が悪いのかなって思うけど……でも、何でか分からないから、どうしたらいいか……分からない」
「お前は悪くねぇよ……。きっと相手もお前が急に話しかけて来て驚いてるだけだ……」
まだ状況はよく分からなかったものの、千里の悲痛な声を聞いた和人は条件反射でそう答える。
だがその解答が理解できないのか、千里は首を傾げた。
「何でビックリするの……? 私、ビックリしないよ?」
「……!?」
あまりのことに思考が停止して数秒後、「あぁ、そう来たか……」と、目の前に居る脳内お花畑女子には全く分からないであろうストレスを背負う14歳男子。
それでもなんとか千里の力になろうともう一度顔を上げ、嘆息しながらもきちんと説明した。
「……まぁ、お前にとっては周りにいる人間は親友同然なのかも知れねぇけど、もしかしたら相手はそう思ってないかも知れねぇだろ?
知らない人間から話しかけられると死ぬほど驚く奴らもいるんだよ……。
だからさ、今度から人に話しかける時は合図しろ。肩を叩くとか、机を叩くとか……」
「そしたら、嫌な顔されない……?」
和人に頭を撫でられ飼い猫のように丸くなっていた千里が涙声で尋ねる。
それに和人は持ち前の笑顔で答えた。
「あぁ……。俺情報だから適当だけど、2、3人は普通に話してくれると思うぞ?」
「そっかぁ……」
安心したようにそう呟くと、泣いていたのか目の端を擦りながら顔を上げる千里。
そしてそのまま、にへらぁとあどけない笑みを浮かべながら和人を凝視した。
「ありがと……和人」
「ぇ? いや……ぁ、うん」
――ヤバい。
千里の笑顔を見た瞬間、和人は直感でそう感じた。
直ちに回避しなければ、直撃だけは避けなければと本能が叫んだ。
そう……たしかにこの二人は友達というよりも腐れ縁で、ただ嫌われ者同士で集まっただけの関係であることは間違いない……が、
何かと疎い(うとい)千里に比べ、和人は中学生にもなって男女で親しげに話すこの行為に、何も感じないわけではなかったのだ。
普段は腐れ縁として、親友としての顔を維持しているものの……。
こんな……こんな純粋無垢な笑顔がもし眼球にでも直撃しようものなら、
数秒ももたずに理性(童貞)が吹き飛ばされ、公衆の面前であろうと一時間近く千里をモフり続ける自覚が、和人にはあった。
けれども、いやだからこそ色々と(倫理的に)危ないと判断した和人は、
一瞬見えた笑顔を脳内超高性能カメラ(美化機能付き)に永久保存したのを確認した後、ゆっくりと千里から目を逸らした。
「じゃ、じゃぁそういうことで、俺このあとオカルト研の集会があるから、また明日なあ〜?」
そして脳内でさっきの光景を思いっきり美化しながら、適当な理由をつけて千里の前から逃走した。
「ん。……ばいばい」
そんな事情を全く知らない千里は呼応するように手を振ると、和人が去って行ったのとは逆方向、昇降口のある方向へと歩き出した。
どうも!
また読ませてもらいました。
ちょっと引かれそうだが、言わせて下さい……
千里可愛い……wwwすみません、ちょっとだけ萌えてしまいましたw
あと、コメ返しでのことですが、そうですか。小説とか漫画は、勉強が出来てないと出来ないものとばかり思ってましたから。
特に国語が。
自分、国語は苦手で、てか勉強自体がダメなんですよw笑い事じゃないですけど……
それと、猫又さんのおかげで、小説がだんだん上手くなってるような気がするんですよ。でもまだ駄作ですが……
あと、三点リーダーのことですが、あれって結構沈黙のシーンのときだけですよね?沈黙ってとは知ってましたが、深くは知らなかったので……
これ以外に沈黙するときってどう表せばいいんでしょう?普通に、文章で表せばいいんでしょうか?馬鹿な私でも分かりやすくお願いします。それと、長文ですみませんでした。
まさか萌えていただけるなんて……っ!
どうも、猫又です。
いやぁ、私もかわいい感じを意識しながら書いてたんですけど、それが伝わったようで嬉しいです!
で、沈黙の表現方法なのですが――書いていたらあまりに長くなってしまったので、
交流版の方にスレッド作って、そこに書くことにしました。
http://ha10.net/test/read.cgi/yy/1404399591/
あくまで私の書き方、私の意見ですが、参考になるようならうれしいです。では
遅れてすみません。 続きから行きます。
学校から徒歩40分の場所にあるリサイクルショップ。二階が住居になってるそのお店が千里が今お世話になっている父方の祖父母の家だった。
千里はもはや見飽きるほどに見てしまったその古い建物を扉を開く、すると店番をしていたおばあちゃんが出迎えてくれた。
「あら、おかえりぃ千里ちゃん。学校、どうだった?」
白い髪を後ろで丸く纏めたお団子ヘアーで、ちょこんとレジに座り入ってきた千里を見つめるおばあちゃん。
「ん……! 楽しかった!」
そんなこの店の主に対して、千里はただいまの代わりにそう言うと、置いてある古い扇風機やラジオを倒さないよう注意しながらおばあちゃんに駆け寄った。
「そうかい、そうかい……」
千里の祖母はそれを愛おしそうに眺めた後、ゆっくりと頷くと少し表情を曇らせた。
「この頃大人のくせにお前のことを悪く言う輩がいるからねぇ……まぁお前にも否がなくはないんだろうけど、色々言われたらすぐにばぁちゃんに言うんだよ……?」
そういえばそんなことあったけ? と、おばあちゃんの言葉で今日あった出来事を思い出す千里。
しかしすぐに和人の顔が浮かんで満足したので、何も言わずに頷いた。
「うん……分かった。ありがと、おばあちゃん」
……それに何を感じたのかは定かではないが、孫の表情に一片の曇りを見出したのか、千里の祖母は「よいっ、しょ」と座っていた椅子から立ち上がると、笑顔を浮かべながら言った。
「手ぇ洗っといで。台所におやつ出しとくから……」
お客さんと共用の一階にある洗面所及びトイレを指さしながら、二階へと上がろうとするおばあちゃん。
しかしすぐに千里はそれを制止した。
「いい……おばあちゃん今店番してるんでしょ? 私それぐらいできるし、ついでに洗い物があるなら洗う……」
おばあちゃんはその言葉に、「はて、私の思い違いだったか……?」と首を傾げたものの、すぐに納得してくれたのか、
「あぁ、そうかい。んじゃ、孫の言葉に甘えてばぁさんはゆっくりするとするかねぇ」
と、またレジの前に備え付けられた椅子に座りなおした。
それを確認すると千里はすぐに洗面所へ向かい、手を洗う。
食いしん坊の自覚はあるほうなので、こういう食中毒対策はきちんとやる方なのだ。
それからレジ裏にある階段を上って二階へ移動すると、迷わず、一切の躊躇無く台所に飛び込んだ。
――瞬間、揚げたてドーナツの香ばしい匂いが千里を包む。
「……ん」
それを受けて千里は軽く目眩すら覚えながらすぐさま席に着き、「いただきます」と両手を合わせたのち、ドーナツにかぶりついた。
「ん〜……」
やっぱりおばあちゃんのドーナツは美味しい、そんな心の中の叫びが声にならない声となって口から漏れ出す。
しかしその声すら次のドーナツごと飲み込み、千里はあっという間にドーナツ10個を平らげた。
「んまい……おなかいっぱいっ」
幸せそうにそうつぶやくと、千里はドーナツが入っていたお皿を名残惜しそうに抱え、流し台に向かう。
案の定、そこにはいくつか洗っていない食器が置かれていた。
祖父は父が生まれてすぐに他界し、千里も両親を亡くしている為に千里はこの家で祖母――おばあちゃんと二人っきりで暮らしている。
とはいっても店の仕事があるせいで、朝食べた食器がそのまま置かれていることがあるのだった。
「よし、洗う……」
だからこそこの家に引き取られた千里は家事全般が得意になった。
母親と暮らしている時もたまに手伝うことはあったものの、この家に来てからは掃除洗濯買い物から最近は料理まで、保護者であるおばあちゃんの補佐として卒なくこなせるようになっていた。
今日は洗い物を終わらせて晩御飯の準備、その後お風呂掃除。
そんな夜までのスケジュールを頭の中で組み立てながら洗い物を続ける千里。
あとコップ3個、と呟きながら今日の献立とご飯の量を考えていたその矢先――流し台に手が伸びてきたと思うと、千里の隣から声が発せられた。
「あ、すまんがこれも洗っておいてはくれんか?」
そう言って、手に持っていたコップを差し出す、声の主。
千里はそれを恨めしそうに睨むと、
「もうすぐ終わると思ったのに……。次から早く持ってくる……っ!」
と少し不機嫌になりながらも、まぁコップ一個ぐらいすぐ終わるかと伸びてきた手からコップを受け取――
「……!!?」
――った瞬間落とした。
「なんじゃ、危ないのぉ……しっかり持たんか」
それを声の主がどこか気の抜けた声で注意してきたが、千里はそれどころではない。
おそらく生まれて始めてであろう『何をされるか分からない』と恐怖に襲われ、咄嗟(とっさ)に近くにあった包丁を持つと、いつの間にか隣にいた不審者に突きつけた。
「誰……!? 嫌っ! 離れてよ!!」
しかし、その行動が思わぬ結果を招く。
――グシュ……ッ。
「ぇ……?」
恐怖のあまり顔を見ずに包丁を突き出したのが悪かったのか、それとも無理やり距離を取ろうとしたのが悪かったのか……。
やってしまった今となってはもうどちらか分からなかったが、どちらにしろ千里が目を開いたその時、握っていたはずの包丁は、
――隣にいた少年の眉間(みけん)に、深々と刺さっていた。
「あ……ぁ……っ」
その数秒後、ドサッっと少年が崩れ落ちる音でやっと我に返った千里は、とにかく包丁を引き抜こうと必死に崩れ落ちた少年に手を延ばす。
が、あまりの事態に腰が抜けてしまったのかバランスを崩し、そのまま台所の床にへたり込んでしまった。
「どうしよう……抜かないと、早く抜かないと……っ」
それでもどうにか手を伸ばし、少年の額(ひたい)に刺さっている包丁を掴み、何度も何度も少年から包丁を引き抜こうと試行錯誤を繰り返すが――手に力が入らない。
非現実的な光景を見たことによるショックと、それに早く対応しようとする焦燥感によって、まるで包丁の柄に油でも塗られているかのように手が滑り、引き抜くどころか持つことすら困難になってしまったのだ。
「どうしよう、どうしよう……」
全く好転しない状況に膨れ上がってゆく焦燥感。
千里はそんな重たい感情に押しつぶされ、ついに涙ながらに肩を落としてしまった。
もう、ダメだ……。
私は故意じゃないにしても、人を殺しちゃったんだ……。
刑務所って、どんな感じなのかな……? クマのぬいぐるみって持ち込めるのかな……。
そんな見当違いの絶望を抱きながら顔を伏せて静かに泣く千里。
が、その嗚咽に混じって物言わぬ体となったはずの少年が突然千里に語りかけて来た。
「ん? なんじゃそんなに慌てて、どうかしたのか?」
「……!?」
もしかして、誰かもう一人この場所に居たの?
そう思い、千里は伏せていた顔を上げた。
が、その先に居たのはやはりさっきほどの少年。
――否、
目の間からおでこにかけて大きな包丁が刺さっているにも関わらず、ヘラヘラと笑うジジ臭い話し方の少年が居たのだった。
「おとなしいかと思ったら、随分と元気がえぇのお」
「っ……」
とてつもなくシュールな光景に、思わず絶句しながら距離を取ろうとする千里。
と、そこでようやく自分が怖がられていることを察したらしい少年は、「ん〜?」と当たりを見回した後、自分の頭に刺さっている包丁に気が付いた。
「おぉ……! まさかこんなもんが刺さっておったとは。……すまんすまん、無駄に怖がらせてしまったか……」
千里の目を真っ直ぐに見据えながらそう謝罪する謎の男の子。
「刺さっておった」と言っている所を見ると、どうやら千里がその包丁を刺したことに気付いていないらしい。
「あ、あの……。その痛く――」「ちょい待っとれ、すぐ抜く」
よく状況が分からなかったものの、とにかく見ているだけで痛々しかったので、一応声をかけてみる千里。
しかし少年はその声を全く無視して、自分の額に刺さっている包丁に手をかけた。
「え!?」
「よっ……と」
瞬間、ギギギギギギギ……というまるで錆びついたドアを開けるような騒音が少年の傷口から響き渡り、その音が段々と激しくなったかと思うと、
最終的に、ガランガチガチャン……カァン!! と小気味よい音を立て、少年の体から包丁が引き抜かれた。
「お! 意外とイイ包丁使っとるの!」
「…………」
が、千里は依然として沈黙していた。――というか気絶しかけていた。
普段『常識の範囲外の生物』だの『気が狂ってる』だの言われているが、どうやらこんな突飛すぎる状況にまでは対応しきれなかったようだ。
とはいえ、目の前で人間串刺し手品(種なし)をやってのけた少年にそんな最低限の常識が通用するはずもなく。
完全に青ざめる千里を無視する形で立ち上がったかと思うと、「そういえば自己紹介がまだじゃったのぉ」と勝手に自己紹介し始めた。
「儂(わし)の名は『塵塚怪王』(ちりづかかいおう)。ま、よほどのマニアでなければ存在すら知らぬナイナーな妖怪じゃがの……。
主に付喪神。命無きモノに霊魂や怪異の類が取り付いた九十九神(つくもがみ)とも呼ばれるモノ達の王……というよりは町内会長みたいなもんじゃ」
塵塚怪王。――妖怪。
そう言う少年を千里は改めて見た。
しゃがんでいて分からなかったが、かなり背が高い。
身長だけ見れば同い年かそれ以上に見えた。
とはいえ顔は童顔で、どこかの昔話に出てくる座敷わらしのようなあどけなさを残していた。
そんな顔と容姿に反さず来ているものは和服で、少し汚れてはいたもののどこか趣きを感じさせるような佇まい。
そしてなにより彼の――目の前でありえないことをペラペラと話すジジ臭い少年の目は、怪しくも優しい黄色い光を放っていた。
「……」
見た目は同年代であるはずなのに、その眼力に気圧された千里は、以前として沈黙を守り、目の前の少年が語る話に聞き入っていた。
それを目線で感じたのか彼、塵塚怪王は「で、こっからが本題なのじゃが……」と千里に伝えたかった要件を完結に述べた。
「そんな儂じゃが、今日からお前の部屋に居候させてもらえんか?」
千里が少年を刺して吃驚したww
今回は色々ツッコミどころが満載でしたが、この小説では妖怪がでてきましたか!?(妖怪マニアでサーセンw)
妖怪が出てきてなんか楽しみになりましたねw(ほんと、妖怪マニアですみませんw)
次も待ってますので頑張って下さい!
ミケさん、コメントありがとうございます。m(_ _)m
一応、白(付喪)語りなので付喪神ならどんどん出て来ますよ〜。
ちなみに前作の某ティッシュぼっちさんも妖怪だったんですが……。
さすがにそこまで詳しくは読んでませんよねw
兎にも角にも応援ありがとうございます!
更新、遅くなるかもしれませんが、これからも頑張りたいと思います!
すむません。そういえばあっちでも妖怪でてきましたね。
ちょっと忘れてました。詳しくは読んでいましたが、忘れっぽい性格のため
たまにこういうこともあるんです。私の小説でもたまにコメ返しするの忘れて次のレスで変えしてますし。
あぁ、そうでしたか……。憶測でものを言ってすみません。
そしてそこまで読んでくれて嬉しです!
これからも気が向いたら読んでいって下さい!
では、一応続きできましたのでどうぞ。(カオス展開です。ご注意下さいw)
――あれから、どのくらいの時間が経っただろうか。
「……ちょ、待て。は、早まるなっ、いいからその手に持っている物騒なモノを下ろせぃ!」
おばあちゃんが2階に上がってこないことを考えると、それほど時間は経っていないのだろうが、
台所での2人(?)のやりとりはクライマックスに突入していた。
付喪神。その王たる塵塚怪王さえ震え上がる最終兵器を取り出した千里が、今まさにそれを起動しようとしていたのだ!
もちろん怪王が必死にそれを止めようとはしているのだが、千里は顔を伏せたまま全く聞く耳を持たなかった。
「嫌だ……。私、もう耐えられない」
それでもその最終兵器を起動してしまえば被害が及ぶのは自分だけではないと怪王も必死に食い下がる。
「いや、待て。他に方法があるはずじゃ!」
「無い! これ以外方法なんて、もう……っ」
が、千里はそれを一蹴すると、最終兵器を起動させるために人差し指をゆっくりと動かし始めた。
「止めろ! それ以上やったら、警察沙汰になるっ!!」
「いいの……おばあちゃんに迷惑がかかるかもしれないけど。私、やる……っ!!」
普段無口な千里はそう声を張り上げると、最終兵器に向けて人差し指を勢いよく突き立てた!
――その瞬間。
(ピッ)
千里が持っていたスマホの電話番号入力画面に1という数字が追加された。
あまりにひどい事態に怪王は絶叫する。
「あぁああああぁああ!! なんという、なんということを! 貴様っ! 鬼か何かか!?」
だが千里は涼しい顔でそっぽを向き、呟く。
「……妖怪『ジジ塚かよ』に言われたく、ない」
「塵塚怪王じゃっ! ち・り・づ・か・かいおう! 間違えるでないわっ!」
ぷんぷんと効果音が聞こえてきそうなほどそっぽを向いて頬を膨らます怪王。
それを少しかわいいなと思いながらも、千里は妖艶な笑みを浮かべながら怪王へと詰め寄った。
「ん〜? いいの? あと1回、0のボタン押したら警察に繋がるんだよ?」
そう言いながら自分の持っているスマホを見せつける千里。
先ほどと同じく電話番号入力画面になっているそれには今、『11』という数字が入力されていた。
――そう、あの後。
なんかいきなり現れた不審者こと塵塚怪王に同居(どうきょ)を求められたあの直後。
千里はテーブルの上に置いていたスマホに手を伸ばし、妖怪である怪王に向かって「警察呼ぶ」と脅しをかけていたのだ。
もちろん、実際に警察が来ておばあちゃんに迷惑がかかることも想定済みだ。
そういうわけで、なぜか警察に捕まることを恐れている付喪神の王(笑)は、千里の言葉を聞いて態度を一変させた。
「ぁ……あ〜すまんすまん、この頃物忘れが酷くて……そういえばワシ、ジジ塚じゃったのぉ! あはははは……」
ひたすら笑ってごまかそうとするジジヅカ(以下略)。
どこからどう見ても完全に弱みを握られてしまった彼は、「……畜生。その携帯電話奪い取った暁には覚えとれよ小娘……」と静かに悪態を吐きながらも、
このままではマズイと必死に営業スマイルを浮かべ、目の前の悪魔と交渉し始めた。
どうも。ミケです。
いえいえ、別に良いんですよ、忘れた私が悪いんですから。
それと今回、うん、カオスですねw
とゆうか、ジジ塚wワロタwww
もうちりづかかいおう(漢字どんなのだっけ!?)が、ジジヅカになっちまってるじゃねーすかww
ちりづかかいおうェ……
まぁ、長い名前なのでしかたないですねw私も今度からちりづかかいおうをジジヅカと呼びますw
塵塚怪王ですね。夜な夜なゴミ――つまり捨てられたモノを集めるごみ収集人。
モノが妖怪化した付喪神の王として、ごく一部で有名な妖怪です。
しかしジジイ口調にしてみたのはいものの、そのせいで彼のイメージが、
妖艶イケメンポジからギャグ要員に変わったのは多分私の気のせいだと信じたいw
というわけで、コメントありがとうございます。
頑張って更新して行きますので、暇があったら見に来てください。では……続きを。
「まぁ、待て。……別に居候(いそうろう)と言ってもの? お前の着替えシーンを間違えて覗いたり、何らかの不可抗力で一緒に風呂に入ったりなんて恋愛シチュエーションを望んどるわけでは――」
(ピッ)
「ゼロ……っと」
「ごめん、ワシ調子に乗った。だから今すぐ電話を切っとくれ……頼む」
ついに110番を入力し終えた千里に、全力で土下座する妖怪。
その姿を見て、少なくとも悪人ではないと判断した千里は、まだ通話ボタンを押していないことを隠しながらも、とりあえず警戒態勢を解いて塵塚怪王に話しかけようと口を開いた、その時。
予想外の方向から声が飛び込んできた。
「あら……友達いないのに、けっこう最新型のスマートフォン使ってるのね」
「……!?」
自分が発言する前に発されたその声に驚き、当たりを見回す千里。
するとその声に反応してか、今まで土下座を敢行していた塵塚怪王が顔を上げ、千里の真後ろに居る何者かに向けてニヤリと嗤う。
「来たか……。待ちくたびれたぞ、ハナよ」
私の後ろに……誰か、居る?
怪王が見ているその先にただならぬ気配を感じた千里は、ゆっくりと右手を動かして110番へ通報しようとした。が、
無い……。
いつの間にか、千里の右手からスマートホンが消えていた。
「…………っ」
最終兵器(通信機器)を奪われ、焦燥に駆られる千里。
しかし声を追って振り返った彼女の瞳に映ったのは、恐ろしい妖怪でも未知の生命体でも無く、
白いワンピースを着た黒髪の女性だった。
「申し訳ないけど……。ちょっと話が進まなくなるから、これは預からせてもらうわね? 白凪千里ちゃん」
「…………」
が、それでも突然現れたことに変わりはない。
千里は再び気を引き締め、目の前の女性を静かに睨みつけた。
すると女性もまた「そんな脅し、優越感の足しにもならない」とばかりに苦笑いしたのちに、
何のためらいもなく千里へと歩み寄って来た。
「あらあら、なかなか反抗的ねぇ……。仕方ない、この手だけは使いたくなかったのだけれど――」
そう言って黒髪の女性――ハナは、どこかから取り出したビニール袋に手を突っ込みゴソゴソと何かを取り出し始めた。
「……!」
一体何が出てくる?
2階にある台所に突然侵入できる非科学的な人達……。
普通に戦ったら私に勝ち目、ない。
この勝負……一瞬で決まる!
とてつもなく重い緊張感に支配された台所で、そんなどこかの主人公のような思考を巡らせる千里。
だが皮肉にも千里の読み通り、勝負はコンマ0.1秒単位で決してしまった。
「近くのコンビニで買ってきた照り焼きチキン……食べる?」
「んっ!」
それは……コンマ0.5秒の出来事だった。
ハナが言葉を発するその前に、まず嗅覚でそれが肉料理――それもコンビニでよく売っているオリジナルチキンだということを確信し、すぐに女性に向かって跳躍。
そのチキンを自分にくれるのだと目線だけで理解してハナからそれを受け取ると、地べたじゃ行儀が悪いのできちんとテーブルに座ってから『んっ!』と千里は返事を返したのだった。
「んま……ん、んま」
とても幸せそうな顔でチキンを頬張る千里。
ハナはそれを自愛に満ちた表情で見詰めながら「どう? おいしいでしょ?」と声をかけた後に、
ニヤリと笑いながら「じゃぁ、とりあえず自己紹介から入りましょうか〜」と、それとなく会話を誘導した。
「わふぁし、しはなひ、ひひゃほ……。ちゅうふぁん……」
その誘導にまんま(ご飯的な意味)で引っかかり、口いっぱいにチキンを頬張りながら自己紹介をする千里。
胃の方ではすでに自己消化が始まっているであろう彼女の言葉を女性はすぐに解読した。
「白凪千里、中3ね? よろしく。……あ、私の名前は花(ハナ)。これでもかなり上位の付喪神なのよ?」
が、そんな言葉など半分しか耳に入っていない千里は、食べるのを一時中断し、幸せそうな顔で突然現れた女性ことハナに向かって微笑みかけた。
「付喪神、花さん……。ご飯くれる……優しい人……」
「分かってくれてうれしいわぁ千里ちゃん。じゃぁ、色々話したいことがあるから、チキン食べながら聞いてもらっていいかしら?」
「ん! 花さんの言うこと、ちゃんと聞く!」
その言葉を受けてハナもまた微笑み返す。
こうして一触即発となっていた二人の関係は改善し、台所に平和が訪れたのでした。
めでたし、めでたし。
どうもです!
塵塚怪王のことで知らない妖怪だったので調べて見て見ました。
塵塚怪王って夜に捨てられたゴミを拾う妖怪だったんですねwなんとゆうエコな妖怪w
しかも、有名だったとは!?
ミケさん、コメントありがとうございます!
そうですね〜近年になって知名度が上がってきてますけど、
妖怪絵巻にはゴミを漁る(あさる)絵が何枚か残されてるだけで、
「え? ナニコレwww ゴミ漁ってるってことは九十九神(付喪神)の仲間?」
「もういいや塵塚(ゴミ箱)で怪しいことやってる……そうだな付喪神の王ってことで塵塚怪王w」
みたいなテキトーな決め方されてるみたいです。
ホント、不憫ですよねぇ…… ←蔑んだ笑み
まぁ、妖怪なんて大体は人間に勝手に付けられた名前ですからw
テキトーなのも珍しくはないw
二本の足なんて、上半身なき下半身と頭がくっついて、赤いふんどしして、白い足袋はいているのに
何故か二本の足って名前にされてるwいや、人型の妖怪は皆二本の足だろーがwそれ以外に特徴あるだろーがw
なのに、何故か二本の足って名前にされた不憫な妖怪wこいつほどではないが、真面目な幻獣もそうw
すごいですね……。そんな妖怪がいたなんて。
どうも御見逸れいたしました。 m(_ _)m
というか前々から思ってたんですけど、
ミケさんって私が知らないこと沢山知ってるし、
もしかして……私よりも年上?
だったらなんか色々と謝らないといけない気が……(((( ;゚д゚))))アワワワワ
と、とにかく続き書きます!
――と簡単に終わるはずもなく。
「いやいやいや! おかしいじゃろ!? ナニお前達だけ脅威のスピードで仲良くなってんの!?」
数秒の沈黙の後、やっぱり我慢できなくなった怪王が二人(?)で築き上げた平和を突き崩しにかかった。
しかしぜっかくのほんわかムードに水を差したのが気に入らなかったのか、
相方であるハナは怪王を冷たい目で黙視し「あぁ……」と死にかけの虫でも憐れむかのようなため息をこぼした。
「なんだ、生きてたんだ……。てっきり包丁に刺されて死んだのかと――」
「勝手に殺すでないわっ! あんな刃物など、空き缶・鉄くず以下省略で出来ておるワシの体に刺さったところで何とも――」
――とここで、吠えてきた怪王の言葉に何か不可解な点でもあったのか、今まで冷たい目をしていたハナが急に顔をしかめる。
「あら、空き缶だっけ? カイの体って……」
「な、なんじゃ……ま、まぁ主にというだけで空き缶だけってことはないが……」
好戦的な笑みから一転、急に素に戻ったハナに勢いを削がれたのか、言葉を濁す怪王。
しかしハナは何食わぬ顔で衝撃の理由を開示した。
「いや、てっきり名前通りおっさんでも詰まっているのかと――」
「お前までワシをジジ塚呼ばわりする気かぁああ!!」
再びヒートアップするジジ――塵塚怪王。
しかしハナはその熱気を右から左に受け流す。
「お似合いじゃない、ジジ塚。……しゃべり方とか、迷惑な所とか」
「おまっ、日本全国の爺さんに謝れ!! というかこの前、完全に私情に動かされて小娘を『空白』送りにした挙句、殺しそうになった奴に迷惑とか言われたくないわっ!!」
負けじと言い放たれたその言葉に、ハナがたじろぐ。
「な……それはこの前さんざん謝ったじゃない! それに、あの子については今後もサポートをして行くつもりだし……」
それを見た怪王は好機とばかりにまくし立てた。
「へっ、コミュ症のお前が何を言うか……。あれからあの娘とは言葉一つ交わしておらんくせに」
――瞬間、「ぶちぃっ」となにやら不穏な音がハナのこめかみから響いたかと思うと「……ふ、ふふ」と不気味な笑顔を振りまきながらハナは怪王に向かって思いっきり毒を吐いた。
「地獄に流されたいならぁ、そう言ったらど〜ぉ? ゴミ溜めぇ……」
それを受け、怪王もまた「はっは……」と乾いた笑いを吐いた後、思いっきり息を吸い、毒を吐き返す。
「流されるのはそっちじゃティッシュがぁああ……!」
平和だった空間が一転、妖怪であるハナと怪王が一切自重無しに睨み合う戦場へと早変わりした台所。
しかしおそらくこの状況を止めるべきであろう千里は、
「ホコリ入る……移動」
――睨み合う二人から発せられている謎の風力によって舞い上げられたホコリを気にして、チキンを加えながら早々に戦線離脱。
というわけで最悪の場合この街すら滅ぼしかねない悪魔のような戦争を止めるものは誰もいなくなってしまった。
そう誰もが確信したその瞬間――救世主の声は階段下から響いた。
「千里ちゃん? なんか忙しそうねぇ……。ばあさんが手伝ったほうがいいかい?」
そう、ちょうど良いタイミングでこの店の主人――白凪千里の祖母が、2階へと続く階段を上り始めたのだ。
すいません、間違えがありました。上のスレッドの4行目。
『しかしぜっかくのほんわかムードに』 ――ぜっかくではなくせっかく(折角)ですね。
しかし絶書くってw 我ながら酷い……。
続けます。
『…………』
予想外の展開に、今まで大声を上げていた妖怪2人は即座に沈黙。
無言のままアイコンタクトと相槌だけで意思疎通すると、二人して満面の笑みを浮かべながら千里に話しかけた。
「の、のお……小娘」
「ちょっと、いいかしら千里ちゃ――」「……ダメ」
――が、時すでに遅し。
ハナが買ってきたコンビニのオリジナルチキン×9はすでに千里の胃袋に収まり。
さっきまで怪王はともかくハナには従順だった千里は、
「いや、だって二人とも不審者だし」とばかりに手のひらを返し、二人の要求を即座に却下してきたのだ。
圧倒的に自業自得なのだが、それでも怪王は食い下がる。
「……な、何がほしい? 食べ物だろうと何だろうと……そのワシらのポケットマネーが許す限り願いを聞こうじゃ――」
「カイ、ちょっと待って……」
しかし説得していた怪王の言葉を、ハナが遮った。
「お前一体何を……」と口をパクパクさせながら絶句する怪王。
だがハナは眼力だけでそれを押し返すと、千里の目の前で、
「お願い……匿(かくま)って」
――深々と頭を下げた。
「信じてなんて口が裂けても言えないけど……せめて、話だけでも聞いて頂戴……」
「……っ」
その行動を見て何を思ったのか、怪王は頭を下げるハナに舌打ちしながらゆっくりと目を逸らす。
対して千里は、深々と頭を下げるハナをじっと凝視しながら不思議な感覚に陥っていた。
塵塚怪王とハナの会話ワロタww
どうも、ミケです。
私が年上か年下かは、それはわかりません。
そもそも猫又さんの歳も分からないし、
そうですね、まだ10代です。18歳以上です
まぁ、多分年上ですかね?葉っぱ天国は多い平均年齢は大体小学生と中学生が多いみたいですし。
……なんか色々と謝りたくなってきましたw
なるほど、そうだったんですね。
私もはっきりとは言えませんが、
ついさっき義務教育を終えたくらい。
妖日和でミケさんが腐女子板に居ることを知って、何も考えずに突撃した結果、
無言で戻るを押してしまうくらいの歳ですwww
(……私には少し刺激が強かった、デス)
って……はっきり言ってるようなもんですね、これw
ま、なにはともあれ。
これからもできるだけ更新して行くつもりなので、よかった読んでいって下さい。
では〜。
では、続けます。
千里はよく単純だと言われる。
楽しいことがあれば満面の笑みに、悲しいことがあれば泣き、嬉しいことがあれば走り回る。
そんな純粋な子供のようだと、良くも悪くも人からレッテルを張られている。
しかし実際には違った。
どんなに楽しそうでも、気にしていなさそうでも……歌を歌って忘れているようでも。
――今日、あの瞬間のように、心臓を誰かから掴まれるような不快感を、吐き気を催すような不安を、たった一人で知らず知らずのうちに抱えている時があるのだ。
そう、千里は単純な楽天家であっても馬鹿ではない。
本人に自覚はないが、さっきハナからチキンを貰いたった今食べ終わる瞬間まで、妖怪二人の言動・行動・目の動きから仕草に至るまですべてを観察し、その上で結論を下したのだ。
「おそらく悪意は無いが、信じるには行動、性格共に危険すぎる」と。
しかし、千里はそれを言わない。
いや、言えない。言葉にできない。
……だからこそ人には理解されない。
大抵の大人が怪王のように自分を子供扱いし、食べ物を与えたり、叱りつければ解決すると踏む。
それが当たり前だと、千里はそういう大人を見るたびに言い聞かせてきた。
……だが、今目の前にいるこの妖怪は自分に対して敬意を払い、頭を下げている。
そう思った瞬間、千里は不思議と嬉しくなった。
ハナに対して、そして何故かそっぽを向いているあいつに対して、
恐怖より、興味を覚え始めた。
だから千里はハナの頭に手を乗せながら、また舌足らずな回答を吐き出す。
「分かった……廊下の先、私の部屋」
お久しぶりです!
このティッシュ水に流せますを見てました!
君の隣での作者のにっきーです
覚えてるかな?
この小説もとても魅力で面白いです!
続き楽しみにしてます
初めまして。七不思議の秘密。の作者の神奈(かんな)です!
猫又様の作品は、書くのも上手くて、話も面白いです!とっても面白いです!
本当に天才としか言いようがありません…。私のは全然話も下手過ぎですよ…初心者なので…↓
これからも応援してます!続き楽しみです!!
確かに猫又さんの書く小説は上手いし、魅力的で面白いですよね。
あ、どうもミケです。
猫又さん、腐女子でもないのに腐女子板にいったらダメですよwあそこは腐った人にしか分かり合えない世界みたいなものなんですからw
腐女子でもない人がへたに行くと、やばいですから。
まるで子羊が狼の群れに行ったみたいなくらいのレベルに危険な場所ですからwいや、それは2chの801板だがwここの
腐女子板は分からんが、とにかく、腐女子でも腐男子でもない限りへたに行かない方がいいですw
とゆうか、私あそこでスレとかたててるんですか、まさか……見てしまいましたか……?(^_^;)
このティッシュ水に流せますの作者ですよね?
私は君の隣での作者です!
覚えてますか?笑
この作品もとても魅力で面白いです!
がんばってください
すみません!
2回同じもの投稿してしまいました!
パソコンが狂ったみたいで・・
本当にすみません!
ごめんなさい
あわわ、一気に4つもコメントが……。
放置しててすいません! そしてコメントありがとうございます!!
>>40
はじめまして神奈さん。読んでいただいて嬉しいです!
天才だなんてそんな……文法すらまだまだ未熟です。
でも、そう言って下さるととても励みになります!!
ヒマだったら読んで下さい♪ では、
>>41
こ、こんにちは〜ミケさん(震え声)
えっと、その……(^_^;)
妖日和が上がらなくなったので、どこにいるのかと……(~ω~;)))
( ゚д゚)ハッ! そうだ! 妖日和まだ続くんですよね!?
ミケさんの小説が上がらないと、何か私落ち着かなくて!
早く書けとかそういう意味じゃなくて、
続くのか心配なのでちょっと教えてくれませんか……?
(追記:上がってるのが目に入っただけで、詳しくは見てませんです……ハイ
なんか息が荒かった気がしますが、忘れることにしますです、ハイ……)
>>42
>>43
にっきーさん。コメントありがとうございます!
覚えてますよ〜前作から引き続き、ご愛読ありがとうございます!!
これからも、ひまだったら読んでくれると嬉しいです……が、
放置してた私のせいでしょうが、わざわざ二回もコメントしなくて大丈夫ですよ〜。
パソコンが狂ったと書いてありましたが、文面が微妙に違いますし、
パソコンはこんなに綺麗にバグらないのですw
あ、もちろん全く迷惑ではないですし、むしろ嬉しいぐらいなのですが、
私はコメントをくれた人はこうしてみんな目を通すので、
にっきーさんだけ無視するなんてことは絶対に無いです。
(この小説を放棄しない限りw)
勘違いだったらごめんなさい。では、
大丈夫です。
妖日和はまだ続きますし、失踪はしてません。
ただ、別のことに手がついちゃってwなので、続きは書く予定です。
すみません!
2回も同じようなこと書き込んだら迷惑かと思って!
もちろんです!
これからも見に来ますよ!
よかったら私のも見てください!( ̄▽ ̄)
応援してます!
>>45
そうですか〜。これからも見させていただきます。m(_ _)m
>>46
応援ありがとうございます!
更新遅いかも知れませんが気長に待ってくれれば幸いです。
では、とりあえず続きを書きます。
「よし! んじゃ隠れていいんじゃな?」
それを聞いた怪王は閑話休題とばかりに声を上げる。
「ジジ塚うるさい……おばあちゃんにバレる」
なんとなく雰囲気をぶち壊された気がした千里はそれを睨みながらも、どこか安心した様子で微笑んだ。
しかし未だに事態は好転していないと焦るハナは、すぐに怪王に鋭い言葉をかける。
「カイ、そっちはどう?」
すると、その言葉を待っていたと怪王はほくそ笑んだ。
「ちょうど『釣れた』ところじゃ……先に行け」
「分かった……。じゃぁ千里ちゃん、お願い」
「ん、こっち」
怪王を残してハナと千里は台所を抜け、千里の部屋に続く廊下へと身を隠す。
それを確認した怪王は、もうすでに階段を上り終えようとしていた千里のおばあちゃんに向けて――
――ではなく、あらぬ方向に向かって呟いた。
『ヒキコメ……!』
――瞬間、一階玄関から荒々しいベルの音が家中に鳴り響く。
誰かが玄関を、それも乱暴に開いたことによってドアに取り付けられたベルが振り切れたのだ。
「あらあら……お客が来ちまったねぇ。……千里ちゃん。大変だったら呼ぶんだよ〜?」
その音に敏感に反応したこの店の店主は、また階段を降り始める。
「はぁ……」
そんな店主の背中に向けて、怪王はやれやれと溜息を吐いた。
塵塚怪王。それは付喪神の――『モノ』達の王であり、王であり続ける存在である。
ゆえに彼はモノと意思疎通し、命令を下すことができる。
例えば千里の家、この店の前を歩いていた男性――の着ているシャツを男性ごと引きずって、
店のドアを開きながらこの店の中に男性を『ヒキコム』ことだって彼には朝飯前だろう。
そういうわけで怪我をした男性の治療で慌ただしくなった一階を尻目に、
塵塚怪王は千里とハナの後を追い、廊下の闇へと消えていった。
「やれやれ、とりあえず一段落じゃな」
下での騒動から数秒後。
「ワシ、仕事した」と言いたげな顔で、2人が待つ部屋へと歩く怪王。
誰も聞いていないというのにそんなセリフと安堵のため息を吐きながら、それほどキッチンから遠くない美咲の部屋のドアノブに手を掛ける。
――そう、ここまでは何も間違ってはいない。
少し自慢げな態度がしゃくに障るが、それでも嫌悪されるほどではないし、ピンチ(?)を切り抜けられたのも怪王のおかげなのは紛うことなき事実だ。
……が、ここで怪王はもう少し意識するべきだった。
「こっちは終わったぞ〜。そっちも無事か?」
自分が手を掛けているドアの先が、中3女子の部屋という名の魔窟であるということを……。
「……は?」
「ん〜?」
そこには、怪王が千里の部屋だと思って開けたその場所には。
半裸の少女と思いっきり顔を引きつらせる相棒の姿があった。
どうもミケです
最近遅くてすみません……
葉っぱ天国であっちこっちいって小説書いてませんね。
でも単編のはちょっと進みました。
フリートーク、交流とかあっちこっちにいって色んな人と話してましたw
日記で夢日記も書くようになりましたw
でも本当に疾走はしてません!これからも書くつもりです。そして猫又さんの小説白語りも読ませてもらいます。
もし急にいなくなったり葉っぱ天国のどこにもいなかったらそれはきっと異次元にいったと思って下さいwでは次きたらまた読みますね猫又さんの小説楽しみにしています。ではまた。
コメントありがとうございます、ミケさん。
ちょっとミケさんのコメントを見て思い出したことがあるので、語らせていただきます。
ミケさん前に、妖日和には自分の世界観があるって言ってましたよね。
私の書いている作品にも世界観があって、大体それに添って作品を書いてるんです。
でもちょうど1年前ですかね……。
小説書いてる友達に作品を見せたら、ぐうの音も出ないほど徹底的に批判されまして。
それから文字を打つことが苦痛になって、何で書いてるのか分からなくなって、
発狂しかけてた時期がありました。
で、巡り巡って辿り着いたのがこのサイトです。
『このティッシュ以下略』の時、初投稿って書いてましたけど、
このサイト自体は前々から来てたんですよね。
で、約一年。全く何も書かずにフリートークや交流板で話したり。
発狂しそうになったら人生相談板行ってましたw
で、そんな私の話は置いといて。何が言いたいかといいますと。単純に待ってますってことですw
書けない時って本当に書けないもんですから、
1週間後でも1ヶ月後でも1年後でもミケさんが書きたいときに書いて、
その時私がまだこのサイトに居たら、絶対にコメントします。……と、それだけです。
長々とすいませんな、では、
↑正しくは「すいませんね、では」ですw
……なんで急に上から目線になったしw
なんかゴメンナサイ。そして続き書きます(唐突)
そう、怪王は知らなくて当然ではあるのだが、千里はおやつを食べた後は隣の風呂場で学校指定の制服を脱ぎ、そのままほぼ半裸で部屋まで行って部屋着を着る習性があるのだ。
(珍生物・千里大百科より)
そういうわけで制服のままじゃおばあちゃんに怪しまれるとナチュラルに服を脱ぎ始めた千里をハナが必死に止めようとした瞬間に怪王が現れた、ということなのだ。
「……あ……お、おぅ」
色んな意味で予想外な光景に、思わず開け放たれたドアから離れる怪王。
たしかに彼が一方的に悪いなんてことは無い。
警戒していなかった怪王も、数秒でケリが付くとは思わずに油断していた2人も悪いといえば悪い。
しかし、部屋に入る前にノックぐらいはするべきだった……!
その点において、やっぱり今回のことは界王が悪いと判断せざるを得ないわけだ。
それに悲しいかな、その顔は完全にどこからどう見ても学生を見て喜ぶ犯罪者のそれである。
こんなジジイ(見た目は高校生)を見て、通報しない人がいるだろうか。いや、いない!(むしろ家に連れ込んでこってり叱って……ゲフンゲフン)
と、取り乱してしまったが、そういうわけで問答無用の有罪判決を喰らってしまった界王は、苦笑いを浮かべながら一目散に駆け出した。
「そ、外に出とった方がええかのぉ〜あは……はぁあああああああああああああああ!!」
――が、予定調和。
無言のうちにその4文字で表せる一連のやりとりをハナと終えた怪王は、やはり逃げる前に顔面を頭蓋骨が割れるレベルで掴まれてしまった。
「今の千里ちゃんを凝視しておいて、一体どこに行くのぉ? 怪王さまぁ〜♪」
普段は絶対に言わないぶりっ子セリフをドスの効いた声で叫ぶハナ。
だが、もはやハナに顔面を掴まれ首吊り状態になっている怪王はそれに怯えることさえ出来ず、静かに気絶していた。
「はぁ、全く……お互い運が無いわね」
それを確認するとハナはさっきまでの威圧的な態度から一転、どこか自愛に満ちた表情を浮かべると、半裸になっている千里に向き直った。
「ごめんなさいね千里ちゃん。こいつホント馬鹿だから許してあげて……」
千里は部屋着に袖を通しながらそれに答える。
「ん? ……私、気にしないよ?」
「気にしなさい……。女子として」
千里は全く恥じらっていなかったが、それでもハナは一般常識的にアウトだと判断したのか、握っている怪王の頭に向かってつぶやいた。
『1分21秒前までの記憶』
すると気絶している怪王の口から、なにやらピンク色に発光する液体が溢れ出したかと思うと。
まるでここが無重力下であるかのように球状となって、ハナの左手に収まった。
「……ふーん」
単にそれだけを見ればピンクの水晶球と見間違えるほど綺麗なそれをハナは色々な角度から眺め、それに飽きるとそのピンクの球体を高々と掲げ言い放った。
『是(これ)、浮世に望むモノ無し』
――瞬間、ピンクの液体は四方八方に飛び散り、蒸発するかのように消える。
それと同時に怪王の体がビクンと跳ね、その反動で怪王の頭がハナの右手から転げ落ちた。
もし人間なら頭蓋骨が陥没(かんぼつ)しているんじゃないかと思うほど鈍い音を立てて落ちたそれを、しかしハナは平気で眼中から消し去り、
再びハナはすまし顔で千里へと向き直った。
「さぁて、これでさっきのことは全部『水に流された』。……これで気兼ねなくあなたに本当の目的を話すことができるわね……白凪千里」
ほどよくキャラが立てられていて面白いな〜
文章も言葉選びが背伸び感ないし適切で違和感なく読めるので尊敬します
comさん。コメントありがとうございます!
接続詞等々、まだまだ至らぬ部分があって、
読みにくかったり、展開が遅かったりしますが、
暇な時にまた読んでいただけると嬉しいです!
猫又さん……過去にそんなことが………
どうも、ミケです。
猫又さん過去にいろいろあったんですね、それでああいう良い小説が書けるわけだ。
今回も楽しく読まさせてもらいました。
久しぶりに来ました!
猫又さんは本当に文才がありますね!
尊敬します!
この物語ってまだ続きあるんですよね?
楽しみにしてます!
私の方も更新したので見に来てくれると嬉しいです!
ミケさん、にっきーさん。コメントありがとうございます!
>>57 ま、未だに怖いですけどね……批判されるのw
忙しい中読んでくれてありがとうございます!
>>58 お久しぶりですにっきーさん。
続きはありますよ〜。
……短篇集的なのでほぼ無限にw
でもストーリーは最後まで完全に組み立て終わってます。
(前作の時点でもう見通しはついてたので)
だから、一見ギャグテイストなこの3人の会話も……。
書いてて血の気が引きますね、うん。
それはそうと更新したんですか? 見に行きます!
……感想屋やってる癖で、ぶった斬ってしまったらスミマセンw
ではまた。
追記:続き書きますが、前回の文を大幅に修正しています。ご了承下さいm(_ _)m
『是(これ)、浮世に望むモノ無し』
――瞬間、ピンクの液体は四方八方に飛び散り、蒸発するかのように消えた。
それと同時に怪王の体がビクンと跳ね、その反動で怪王の頭がハナの右手から転げ落ちる。
もし人間なら頭蓋骨が陥没しているんじゃないかと思うほど鈍い音を立てて落ちたそれをハナは平気で眼中から消し去りつつ、
「……これで、さっきの記憶は全部消えたわね」と満足そうに頷くと、すまし顔で千里へと向き直った。
「さて、そろそろ真面目な話をしましょうか……」
後ろに白目で倒れている怪王が居ることを除けば、極めて真面目な様子でそう切り出したハナは、それと同時にパチンと指を鳴らす。
するとまるで千里の部屋全体に魔法がかかったかのように、怪王が閉め忘れた部屋のドアが怪王を部屋の中に蹴り入れながら突然閉まり、部屋に散乱していた辞典は順番通りに本棚へ戻り、カーテンが外の景色を隠すと同時に部屋の明かりが点いた。
が、千里はそんな怪奇現象にも全く動じず「真面目な話?」とハナの言葉に応じる。
その反応が妖怪の端くれとして面白くなかったのか、ちょっと不機嫌そうにハナは続けた。
「そうよ、真面目な話。どうして私達が『付喪神の代表として』あなたを尋ねたのか。その理由を正直に話すわ……」
「……同居(どうきょ)じゃないの?」
「それは本屋にあった少年向け漫画を見て『ほら! ワシもイケメンじゃし? ハーレムできゃっきゃうふふしてもおかしくないじゃろ? な?』って言ってた馬鹿の戯言よ。……水に流して」
「分かった」
ハナに握り潰され、ドアに蹴飛ばされた付喪神の王(笑)を見据えながら黙って頷く千里。
ハナは緩んだ空気を咳払いで元に戻すと、すぐに仕切り直す。
「そういう訳で私達があなたを頼ったのは、そんな煩悩の為なんかしゃなくて、私達の種族――付喪神を救ってほしいからなのよ」
「救う?」
いきなり規模のでかい話が飛び出したので、そんなことができるのだろうか? と眉をひそめる千里。
しかし「あ〜違う、違う」とすぐにハナが言い直した。
「私達はたしかに妖怪。人を超えた怪力や能力を持つ存在ではあるけれど、なにも私達と戦ってくれってことじゃないの……」
「? ……よく分かんない。ハナさんの言うこと……難しい」
頭の上に?マークを浮かべながら、こくんと小動物のように首を傾げる千里。
「え、あ……あぁ、ごめんなさい。混乱させちゃったみたいね! もっと分かりやすく言うから聞いてね? うん」
おそらく和人が見たら一撃必殺となるであろうその困った顔をもろに直視してしまったハナは、さっきまでの傲慢な態度はドコへやら、
まるで幼児に泣かれた近所のおばさんか何かのようにゆっくりとやさしく千里に語りかけ始めた。