なんであたしがシンデレラ!?

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1:アイ子:2014/08/09(土) 15:09 ID:ZCM

あたし、児玉百花。高1です。
あたしは今一世一代のピンチに遭遇中で……。

って、いきなり言われてもわかんないよね。まずは自己紹介!

あたしは桜の森高校に通う一年生。部活は女子テニス部。
顔も頭の偏差値も普通の、特に秀でたところも無い16歳なんだ。
家族構成は父と母と大学生の兄が一人。

あたしの部活は女子テニスなんだけど、夏休みに突入してからずーっとサボってて
行ってなかったんだよね。だってめんどくさいし。

だから今日もいつもみたいに部活サボって近所の本屋で立ち読みしてた。
そしたらね……、いたんですよ! 部活の先輩が!

本屋に居たのは部の中でも超コワい2年生の三人組。
一番美人でテニスもうまいのが中森先輩、そしてその取り巻きの飯田先輩と佐藤先輩たち。

3年生が試合に負けてあっさり引退した今、部の実権を握ってるのはこの人たちなんだよね。

あたしはやばいと思った。この人たちは今日も部活あったから、
絶対いつも来てないあたしのこと怒るよね……。

お説教されると思ってあたしは本棚の陰に隠れた。影から様子を伺っていたんだけど、どんどんこっちに来る。

逃げたらやましいことでもあるのかって疑われちゃうから、潔くそこにいることにした。

「あれ? 児玉さんじゃない!」
真っ先に声をかけてきたのは佐藤先輩。

「あ、偶然ですね…。こんにちは〜」
あー、最悪だよ……。

「ねえねえ、美佳。児玉さんって最近全然部活来てないよね?」
中森先輩の下の名前は美佳だ。飯田先輩はやっぱり気づいてたか……。

「そういえばそうね。今日も部活あったわよ。今はその帰り。部活に来ないでこんなところで何してるの?」
中森先輩があたしを睨みながら言う。

「あ、いや今日はちょっとその……」
もごもご答える。言い訳なんて見つかんないよ〜!

「今日だけじゃないでしょ。いつもいつも来てないし」
怖い声でいう。

「ねえねえ美佳ぁ。この子お仕置きしちゃおーよ」
飯田先輩が甘ったるい声で言う。お仕置き!? なにそれ! 怖い!

「お仕置きって?」
中森先輩と佐藤先輩が尋ねると、飯田先輩は2人にコソコソ耳打ちをした。

「キャハハハッ! い〜ねそれ! 理央ってば怖い〜!」

ちなみに飯田先輩の下の名前が理央で、佐藤先輩は亜美だ。
でも、お仕置きっていったい何? まさか殴ったり蹴ったり!? どうしよ…。

「あの、お仕置きって何ですか……?」


「告るのよ。あんたが和泉くんに告ったら許してあげる」

33:飛鳥:2014/08/26(火) 09:29 ID:sAo

ファイトォ!私も頑張らなきゃ!

34:猫又◆Pw:2014/08/26(火) 16:59 ID:FQs

 私からも、ファイトッ! (色々言っといて何ですがw)

35:飛鳥:2014/08/28(木) 19:20 ID:sAo

アイ子ちゃん!!!
どうだった?OK?

36:アイ子:2014/08/31(日) 17:42 ID:ZCM

「じゃーんっ!」

動物園の広場に行ってあたしは早速お弁当を出した。カバンの中で崩れてないか心配だったけど、大丈夫みたい。

「うまそーじゃん。いただきます」

先輩は早速卵焼きを口に運んだ。しばらく何も言わずに黙って食べている。

「どうですか……?」

「……うまい」

少し微笑んででそう言った。良かった……。

「良かったぁ……。美味しくないって言われたらどうしようかと思いました」

「何かいいよな。こういうの。俺あんまり食ったことなくてさ」

そうなんですか? とあたしは尋ねる。どれもお弁当の鉄板だと思うけど、食べたことないのかな?

「うん、まあ家が家だし。でもすげえうまいな。お前も食えよ」

「はい、いただきます!」

そっかぁ……。お金持ちだから食べたことないのか、こんなふうに庶民的なもの。これからもあたしが
作ってあげようかな、な〜んて。

でも我ながら美味しいなあ。良かった、先輩の口に合って。おにぎりを食べていると、先輩が訊いてきた。

「お前さ、誕生日いつ?」

「あたしは5月5日です! こどもの日なんですよ!」

子の誕生日はちょっと自慢だ。友達からは覚えやすいねとよく言われる。

「マジかよ……」

「えっ……。何か問題でもありましたか?」

「いや、うん。まあ……ね?」

気になる! 何その言い方!

「何ですかその言い方! すっごい気になるんですけど! はっきりしてください!」

あたしが身を乗り出して問い詰めると先輩は答えを言うのに迷っているよな素振りを見せた。

「どうしたんですか? 教えてくださいよ〜」

「んー、まあね……。ほら、お前も早く食えよ。あとで腹減るぞ」

はぐらかされた……。まあ、いっか。あとで絶対問い詰めてやるんだからね。

「はーい」

あたしは素直に返事をしておにぎりを頬張った。やっぱりこの味最高!!

37:アイ子:2014/08/31(日) 17:43 ID:ZCM

お昼の後、急に雨が降ってきた。

二人とも傘なんか持っていなくて、走って近くのコンビニに入って雨宿りしていた。

「雨、だんだん強くなっていってね? 気のせい?」

「気のせい……じゃ、ないと思います」

最初は小雨程度だったので平気だと思い動物園でねばったけど、だんだん強くなっていく雨に耐え切れず避難した。
これじゃ傘が役に立たないほどなので、とりあえずここで立ち読みでもして待とうという事になった。

でも、雨はさっきよりひどくなっていった。

「これ、災害起こるレベルだと思うんだけど。天気予報でやってたっけ?」

「今日は晴れるって言ってましたよ」

「…………」

あたしも、そして多分先輩もテンションが急激に下がっていた。お昼の後からはシロクマの赤ちゃんが見られる予定だったのに、
あいにくの雨で中止になってしまったんだ。

シロクマの赤ちゃん……。見たかったのにな……。

それだけじゃない。デートだったのに、こんな普通のコンビニで雨がやむまで待つだなんてつまらなすぎる。

先輩と一緒にいられるのは嬉しいけど、あんまり長い事ここにいると店員の目がちょっと気になってくる。
さっきからあたしたちの付近をやたらとモップ掛けしてくる店員もいる……。そんなに帰ってほしいか! あたしだって帰りたい!

「埒が明かない!」

先輩はちょっと怒り気味に言うと、スマホを取り出した。どこかに電話をかけてるみたい。

「今タクシー呼んだから。百花の家まで送ってくわ。ほんとごめんな」

「えっ! そんな! いいのに……」

それに……。それに、もっと先輩と一緒にいたい。まだ三時だし、門限まではたっぷり時間がある。
せっかくのデートを! 雨のせいで! 神様のばかやろー! 大自然のばかやろー!

すぐにタクシーがやってきた。濡れないうちに急いで乗り込む。

「この子の家まで。百花、道順説明してやって」

「……はい」

よし、いいこと考えた♪

あたしは言われた通り道順を説明した。あたしの家までじゃなくて、先輩の家までの道のりを。
途中、先輩が「あれ? こっちって……」とか言ってたけど、それを遮って運転手さんに「そこ右です」なんて
ちゃっかり指示してた。

で、先輩の家にたどり着いた。

「え? なんで?」

先輩は戸惑っていた。あたしの家に送るつもりが、自分の家に着いちゃったんだもんね。
でもあたしは運転手さんに言った。

「ここです。オジサン、ありがとうございました!」

「いや〜、お嬢ちゃん可愛いからねぇ。彼氏君もなかなか男前だね。半額にしてあげる」

「え? いいんですか?」

「うん」

運転手さんはメーターをちょっといじった。本来の値段とは半分の額を請求され、あたしと先輩が割り勘で払った。
でも、運転手さんいい人だな。あとで会社の人に怒られないといいけど……。

「あのさ、なんで俺の家?」

「帰っても暇だしすることないんです、勝手なことしてすみません。それに……」

「それに?」

「……先輩と、もっと一緒にいたいなーって……えへへ」

「……行くぞ」

先輩はあたしの手を引いて門をくぐった。行くぞって言った時、ちょっと先輩の顔が赤かった気がするのは気のせい?

38:アイ子:2014/08/31(日) 17:45 ID:ZCM

玄関に入る。やっぱり素敵なお家!

「部屋行ってて。場所分かるよな? 飲み物取ったら行くから」

「はーい」

階段を上がって、小声でおじゃましますと言いながら先輩の部屋に入る。

どこに座ってよう? ベッドでいいかな? ベッドに浅めに腰掛ける。やっぱ高級ベッドって感じで落ち着かないんだよね。
5分くらい待ったけど、先輩が戻ってこない。どうしたのかな? なんとなく部屋から出て廊下で耳をすませる。

聞こえてきたのは、ザーッという水の音。もしかして、まさか、まさか! 先輩、シャワー入ってる?

どういうこと? やばくない!? あたしこのまま押し倒されちゃったりするわけ?

っていうか先輩、玄関からそのままシャワー行ったよね? 着替えらしきものも持ってなかったし……。

着替えはこの部屋にあるだろうし……。当然、この部屋に戻ってくるよね? 裸で? いやいやいや!

あたしはパニクって優香に電話をかけた。

「もしもし優香!? 今ね、先輩の家なの! 家で二人っきりなんだけどね、なんでか先輩シャワー入ってて!
どうしようどうしよう!」

「落ち着け百花。きっとそれは……。それは……」

「何!?」

「大人の階段を上る時が来たのよ」

切れちゃったよ! ってか何? 大人の階段って! そういうことなの!? 先輩ってそんな肉食系だっけ!?

あたしがあたふたしていると、ドアが開いた。あたしは真っ赤になって先輩から目をそらす。

だって先輩は、上半身裸にトランクス一枚だったから。首にはタオルをかけ、少し濡れた髪……。はっきり言おう、超セクシー!

「おー、ごめん。待たせた」

涼しい顔で言う。

家ではお兄ちゃんがしょっちゅう今の先輩と同じような格好でうろうろしてるから男の人の裸は結構見慣れてる。
でも今は相手が和泉先輩! あの和泉隼人だ! 先輩ファンの子が見たら失神しちゃうんじゃないかっていう過激な格好。

「飲み物取りに行ったんだけど、雨で体冷えたんだよ。シャワー浴びてた。待たせてごめんな。
あったかいの入れたから飲めよ。お前も冷えただろ」

先輩はホットココアを差し出す。まあ上半身裸なんだけどね……。

でもあたしもだいぶ体が冷えてたので、言われるままにココアを飲む。美味しい……。ほっとする感じ。
濃厚な味。きっとスーパーで売ってる安いのじゃない。高い缶のココアだろう。

ココアに舌はほっとしてるけど、心臓はそれどころじゃなかった。まともに先輩を見られない。早く服着てよ!
すると先輩はクローゼットからTシャツとジーンズを出して着始めた。何それ? 公開着替えしないでよー!

「お前も冷えただろ?」

先輩があたしの腕に触れた。先輩の手は温かかった。

「お前、腕冷た! シャワー浴びてこいよ! 風邪引くぞ?」

「へっ!? いいですって! 平気です!」

思わずすっとんきょうな声を上げた。やばいって! 家には恋人が二人きり。しかも二人はシャワーから上がったばかりで……。
うわああああ! 何いやらしい想像してるんだあたしは! 先輩がそんなことするはずないって!

「いや、ダメだ! 入れ! その腕の冷たさは死人レベルだ!」

半ば強引に脱衣所まで連れていかれた。先輩が、シャンプーはこれ、タオルはこれ使えなど指示してくる。
まさかホントに入るわけ?

「あの……、ホントに入らなきゃだめですか? あたし大丈夫なんで……」

「いいから入れ! 俺は自分の部屋にいるから覗きなんてしねえから!!」

力強く脱衣所の戸を閉めて先輩は出て行った。仕方ない……。あたしは服を脱いでお風呂に入った。
広いお風呂……。言われた通り頭や体を洗う。浴槽にはお湯が張ってあったので温まった。

あー……、気持ちいい……。

思う存分温まってお風呂を出た。ドライヤーで髪を乾かし、服を着て先輩の部屋に戻った。

「上がりました〜。気持ち良かったです、ありがとうございました」

「だろ? お前あのままじゃ風邪引いてたぜ?」

良かった。押し倒されたりなんてするわけないよね。あたしの考え過ぎだって。ちょっと反省……。

39:アイ子:2014/08/31(日) 17:45 ID:ZCM

すると、

「百花……」

と言いながら先輩があたしの髪に触れてきた。

先輩の顔がだんだん近づいてくる……。これって……。キス? だよね? そうだよね? やばい! どうすれば!
心の準備ができてない! だいたい目とかは瞑った方がいいわけ? ど、ど、ど、どうしよう!

その時だった。

チャラリン、チャラリン♪

あたしのスマホの着信音が鳴った。優香から電話だ! これだー!

「あっれー! 友達から電話だ! どうしたのかな!」

必死に演技をしてスマホを持って先輩の部屋を出て電話に出た。

「もしもし?」

「あ、百花。あのね今、エッチの極意を教えようと……」

「ありがとう! 助かった〜!」

「へ? 何が?」

「今、先輩にキスされそうになって……。あたし焦って、どうしていいかわかんないし、そういうのはまだいいかなって
思ってたの。あと少しのところで優香から電話来て! 助かった〜! ありがとうっ」

「はぁ? なんで? キスぐらい許してあげなさいよ! 向こうも溜まってるのよ!」

「う〜〜〜っ! 優香にはわかんないでしょ! あたしはそういうのまだいいから!」

電話を切った。優香には感謝だけど、ちょっとひどいなって思う時もある。言い忘れてたけど、優香はかなりモテる。
本人曰く「寄ってくる男なんて吐いて捨てるほどいる」らしいから、しょっちゅういろんな男の子と関係を持つ浮気性っぽい子だ。

顔が近づいただけであんなに心臓がバクバクしたのに、キスなんかしたら死んじゃうんじゃないかって思う。
ましてやその先まで行ったら……。考えただけで心拍数がぐっと上がった。

っていうか、どうやって部屋に戻ろう……。あんな寸止めだったら、先輩もきっと怒ってる。

とりあえずそ〜っとドアを開ける。

「あ、今友達から電話で……」

言い終わる前に、先輩が切り出した。

「嫌だった?」

「えっ……」

「聞くつもりはなかったけど、会話聞こえてた。で、嫌だった?」

「や、あの、そういうんじゃなくて……。嫌っていうか、緊張するし、心臓持たないと思うし、初めてだし……」

言い訳とも取れる言葉を並べていく。こんなので納得してくれる? 先輩の顔を見た。

「俺もだけど」

「え?」

「俺も初めてだし、緊張するし、心臓ヤバかった」

先輩もファーストキスなの? こんなにモテるのに……。しかも、あたしと一緒だったんだ……。

「それでも……ダメか?」

「……ダメじゃないです……」

「ありがとう」

すごく優しく微笑んで、先輩はあたしの髪に手で触れた。
それから、だんだん顔が下がってきて、あたしたちはお互いの唇を触れあわせた。

ホントに一瞬で、でも確かにキスはして、先輩の唇は柔らくて熱くって。あたしは満たされた気分になった。

頭がくらくらした。ぼーっとして、それからどうやって帰ったかも覚えてないし、でも、ただただ幸せだった。

40:motti:2014/09/03(水) 20:01 ID:94A

この作品、8行読んですぐファンになりました!!
小説家、なってくださいお願いします!
中1の小説家もありえますって!

41:motti:2014/09/03(水) 21:08 ID:cqQ

42:motti:2014/09/03(水) 21:10 ID:Ex2

わろw

43:アイ子:2014/09/04(木) 16:14 ID:ZCM

>>41,42
笑えましたか?

44:飛鳥:2014/09/23(火) 17:01 ID:sAo

きゃーー!!!!
やばいよ〜!アイ子ちゃんどんどん上手になってるぅ!

45:飛鳥:2015/10/04(日) 20:32 ID:umQ

アイ子〜いる?

46:コノハナ姫◆/6:2015/11/16(月) 22:06 ID:x3o

この作品すごく好きです。
最近更新されていないようですが、
大丈夫でしょうか?
続き楽しみにしてます。

47:飛鳥:2015/12/29(火) 12:07 ID:4QE

ちょ、人の夢笑うとかサイテー!!


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