短編とか台詞とか。練習用とか趣味とか。なんか、そんな。
19:∵:2016/01/08(金) 02:47 ID:QLI ◆救われない世界と防具屋店主
◆祭囃子ノ化ケ隠シ
◆**されたかった
◆赤い靴の子鹿
#8 幸せな結末
例えば。赤頭巾はお祖母さんのお見舞いに行って、変装していた狼に食べられてしまいました。終わり。
例えば。白雪姫は悪い魔女に騙されて、毒林檎を口にして、死んでしまいました。終わり。
例えば。日々酷さを増していくいじめと、喧嘩ばかりの両親。学校にも家にも居場所を無くした私は、耐えかねて屋上へやって来ました。死ぬためです。
「……終わり」
快晴の空の下、私はなんの迷いもなくフェンスを乗り越えた。
吹き付けるは、湿気を含んだ夏の風。梅雨の終わりを告げている、清々しいほど心地よい。
下を見れば、気が遠くなるほど遠くに見える地面。きっと冷たくて、容赦のないアスファルト。
ここに来て足がすくむのは、生きることにすがっているのではない。本能的に死を拒んでいるのだ。
馬鹿みたいに高鳴る鼓動と徐々に乱れている呼吸に、自嘲ぎみの笑みが溢れる。
生きることが苦痛なら、死を望むことは免れない。生きる理由を無くしたのに、死を恐怖するのなら、どうすればいいの? 道はない。ならば早く死ね。そうするしか、ないのだから!
ズルリと地を離れ、振り上げた右足は、宙を踏みつけて。重力は無慈悲に脚を引っ張って。後、一息なのに。後ろ手に掴んだフェンスをゆっくり手放して。
「赤頭巾は森の狩人に助けてもらうし、白雪姫は王子様のキスで目を覚ます。それじゃあ君は?」
突然の声に驚いて振り替えると、見覚えのある少年。同じ学校の制服に身を包んで笑っていた。
「何しに来たの」
今にも泣きそうな私は、声を震わせて尋ねた。彼がなんのためにここへ来たのか分かっていたから。止められることが、死ねないことが怖くて仕方がなかったから。
彼はやはりというか、当たり前のようにゆっくり此方へ歩み寄ってくる。嫌だ、止めないで、止めないで。
「来ないで!」
相変わらず震えた声で叫んだ。
フェンスを強く握り締めた両手から、ゆっくりと力を抜いていく。その指先も酷く震えていて、冷たかった。
「……このまま死ぬの?」
「お願い。止めないで」
「止めないよ」
ドクン、と自分でも解るほどの心音。
彼がまた、ゆっくりと近寄ってきて口を開く。
「ヒーローは常に遅れてやってくるものさ」
彼の両手が私の肩を掴む。彼の手も僅かに震えていた。
「死にたいのに、死ねないんでしょう? 僕と言うヒーローが手伝ってあげるから、安心して」
恐怖にひきつった顔の私に優しく微笑みかけると、彼は軽く私の肩を押した。
「でも、物語の素敵な事は、だいたい最後の方に起こるんだよ」
「___えっ……?」
彼の手が離れたかと思うと、次の瞬間には何故か抱き締められていた。押し退けることも出来ないくらいしっかりと。
「君は、遅れてやって来たヒーローが幸せにするんだ。君の望んだ命の終わりなんていう、偽物の幸せじゃない」
私は馬鹿みたいに泣いていた。嗚咽を溢して、子供みたいに。
「僕が、君を幸せにするヒーローになるから」
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Mozilla/5.0 (Nintendo 3DS; U; ; ja) Version/1.7622.JP ……はっきり言おう。貴様は未熟だ!
>>18 続き
命は罪で、存在は災い。白い髪や人よりも色素の薄い肌と瞳は、悪魔の象徴と言われた。忌み嫌われ、姿を見られれば石を投げられた。
居場所なんて何処にも無い。勿論誰にも必要とされない。こんな扱いを受けるくらいなら死んだほうがマシだって。わかっているくせに何かにすがりついて生きようとした。黒い布を目深に被り、姿を隠しながら、常に周り人間に怯えながら。
僕は人間の真似をする白い悪魔で。それは酷く滑稽なものだった。