僕+X=日常

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1:須見:2016/03/02(水) 21:49 ID:M.c

初めまして須見です。
好奇心から小説書きます。
恋愛ですが、私自身ありきたりな恋愛話はは好みません。嫌いです。
なので、ヒロインの女の子がちょっと壊れてます。(俗に言うヤンデレ)
「僕」主観ですが、作者は女ですのであしからず。ちょっとグロいかもしれません。

登場人物紹介は小説の中でしていきますが、難しい漢字を使った名前が出てきますので、読み方等分からなかったらなんなりと聞いて下さい。
そして、私の拙い文章ではやっぱり登場人物は把握しきれない!という場合は言ってくれれば書きます。初めてなので、どういう紹介文を書いていいか分かりませんが、あまり書くとくどくなるので割愛させて頂きます。
是非、読んでくださいね

2:須見:2016/03/02(水) 22:06 ID:M.c

第1章 〜僕と日常〜

ここは、とある田舎町。
今は2月後半だが、春なんていう雰囲気は微塵も感じられず、一面の田畑が見えないぐらいの雪に覆われていた。
気温は・・・言うだけで寒くなりそうだから言わない。
過疎化が進むこの町は、朝は特にひっそりしていた。
ああ、申し遅れたね、僕は天野光。18歳、高校生。
趣味は、ゲームと読書。
最近1番良かった事は、彼女の柚子葉が作ったガッチガチに凍ったチョコレートを食べたこと。
え?柚子葉って?さっき言っただろ、僕の彼女だって。
後で紹介するよ。
と、噂をすれば。
柚子葉が全力で突進してくる。
「ひーかーるーーーー!!!」
衝撃に備えて身構えたけど、貧弱な僕はあっさりと倒れ、道路にしたたかに体を打ち付けた。
・・・なんでここだけ除雪作業したんだろう。痛いじゃないか、と八つ当たりに近い怒りをぶつけてみた。
一方、柚子葉は無言で僕の顔にほっぺたスリスリ。
「柚子葉、どいて」
「え?ああ、ごめん」
悪びれもなくしれっと言って、僕の体からどくが、すぐに僕の手を引っ張って無理やり起こしてきた。
途中でよろけるが、即面からの衝撃によって体制を立て直した。(誰の攻撃かはお察しください)
この子が、篝火柚子葉。同じく18歳。柑橘感溢れる名前。
この町でも結構大きい神社の一人娘で、その為か漆のように黒い髪の毛は腰のあたりまで伸ばしてある。うん、真っ直ぐなストレートでございます。
全体的に整っていて、可愛いよりも綺麗という言葉が似合う女の子だ。
運動はできるが、勉強はさっぱり、特に数学が壊滅的らしい。
でも、運動ができるといっても、ずっと長い距離を長時間走ったりするのはあまり得意ではなく、(といっても女子の中で1位か2位を争うほどの持久力と足の速さの持ち主だが)どちらかというと身の回りのものを駆使して走り回ったり飛び回るという一種のパルクール的なものが得意らしい。だってパルクールの方が体力使うもんね。長距離は苦手、じゃなくて景色が一定でつまらないから嫌い、と前に言っていた気がする。
え?僕?僕は運動はサッパリだけど勉強なら・・・ということで、自分では屈指の頭脳派と自負している。
「ね、光。昨日のニュース見た?」
「え?ああ、うん、見たよ。殺人鬼のニュースだよね?」
「そうそう。中学生が、下校時刻に殺されたんだって。多分、トマトケチャップみたいに」
トマトケチャップ。この町では殺人鬼が出没していて、殺した人間をスコップか刃物かで原型を留めないほどにぐちゃぐちゃにされる。
因みに犯人は猟銃も持っているようで、出くわしたら天使か鬼を待つしかない。
しかし、僕らはその殺された人を一回見てしまい、その悲惨極まりない姿が未だに脳裏に焼き付いて離れない。
まるで、本当にトマトケチャップのようだった。
「ああ・・・可哀想にねぇ」
「ううん、全然?だって、光が大丈夫だったら私全然平気!!」
「・・・もし、僕がやられたら?」
「絶対ないと思うけどなぁ・・・だって光は私が守るから!!」
「もしもの話だよ」
「うーん、だったらねえ・・・光がやられた分の何百倍にもして相手に返す!でね、自分も死ぬ!」
ふむ、要するに原子分解レベルという事ですな。犯人も可哀想に。嘘だけど。
殺されるのは真っ平ごめんだ。
しかも、死んでもついてくるとは、相当な覚悟ですな。
「あ、1つ聞いていい?」
柚子葉が突然、思い出したように振り向く。
「ん?何かな?」
「光は、私が死んじゃったらどうするの?」
一瞬、返事に困った。
なんとも重い空気が流れる。
「・・・僕も、一緒に死のう」
少し言葉を濁して、柚子葉と同じ回答をしておいた。
「やったー!天国でも地獄でもどこまででも光と一緒!」
そう言って飛び跳ねて喜んでいるが、実際、柚子葉が死ぬなんてありえない。あー、別に鋼の体を持っているとか、サイヤ人みたいに銃弾を手で握り潰すとかではなく。
恐らく、ナイフ一本じゃ返り討ちにされる。
柚子葉は神社の巫女としてかなり舞などの修行を積んでおり、巫女なのでかなり大切に扱われたらしく、護身術を習っていたとか。
だから、ナイフは常に常備。え?銃刀法違反?刃渡が足らないよ。
でも、流石に銃が出てきたらなぁ・・・撃たれたらそりゃあ死ぬだろうし。

3:須見:2016/03/02(水) 22:14 ID:M.c

僕が有り得ないって言ったのは、この広い街で殺人鬼と出くわしてしまう可能性が限りなく低いって事と、さっきも言ったように柚子葉の身体能力がとても高いこと。
恐らく、ナイフ一本じゃ返り討ちにされるし、猟銃でも不意をつければ仕留められる・・・はず。
僕は貧弱なので、柚子葉んl能力を過大評価し過ぎている部分がある。僕の話はあまり信用しないように。
ということで、殺人鬼とばったり運命の出会いを果たしてしまうほど僕らは運が悪く無いと思う。うん、信じたい。
まぁ大丈夫でしょう。僕らに限ってそんなことは・・・
あ、自分でフラグ立てちゃった。回収したく無いなぁ・・・折れるかなぁ。

4:須見:2016/03/02(水) 22:17 ID:M.c

訂正、柚子葉んlとなっていますが、柚子葉でお願いします。

5:猫又◆Pw:2016/03/03(木) 00:40 ID:NNE

 こんにちは、猫又と申します。
勝手ながら読ませてもらいましたw
 描写が独特で語彙も多い。
内容もなかなかクセがあって面白いとこの時点で感じました。

 ただ主人公の性格と話の方向性を見失ってる感は否めませんね……。
上手いことを言おうとして主人公の性格が破綻している部分がありましたし、なにより表現がややこしくて感情移入できないと共に、シーンを複雑にしようとして話がそれるのでストーリを把握しずらかったです。

『このシーンで読者に伝える情報』を3行で書き出したりして、方向性を定めるともっと読みやすくなると思います。
あ、悪口でスミマセン。こんなんですが応援してます。それでは、

6:須見:2016/03/03(木) 06:04 ID:M.c

おはようございます。
的確な意見をありがとうごうざいました。
自己紹介でも書いたように、私は小説を書くのが初めてですので、そういう意見はとても有難いです。
参考にさせて頂きます!

7:須見:2016/03/03(木) 17:33 ID:M.c

さて、殺人鬼と柚子葉の話はこれで終わり。
もう学校へ向かわないと、遅刻する。
「柚子葉、ここで止まって話してないで、学校へ向かいながら話そう」
至極普通の言葉だったが、柚子葉は頬を膨らませて、そっぽを向く。
「光と席が隣じゃない学校なんて、行く意味ないもん」
「・・・いや、隣じゃないって言っても、僕は柚子葉の斜め後ろだし。近いと思うけど・・・」
「隣がいいのーー!!だって私光が見えないもん!ずっと眺めてたいのー!!」
・・・僕は見ようとしなくても絶対に視界の隅に柚子葉は入るからなぁ。
いやいや、別に柚子葉の姿が見たくないって訳じゃなく。閑話休題。
「でもー、光が行きたいって言うなら、仕方なくついてってあげるー!私ってなんて優しいお嫁さんでしょー!」
頬に手を当てて、くねくねと体をうねらせる。
・・・嫁ってなんだよ。嫁じゃないし。彼女だし。・・・今はまだ。
「さぁ、早く行くよ。僕まだ無遅刻無欠席なんだから」
そう、だから遅れたくないのだ。
無遅刻無欠席は大変名誉あることだ・・・多分。
僕は不良じゃないし、授業も毎回絶対に寝ない、超真面目だから。
・・・当たり前だって?いや、当たり前のことを続けるのが難しいんじゃないか。
と、ちらりと携帯を時計を見た。
・・・普通にやばい。
「柚子葉!走るぞ!遅れる!」
「うーん」
柚子葉がいやいや足を動かす。
どんどん早くなって・・・
僕に追いついてしまった。
一方僕は、柚子葉より先に前に出て走っていたにも関わらず、体力のなさ故数百メートル走ってヘトヘトになってしまった。
「もう光ダウン?でも、そんな光も光らしくて良いよー!」
・・・地味に貶された気がする。
嘘だといいなぁ。
本人に悪気は無いんだろうけど。
まず、この雪道をあのスピードで走れるのが凄いのだ。
除雪作業はまだこの辺はされていない。
靴が雪にはまって、靴下ごと濡らして、足が重い。
そしてどうしてこんな山の上に建てたんだ、と文句を言いたくなるような坂下の校門を潜り、雪で滑る坂道をダッシュで駆け上る。
そして無駄に広い敷地を所有している校庭を出来る限りショートカットして、昇降口に滑り込んだ。
「光、服乱れてる」
柚子葉が先程のフニャっとしていて柔らかい声とはは大きく異なる、一オクターブ低く、芯がありそうで太い声に変わった。
声質だけではなく、背筋もシャキッと伸び、あの緩みきっていた顔がみるみる引き締まって、「優等生」という言葉が似合いそうな風貌になった。
もともと顔が整っているだけに、かなり画になる。
・・・二重人格かこいつは。
柚子葉の変化に呆れと少々の感嘆を覚えながらも(いつもの事なのでもう慣れてしまった)
今度は長い階段を登らなければならない。
僕はもう死にそうだが、柚子葉はピンピンしている。
なんでだ。
「光、早く」
お前のせいで遅れたんだろうが、などと憤慨する事は決して無い。
もしそんな事を言ったなら「こんなの光じゃない」と真顔で言われて椅子か拳で全身(主に顔)を殴打され、運が悪かったら僕は川の底へ屍となって沈んでいるだろう・・・嘘だといいなぁ。
閑話休題。とにかく階段を駆け上がり、スライディングをして教室に滑り込む。柚子葉が教室に入った瞬間、チャイムがなった。
よかった、無遅刻無欠席を守れた・・・

8:須見:2016/03/03(木) 18:43 ID:M.c

「よぉ、お前が遅刻寸前なんて珍しいじゃねぇか。また柚子葉とイチャイチャしてたのか?」
後ろから声がかかった。
高くて少しかすれている、特徴的な声。振り向かなくても分かるが、人の目を見て話さないと失礼だから、振り抜くことにした。
親しき中にも礼儀ありって言うしね。
「別に、殺人鬼の事でちょっと」
「ああ?本当か、それ」
「うん」
まじまじと疑わしそうに僕を見るのは、髪の毛を明るい茶髪に染めていて、ピアスをしていて、制服も少し着崩した、いかにも「ちょっとワルな俺かっこいい」といった、中学生によく起こりうる妄想の姿の模範となるような風貌の男子。
橘駿、僕の幼馴染。
こんな格好でも結構いいやつだったりする。人は見た目で判断しちゃいけないって本当だね。まぁ普通の人間は初見は9割見た目で人を判断しているらしいけど。
「殺人鬼かー!やっと刺激的な事が来たなーと思ったら俺の前に現れなくちゃ何にもなんねーっつの!俺がボコボコにしてやるのに」
「やめなよ、不謹慎だって。しかも、駿で片付けれるんだったら、とっくにお縄に掛かってるよ」
「お前、地味にひでぇな・・・いや、だってさ、ニュースで見ていても、結局客観的にしか見えないから、もっと自分が体験しているっていう臨場感が欲しいんだよ!分かるか?」
「うーん」
「分かんねぇかな・・・地震とか?一緒に隠れたりしてさ!ああ、一緒なのはお前じゃなくて柚子葉がいいなぁ」
だろうな。僕もお前とはごめんだ、という言葉を飲み込んで、一応忠告をする。
「駿。柚子葉は盗るなよ」
「盗れるか」
即答された。
確かに、駿が柚子葉に付き纏うものなら、有難いキスの雨じゃなくて刃の雨が降ってきそうだ。
代償は、自分の命。
・・・ぶるっ、嘘じゃ無いのが怖い。
「いや、お前は柚子葉っていう美人と付き合ってるから、毎日が刺激的で非日常。だろ?」
「いや、柚子葉がいる事は僕にとって日常なんだ。柚子葉が日常から引かれたら、僕は生きていけない」
少し嘘かも。
「お前、そういう事を恥ずかしげもなく言えるってスゲェな」
「ああ、僕はメンタルには定評があってね。その強さは、穴がたくさん空いた蟻塚並と評されているよ」
「お前それ貶されてんぞ。全く、幸せなヤツだなぁ」
駿が肩をすくめて、呆れたように首を振った。
「あ・・・そういや、次体育だな。持久走か・・・おい、光。一緒に・・・」
駿はその先の言葉を言おうとしなかったのは、恐らく柚子葉が無言の圧力を駿にかけていたからであろう。
「・・・ったく、わーった。俺先に行ってるから」
少し拗ねたような物言いではあったが、ここで最善の選択をしたと思う。
「光、行こ」
柚子葉が僕の腕を取って歩き出す。
しかし、細いな。
程よく筋肉は付いているが、華奢な体型である事に変わりは無い。
ちゃんと食べているのか不安になる。
でも、巫女さんだから、あまりダイナマイツボディすぎると汚いというか、不潔感が出ちゃうのかな。
確かに細くて華奢な子って清潔感溢れ出てるよね。いやでも、神に仕える巫女が神社を嫌っていて、更に神様も信じていなくてナイフを常に常備しているのって、流石に神様も大泣きだろうな・・・。
しかし、抱きしめた時に抱擁感がないというか、全体的に硬質なんだよなぁ。主に胸部が。ごほん。
閑話休題、さっきの僕の心の声はなかったことにして、冷たい風が突き刺さる外へ出た。
暦上ではもう春なのにこの寒さは何事だ、と文句を心の中で呟いてみる。
今日は駿も言っていたように持久走で、持久走大会に向けて女子は4km、男子は6kmを走る。
女子と男子は両方とも第一、第二グループに分かれていて、女子がジャンケンで負けたらしく、女子の第一グループが最初に走るらしい。
僕は男子の第二グループなので、本当に最後の最後だ。

9:須見:2016/03/03(木) 23:14 ID:M.c

柚子葉は・・・っと、いた。第一グループらしく、もうスタートラインに立っていた。
今回は大会のルートを走るので、朝礼台には巨大なタイマーがセットしてあった。
開始を告げるホイッスルが鳴り、第一グループ女子が一斉にスタートラインから飛び出し、坂を雪崩のように下る。
ああ、もう柚子葉の姿が見えなくなってしまった。あいついつも先頭だもんなぁ。
ぼーっとそんな事を考えて10分ぐらい経過したか。
「天野君ちょっと良いかしら」
という声がしたので、振り返った。なんと、第二グループらしき女子生徒の姿が。
高嶺愛、僕たちのクラスの学級委員長にして副生徒会長。真っ黒な髪を肩のあたりで切り揃え、切れ長の三角眼が印象的な子だった。
「これ、第二グループ女子の名簿。これに記録を書いて欲しいの。拓真がいたら拓真に頼むのだけれど、生憎発熱で欠席だから。あなた、確か拓真と仲良かったわよね?」
「ああ・・・」
会田拓真とは、駿に続く僕の数少ない友人の1人であり、高嶺の彼氏であり、学級委員長であり、さらに生徒会長という凄い奴。
今まで無遅刻無欠席だったのに、高嶺が言った通り珍しく今日は発熱だそうだ。
「はぁ、拓真が心配で心配で。この学校を抜け出したいぐらいなの。大丈夫かしら」
「大丈夫だと思うけど・・・」
昔から拓真は丈夫だったからな。少し高いから僕と拓真が落ちて僕は骨折したのに拓真は擦り傷と打撲だけだったから。
「とにかく、頼むわ」
「あー、はい」
適当に返事をして、名簿表を見る。
「山崎芽依、川谷蘭、鹿渡口彩奈・・・」
平凡な苗字から特殊な苗字まで色々ある。
因みに、篝火柚子葉の篝火という苗字も珍しい。
「鹿渡口か・・・一体どこの出身なんだろうな・・・」
刹那、僕の顔面を風がなぞり、野球ボールが肌をかする。
擦り切れて血が滲んだ。
ボールは老朽化した校舎の壁に当たって一部の塗装を剥がし、跳ね返ってころころ・・・止まった。
「あ・・・」
しまった。
朝礼台に置いてあったタイマーを見る。
17分を指していた。
柚子はの平均タイムは15分前半だから、2分が経過していた事になる。
先程の高嶺の会話が。
一方柚子葉は、ボールを投げたままの姿勢で固まっており、ゆらりとその体制を立て直して真っ直ぐに立つ。
その表情は、僕に向けられた最大限の怒りを示す、無表情。
「光」
慈悲が一片も感じられない声で柚子葉が呟いた。ちらりと横を見ると、高嶺が僕と同じように頬を押さえて柚子葉を凝視していた。
「なんで・・・野球・・・ボールが・・・?」
高嶺が頬を拭って声を詰まり詰まり問いかけた。血は、僕よりも出ていた。柚子葉はそんな高嶺の問いかけに答える事もなく、高嶺との距離を詰める。
高嶺と柚子葉の距離が2mほどになった時、柚子葉が口を開いた。
「なんで光に話し掛けたの」
聞いたら誰もがビックリするような言葉で、しかしそれが当たり前のような顔でさらに問い詰める。
「あなたにはいつも光とくっついている会・・・田っていう彼氏がいたはずなのに」
拓真の名前に詰まったのは、多分柚子葉は僕といつもつるんでいる生徒Aという認識しかないからだろうか。
「私は、天野君に記録を頼んだだけよ」
「他の頼めば良いじゃない!」
「橘君は第一グループ男子だから、私達が終わったらすぐ走ってしまうから敢えて避けたのよ。私自身、拓真と仲が良い人の方が頼みやすいし。大体私は天野君に気はないわよ」
「自分から誘惑しておいて追い詰められたら光を捨てるんだ!光が可哀想じゃない!」
「別にそんな事・・・」
遠巻きに観戦していたが、これは放っておくと殺し合いになりそうだ。
しかし、柚子葉の、異常なまでの僕という存在を失う事を恐れる理由はなんなんだろう。
まあそれは置いといて、とにかく今は現状をなんとかしなければいけない。
「柚子葉、違う、違うんだ」
「何!!光!?そうだよ光も!こんな女に騙されちゃって、しかも私以外の女の名前をボソボソ呟いてさ!!なに?なんなの、なんなの・・・」
凄い聴力だな、と感心している暇はない。
よし、こうなったら最終奥義発動。ぴかーん。
「柚子葉、本当にごめん、だからね、柚子葉の好きなこと、なんでも言ってくれれば、僕が全部叶えてあげるよ。10個まで」
それまで暴れていた柚子葉の体がピタリと止まる。ゆっくりこちらを振り向いて、さらに要求をする。
「10個じゃ少ない。30個」
「・・・わかった」

10:須見:2016/03/03(木) 23:18 ID:M.c

今回は僕が悪いのだから、少しぐらい大目に見よう。
柚子葉が、「光と一緒に箒とか絨毯で空を飛びたい!」と願うような、そんな非現実的な子じゃありませんようにと切実に願った。
「なんなの、篝火さんは・・・」
と、高嶺はブツブツ文句を言いながら、保健室へ行くために昇降口へ向かった。
「お願い、なんでもいいの?」
「うん」
「わかった、ありがとう」
「・・・うん」
今は外の顔なので分かりづらいが、柚子葉の顔が少し綻んだのが分かった。
・・・もしかして僕は取り返しにつかない事をしてしまったのかもしれない。

11:須見:2016/03/03(木) 23:21 ID:M.c

第2章 日常と非日常は紙一重

拓真はとてもいい人だ。
優しいし、頭がいいし、運動神経も良くてリーダーシップもある。
昔から引っ込み思案だった私をいつも助けてくれた。
いつしか恋仲になって、2人の仲は進展した。
一緒にどちらかの家に泊まることも多くなった。
今日はバレンタインデー、大好きな拓真の為にチョコを作る。
あー、待ち遠しい。
拓真、まだかなぁ



高嶺愛

12:須見:2016/03/04(金) 12:55 ID:M.c

「えーっと、29個目のお願いがこれで・・・あー、もうあと1つになっちゃった・・・」
柚子葉が空を見上げて、少々寂しそうに溜息をついた。
僕も色々な意味で溜息が出そうだ。
あのとき、もっと良い解決方法は思いつかなかったのかと過去自分を恨んだ。
柚子葉の喜ぶ顔が見れるから全然OKだぜ、なんていう軽いものではなく。
僕の膝枕で一日中過ごすとか、僕と一緒に手を繋いで人気のない所をらぶらぶ散歩、そこまでは良いのだが僕と一緒に誰も追いかけてこない所に旅行へ行って2度と帰ってこないだとか、無茶なお願いの方が割合は大きい。
そんな無茶苦茶なお願いをされて、僕はダウン寸前だ。
・・・今まで無遅刻無欠席だったのに。
旅行に行くときはインフルエンザと言って休もうか。うん、そうしよう。
今は午後6時過ぎ、下校時刻はとっくに過ぎているので、辺りには人っ子1人いない。ひっそりとした車道の真ん中を堂々と歩いても怒られないのは、田舎の利点だと思った。
雪がしんしんと降っていて、それがゴォゴォにならない事を祈りながら寄り道をしたりして帰り道を歩いている。
正直、この街には殺人鬼が彷徨いているので、あまり寄り道はしたくないのだが、柚子葉のお願いならば仕方ない。
「ねー、お願いを100個に増やすお願いとかは駄目?」
「・・・そういうずる賢いことはやめ」「はーい、30個めのお願い決定〜!100個まで増えました!」
僕の言葉はまるで無視で、ふんふんと鼻歌を歌いながらクルクル回る柚子葉を見て、天使のようで悪魔な子とはこの事か、と感じた。
もう辺りは既に暗く、民家の家から家族の声が聞こえてくるようになって、ついでに美味しそうな匂いもしてきた。
「柚子葉、もう帰った方が良いよ。暗いし、殺人鬼がでてきたら大変だよ」
「78個目・・・79個目・・・ん?光、何か言った?」
駄目だこりゃ。仕方なく、僕が柚子葉の手を取り、柚子葉の家、つまり神社の方へ走り出そうとしたその刹那。
耳をつんざくような悲鳴が、雪が降る夜の空に木霊した。
女の人の声。
その声にビックリして、柚子葉もお願いを数えるのをやめて、声の方向を見る。
「何、光・・・」
柚子葉の声が低くなり、目つきも変わって人前用の人格に変わろうとする。
続いて、民家から人が何事かと次々に出てきた。
「行ってみよう」
「うん」
柚子葉が鞄に手を入れて、常備してあるナイフを掴んで、自らの左腕の袖に滑り込ませる。
そして、僕と一緒に走り始めた。
出てくる人々を掻き分け、声の発生源である場所に辿り着こうとする。
確かこの方角は、拓真の家の・・・
まさか・・・
「柚子葉、急いで!」
「どうしてそんなに急いでいるの?殺人鬼いるかもしれないのに?」
「話は後で!・・・お願いを130個の増やそう」
「分かった」
・・・僕、死にそう。
集まり始めた人混みを掻き分け、見覚えのある家の前に着く。
「拓真ああああああ!!!拓真がああ!拓真・・・拓真ぁ・・・!!」
家の前からそんな叫び声が聞こえた。
あの声は。
「あいつ、えっと、朝私と言い合いした・・・」
覚えていたのか、ちょっと意外。
柚子葉にとって僕以外の生物は物と同じなので、極端に覚えが悪いのだ。
「何かあったんだろうな・・・高嶺の様子を見ると」
高嶺は外に置いてあった植木鉢を窓硝子に叩きつけ、自らの服や肌が裂けるのも構わずに「愛しの人」の所へと駆け寄り、半狂乱になって肉塊と化した拓真の前で泣き叫んでいた。
その姿を見た瞬間、疑惑が確信に変わった。
回り込んで家の中を見てみると、床に綺麗に肉塊が3つに分けられて並んでいて、四肢と頭部だけが残してあり、残りの部分は原型を留めていない。
しかも四肢も、手のひらや足から指が一本一本独立していた。
僕から見て1番左が拓真の母、2番目が拓真の父、そして最後が拓真になっていた。
拓真の父は今日は仕事がたまたま休みだったのだろうか。
母は専業主婦だし、拓真もなぜここに居たのか色々不明だった。
「ねぇ、トマトケチャップがまた増えたね、光。私達に来ないと良いね」
柚子葉の言葉に、僕は恐る恐る頷いた。
他人事ではない。いつか、自分達もやられるかもしれない。
まず、拓真になんの恨みがあったのか。
家に目立った破壊の後は高嶺がやった窓硝子割以外にはなく、という事は拓真達と親しく、家族ぐるみの付き合いがあった者か?
色々な仮説が浮き上がるが、どれもパッとしなかった。

13:須見:2016/03/04(金) 17:17 ID:M.c

その後、警察が来て僕たちは色々事情聴取をああれたが、すぐ解放してもらえ、それぞれの家に一旦帰ることになった。
「ただいまー・・・」
ガチャリとアパートのドアを開け、当たり前だが誰もいない。
僕は一人暮らしだから、ドアにチェーンと鍵を掛けて靴を脱いで台所に行き、食べ物が貯蔵してある冷蔵庫へ向かう。
中身は・・・うーん、玉ねぎ、人参、じゃがいも・・・北海道の生産量一位のものばかりがあったので、北海道生産量一位といえばカレーだろ、という事でカレーを作ることにした。
・・・そういえば柚子葉は大丈夫かな。
柚子葉は両親が既に亡く、10歳の弟と暮らしている。
しかし柚子葉の目には例え血の繋がった弟でも良くて虫と同じ扱いなので、ご飯をちゃんと食べさせてもらってるか不安んだった。
・・・あまり外には出たくないのだけれど、しょうがない。
作りかけのカレーをラップをかけてそのままに、僕は靴を履いて柚子葉の後を追いかけた。
神社は僕の家からだいたい1kmぐらいの場所にある。
その辺りは長年整備がされていないためか草が茂っており、木も伸び放題だった。
しかし何故か神社の入り口から中にかけてはちゃんと綺麗にしてある。
・・・僕が言ったこと、守ってくれてるんだ。
ここはお祭りとかでもよく使用されるので、お参りの場所は勿論、巫女が舞う小さい舞台のようなものもある。
柚子葉の家はその奥だ。
木から雪が落ちてきて、マフラーの一部分を濡らした。
明かりはついている。
少し大きめのドアをノックする。
「柚子葉・・・柚子葉、いる?」
そう僕がドア越しに言ったとき、3秒後ぐらいに柚子葉の声が聞こえてきた。
「光!!」
すぐにドアを開けてくれ、中に招き入れてくれた。
「来てくれたんだ」
うふふ、と柚子葉が満足そうに笑う。
「うん、柚子葉が心配で」
本当は弟の様子を見にきたのだけれど。
「もー、光ったら!本当は寂しかったんじゃないのー?」
爪が伸びた手でガシガシという擬音がつきそうなほど激しく頭を撫でられる。
地味に痛い。
「うん、寂しかった。それはそうと、上がっていい?」
「あったりまえでしょー!どうぞ!」
柚子葉僕の手を引っ張って、部屋へ案内してくれた。
「私ね、今から光の夜ご飯つくる!2人で一緒にたべよー?」
・・・やっぱり弟はの事は無視か。
「ごめん、柚子葉。トイレ行ってくる」
「うん、分かったー」
柚子葉の了承を得て、トイレの方向ではなく、無駄に広い家の、15部屋近くある部屋をしらみ潰しに探す。
弟は、奥から2番目の、ゲーム機やおもちゃがたくさん置いてあるところに、最新のゲーム機で1人遊んでいた。
「・・・なんで来たの」

14:須見:2016/03/04(金) 17:20 ID:M.c

まだ声変わりをしていない、高い声を精一杯低くして問われた。
「なんで来たの」
「いや、ご飯ちゃんと食べさせてもらってるかなと思って」
その言葉に、やっていたゲームを一時中断して僕の方を見た。
篝火日向夏。読み方はヒュウガナツではなく、ひなつ。両親は柚子葉といい日向夏といい、柑橘類が好きなのか。
柚子葉と同じで、端正な顔立ちだがまだだいぶ幼さが残る。
髪の毛は真っ黒だが、柚子葉のようにストレートではなく癖っ毛で、目つきは鋭い。
その冷たい雰囲気を醸し出す原因は、恐らく今までの生活環境。
親を失い、さらに壊れた姉と2人で暮らしているのにも関わらず、姉からは存在を認識されていない。
自分しか頼れなくて、自分自身のことは全て自分でやらないと生きていけないから、この歳で料理は結構出来たりするそうだ。一回食べさせてもらったけど、美味しかった。
頭が良くて、よく姉が暴れまわったりするから多少の痛みも耐性があり、さらに攻撃を回避するために運動神経もそこそこ良い。
しかし姉の方が体力的に上なので、運動ではなく頭で勝負するという考えに至り、勉強もできる。
クラスにいたら絶対モテるのだが、なんせ性格が爽やか系ではなく、どうしようもないほど捻くれているので、恐らくクラスからは少し浮いている存在だと思う。
「別に僕は、1人でご飯も作れるしお金もお父さんとお母さんが残してくれたからいっぱいあるから、心配しないでいいよ。ていうか来るな」
「あいつじゃなくてお姉ちゃんでしょ。口悪いよ」
日向夏の毒を訂正すると、短く舌打ちしてきた。
「僕、あいつの事を姉だと考えたことはここ4年間一度もないから」
直す気ないな。こんな些細な会話からでも性格が読み取れるほど露骨な子って久しぶりに見た。
「あんたに聞くけど、あんな奴と付き合ってて利点はあるの?確かにクラスの子とかよりは美人だと思うけど、飛び抜てって程じゃないし。まず顔が良いだけで4年間も付き合えるはずないと思うし。大抵の男は逃げてくと思うんだけど。あんた何者?」
その質問に、僕は一瞬、答えに詰まった。
しかし、そんな質問で押し黙るほど伊達に柚子葉と付き合ってるわけでもないんだ。
「利点とかじゃなくて、壊れやすくて脆い柚子葉をずっと支えてあげたいと思ったからだよ。それだけ」
日向夏の目が驚いたように見開かれるが、瞬きをしたその次の瞬間には、僕をもう見ていなかった。
「よく、分かんない」
そう呟いて、中断していたゲームを再開し、敵をバッサバッサ斬る作業に入った。
それ以上、僕と日向夏は何も喋らなかった。

15:須見:2016/03/04(金) 17:32 ID:M.c

第3章 殺人鬼と僕と柚子葉と


ぼくのかぞく

すみれぐみ かがりび ひなつ

ぼくのかぞくは、おとうさんと、おかあさんと、おねえちゃんとぼくです。
おとうさんもおかあさんもやさしくてだいすきです。
おねえちゃんもいつもあそんでくれてだいすきです。
ぼくはおとうさんみたいに、つよくてかっこいいおとこのひとになりたいです。
おじいちゃんとおばあちゃんもたまにあそびにきます。
おこづかいをたくさんくれます。
でも、それよりもぼくをとおくのこうえんとかにつれっててくれるのでだいすきです。

このしあわせがずっとつづくといいなあとおもいます。


ぼくの


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