デジタルな価値観、リアルの価値観 -ver2.0-

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1:越後:2016/12/30(金) 19:24

新版です。
前回受けたご指摘等を元に、再び一からスタートしたいと思い、更なる加筆修正版として連載をさせていただきます。
前スレは今後も番外編用や感想·意見用として残しますので感想等はそちらにどうぞ。

...今度こそ万人受けする書き方をせねば...

2:越後:2016/12/31(土) 13:14

【初音 -前文-】
噎せかえる熱気、
ジリジリと体を焦がしていく日差し、
押し寄せる風の波。

世界は平凡で、退屈で、本当につまらない。

そう、つまらない。
なら、どうすればつまらなくなくなるのか?
そんな考えから生まれたのであろう、現代の遊戯は、本当にとんでもない革命だったのだろうと、俺は常々考えている。

50年前には存在していなかったものが、今流行していたり、あちこちで使われていたりする。
それは進化なのか、はたまた運命なのか。
まぁそんな厨二っぽいこと言い出すまでのことでも無いだろうが、実際、こうした「文化」によって救われている人も少なからず居るのではないだろうか。
居場所が無かった人、居場所が分からなかった人、居場所を失った人。
そんな人達の支えになっているのかも知れない。そのことをふまえれば、やはりこの文化が出来たのは運命なのではないだろうか。

一方で、勿論それを否定する人も勿論いる。
まぁ、物の「価値観」なんて人それぞれだ。何も否定するなと言う必要は無い。

それでも、
その文化には、
社会に旋風を巻き起こすことがある。
世界を平和にすることがある。
そして________
人と人とを、結ぶ力がある。

これはそんな下らない文化にドップリと浸かって色のない日々を過ごしていた俺が、ある夏を境に巻き込まれた、

ある、青春の物語。

3:越後:2016/12/31(土) 13:37

【plorogue 1-1 -404 not found-】
「.....................何だこれは」
俺の眼前に広がっていたのは一面の野原。
...他に見渡しても何もない。何だここは。何故こんなところに居るんだ俺は。
そんなことを悶々と考えていると、不意に微かに機械音が聞こえてきた。
何の音だ?
そう考えるや否や、突然足元がガパッと開いた。
...あ、これがボルガ式か...。
いやまて、これ俺死ぬんじゃねぇの?
転生してスライムになったわけでもないしこれ落ちたら死ぬでしょ?
え、マジで何だこれ。って言うかなんだこれ!?

「...........ハッ」
......意識が完全に覚醒し、目の前に入ってきたのはどかっと置かれたデスクトップPC。
「...まぁ、そうだよな」
また変な夢を見てしまった。何か最近カオス過ぎますよ俺の頭。
どう使ったらあんなワケわからん夢になるんだ。そもそも草原に落とし穴ってあれか、とんねるずか。
そんなことを寝ぼけ眼のまま考えていると、ふと目の前のPCがバシュンッ!と言う音と共にナレーションを再生し始めた。
『【若人】再封印作戦は無事終了しました。皆さんのご協力に感謝します...』
「................あっ」
...その意味を、俺はすぐに理解した。
「やべぇやっちまった...」
現在の時刻は11:30。今俺がやっているオンラインゲームの緊急クエストの終了時刻である。
俺が前に時計を見たときは10:30だったので...まるっと一時間寝てたことになる。
更に重大なのが、今の今までやっていた緊急クエストが一週間に1、2回しか出ないやつだってこと。
それを思いっきり逃した。しかも寝落ちという後悔度率100%のパターンで。
「どわああああああああやっちまったあああああああああ」
「こらこら、あんまりはしゃいじゃダメですよ〜?」
そんなのひほほんとした声と共に、PCの向こう側にあるドアが音を立てて開いた。

4:越後:2017/01/01(日) 13:24

【plorogue 1-2 -404 not found- 早速誤字。のひほほん→のほほん】
ドアの先には当然、声の主が立っている。
その主と言うのが...
「...んん?」
俺の通っている高校...北京浜高校の教師、水上 由奈(ミナカミ ユナ)先生だ。
...ここまで来て、俺はようやく自分がどういう状況に置かれているのか理解した。...いや、遅すぎる。逆に何で今の今まで気づかなかったのか。どんだけ緊急クエスト大事なんだよアホか。
「ありゃ〜、その顔だとまた寝て過ごしてたんでしょう? ダメだよ〜、いくら暇でも仮にもここは部活なんだから〜」
「勝手に決めておいてどの口が言うんですかもう...」
そう、ここは部室であり、今俺は部活中なのだ。
部活、と言うが、大したことはやらない。と言うかやる必要が無い。
何故ならば、この部活は俺が設立したわけではなく、顧問として位置付けられているこの先生が勝手に作り出した部活だからだ。
つまり俺は被害者である。俺は悪くない、社会が悪い。とはよく言ったもんだ。まさしくこれじゃねぇか。

そもそもの経緯は二年生に上がった時だ。
自己紹介カードとか言う小学生のころ誰もがやったであろう謎過ぎるあの制度を、何故か先生の命で書かされることになった。クラス全員。
そこには勿論、名前だとか、生年月日だとかを書く項目がある。
その中には、趣味・特技という項目も当然あった。当時俺は運動なんかも大してやることがなく、たまたまその時熱心にやっていたのがゲームだったので、それをそのまま書いた。
序でに今まで何かで表彰されたことはあるか、みたいな項目があったので、英検とか漢検とか、そういうのと並べてネタで「某太鼓ゲー県大会優勝」とか「某イカゲー甲子園 地区大会準決勝出場」とか色々書いてやったわけだ。
............誤算だった。今ほどあの頃の俺を恨みたいと思ったことはない。
結論から言うと、先生もヘビーゲーマーだった。
俺がネタ(だが事実)で書いた戦績を見て何か降りてしまったんだろう。そのままのノリでどう考えても自己満足の為に作られた部活です本当に以下略がまんま形になったようなこんなぶっ飛んだ部活を勝手に作られた。で勝手に部長にされた。

...これが4月の出来事であり、今は8月。未だに部員は俺だけ。
夏休みと言うこともあって、えもいわれぬ孤独感に満ち溢れている今日この頃である。

5:越後:2017/01/01(日) 21:28

【plorogue 2-1 -Unclear error-】
「...それで、今日は何の用事なんですか? 部員が増えるってんなら大歓迎ですけど」
「いや、別に用事があるわけではないよ〜? ただ単に元気に活動してるかなぁってね」
俺も何だかんだで「部員増えたんですか?」というのも何回かは聞いているんだが、返ってくる答えはいつも大体こんな感じ。ギャグマンガ日和〜♪とは続かないぞ、決して。
まあ要するにこの人はアレだ、積極性がまるで足りない。
やっぱり自分で集めるしかないのか...と思ったことも勿論あるのだが、そもそも今までの人生を丸ごとサブカルに全振りしている猛者なんてそうそう居るもんじゃない。
もっと言えば俺の話題に着いてこれそうな奴がまるでいない。
どいつもこいつも口を開けばやれモンスターをストライクするだのパズルでドラゴンするだのグランブルーなファンタジーだの何だのってスマホゲーばっか。いやまぁ面白いやつもあるから別に良いんだけどさ?コンシューマー機もやれよと。
と言うこともあって結局断念。趣味の合う人としか基本つるまない俺からすれば、趣味が合わないだとか、こっちの話を聞いただけでドン引きするような人と付き合いを持つことははっきり言って致命的。
...まぁその結果あまり友人は増えはしなかったが、それでもそれなりに充実した生活を送れている辺り本当に首都圏は素晴らしいとつくづく思う。
...とまぁ変な語りはこの辺で置いておくとして、だ。

「いい加減誰か丁度良さそうな人とかどうにかして捕まえられないんですか」
「そうは言ってもね〜...先生も一応頑張ってはいるんだけどね〜」
「いやいやいや嘘つけぇ...」
...先生の今の言葉は「先生も忙しいんだから自分で何とかしろ」ってことですね分かります。
「いや、まぁ取り合えずちょっと暇だし一戦位相手してくださいよ」
「あ、先生そろそろ次の作業があるんだよね〜。ゴメン!また今度って事で!」
そう言って部屋を後にしようとする先生に向かって
「いやちょっと貴女顧問でしょ明らかに逃げようとしてるでしょ逃げないでくださいよちょっと待ってええええええええええ!!」
と絶叫するも当然待つはずもなく、叫んだ声は無慈悲にも閉められたドアに反響し、再びほぼ無音となった部屋に響いた。

6:越後:2017/01/02(月) 19:39

【plorogue 2-2 -Unclear error-】
「はぁ...ったくもう...何なんだよあの先生...」
と愚痴を溢しながら、俺は改めて目の前の画面を見つめる。
2016年、8月4日。デスクトップの画面の表示にはそう書いてあった。
夏休みに入って4日目。まだ4日なのか、もう4日なのか、どちらかを選べと言われたら、俺は前者だ。
はっきり言って、俺はここ数日の時間感覚が完全に麻痺している。無理もない。
夏休みに入ってからの生活と言えば、ここで延々とPCの前に座り続け、午後になったら帰宅、昼食、家でゲームしたりアニメみたりしながら課題をやる。そんなもんだ。実に平凡。だからこそ時間感覚が狂うのだ。
...まぁ唯一平凡じゃないだろこれって部分を挙げるとしたらば「基本的に毎日深夜4時までは起きてる」って事くらい。あとたまに徹夜する。
まぁ徹夜するのも時間感覚が狂う原因なのかもは知れないが。

そんな誰に向けたかも分からない脳内モノローグを勝手に展開しつつ、画面に目を滑らせていく。
最近はネットの話題も平坦なもんだ。これといって面白そうなネタがあまりない。
とはいえ無いものは仕方がないので適当に掲示板で今季アニメの批評とかを書き込んでいく。

226:天空の城の名無しさん@実況は実況板で:2016/8/4(木) 11:23:48 ID:kn4Hm98n.net
しっかし何でこっち側にシフトしちまったかね。
正直二期作るんだったら前のユニットのままでよかったわ。
どう考えても前の奴らを貶すためのアニメになってるでしょこれ

227:天空の城の名無しさん@実況は実況板で:2016/8/4(木) 11:24:23 ID:beua4N35.net
>>226
ほんこれ
まぁこれを機に信者共が落ち着いてくれれば良いけど。何なの聖地巡礼って。
いろんな場所荒らして回るのが聖地巡礼なのかよ

229:天空の城の名無しさん@実況は実況板で:2016/8/4(木) 11:29:31 ID:aezD70qm.net
>>227
信者叩くスレじゃないだろ。
まぁ確かにこのアニメの信者ほどヤバい奴等なんて居ないだろうから気持ちも分からんでも無いがな。
これじゃ松厨のがマシ


...そう。これが俺の日常。いつもの俺。至って平常運転。
この生活さえ続けていれば大体生きていけそうなまである。つまりこの状態がベストなのだ。これ以上もこれ以下も望まなくていい。楽なもんだ。

そうこうしているうちに12時を回った。部活の終了時刻である。
と言うわけでさっさと荷物をまとめあげ、そのまま肩に背負い、部屋を出ようとした...瞬間。
僅かな音でノックの様な音が鳴り、一瞬間を開けてズバァン!!とドアが開いた。近くに居たから危なかったです。
「あっぶね...お、おい!? せめてこっちが返事するのを待って...」
という俺の説教に耳を傾けることもせず、「彼女」はこちらへと早歩きで詰めよって来て______
こう言い捨てた。
「へぇ...あんたが『英雄(ヒーロー)』ってゲーマー?」
「.....................え」

思えばここからだろう。俺の「日常」が崩れ去り、「青春」へと変わったのは。

7:越後:2017/01/03(火) 18:03

【plorogue 3-1 -Date Lost-】
           
             ◆

今、俺「達」は街中を歩いている。
相変わらずのジリジリと焼けるような日差しだけではない。コンクリートからの反射、エアコンの室外機、ビルの窓からの反射やらなにやらで体感気温は実際より2、3ºcは高くなっているだろう。これがヒートアイランド現象か...。
だが、俺にとっての問題はそこじゃない。
今横に並んで歩いている、こいつのことだ。
突然目の前に現れたと思ったら突然着いてこいだもんな...何なんだよ本当に。
...因みに。
さっきこいつが話していた「英雄」ってのはまぁ...あれだ、俺の二つ名と言うか異名と言うか。そんな感じの物である。
とは言え、自分で付けた物ではない。もしもそうなら俺は今頃「何調子ぶっこいてとんでもねぇ黒歴史自給自足してんだ俺えええええええええ!!」と奇声を発しながら壁に頭打ち付けて死んでる。まぁ自分で付けたにしても他人が付けたにしても黒歴史に違い無いのだが。

勿論、そんな黒歴史が出来上がったのにもしっかりとした経緯がある。
...いや、黒歴史な時点でしっかりもクソも無いが。
まず、俺が今ホームにしているゲーセンがある。ホームってのはつまり自分が拠点にしている、一番よく行く場所の事だ。
まぁ、そこは元々酷い荒れようだった。なんと言うか、溜まり場と化している様な感じを想像してくればいい。連コ(連続コイン投入のネットスラング。後ろに人が待っているにも関わらず勝手に新しくクレジットを追加してしまうこと。これを禁止していることはもはや暗黙の了解)
とか台パン(ムカついた時に筐体をバンバン叩くこと。壊れる危険性あり)とか、そういう悪徳なゲーマーが普通に横行している状況だった。正直近づきたくない感じ。
しかし、何だかんだで家から一番近いゲーセンがここであり、それなりに品揃えも良い場所だったので、俺はどうしてもそこを諦めきれなかった。
そこで思い付いた。思い付いてしまった。
...こいつら全員ボロクソに叩きのめしてしまえば大人しくなるんじゃね?と。
その結果。
元々かなりゲームをやりこんでいたとは言え、最近やっていなかったので些か不安はあったものの、その辺は体が覚えてくれていたようだ。どうもあっさりと倒せてしまったのだ。
これでまぁ安全な遊び場は確保出来たわけだ。それでまぁこれからは暇な時に来るか...と思っていたのだが。
それを見ていた周囲のゲーマー達の唖然とした顔を見て、正直な話「やべぇやっちまった」と思った。
僅かな沈黙の後、突如として湧く取り巻き。
後から聞くに、その悪徳ゲーマーの奴らはジャイアン的な存在だったらしい。このゲーセン内で一番強く、誰も勝てなかったらしい。それをあろうことかあっさりと勝ってしまった。
となれば、後は大体分かるだろう。散々ワッショイされ、何故か神的な扱いを受け、気が付けば悪徳ゲーマーさん達は一回も来なくなっていた。追い出すつもりじゃなくてせめて俺が来たときだけ大人しくしててくれればよかったんだが、どうも居場所が完全に消えてしまったらしい。何か悪いことした。
...そんなわけでそれから1年ちょっと。未だにその逸話は語り継がれており、例のゲーセンのゲーマー達からは「英雄」と呼ばれ崇め奉られている。正直迷惑なんでやめていただきたい。


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