恋したいのは、誰だって同じ。
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わーいありがとうございます❀.(*´▽`*)❀.
僕、 ハスキーな声。私よりも高い背丈。だけど顔立ちはまるで女の子で、さっきだってそうだ。
頭が混乱する。マジマジと「僕」を見る。髪は確かに短いが、女だってショートヘアくらいするだろう。でもしかし、そんな逆接がどんどん浮かび上がる。
「あの…どうかしました?」
「僕」がおずおずと顔を上げ、心配そうにこちらを覗き込んだ。長い睫毛、くりんとした瞳、柔らかそうな唇。分からない。人間にしては整った顔立ちであることは、わかったけれど。
しかしこの僕にいつまでも構う必要も無いだろう。今日の事は偶然の産物だし、何より夜の只中、そろそろ寝なければ明日からの活動に響いてしまう。
ここは私の征服した拠点なのだ、早く退いて貰わないと。
「いえ何も。それより、用が済んだならさっさと出てってください」
「え、あっ…」
「ここは私のおうちなんですから」
「お、おうち…?」
僕が驚いた様に瞬きをした。何がおかしいのか。それとも狭くて滑稽とでも思っているんだろうか。
ならば余計なお節介だ。そう口を開こうとした。
「ダメだよ、ちゃんとお母さんのところへ帰らないと!」
少し強い口調で拳を握られた。それまでが弱かったものだから、思わず肩が揺れてしまった。別に驚いた訳では無い、少しびっくりしてしまったのだ。
しかしママのところとは簡単に言ってくれる。こちとら修行の為にわざわざ飛んできた身、そうやすやすと帰れるものではない。
「そんなの無理です」
「どうして?…まさか、その、追い出された…とか?」
追い出されたというよりかは、慣習的なものなのだが。
「…わかったよ、一泊だけだからね」
少し俯いたあとに、僕は私の手を取り歩き出した。
暗がりから僕の背中に明るい光が差す。うるさいガヤガヤに開かれる。片手の箒を手放してしまわないように、されるがままに私は着いて行く。意外と力が強いのだ、不服でとても滑稽な気分だ。
「え、あ、ちょっと」
「こんなところで寝たら風邪ひいちゃうし、悪い人に狙われちゃうよ!」
悪い人に狙われていたのはどこの誰なんだろう。
騒がしい光と、見世物を見るような視線が突き刺さる。それがなんとなく気恥しい。裸を見られているような気分で不快だ。それでもずんずんと固い地面を踏んで、その中歩みを進めてゆく。
こういう時、私は何を喋れば良いのか分からない。僕も何も喋らない。変な空気。風を切る沈黙に耐えかねていると、徐々に光からぼんやりとした暗がりへ出た。
「 ごめんねっ、ちょっとせまいけど… 」
光から少し抜けた先の、少し古ぼけた建物の前で「僕」は立ち止まった。ひとつの建物にドアがいくつも付いていたが、その1番右へ鍵を差し込み、錆びた音を立ててドアを開けた。
おずおずと端に寄り、私を中へと促す。なるほど確かに暗くて狭そうだが、匂いはさっきのところよりも良いかもしれない。
「助けてくれた、お礼がしたくて…」
それでも立ち往生する私に、「僕」はおずおずと言葉を繋げる。恐らく厚意だろう。奴に何をしたつもりもないが、掛けられた厚意なら受けてるのが立派なもののつとめだろう。
「……おじゃまします?」