神の所在

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1:結衣◆yU:2018/02/07(水) 21:06

―――拝啓、神様。
そこに、私はいますか。





>>2

14:葱:2018/02/25(日) 15:05

支援上げさせて頂きます

15:結衣◆yU:2018/02/25(日) 19:42

>>14
ありがとうございます!がんばります!

16:結衣◆yU:2018/02/25(日) 20:26

考え込んでしまったこじまさんを前にして、兵士の彼は口を開いた。
「…考えたって無駄だ。俺たちは国の兵士。国の意向とあればそれに従うのが筋であろう」
きっと、彼も優しい人だったのだろう。声からは想像できないけれども、きっと、まだ諦めきれていないのだろう。自分にも言い聞かせているように聞こえるその言葉に、少しだけ罪悪感を抱いた。
「それは、そうなのですが…自分には、どうしても、……」
「…言い訳は、もういい。その捕虜をこちらに寄越せ。おい、お前、聞こえるか」
彼は少しだけ声を大きくして、おそらく私に呼びかけたのだろう。それに呼応するように私はゆっくりと顔を上げる。目が合った。ああ、ほら、優しそうな目をしている。
「小島。お前は……、…少し、頭を冷やしたほうがいい」
その言葉に小島さんは小さく返事をした。軍人なのにあの態度、いいのだろうか。それを許すのも、この彼なのだろうか。そうであれば、二人とも、戦場には向いていないのだろう。生まれつき、優しすぎるのだ。

彼に連れられて、とぼとぼと歩く。雨はまだ止まない。
遠くに軍用の車が見えた。私はこれに乗せられるらしい。数人の老人たちもそこにいた。あれが捕虜なのだろうか。
しばらくすると、彼は歩いたまま口を開いて私に問うてきた。
「……お前、小島に何を言った?」
声が出なかった。
「言え」
なんて、人を見ることのできる人なのだろうと思う。こんな優しい彼にああ言わせるほどの所業をした我が国は、一体何をしているのだろうとも考える。
この国の行っていること、それについては一切のヒントはないし、きっと考えるだけじゃ答えは得られないのだろう。
「…聞こえているのか、言え」
ならば、この人に聞けばいい。優しすぎるこの人にそんなことを言わせることには些か抵抗はあるけれど。

「、私は戦いたいのです」
掠れかかった声が喉から出た。自分でもあまりに悲痛に聞こえるものだから笑えてくるくらいに。
彼は反応しなかった。雨に掻き消されたのかもしれないし、わざと聞こえないふりをしたのかもしれない。
それなら、もっと大きい声で言ってやればいいのだ。逃げることなんてできないくらい大きい声で訴えてやればいい。あんたより私のほうが軍人に向いているのだと言ってやるのだ。それが彼のプライドを傷つけるとは限らないけれど、もし傷つけることができたのならそれが一番いい。もっとも、彼は自分のことくらい理解しているだろうが。
「私は、戦いたい!」
やっと彼が足を止める。怒れ。私にではない。こんなことを言う子供を作った、この戦争に怒ってくれればいい。
「私は軍の一員になって、死ぬまで戦い続けたい!愛国心なんてありません、どちらの軍でも構いません!私は戦いたいのです!」
途中から、もはや自分の中の感情を吐き出すためだけに叫んでいた。
「前線に立って、ただ、目の前の人を殺していく、それだけでいいのです!戦わせてくれれば、それで私は構いません!すぐ死んでもいい!一瞬だけでもいいから戦って、神に裁いてもらいたい!」
剣を振るい、女だと舐めてかかってくる男を切り伏せて、私は戦場に立ち続けていたい。神に背いて戦場に向かう私を誰かに殺してもらいたい。そして、私は地獄に向かうのだ。


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