昔、男ありけり。 ありやどのアリアドネいでにければ 「あはれ」 あたらしき御霊のひらめくを、くだりつつ増えにけり。
指先にたかるは梅の花。悲しき時の流るるに身を任せ、愛は我が身なりにけり。 せせらぎを くれないにそむる あらやしき 馬小屋にいる ほととぎすかな 未だ夜深き海女たち、のまことに一人一人を心憂く悲しくて、泣く泣く物思う身の暮れ塗れば、 ほととぎすの初音を今聞き染むる。