この戦いは、誰のために?

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1:アーリア◆Z.:2018/03/18(日) 20:11




「お、お前ら……全員魔王の手先だったのかよ! 」

 ここは『魔王領』にある、都市『ラバレン』である。教会より魔王討伐の使命を与えられた勇者は仲間たちと共に、度重なる困難に立ち向かいやっとの思いでここまでやってきた。ところが、ここで勇者は絶望することになる。勇者が仲間だと思っていたパーティーメンバーは皆、魔王の手先だったのだ。
 しかもその1人には、勇者の妹も含まれていた。

「ディ、ディアナ、まさかお前も……なのか? 」

 勇者は恐る恐る訊いた。

「そうよ。私は魔王様に忠誠を誓っているの。決してお金のために、貴方を捕らえたわけではないわ」
「ど、どうして……ま、魔王に忠誠って……信じられない」
「兄さんには悪いけれど、これからは牢獄での生活になるわね」

 こうして、勇者は魔王の手先によって捕らえられ、牢獄に幽閉され、心を病んだ。彼の心が晴れるのは幾分かの月日が経った後、『ある男』が彼に接触する時を待たなければならない。


序 終わり。

26:アーリア◆Z.:2018/04/02(月) 00:52

(19)


 駅馬車付近の某所。

「おや? まさか勇者を謀る役割が与えられたのは貴女なのか」

 俺は、目の前にいるそう女に訊ねた。

「ええ、そうです」

 ほう。こんな優しそうな女が魔王の手先であると知ったら、勇者たちはどう思うのだろうか俺はその様を見てみたい。
 それはさておき、今回は教会が直接勇者の同行者を選任したというのにそれを潜り抜けられるとは、この女も工作員としてかなりの腕があるのだろうか? 

「今回は私も辿り着けない方に賭けましたけど、あの毒タヌキは貴方によるものですね? 」

 そっちでも(賭博)、俺の仲間か。

「確かに毒タヌキは俺の仕業だが、ロムソン村を直ぐに出発してしまったようだな? 時間稼ぎをしてくれれば、俺も助かったのに」

 今朝、勇者一行は直ぐにロムソン村を出たのである。そんなもんで俺も、気づかれないよう勇者一行に付いてきた。

「時間稼ぎはしようと思ったのですよ? しかし、どこかの傭兵団が討伐することになったみたいで、それを理由に直ぐ出発してしまったのです」

 やはり、傭兵団の奴らが来たがために直ぐにロムソン村を出発したのか。本当に、どこのバカが依頼したのだろうか? 余計なことをしやがって。

「それと、魔物使いの貴方に言うのも失礼かもしれませんが、魔物は使わない方が良いかもしれませね」
「どういうことだ? 」

 この女、本当に失礼な奴だ。俺が苦労して魔物使いになったのも知らずに。父が死に、母も後を追って、俺一人になったのだ。そして毎日辛い肉体労働で生活しつつ魔物使いのための勉強や訓練をしてきたんだよ俺は!
 ともかく、理由は何なのだろうか? そこは俺としても当然に気になる。

「同行者の1人が、道中で倒した魔物を一体ずつ確認しているのですよ。あれは今思うと、刻印の有無の確認だったのではないかと思いますね」
「……なっ、なんだと! い、いや、毒タヌキだ。毒タヌキの本来の生息地を知っていやがったんだ。それで気づかれたのか! 」

 仮に、そうであれば魔物使いの存在も知っているということになる。まさか、傭兵団を雇ったのもそいつの仕業なのだろうか? ……いやしかし、傭兵団を雇うには大金が必要だしこれはないか。

「まあ、しばらくは慎重になるべきかと。さて、そろそろ戻ります」
「おう」

 まあ、しばらく魔物は使えないとしてもあの女が何かしらのフォローはしてくれるかもしれない。
 俺もそろそろ寝るとしよう。

27:アーリア◆Z.:2018/04/02(月) 18:45

(20)


 ここは屋敷の中庭である。

「ほらほら食えよ。これを全部食ったらご褒美をあげるぞ? 」

 私にそう命じたのは天使であった。『天使の輪』は白く輝いており、すなわち大天使と言うことになる。私は大天使……彼の遊び道具として使われていた。
 そして、彼の命令に従い私はそれを食べ始めたのである。これは誰かの排泄物などを混ぜた汚物であろう。間違いない。しかし、汚物であろうと彼の言うことは全部聞かなければならないから、それを全部食べる。

「ほう? 全部食ったようだな。なら約束通りご褒美を持ってこないとな」

 彼はそう言うと、屋敷の中へと入っていた。しばらくして、彼が持ってきたのは死後そのくらい経っているのだろうか? ミイラ化した死体である。

「お前の姉だぜ。姉弟水入らずの時間を過ごすんだな」

 彼はそう言うとゲラゲラと笑いながらどこかへと行った。
 姉は天使共に内臓を抉り出されながら死んでいった。天使共はその死にゆく様子を楽しみながら、最後はその抉り出した内臓を焼いて食べたのである。天使共から見て、人類は家畜以下の存在にしか見えないのだろう。だが人類は天使が神の使いであると信じて崇めているのだ。果たしてこいつらのどこが神聖なのだろうか? そもそもこの悪逆非道なt連中を天使と呼ぶこと自体が間違っているはずだ。

「ね、姉さん……。死後の世界は幸せかな? 僕も早く行きたいけれど勇気がないんだ」

 姉の死に対する悲しみは、もはやそれほど感じてはいない。もちろん姉が殺されてゆく姿を何もできずに見させらたあの時は耐え難い苦痛によって頭がおかしくなりそうであったが、月日が経ったことで薄れたのだろう。

「やっぱり勇気がないから、もう少し生きてみるよ」



「あれ、二人とも眠そうだね。昨日はきちんと寝たの? 」

 天使をほぼ皆殺しにしたからなのだろうか、昨日は悪夢にうなされてしまい快眠とは言えない状態であった。そして、もう1人何故かマリーアも眠そうな様子である。

「悩むのが趣味だって言っただろ、だから昨日はずっと悩んでいたんだよ」
「私も少し個人的に考え事をしてましてなかなか眠れませんでした」

 私とマリーアはほぼ同時にユミに返答した。

「西ムーシまではずっと歩くわけだが大丈夫か? 」

 ダヴィドも私ら2人を心配したのか、そう言ってきた。私については1日中、眠らずに歩き回ったことが何度もあるから平気だ。

「私は大丈夫だよ」

 そしてマリーアも、

「私も大丈夫です。ご心配をおかけしました」

 と告げた。
 その後、朝食を終えた私たちは西ムーシの町を目指して移動したのであった。

28:アーリア◆Z.:2018/04/02(月) 22:32

(21)


 朝早く馬車駅を出発した私たちは、何時間も歩き続けてた。もう昼時である。尚、私は道中に出現した魔物を一体ずつ倒しては確認の作業を続けている。

「そろそろ、西ムーシにつくだろう」

 ダヴィドがそう言った。
 西ムーシに到着したら私は顔を出すつもりの店がある。それは西ムーシ商会と言って、商号の由来の通り西ムーシの町に本店を置く商会であり、そこの当主とは、長い付き合いがあるのだ。

「確かに町っぽいのが見えてきたね。あれが西ムーシの町なのかな? 」
「そう、あれが西ムーシの町だ。自分は王宮兵士を率いて何度か行ったことがあるんだよ」

 本来、真っ先に向かうべき町が四日目にしてようやく見えてきたのであった。

「西ムーシを超えればプランツ王国なのですよね? 」
 
 マリーアの言う通り、西ムーシの町から橋を渡り河を超えればプランツ王国側に入ることが出来る。ただ、プランツ側には町がないので、今日中に国境を超えるかはまだ決まっていない。
 そして少し歩くこと数分、無事に西ムーシの町に到着した。
 到着して早々に4人で話し合った結果、今日はここで一晩を過ごすことになったので、適当に宿屋を見つけて手続きを済ませ、今日は解散となった。
 解散後、私は早速西ムーシ商会の本店へと向かったのである。

「おや? カルロさんではないですか。勇者の同行者として選任されたとか聞きましたから、いずれここを立ち寄ると思って待ってましたよ」

 私が本店に入ると、直ぐに私だと判ったようで店主自ら私を出迎えてくれた。

「寄り道して4日も経ってしまったよ。で、商売の方はどうなのだ? 」
「お陰様で何とか安定はしているのですが……ただ、今はグランシス商会との商売争いの最中でしてね。で、カルロさんにも知ってもらいたい話があるのですが」
 
 ただの挨拶だけで済ませるつもりであったが当主が途中から真剣な表情になっていたので、私はとりあえず話だけでも聞いてみることにした。

29:アーリア◆Z.:2018/04/03(火) 21:39

アーリア王国の王都の名称につきましては変更いたします。

場合によっては広く募集することになるかもしれません。

候補としてはアーリア王国王都アリムーシとしております。尚、他のサイトに投稿する際には『アーリア王国』の部分も変更します。

30:アーリア◆Z.:2018/04/03(火) 23:04

(22)


「西ムーシの町から見て北にあるロベステン鉱山がありますが、これを所有しているアリムーシ商会が近く競売にかけると宣言したのですよ」

 アリムーシ商会とは王都アリムーシに本店を置く商会であり、主に鉱山経営にて利益を得ている。この鉱山大好き商会(アリムーシ商会)がその鉱山の1つを競売にかけるということは資金繰りが危ないのか?

「ロベステン鉱山は所謂『銅山』だったわけですが、最近になって産出が出来なくなったそうなのです」

 なるほど、資金繰りが危ないのではなく銅が産出されなくなったので、単に要らなくなったからダメ元で競売にかけようとしたとも言える。しかし、西ムーシ商会とグランシス商会が、これを巡って商売争いを繰り広げているのだろうからやはり何かがあるのだろう。

「で、最近になって銅の代わりに変な鉱石が産出されるようになったのですよ。これがその鉱石です」

 当主はそう言い手に取って、私にその鉱石を見せてきた。
 
「この鉱石は……見たことがないね」

 例えばこの鉱石が広く知られている宝石の元になる原石であれば、アリムーシ商会も銅に代わり価値あるものが産出できるようになったということで、競売にかけることはなかっただろう。しかし、私はそのような宝石類は素人ながらも一通りは知っているのだが、この鉱石は全く見当がつかない。果たして、何の石なのだろうか。

「この鉱石は、まあ価値がないと向こうも判断したのでしょうね。しかし私の商会の中に好奇心旺盛な奴がいまして、そいつがこの鉱石を廃棄所から拾って来ては色々と加工なりして遊んでいたのですよ。そしたらある日、この鉱石に魔力があるのだとか奴が言い出したわけです」

 なんと! 魔力がある鉱石と……これは凄い話だ。
 まあとりあえず続きを聞こう。

「で、この鉱石を加工したものを杖の先っぽに装着して子供みたいに振り回して遊ぶようになりましてね、それがしばらく続いた頃、今度はこの鉱石には魔法発動による魔力消費を抑える効果があるとか言いましてね」
「魔力の消費を抑えれられると? 本当なら魔力な少ない者にとってみれば、重要なアイテムとなるではないか」
「そう言うことです。ほんの少し魔法の訓練をさせた者でも、何度も魔法を発動させることができます」

 魔法は『覚える』ことと、『自己の有する魔力』を増やすことが重要なのであるが、この鉱石があれば『魔力』をそこまで増加させるほどの訓練をさせなくても(理論は不明だが、日々、魔法の発動を繰り返すことで魔力が微増する)、休ませずに何度も攻撃魔法や回復魔法を発動させることが出来るということだ。もちろんその他の魔法も同様である。
 そして、これを大量に手に入れることが出来るならと考えると私は、心の奥深くから興奮という感情が沸騰したお湯のように湧き出てくることに気づいた。これを天使殲滅に使えば良いのだと。

31:アーリア◆Z.:2018/04/03(火) 23:12

訂正

「で、この鉱石を加工したものを杖の先っぽに装着して子供みたいに振り回して遊ぶようになりましてね、それがしばらく続いた頃、今度はこの鉱石には魔法発動による魔力消費を抑える効果があるとか言いましてね」



「で、この鉱石を加工したものを杖の先っぽに装着して子供みたいに振り回して遊ぶようになりましてね、それがしばらく続いた頃、今度はこの鉱石には魔法発動による魔力消費を抑える効果があるとか言いましてね。最初は半信半疑で私らも試してみたのですが……なんと、奴の言う通りでしたよ」


以上の通り訂正。

32:アーリア◆Z.:2018/04/04(水) 20:43

(23)


 西ムーシ商会の当主から鉱石についての説明を受けたが、さらにここからが本当に重要な話となる。というのも実はロベステン鉱山から金が産出されるという情報をグランシス商会が掴んだらしいのだ。であるが故に、グランシス商会は何としてでもロベステン鉱山を競落させたいらしい。

「ま、まあですね……我が商会が色々と人には言えない手段でこの情報を掴んだのですけど、できれば黙ってくれると助かりますね、はい」
「当然、誰にも言わない。グランシス商会が競落してしまえば、この鉱石を手に入れるのが困難になるからな。それを阻止するための重要な情報の1つではないか」

 グランシス商会の競落後に、この鉱石だけを無償又は安い値段で西ムーシ商会が譲り受けるとしても、恐らくグランシス商会はこの鉱石に何らかの価値があり、であるからこそ西ムーシ商会が譲り受けを求めるのだと考えるはずだ。そうなれば、高く吹っ掛けられるか或いは、魔力を有することを知られてしまう可能性がある。

「私としては何としてでも、この鉱石の供給を西ムーシ商会にお願いしたいところだ。これが実現できれば、元帥も喜ぶだろうね」

 まだ、私自身でこの鉱石の魔力の有無についてを確認したわけではないが(後でする)、当主は信用できるので魔力が有るという前提で話は進めている。

「ええ、元帥閣下も喜ばれるでしょう! まあまだ競売の日時までに余裕があれば、元帥閣下から資金を援助してもらうつもりではありましたがね。しかし、もう競売当日まで目前ですから無理な話です。で、結構いろんな金融系商会から融資はしてもらったのですが、足りないでしょうね」
 
 つまり、このままではグランシス商会が競落して終わりとなってしまうということだ。
 そして当主は、

「カルロさん! 旅の最中でしょうけれど手を貸していただけませんかね? 」

 と、私に頼み込んできたのである。

「その権限は当然、カルロさんに付与いたします。ロベステン鉱山競落担当の副当主ってことで動けるよう手配しますよ」

 ロベステン鉱山は何としてでも西ムーシ商会に競落させたい。この気持ちは真実だ。しかし、商売もしたことがないような私に何ができるのだろうか? 

「『どんな』方法を使ってでも、資金を集めなかれば! これは貴方の大いなる目的達成にも関係するはずです」
 
 当主はそう畳み込んできた。
 なるほど、考えてみれば資金を集めることに成功すれば良い。又は何らかの形でグランシス商会がロベステン鉱山から手を引かせれるなら尚更だ。

「わかった。私も出来る限り力になろう」

 私は当主の要請に応じたのである。

「では早速、この2通の書面にサインをしてください」

 要約すると、副当主の地位に兼ねてロベステン鉱山競落に係る権限の付与する旨の契約書のようだ。どうやら元々、誰かに付与するつもりだったのだろう。私は2つの同一内容の書面にサインをした。そしてその2通を、それぞてそれぞて私と当主で1通ずつ保管することで契約締結が完了したのである。
 旅をすっぽかすことになるけれど、大丈夫だろう。たぶん!

33:アーリア◆Z.:2018/04/04(水) 20:51

それぞてそれぞて私と当主で1通ずつ保管することで契約締結が完了したのである。

そして、それぞれ私と当主で1通ずつ保管することで契約締結が完了したのである。

34:アーリア◆Z.:2018/04/09(月) 21:28

(24)

 ロベステン鉱山を競落を巡るグランシス商会と西ムーシの争いに巻き込まれた私は、早速行動に出た。
 まず、ユミたちには何日か旅から抜ける旨を告げたのである。ユミたちはそれを聞き、やはりその理由を訊ねてきたものの私は黙秘を貫いた。早く『魔王領』を目指そうと主張していた私が旅を抜けると言ったものだから、ユミたちは私を無責任であると感じただろう。しかし、それだけロベステン鉱山には価値があると私は判断しているのだ。
 そして例の鉱石について私も確認した結果、一定の条件を充たせば確かに魔力の消費を抑える効果があった。
 続いて、私は王都アリムーシへ戻ってきた。それは、王都にある金融業を営む商会からも融資をしてもらうためである。

「これは凄い! 休まずに王都まで来たが、殆ど魔力が消費されてないぞ」

 さて、西ムーシの町から王都アリムーシまで戻るとなると、また無駄な時間がかかる。しかし私は快速魔法(私が編み出した魔法の1つ)を使ったのである。この快速魔法を使って走れば、馬よりも早く早さで移動することが出来るのだが、どうしても魔力の消費が極めて激しいという欠点があるので安易に使うべきではないのだ。
 しかし、例の鉱石を所持していたおかげでその消費を抑えることができたのである。

「これがあれば、快速連隊どころか快速師団も何個も創設できるぞ」

 感激したあまり私はそう口に出してた。
 とはいえ、だからこそ何としてでも西ムーシ商会に競落させなければならない。
 

35:アーリア◆Z.:2018/04/09(月) 22:09


(25)


 王都アリムーシに戻ってきた私は早速、西ムーシ商会王都支店に来ていた。王都支店の支店長とは初対面である。

「何と……。既に王都支店でも複数の商会から融資を受けていましたか」
「すみませんね。まだ本店の方には連絡してなかったのですよ」

 という事は私が王都までやって来た意味が無いではないか。

「とは言え、グランシス商会がどこまでお金を積むのか……やはりこれが問題ですね」

 支店長がそう言った。
 グランシス商会は、西ムーシ商会の何倍もの資金力を有しているので、あちらとしては西ムーシ商会の資金力を上回る資金を簡単に用意できるのだ。よって、西ムーシ商会が競落するには必死に資金を集めて、その上で運が左右されるわけである。

「まあ、西ムーシ商会としては少しでも多く資金を集めるしか、今のところ方法はないでしょう。ですからダメ元で、一応、さらなる借入の交渉に行ってきますよ」

 私は支店長にそう言って、支店を後にした。
 さて、困った。もうすでに借りまくっているわけだ。これ以上の借入の交渉をして成功するであろうか? 恐らく無理である。仮にロベステン鉱山から産出される例の鉱石に価値があることを分からせれば、さらなる借入も出来るかもしれないが、迂闊に例の鉱石について話してしまってグランシス商会に知られるのもまずい。
 果たしてどうするべきか…………私は悩んだ。
 
 
 そして、悩みつつも金融業を営む商会を一軒ずつ回ったが、当然の結果で終わった。借入は出来なかったのである。途方にくれた私であったが、とりあえず一度ロベステン鉱山へ行ってみることにした。
 再び快速魔法を発動させながら走り急いだ。西ムーシの町を経由してロベステン鉱山に到着したころにはすでに夕方になっていた。

「ここが、ロベステン鉱山か。労働者はどこにいるのだろうか? 」
 
 すでに本日の業務が終わったのかと思ったが、しばらく辺りをウロウロしていると労働者らしき一団を見つけた。

「こんにちは。私は西ムーシ商会の者なのですが……」

 とりあえずロベステン鉱山に来ただけであったので、特に用件もあるわけではなく言葉に詰まった。

「商人がここに何の用があってわざわざここまで来たんだ? ああ、ここの競売の件なら俺たちは詳しくは知らないぞ」
 
 労働者らしき1人がそう言った。
 その時、私はこのロベステン鉱山の労働者の数が少ないように感じたのであった。

「ええ、まあ競売の件で来たのですが、実は前から調べていたことがありましてね……この鉱山の労働者の数が少ないように思ったのですよ」

 たった今気づいたことを、前々から調べていたかのように言った。

「おう、その通りだぜ。なあ? お前らもそう思うよな」
「そうだそうだ! 人の数は少ないくせして、過酷なノルマを課しやがって」
「本当に商人の野郎どもはムカつくぜ」

 なるほど、労働者の数が少ないのは私が感じた通りだったか。これは中々、運の良いことかもしれない。

「やはり少ないのですよね。であれば、私たち西ムーシ商会が競落ができた暁には、貴方たちは楽に仕事ができるようになりますよ。待っていてくださいね」

 私はそう言って、ロベステン鉱山を後にして、西ムーシの町へと戻った。

36:アーリア◆Z.:2018/04/09(月) 22:12

私はそう言って、ロベステン鉱山を後にして、西ムーシの町へと戻った。

私はそう言ってロベステン鉱山を後にし、西ムーシの町へと戻った。

37:アーリア◆Z.:2018/04/09(月) 22:55

以下の訂正は(24)の冒頭

ロベステン鉱山を競落を巡るグランシス商会と西ムーシの争いに巻き込まれた私は、早速行動に出た。



ロベステン鉱山を競落を巡るグランシス商会と西ムーシの争いに巻き込まれた私は、早速翌日(西ムーシの町に到着してから二日目)から行動に出た。

以上の通り。



そして以下の訂正は、(25)の途中の部分。


 労働者らしき1人がそう言った。
 その時、私はこのロベステン鉱山の労働者の数が少ないように感じたのであった。

「ええ、まあ競売の件で来たのですが、実は前から調べていたことがありましてね……この鉱山の労働者の数が少ないように思ったのですよ」

 たった今気づいたことを、前々から調べていたかのように言った。



 労働者らしき一団の1人がそう言った。
 そして、それと同時に私はこのロベステン鉱山の労働者の数が少ないことに気づいた。ここへ来た当初から労働者の姿を中々見つけられなかったにも拘わらず(要は数が多ければ、そこら中に労働者が居るはずだ)、それに気づかなかったのもどうかしていた。

「ええ、まあ競売の件で来たのですが、実は前から調べていたことがありましてね……この鉱山の労働者の数が少ないように思ったのですよ」

 たった今気づいたことを、前々から調べていたかのように言った。これで元々用件があってやって来たかのように誤魔化せるだろうからね。

38:アーリア◆Z.:2018/04/09(月) 22:59

再訂正

 労働者らしき一団の1人がそう言った。
 そして、それと同時に私はこのロベステン鉱山の労働者の数が少ないことに気づいた。ここへ来た当初から労働者の姿を中々見つけられなかったにも拘わらず(要は数が多ければ、そこら中に労働者が居るはずだ)、それに気づかなかったのもどうかしていた。



労働者らしき一団の1人がそう言った。
 そして、それと同時に私はこのロベステン鉱山の労働者の数が少ないことに気づいた。ここへ来た当初から労働者の姿を中々見つけられなかったにも拘わらず(要は数が多ければ、そこら中に労働者が居るはずだ)、それに気づかなかったのもどうかしていたね。



訂正しまくってすみません。

39:アーリア◆Z.:2018/04/12(木) 19:34

(26)


「わざわざ、こんな時間に申し訳ありませんね」

 ロベステン鉱山から戻ってきた私は今、西ムーシ町長の家にお邪魔していた。

「西ムーシ商会の副当主さんがお越しになったという事は、商売に関係するお話ということですよね? 」

 町長の言ったとおりだ。私は西ムーシの町から融資を得ようと考え、町長の家にやって来たのである。

「ええ。町長さんも、近日中にロベステン鉱山が競売にかけられるというのはご存知ですよね? 」
「……なるほど。ロベステン鉱山を競落するために必要な資金を欲しているということですか? まあ何せ相手はグランシス商会ですからね」

 話が早くて助かる。

「はい。融資のご相談で参りました」

 もちろん、ただで融資をお願いしにきたわけではない。対価に相当するような利益を西ムーシの町に提供するつもりである。と言うのもまた幸運なことに(これを幸運と言うのも酷い話かもしれないが)、西ムーシの町には浮浪者が多くおり、能力的な問題はさておき数だけでいえば労働力が有り余っているわけである。

「まず当然、利息は付して返済いたします。その上で、我々がロベステン鉱山を競落できましたら、西ムーシの町の住人から一定数を労働者として雇用いたします」

 この王国には人頭税なる税金がある。まず、王国に払う必要があるのは当然として、王都を始め町や村でも独自に人頭税を徴収することができるのだ(西ムーシの町では現に徴収している)。
 しかし、西ムーシの町の住人であればその全員が町にも人頭税払わなければならない義務があるとはいえ、無一文の者が払うことは事実上不可能である(不良債権のようなもの)。そこで仮に西ムーシ商会がロベステン鉱山を競落できたとするなら、そのような浮浪者たちを雇入れて一定以上の賃金を払えば、町としては現実に人頭税を徴収できることになる。
 尚、ロベステン鉱山を取得した者は競落した者は、そこで現に働いている労働者について使用者としての地位がアリムーシ商会からそのまま移転することになっている。よって、浮浪者を多く雇入れても、ド素人集団になることはないだろう(たぶん)。

「……そういうことなら、融資いたしましょう。西ムーシ商会が競落に失敗しても、それはそれでお金を払う必要はなくなるわけですから、元本だけは直ぐに返せるでしょうし」
「ありがとうございます」

 この後、どうやら町長と当主が親友同士だったこともあり、当主を呼んだうえで融資に関する契約は締結することになったのである。
 尚、私が町に提示した条件はそのまま当主より追認された。

40:アーリア◆Z.:2018/04/16(月) 21:26


(27)


「町からは金貨600万枚も借りることが出来ましたよ。我々が元々準備していた資金が750万枚ですから1350万枚となりますね」

 西ムーシの町から勇士を受けることが出来たので、当主も喜んでいる様子であった。さらに西ムーシ商会の王都支店も王都中の金融系商会から借りており、それを含めれば金貨1650万枚となる。

「カルロさんのおかげですよ。まさか労働者や貧困層救済の方向から物事を考えるとは……私たちには思い付きませんでしたね」
「しかし、労働者に手厚い保護をするということは、それだけ商会に負担がかかるわけだ。今回は大口の供給先が半ば決まっているから何とかなるだけであってね」

 賃金を上げれば上げるほど、当然に商会の負担は大きくなる。さらにロベステン鉱山で働く労働者のために、西ムーシの町に無償の寮などの住居も用意することも、町長に約束させたのである。
 これらは全部、西ムーシ商会の負担となるわけだ。普通ならここまでは、思い付いてもやらないだろう。

「資金集めの方はともかくとして、私は明日、また王都へ戻ることにするよ」
「どうしてです? 」
「グランシス商会はどこから金を産出できるという情報を掴んだのか……私はそれが気になっていてね」

 西ムーシ商会は、魔力を有する鉱石を目的として競落に臨むつもりであるのだが、この当主の話によればグランシス商会は金鉱石が目的としているとのことだ。では、この金が産出できるという情報はどこで得たのだろうか? それとも独自の調査の結果、金が産出できると判断したのだろうか(例えば独自に編み出した魔法などを使って)。
 私はこの情報の真偽はともかくとして、その出所がどこなのかを掴みたいと考えたのである。



 翌日、私は王都へと向かう前に宿屋で朝食を摂っていたところユミがやって来て、

「相変わらず、カルロは忙しそうにしているね」

 と、声をかけてきた。
 ユミたちは数日の間であれば西ムーシの町で待ってると言ってくれたのである。こればかりは本当に申し訳ないと思う。

「まあな、かなり重要な案件を抱えてしまってね。とは言え、私の都合である以上、ユミたちを待たせている責任は私にある。申し訳ない」
「旅を中断するくらいだし、相当大事な案件なんだよね? それがどんな案件なのかは判らないけど、頑張ってね! 」
「まさか……ユミから励ましてもらえるとは、ありがとう」

 ユミから励ましの言葉を貰った私は、早速王都へと目指すことにした。

41:アーリア◆Z.:2018/04/16(月) 21:31

西ムーシの町から勇士を受けることが出来たので、

西ムーシの町から融資を受けることが出来たので、


以上の通り訂正

42:アーリア◆Z.:2018/04/19(木) 00:10

尚、ロベステン鉱山を取得した者は競落した者は、

尚、ロベステン鉱山を競落した者は、


以上のとおり訂正。
ちなみに、>>39はレスです。今頃気づきました。すみません。

43:アーリア◆Z.:2018/04/19(木) 00:12

>>39のレスって言いたかったんだがな。睡魔に襲われると意思無能力になるね。


今度、「睡魔と意思無能力」について、議論板にスレ建てたら怒られるかね?

44:アーリア◆Z.:2018/04/19(木) 01:15

後ついでに、

西ムーシの町
西ムーシ商会


かなり紛らわしいよな。自分でもたまにあれっ?て、なるからね。

45:アーリア◆Z.:2018/04/20(金) 00:41


(28)


「おや? カルロさん……また来たのですか? 」
「ええ、少しばかり気になっていることがありましてね……」

 王都支店にやって来た私は、グランシス商会が掴んだとされる『ロベステン鉱山は金が産出されるという情報』の出所について支店長や支店で働くその他の商人たちに訊ねた。しかし皆、知らなかったようである。

「グランシス商会がその情報を掴んだ上で競落に向けて動いているのは、我々も知ることが出来ましたが、出所まではまだ判らない状況ですね」

 支店長が代表してそう言った。

「そうですか……わざわざすみません。では、私は独自に調べたいと思うので失礼します」

 私はそう言って、王都支店を後にした。


 王都支店を後にした私は、とりあえず酒場(傭兵団を雇い入れたところ)へやって来た。

「おっ? カルロじゃないか。まだ王都に居たのかよ」

 酒場の店主は、魔王討伐のためにすでに私が王都を発ったものと思っていたのだろう。まあ事実、私は西ムーシの町まで移動していたわけだが。

「実は、かなり大事な案件を抱えてしまってね。で、西ムーシの町から1人で戻ってきたわけだ」
「ほう? どんな案件なんだよ」

 私は一先ず飲み物を注文し、その上でロベステン鉱山の競落を巡る西ムーシ商会とグランシス商会の争い、そして私が西ムーシ商会の人間として動いていることを全て話した。

「なるほどな……。金が産出できるとかいう情報の出所が気になったわけか」
「そうなんだよ。仮に鉱山大好きのアリムーシ商会がこの情報を知ってれば、わざわざ競売にかけることなど、しないだろうしな」
「因みに、俺はその情報の出所なんぞ知らないぞ。そもそも、銅山ということで有名なロベステン鉱山から金が産出できるなんて、今初めて聞いたからな」

 酒場の店主ならもしかしたらと考えて来たのだが、店主も知らなかったようだ。

「そうか。また来るから、もし情報でも入ったらその時は教えてくれ」
「おう。だが期待はするなよな? 」

 私は酒場を後にした。
 さて、何とかして情報の出所を掴むことは出来ないのだろうか。いっそのこと、グランシス商会の本店がこの王都アリムーシにあるので、そこへ赴いた上で素直に「情報の出所が気になっているので教えてください」……と頼む込もうか、と色々と考えながら王都の大通りを1人で歩いていた。
 そして、特に意識したわけではないのだが、大通りを抜けて細い路地へと入った。

46:アーリア◆Z.:2018/04/27(金) 19:47

(29)


「おい、お前! 」

 路地に入り少しばかり進んだ時、後ろから掛け声が聞こえてきたのであった。

「私に用があるのか? 」

 私は後ろを振り向き、声をかけてきたであろう者(声からして男だった)に、そう訊ねた。

「まあな。お前さんが今、一番知りたいであろう情報を俺は持っている」

 男はそう言った。
 私が今この瞬間に一番知りたいであろう情報……となると、やはりグランシス商会が掴んだとされる例の情報の出所についてである。

「で、どんな情報なんだ? 是非、教えて欲しいね」

 と、私は男に答えたが、男は直ぐにはその情報とやらを話すことはなかった。

「俺はつい先日まで、グランシス商会で働いていたのだけどよ、辞めちまってな。生活が苦しいわけだ」

 なるほど。要は情報料を支払えと言いたいののだろう。
 さて、グランシス商会で働いていたとは少々驚いたが、やはり胡散臭いので多少なりとも働いていたことを証明する何かが欲しいところである。

「グランシス商会で働いていたことの証明となるようなものは無いのか? 」
 
 と、早速私は訊いてみた。

「あ、それ訊かれると思ってたよ。で、ちょうどいいところにさ……」

 男はそう言うと、ポケットの中からクシャクシャの紙を取り出した。見たところ、どうやらグランシス商会で働く時に交わした契約書らしい。

「これ、どっかで拾ったものなのではないか? 」
「っと思った? ほれ! 」

 そして男はさらに紙を取り出した。今度は、どうやらこの男がグランシス商会を辞めた旨を記した文書らしい。グランシス商会の当主のものだろうか? 押印もされていた。

「まあ良いや。とりあえず、いくら欲しいんだ? 」

 契約書などがあるからと言って、この男が本当にグランシス商会で働いていたものと断定すべきではないが、それよりかは早く情報を訊きたいという衝動を抑えられそうにないので、追及はやめることにした。

47:アーリア◆Z.:2018/04/27(金) 23:25


(30)


「そうだね、あまり信用されていないみたいだし、とりあえず前金は銀貨50枚でお願いするわ」
「なんだ、そのくらいならタダでくれてやっても良い。ほれ、サービスだ」

 私は男に金貨1枚を渡した。金貨1枚は銀貨100枚分の価値があるので、要は倍の額でサービスしたわけである。
 そして、

「じゃあ早速、色々と教えてやる。まず、グランシス商会がロベステン鉱山を競落するだろう。競落のためなら幾らでもカネを積むだろうよ」

 と、男は言い始めた。カネを幾らでも積まれるとなると、西ムーシ商会は太刀打ちできない。グランシス商会がそこまでして競落したい理由はどこにあるのだろうか? 
 男は続けて、

「で、ロベステン鉱山から金が採れるという情報は、教会から流されたものだったんだよ。と言うのも、王都にある大聖堂の大司教が自ら口にして言っていたわけだしな」

 教会、そして大司教という言葉がこの男の口から出た時、私はさらにその背後にいる者がいる……そう判断した。教会と言えば神を崇拝するわけだが、その神の使者である天使たちも同時に崇められている。
 天使共だ! 
 要は、天使共がロベステン鉱山から採れる例の鉱石が一体どういった物なのかを、知っているこということだ。
 天使共が狙っているとなると、益々、落ち着いてなどいられない。

「だがな、金が採れるという情報は嘘だ。と言うのも、教会はグランシス商会がロベステン鉱山の競落のために支払った金額の5倍で買い取るつもりらしい」

 5倍も支払うのか。
 やはり……何としてでも天使共は教会にロベステン鉱山を管理させたいということだろう。とはいえ、現段階ではまだ私の推測に過ぎない。実は天使共はそもそも関与しておらず、例えば大司教の個人的な利益もためという可能性もあるわけで、当然そのようなケースも想定しなければならないのは分かる。
 しかし、「天使共が関わっている」と一度考えてしまった私は、この考えが頭を支配していた。

「で、競落後一定期間は鉱山を放置し、結局のところグランシス商会は金を採ることは出来なかったということにして、その後に教会に表向きは安価で売るというシナリオを考えていたわけだよ」

 なるほど。随分と面白いシナリオを考えてくれたじゃないか。天使共め! ……っと、この男が嘘を言っているかもしれないことを忘れるところであった。危ない危ない。

「そして、俺はその大司教と当主の密談を聞いてしまってな。義憤にかられたのとは違うと思うが嫌になって辞めてしまったんだ」

 それが理由で、この男はグランシス商会を辞めたのか。てっきり解雇されたのかと思っていた。
 ともかくだ、仮にこの男の言っていることが本当の話なら、西ムーシ商会に勝機はない。どうするべきなのだろうか……。

48:アーリア◆Z.:2018/04/29(日) 18:56

(31)


「ところで、グランシス商会はどのくらいカネを積むか判るか? 」

 グランシス商会は、あえて高くカネを積めば積むほどその5倍となって返ってくるお金は増えるわけである。しかしそれは、即ち教会の負担は増えるということであって、やはり競落に係る上限値についてが教会とグランシス商会で定められているのではないかという期待が私にはあるのだ。もちろん、その上限値がとてつもなく高いものなら、本当に西ムーシ商会は終わりだが。

「俺が辞める前の話だが、密談があったその日には金貨1500万枚は準備していたいたな。だが、これはあくまで本店の金庫にあるカネだけで用意したわけだし、各支店からも集めているだろうからもっと増えているはずだ」

 ああ……絶望だ。
 これはもう、金貨2000万枚は軽く超えていると見るべきだ。そもそも上限値云々の話ではないよこりゃ。西ムーシ商会は頑張っても金貨1650万枚しかないっていうのに。ここまでくると、この男が言っていることが嘘であることを祈るレベルだ。
 いや、嘘だとしてグランシス商会は元々カネはたんまり持っているわけで……。
 どうしようもないな、これ。

「そ、そうか。どうもありがとう。とはいえ、まだこの情報を信用できるわけではないから金貨をもう一枚で我慢してくれ。後払いのつもりではないが、もしこの情報が本当であると私が確信したらその時は相応のカネを払うよ」

「お? 気前が良いな! なら後払いのカネは期待しておくぜ。ああそうそう、俺はお前が今日来てた酒場に居るから何か用があるなら、そこへ来てくれ。じゃあな」

 男はそう言って、大通りへと走って行った。
 なるほど「お前が今日来てた酒場に居る」と言ってたが、要は酒場で私と主人との会話を聞いてそれで付けてきたわけか。
 それはともかく、私はこれから本当にどうするべきか……。何かしてこの状況を打開しなければならない。

49:アーリア◆Z.:2018/04/29(日) 20:03

(32)


 俺は今、西ムーシの町にある酒場に居た。

「お待たせしました」

 一瞬、酒場の店員が何かを食べ物でも持ってきたのかと思ったがそれは違う。待ち合わせていた女がちょうどやって来たのだ。

「おう、来たか。で、相変わらず貴女たちは西ムーシの町で待ち惚けをくっているようだな? とは言ってもまだ何日も経ってないか」

 今、俺には手持ちの魔物は相変わらず0匹である。であるからこそ、どこかで勇者たちを留まらせて時間稼ぎをしたかったのだが、どうやら勇者一行の1人が勝手に旅を中断して、その他のメンツは西ムーシの町にしばらく滞在することになったらしい。

「まあ、待ち惚けは相変わらずですけど、勿論西ムーシの町でしばらく滞在しようと提案したのは私ですよ。そしたら、2人ともまんまと乗っかってくれました」

「それはありがてえ。どうもな。だが、すまないのだが俺もそれなりの戦闘力のある魔物を探しているのだが……この辺は雑魚ばかりでな」

 この女の提案で、俺に時間を作ってくれたというのは本当にありがたい。しかし当の魔物はと言うと、捕らえるのに難航しているのだ。しかも今は魔物を使って攻撃をしかける最大のチャンスなのである。と言うのも、勇者一行の旅を中断して1人で勝手にどこかへ行ったのが、倒した魔物に刻印が無いか一体ずつ確認していた奴とのことらしいからだ。 
 奴が居ない今こそ、神経質にならずに魔物を使って一気に攻撃するチャンスと言うに。これは勿体ないことをした。

「なるほど、それなりの戦闘力がある魔物と言うと……実は昨日泊まった駅馬車の宿の付近に森があるのですが、運が良ければ毒タヌキがいたりするかもしれませんね」

 ほう。まあ確かに森なら確かに毒タヌキがいないこともない。なんならとりあえず、行ってみることにしよう。
 ……と言ってもその森が具体的にどこにあるのか判らんな。

「わざわざすまないね。で、その森の行先なのだが、具体的にどこにあるか判らなくてな……一緒に来て森まで案内してもらえないだろうか? 」

「ええ、そういうことなら任せてください」

「重ね重ねすまない」

 という事で、俺はこの女と共に毒タヌキ探しへ行くことになったのである。

50:アーリア◆Z.:2018/05/03(木) 02:48

>>49の(32)は、おかしな部分がかなりあるから、後で訂正しておく。

51:アーリア◆Z.:2018/05/05(土) 20:37

(33)


 王都には大聖堂に私はやって来た。この大聖堂でユミは勇者として選任され、そして私はその同行者として選任されたという何とまあ、旅のスタート地点に戻ってきたわけであるが当然、ここまで来た理由はロベステン鉱山を巡る問題である。
 そして、実はこの大聖堂には私の知り合いの司祭もいるのだが、その司祭は私を勇者の同行者しやがった実質的な選任者である(形式的には大司教の名において選任された)。とはいえ、信用できない奴ではないので今回は彼から話を聞こうと私は考えている。
 そして大聖堂に入ると、その目的の司祭は居たので私は声をかけた。

「久しぶりだな」

「おや? カルロさんではないですか。どのような用件で参られたのでしょうか」

「実はな……ロベステン鉱山の競売に係る話で、大司教さんがどうやらグランシス商会と色々と協力し合っているという話を聞いてね。で、そのあたりの情報について何か知らないか? 」

 私は司祭にそう訊ねた。

「いや……そんな話があるとは、知りませんでしたな。ただですね、最近は上級天使の奴らが何度かこの大聖堂まで訪れてはその度に大司教と何やら話しておりまして、むしろそちらの方が気になってましたよ」

「なんだと? 慣習では年に一度ほどしか大聖堂に来ないって話ではなかったか」

 仮にその上級天使の奴らがロベステン鉱山絡みで頻繁にこの大聖堂に来ているとするなら、これはとても辻褄が合うお話である。

「って今、ロベステン鉱山って言いましたよね? 思い出してみると、上級天使の奴らが頻繁に訪れるようになったのは、ロベステン鉱山から銅が採れなくなったという話が囁かれ始めた頃だったような気がしますね」

 ほう。上級天使共が頻繁に訪れてるようになった時期と重なるわけか。

「そうそう、銅が採れなくなったのと同時に、新しく変な鉱石が採れるとか言われだしましてね。ちょうど私は大司教からその鉱石をサンプルに貰ってくるようお使いを頼まれまして、私もロベステン鉱山まで行ってきたんですよ」

 おっと! 例の鉱石の話ときたか。
 となるとこれはやはり、天使共の指示の下に大司教がロベステン鉱山競落のために動いているという可能性は非常に高いと断定して良いだろう。

「実はな、その鉱石を私も狙っているんだよ」

 私は司祭に、西ムーシ商会の副当主としてロベステン鉱山競落のために動いていること、そしてあの鉱石が一体どういうものなのかを伝えた。

「なるほど……。あの鉱石にそんな作用があったとは。となると、絶対に天使共に供給されてはなりませんな」

「そういうことだ」

 仮に天使共に供給されたら、本当にヤバい。要は魔法が殆ど使えない下級天使の野郎共までもが、魔法攻撃を連発することができ得るからだ。

52:アーリア◆Z.:2018/05/05(土) 21:01

(34)


 さて、私は大司教がグランシス商会と協力関係にあり、さらにその背後には天使共が控えているものと結論付けた。まだ補強証拠なるものが欲しいところではあるがこれ以上、事実確認に時間を割く余裕はないのだ。

「そう言えば、大司教用の印鑑があったよな? 」

「ええ。大司教の名で手紙を出すときは、いつもその印鑑で押印してますね」

 今のところ西ムーシ商会が競落するための手段として、思い付いた策はたった1つである。恐らくはこれ以外に思い付きそうなのは無いし、ここは男らしく大博打に打って出てやろうじゃないか! 

「その印鑑を、何とかして拝借することはできないだろうか」

「なるほど…………。拝借するのは簡単な話です。印鑑なら、大司教の執務室にある机の上に、不用心に置いてありますからね。何なら今すぐ持って参ります」

 司祭はそう言って大司教の執務室へ行ったのだろうか? 数分して彼は戻ってきた。その手には確かに印鑑らしきものがある。

「これが大司教の印鑑です。今ちょうど大司教は外出中ですらタイミングが良かったですね」

「おお! どうもありがとう。わざわざすまないね」

 私はそう言って印鑑を受け取った。
 それから、その印環を使って色々とやることをやってから、私は大聖堂を後にしたのであった。
 尚、大聖堂を後にしようとした際、司祭は別件でとても重大な話があると言い、ロベステン鉱山競落の件が終わったらまた来て欲しいと言った。

53:アーリア◆Z.:2018/05/05(土) 21:05

訂正


尚、大聖堂を後にしようとした際、司祭は別件でとても重大な話があると言い、ロベステン鉱山競落の件が終わったらまた来て欲しいと言った。



尚、大聖堂を後にしようとした際、司祭は別件でとても重大な話があることでとのことで、ロベステン鉱山競落の件が終わったらまた来て欲しいと言ってたのであった。


以上の通りの更正登記を求める。

54:アーリア◆Z.:2018/05/06(日) 10:12

言ってた→言ってきた

55:アーリア◆Z.:2018/05/09(水) 22:03


(35)


 大聖堂を後にした私は、西ムーシ商会の王都支店へとやって来た。私はロベステン鉱山競落のために動いていたが、実はその競売がいつ行われて、そしてどこがその会場となるのかを知らなかったのである。とても恥ずかしい話だが、要はをそれらを聞きに戻ってきたわけだ。

「競売の日と会場ですか。それは明後日の午前中に、アリムーシ商会の本店(王都)で行われる予定です。で、競落者はその場で直ぐに現金を支払わなければならないので、大金を運ぶのも一苦労ですね」

 支店長はそう説明してくれた。

「そうですか。もう本当に時間が無かったようですね」

「もしかして、当主の方から日時と場所を伝えられていませんでしたか? 」

「ええ、私が訊きそびれたもので、申し訳ありません」

 本当に私は何をしていたのであろうか。あの例の鉱石に魔力消費を抑制する作用があること知って興奮してしまい、うかっり訊きそびれてしまったのだろう。本当に恥ずかしい限りである。

「いえいえ、ここだけの話ですが、当主の方もかなりいい加減な性格をしているのでカルロさんは悪くないですよ」

「……で、ではお互い様ってことにしましょう」

 厚かましいかもしれないが、私は知るべきことは知った以上、ここで無駄な責任取りショーなんぞやっても何も意味がないのでこの話は終わりにしよう。
 
「ところで、金が採れるという情報の件の話なのですが……」

 支店長も、どうやらグランシス商会が掴んだとされる金が採れるという情報の話がしたかったようだ。

「あの情報を流したのは、実は教会関係者だったようなのですよ。ただ、すでに私の方で手は打っておきました」

 私は支店長にそう答えた。

「え、きょ、教会関係者……ですか? 」

 支店長のこういう反応は予想していた。
 まあ、何も知らない善良な市民からすれば教会が絡んでいると聞けば不思議に感じるだろう。

「知り合いの司祭から聞いた話なのですが、教会が絡んでいるのは事実ですね。で、金が採れるという情報はデマですな」

 金が採れるから競落しようというシナリオでグランシス商会が動いてたものだから、誰かがグランシス商会は金が採れるという情報を掴んだのだと勘違いして西ムーシ商会にそれを伝えてしまったのだろう。

「……釈然とはしませんが、まあ教会云々よりも我が商会が競落できるかが問題ですし、これ以上は我々が知っても何にもならないでしょう」

 申し訳ない支店長。私が知ったことを全部につき貴方に教えると、逆に胡散臭く感じてしまうから金が採れるという情報に絡んだ話は、この程度でしか教えるつもりは無いのだ。

「では、そろそろ失礼しますね。また競売の当日に会いましょう」

 私はそう言って王都支店を後にしたのである。
 その後、私は酒場へとやって来た。例の男に報酬を支払うためである。

「さて……どこにいるのだろうか」

 私は酒場を見渡して男を探した。

「何をきょろきょろしているんだ? 」

 不意に後ろから声が聞こえてきたので、振り向くと探していた男がそこに立っていた。なんだろう……? この男からは後ろから声をかけられるお約束みたいなのが定まりそうだな……。
 まあ、それはともかく、私はすべきことをする。

「おう、先ほどはどうもありがとう。ほれ、報酬だ」

 そう言って、男に手形を渡した。
 この男が辞めたグランシス商会が振り出した手形なのだが、まともな財産がこれしかないので仕方がない。まあ少々、すまないとは思うが。

「よりによってあの商会の振り出した手形か」

「すまないね。現金が無くてな」

 前にユミから貰った金貨100枚については、下級天使の野郎にくれてやったの既に手元にはない。

「いやいや、額がとんでもないぜ。こんな額をもらえるなら自分で商会も立てられるよ。本当にありがとう。本当に感謝する! ……そして、文句を言ってしまってすまないな」

 その後、男と軽く酒を酌み交わして酒場を後にしたのであった。

56:アーリア◆Z.:2018/05/09(水) 22:28


(36)


 ロベステン鉱山競売の当日。
 グランシス商会の本店で待機していた当主は不機嫌であった。

「当日になって! こんな手紙を寄越すとは! 失礼にも程があるだろうが! 」

 当主は何度もそう叫んでいたのである。
 で、何故当主は不機嫌かというと、王都大聖堂の長である大司教から、ある手紙がきたからである。というのも、要約すると『ロベステン鉱山の競売から教会は手を引くから、仮にグランシス商会が鉱山を競落してもカネは一切支払わない』というものであった。

「当主、念のため大司教殿へ確認なさった方が……」

「先程、確認のため使いを行かせたが今日は不在とのことだよ。急に用事ができたとかで朝早くに王都を発ったそうだ。その時にポストに手紙をいれたのかもしれん」

「左様ですか」

 そして、当主は怒りが収まらなかったものの、既にこれから為すべき判断は決まっていた。

「さて、迂闊に競落して大損するのは避けるべきだ。競売はキャンセルするよう現場の者に伝えろ」

「承知しました」

「……教会とは結構長く付き合いがあったが、一旦見直すべきかもしれんな」

 こうしてグランシス商会はロベステン鉱山の競売から手を引いたのであった。
 そして、ロベステン鉱山は無事に西ムーシ商会が競落することに成功したのである。しかし実のところ一筋縄ではなかった。
 と言うのも、なんと第三、第四の商会も競売に参加しており、何とか僅差で競落したのである。つまり集めた金貨1650万枚の全部を支払うことになったのだ。
 
 そして、私は支店長らに挨拶を済ませて、重要な話があると言っていた司祭の元へと向かったのである。

57:アーリア◆Z.:2018/05/22(火) 20:01


(37)


「無事に西ムーシ商会が競落して良かったですね」

「おう、おかげさまでな」

 競落に成功し、本当にホッとしている。もしも競落できなかったら一体私は何をしでかすところだったか……。
 まあ今は競落に成功した喜びを抑えて、司祭の話を聞くとしよう。


「さて、カルロさん。そろそろ本題に入りましょうか」

 司祭もそう言って、話を進めた。

「まずカルロさん。貴方は、天使共は人間を玩具にしか思っていないという考えですよね? 」

 何を言い出すと思えば、そんなことか。
 天使共は時々この世界(星)へやって来ては人間を捕らえ、そして嬲って楽しむのだ。つまり、当然これは人間を玩具として扱っているわけである。

「当然だ。人間を玩具と思っているんだよ……連中は」

「やはり今でもそう思っておりましたか。ですが、私は少し違う考えを持つようになりましてね」

 と、司祭は言った。

「と言うのも私はここ数年、教会と天使共について色々と調べていましたが少し前に、それも偶然なのですが、とんでもないことを知りましてね」

「ほう? ということは、まだ私も知らないことなのだろうな? 」

「ええ。なんせ教会から選任される勇者に関係する話ですからね。最近ではユミさんが勇者として選任されましたよね? 」

 おっ?
 …………これは、勇者の選任には何か裏があるという話になりそうな展開ではないか。

「カルロさんも、魔王討伐にわざわざ勇者を選任して少数で挑ませることに、疑問をお持ちでしたよね? 」

「そりゃそうだ。各国が兵士をかき集めて数で攻めていった方が良いだろうな。しかも勇者と言ってもただの素人であるし」

 まあ、各国が兵士をかき集めて数で攻めても魔王討伐など無理だろうがな。『魔王軍』の実力がどれほどのものかは知らないが、それでも短期間で国複数を滅ぼす力くらいはあると言われている。
 そして、何よりも魔王領の戦力は『魔王軍』に限らない。

「それが、ただの素人ではないのですよ。実は…………強力な戦闘兵器を作り上げるための実験なのですよ。あ、まあこれは私が発見した資料によるとですけどね」

 えっ?
 せ、戦闘兵器……だと? 
 
「ど、どういうことなのか、詳しく説明してくれ」

 私は司祭に詳しい説明を求めたのであった。

58:アーリア◆Z.:2018/05/22(火) 20:08

訂正

「そりゃそうだ。各国が兵士をかき集めて数で攻めていった方が良いだろうな。しかも勇者と言ってもただの素人であるし」

「そりゃそうだ。各国が兵士をかき集めて数で攻めていった方が良いだろうしな。しかも勇者と言ってもただの素人であるし」


それが、ただの素人ではないのですよ。


この一文を削除。


以上のとおり訂正

59:アーリア◆Z.:2018/05/23(水) 22:33


(38)


「その資料によれば、どうやら勇者に渡される剣がその戦闘兵器を完成させるための鍵となっているようでしてね……。そうそう、剣には負の感情を無限に増大させるとか書いてありました」

 剣……? 
 ああ、教会で大司教から渡されたあの聖剣のようなものを言っているのだろう。

「で、そのその資料とやらはどこで見つけたんだ? 」

 勇者の選任が戦闘兵器にするためものと言う話が真実であるなら、これは本当な危険な話である。それによって完成した戦闘兵器の戦闘力次第では魔王はあっさりと殺され、さらに我々が天使に歯向かうことは、今よりも困難となる。
 とはいえ、司祭が嘘の情報を掴まされている可能性もあるのでその資料どのように発見したのか私は訊いた。

「ああ、資料はこの大聖堂の地下深くにある書庫で発見したのですよ。と言うのも、そこにある本を読み漁っていたら偶然のその時読んでいた本の中に挟まっていましてね」

「ま、まて、地下深くの書庫だと……? 」

「ええ、実は図書館とは別に書庫があるんですよ。この大聖堂は」

 どおりで……。
 どおりで、この大聖堂の図書館にある本は役立たずなものばかりだと思っていたが、なんとまあ、地下に書庫があったとは。恐らくその書庫にある本や資料はどれも重要なものなのだろう。

「そして、そこで見つけた資料に今述べたことが書いてありましてね」

「そうか」

 地下の書庫で発見された資料に書いていたからと言って、まだその資料の信憑性があるとは言い切れない。だが、一先ず資料の信憑性は保留としておこう。
 そして司祭の話によると、勇者に渡される剣が戦闘兵器の鍵となるらしいが、一体どういう作用で戦闘兵器たるものになるのだろうか? 「負の感情を無限に増大させる」とも言っていたが、それがどうなるのかは具体的には判らない。
 さて、司祭はそのあたりも知っているのだろうか……。

「で、具体的にはどのようにして戦闘兵器なるのだ? 」

「いえ……。実はその見つけた資料は留め金の痕跡があることから、どうやら何枚かに渡るも資料だったのかと思います。そこから抜け落ちた一枚を偶然に私が見つけたということでしょうね」

 ということは、結局その詳細は分からず仕舞いか。
 しかしその資料の全てを発見できれば、さらに詳しいことが判るかもしれない。それに詳細が分からないとはいえ、放っておけばユミが戦闘兵器たるものになってしまうことは分かったのだ。まずは如何にしてユミからあの聖剣を奪い取るか、そして如何にして大聖堂の地下にあるという書庫から本やら資料の全て持ち出すか、を考えよう。

「そうか。詳しいことは分からないとのことだが、それでもこれから為すべきことは決まった。ありがとう。ああ、それと夜までには地下にあるという書庫に行くからよろしくな」

 私はそう言って、大聖堂を後にしたのであった。

60:アーリア◆Z.:2018/05/24(木) 20:01


(39)


「なるほどな。このような森であれば『毒タヌキ』もいるかもしれない。かなり期待が持ててきたよ」

 俺は使役する魔物を探すため、女と共に西ムーシの町を出て、この森までやって来たのであった。

「それは良かったです。まあ早いところ『毒タヌキ』を見つけましょうか」

「そうしよう」

 そして、俺たちは手分けして『毒タヌキ』或いはそれなりの戦闘力を持つ魔物を探しにしたのである。とはいえ女の方は魔物使いではないので、発見してもどうしようもない。そこで発見次第、すぐ俺に連絡できるよう互いに一定の間隔を保ちながらの作業となった。

 特に時間は気にしてはいなかった。
 だから作業を始めてどれほど経ったのかは判らないが、俺は一休みしようと女に声をかけようとしたところ、とても不快な臭いが周囲に漂っていることに気づいたのである。

「気分が悪くなる臭いだ…………。もしかして」

 動物や魔物の死骸があるのだろうか?
 ここまで強烈な臭いとなると、かなりの数の死骸が近くにあるのかもしれない。

「あの……ちょっとこちらへ来てくれませんか? 」

 女がそう言いながらこちらへやって来た。何かを発見したのだろう。

「何があったんだ? こんな気持ち悪い臭いということは、どうせ不快になるようなものなのだろうがな」

「え、ええ。予め言っておきますが、吐くかもしれません。それは覚悟しておいてください」

 吐くかもしれないって……ならそんなもの見せるなよと思ったが、ともかく想定通りの物体があるのだろう。
 俺は覚悟を決めて、女に後について行った。

61:アーリア◆Z.:2018/05/28(月) 22:10

(40)

「ここです」

「な……んだと……!? 」

 俺は女について来て見れば、そこにあったのは人の形をした物体であった。要は死体ということである。しかもその死体のほとんどが焼死体だ。女は、吐くかもしれないと言っていたが確かにこんなものを見せつけられれば、俺もその日の体調次第じゃ吐くだろう。
 まあ、吐くまではないものの吐き気を催しているには事実だ。反対に、焼死体に集っているハエ共からすれば、嬉しい限りだろう。うまい飯が食えて。
 だがな、ハエ共。こちらはお前らが集っているその光景を見て、さらに気分が悪くなるんだよ。お前らがうまそうに飯を食っているその光景がな。

「ま、まあ一目でわかるかと思いますが、死体です。幸い、まだハエが集っている以外は肉食動物や魔物たちには手を付けられていないようですが…………。死体の背中のあたりを見てくれませんか? 」

 女の言うとおり俺は死体の背中を見てみると、何かが生えているのが見えた。焼死体についてはもはや原型を留めていないので、唯一焼死体ではない死体を見てみると、それが何なのか判った。それは翼だ。
 
「えっ? ま、まさか……な」

 まさか、これらは天使の死体だと言うのだろうか? 

「天使の死体ということでしょう」

「お、おう。まあ翼があるということは、そういう事だとしか言えないよな」

 何故だ? 
 何故、このような場所に天使の死体が、それも複数の死体があるのだろうか。
 もちろん、こう考えることもできる。というのも、魔王軍の一部が独自に動いており、そしてここで戦闘が起こったという事だ。
 ……だとするなら。

「一体どこの四天王様の部隊がやったのだろうか。まさか貴女のところの四天王様とかじゃあるまいよな? 」

 というか、俺たちも賭けたカネのために勝手に動いている手前、他人が独自に動いていて批判する立場にはない。この女は命令で動いているのかどうかは知らないが。
 そうそう、勇者を始末するといってもそれは嘘だ。あくまでも『魔王領』に辿り着く前に戦意を喪失させて、捕まえて魔王様に身柄を移すだけである。

「少なくても、私は知りませんよ。それに何も魔王軍の仕業とも限りませんしね」

「まあ、俺も天使の死体を直接この目で見たわけだし、俺の方の四天王様には報告しておこう。後で町に戻ったら部下に伝言を命じるつもりだ」

「そうですね。私は『魔王領』へ戻ってから報告することにしましょう。ある程度、どこの仕業なのかは見当がつきますし、その人たちの監視は貴方のところの四天王様が、貴方の部下から報告を受けて直ぐにしてくれるでしょう」

 どこの仕業なのか?
 あ、そうか。言われてみればこういうことをやらかしそうな連中は、俺でも見当がついていた。無論、魔王軍の仕業である可能性も否定はできないのだが、その他にも『魔王領』には相応の実力を有する組織があるのだ。

「ま、まあ。この話は一旦保留して、引き続き使役する魔物を探すことしないか? 」

「そうですね。元々、それのためにここまで来たわけですし」

 という事で、俺たちは魔物探しの作業へと戻った。

62:アーリア◆Z.:2018/05/28(月) 22:29




・西ムーシ商会
西ムーシの町に本店を置く商会。実は当主は、旧帝国人民軍の元軍人。

・アリムーシ商会
アーリア王国の王都に本店を置く鉱山大好き商会。

・魔王軍
魔王が率いる軍勢のこと。

63:アーリア◆Z.:2018/05/28(月) 22:33

>>62はミス。



・西ムーシ商会
西ムーシの町に本店を置く商会。実は当主は、旧帝国人民軍の元軍人。

・アリムーシ商会
アーリア王国の王都に本店を置く鉱山大好き商会。

・魔王軍
魔王が率いる軍勢のこと。ただ、魔王領が有する戦力はこれに限らない? ……らしい。

・魔王軍四天王
魔王軍は魔王が率いる軍勢であるが、具体的には5つの部隊に分かれている。と言うのもまず魔王自身が直接率いる部隊があり、そして魔王軍四天王が部隊を1つずつ率いる。基本的に各部隊の長(魔王か各四天王)が独自に人材を登用できる。それ故に、各部隊の人員数はバラバラだ。

64:アーリア◆Z.:2018/05/29(火) 18:37

(41)


 司祭から一通りの話を訊いた私はその後、急いでロムソン村へ向かった(快速魔法を使って)。司祭が言うには大聖堂の地下には書庫があるとのことであって、以前から教会や天使共の情報を収集している私としては、その書庫にあるすべての本や資料が欲しいのである。
 しかしそれを全部1人で運ぶとなるといつまでも経っても終わらない。以前、別の町の教会から奪取した際も、傭兵を雇って行ったのだ。つまり今回も傭兵を……即ち、ロムソン村には私が雇った傭兵団がいるので、彼らを使おうと考えたのである。
 ただ、関係各署にバレれば何らかの処罰を受けることは間違いないので、彼らがそれに応じるかはまだ判らない。

「さて、どこにいるのだろうか」

 ロムソン村に着いた私は、早速傭兵団の場所を探した。まあ、恐らくは宿屋にいるのだう。しかし、そう期待して宿屋に入ってみたのであったが、傭兵団らしき者たちは居なかった。食堂ではなく各自部屋に居るのだろうか? 

「すみません。傭兵団の者たちがロムソン村に居るはずなのですが、今どこにいるか判ります? 」

 と、私は宿屋に女将に訊ねた。

「傭兵団? ああ、あの人たちなら村が魔物に襲われないように手分けして、周辺を巡回しているわよ。とは言っても、そろそろ戻って来る頃合いかもしれないわね」

「そうですか。ではその間、ここで待たしてもらいますね」

 という事で、私は宿屋で傭兵団の帰りを待つことにした。



「おっ? 何故あんたがここにいるのだ」

 宿屋でしばらく待っていると、傭兵団の団長が声をかけてきた。どうやら巡回から戻って来たようだ。

「それはだな……。実は今日中に王都でやって欲しい仕事があってね。で、ここまで来たわけだ」

 私は、その『やって欲しい仕事』についてを団長に話した。もちろん、王都の大聖堂地下にある書庫から本や資料を奪取するという話である。

「おいおい。つまり、汚れ仕事ってことか。まあ俺たちも人には言えないようなことをカネのためにしてきたからな。今更善人ぶるつもりはないが……それに割り増し料金を請求しようにも、すでに大金をもらっちまってるし……」

 反応から察するに、団長は気乗りはしないようだ。これは仕方あるまい。誰だって汚いことなどしたくはないのは当然である。以前、そのような汚いことをしたからといって、今回は喜んでその行いができるというわけでもない。

「頼む! 別途報酬も出す」

 団長はしばらく口を閉ざした。色々と考えているのだろう。そもそも、この傭兵団と私は契約関係にあるから、わざわざ別途料金を払う必要はないと言えるかもしれないが、私はそうは考えない。
 そして、

「わかった。では、早速王都へ向かわないとな」

 交渉は成立したようだ。

65:アーリア◆Z.:2018/05/29(火) 22:06

(42の1)


 夜九時ごろ。
 私と傭兵団(一部メンバーを除く)は、王都大聖堂の目の前に居た。

「カルロさん! 待ってましたよ」

 私たちの存在に気づいたのか、司祭がそう言って外へ出てきた。

「今日中にまた来るとのことでしたので、荷車3台と藁袋を大量に買っておきましたよ」

「おお? 気が利くね。ありがとう」

 私たちが予め用意したのは、藁袋(1人1つずつ)のみであった。荷車があれば、大量の荷物を一気に別の場所へ運ぶことができる。それに地下の書庫にある本や資料の数量によっては私たちが用意した藁袋だけでは足らなかったかもしれない。
 ナイスだ。司祭!

「では早速、作業を始めよう」

 私はそう言って、司祭に大聖堂の地下にある書庫までの案内を頼んだ。今日は大司教は所用でここには居ないとのことらしい。まあ、そもそも普段からして大司教は外出しているらしく、実質bQのこの司祭が大聖堂の運営を切り盛りしているとか。
 それはともかく、司祭の案内で地下にある書庫に辿り着いた。そして皆、すぐさま藁袋を広げて目についた本や資料を、なりふり構わず藁袋にぶち込んだ。

「どんどん入れていけ。本が傷んでも後で読めればそれでよい。私が欲しているのは本ではなく情報だからな」

 そう言いながら、私も作業を進めたのである。
 夜十一時を回るころには全ての本や資料を藁袋に入れることができた。さらに荷車への積み込みを終わり(とんでない高さにまで積みあがっているが。それに多少、人目が気にはなる)、私が王都で借りている貸倉庫へと運んだ。入りきらない分は、酒場の店主名義、そしてこの司祭名義の貸倉庫へと運んだ。尚、一旦王都に保管したとはいえさらに別の場所(実はその場所は魔王領だったりする)に運ぶのだが、それは西ムーシ商会の当主に任せるつもりだ。
 そして、一仕事を終えた私たちは、酒場の店主が特別にまだ店を開けてくれるとのことで、それぞれ酒を飲むことにした。傭兵団の面々は嬉しそうだ。

「しかし、他の町にも教会から奪取した資料やらがまだ沢山あるとか言ってたよな? 」

 傭兵団のノリにはついて行けないので1人で飲んでいると、そう店主が声をかけてきた。
 彼の言うとおり、私は多くの教会から本や資料を奪っては魔王領へ送っているのだ。しかしその集めた本や資料の量は膨大であって、その多くが依然として一時保管場所に残ったままである。まあ、西ムーシ商会も色々な業務で忙しいし仕方はないのだが。

「仕方ないだろ。量がとんでもないのだから」

「いっそ、魔王領から応援を頼むのはどうだ? 」

「ああ、その手があったか。明日、西ムーシ商の町に着いたら当主にでもその旨を伝えておこう」

 集めた本や資料を魔王領へ運び、そしてその魔王領から応援を寄越してもらう……私はまるで魔王の手先のように思われるかもしれない。それに天使共への敵対心もある。しかし、決して私は魔王の手先などではないのだ。
 つまり、魔王らが我々の天使共へ対する諸々の活動を邪魔するなら、私は魔王も排除することになるだろう。もちろん、元々大昔から歴代の魔王は天使共と敵対関係にある。神の名のもとに天使共は、魔王や魔族を『悪魔』と称して滅ぼす対象にしているのだから当然だ。という事は、私と魔王は協力し合えるかもしれない……と考えることもできる。
 しかし魔王が持つ天使共への敵対心と、私の持つ天使共への敵対心は果たして同一のものといえるのだろうか? 
 同一でないにしても、我々の天使共に対する活動を魔王は認めるであろうか? それは現状判らないのだ。さらに私と協力関係にある天使もおり(彼らは他の天使から堕天使と罵られているが)その協力者を魔王が協力者として認めるとも限らない。
 故に、迂闊に魔王を信用するわけにはいかないのである。

66:アーリア◆Z.:2018/05/29(火) 22:07

(42の2)


「……っと。酒に酔って色々と考えて込んでしまったみたいだ」

「あんた……その考えこんでいるとやらの間に、ワインの瓶一本を飲み干しているけど、大丈夫か? 」

 と、酒場の店主に言われて、瓶を見てみると既に空になっていた。

「こりゃ……後数分で眠ってしまうな」

 さて、やることはやった。また、魔王討伐(個人的には討伐するつもりはないが)のための旅を再開することになる。ユミやマリーア、そしてダヴィドを待たせているのだ。改めて謝罪しなければならない……お詫びに何か適当にお詫びの品でも買うことにしよう。
 そうそう、『毒タヌキ』の件を忘れるところであった。あれは魔物使いの仕業によるものと推測している。で、その魔物使いとやらは魔王の手下なのか、或いはそれとは関係のない者(とはいえ、魔王領出身者ではあるだろう)なのか。
 と、こちらも色々と気になるところではある。
 実は『毒タヌキ』との遭遇は、単なる偶然でしたということもありえなくはないが。

67:匿名:2018/05/29(火) 22:10

投稿量が多すぎで、二つにわけました。次は(42の3)ではなく、(43)と表記いたします。

68:アーリア◆Z.:2018/06/08(金) 20:31


(43)

 翌日。
 私は二日酔いで体調がすぐれなかったのであるが、午前中はユミたちに渡す手土産を買うために、王都中の店舗に立ち寄った。そして買ったのは『魔王領』に関して記述されている本と、そこそこ値が付くお菓子1袋である。
 買い物や昼食を済ませた私は、王都西側にある馬車駅に向かった。今回は快速魔法を発動しての移動ではなく、傭兵団の面々と共に駅馬車を使って西ムーシの町まで行くことにしたからである。

「カルロさん。集合時間よりだいぶ早いですね? 」

 確かに傭兵団との約束した集合時間は13時半であり、今は12時過ぎなのだが……何故かそこのいたのは司祭であった。

「わざわざ見送りに来てくれたのか? 」

「違いますよ。大聖堂があんなことになって、結局私が疑われることですし、逃げることにしたのですよ」

 なるほど……。
 グランシス商会がロベステン鉱山の競落に失敗したことや、大聖堂の地下にある書庫から資料や本が全て消え去っていること、これら2つの大事件を前にこの彼……もといブルレッド君はまず無事では済まされないだろう。
 2つの事案について、ブルレッド君自身の関与自体はバレなかったとしても大聖堂の実質的bQである以上、その管理責任を問われかねない。

「すまなかった。お前の任務を妨害してしまったみたいだ」

「いや、別に問題はありません。私の今回の任務は既に完了してましたからね。今回の任務は、大聖堂が天使共に関する重要な資料などを何処かに隠しているという推測されて、その在処を見つけることが任務でした」

「ほう? 既に任務は完了していたのか」

 結果論ではあるが、ブルレッド君の任務を妨害せずに済んだようだ。で、ブルレッド君の言う『その在処』というのは、恐らく地下にあったあの書庫のことだろう。

「因みに私が任務終了後もあえて大聖堂に残っていたのは、最近やたらと上級天使が訪れているので、その目的を確認するためでした。まあ、こちらはロベステン鉱山の件で頻繁に訪れていたのでしょう。あっ! そういえば…………」

69:アーリア◆Z.:2018/06/09(土) 22:31


(44)


「うん? どうしたんだ」

「勇者が教会から選任される際に渡される剣についての話なのですが……」

 確か、勇者に渡される剣という話は、何らかの作用によって戦闘兵器にするとかいう話だったはずだ。何か新たに重大な情報でも彼は掴んだのだろうか?

「早急に、剣の回収をしておいた方が良いかと思いましてね」

「なんだよ。剣の回収の話なら、ユミを説得するかこっそり奪うか、まあその他の手段も含めて既に検討中だ」

 剣の回収くらい、言われなくたってするつもりだよ。全くもう。物忘れが多い私だって、そこまで無能じゃないぞ?

「今日に至るまでに、勇者として選任されたのはユミさんだけですか? 」

「あっ! 」

 そうだった。勇者は既に何人もが選任されていたのだ。それを忘れるなんて…………。

「カルロさん、既に1つはカルロさん自身が回収したじゃないですか。その上で忘れなんてどうかしてますよ? 」

「ああ、確かに私が何年か前に勇者に暗殺されそうになって、それを何とか凌いで回収してたわな。あまり思い出したくない記憶だ」

 実は私は、勇者に命を狙われたことがある。相手は勇者を含めて4人で、私1人に向かって殺そうとしてきたのだ。当時、教会や天使共が私を排除したいと考えてその討伐の対象のしたのだろうと考えていたが、その意図の有無はともかくとして、やはり勇者として選任された彼らも戦闘兵器製造の実験対象だったのだろうか?
 そう考えると、益々可哀想に思う。
 彼らも天使共に利用されなければ…………。
 いや、4人を殺したのは私だ。天使共ではない。

「まあ、とりあえず私の方でも剣の回収については出来る限り何とかする。そちら方でも何とか頑張ってくれ」

「ええ。私の方でも魔王領に戻り次第、直ぐに上司に進言します」

 しばらくブルレッド君とその他にも色々と話していたら、時間もだいぶ経ち傭兵団の面々を馬車駅にやって来たようである。

「ほう? 司祭殿も居たのか」

 私が馬車駅にやって来た時のように、傭兵団の団長も、司祭がこの場にいるものだから不思議に思ったのだろう。
 そして14時になった頃に、私やブルレッド君、傭兵団の面々は数台の馬車に分乗し、王都を出発した。

70:アーリア◆Z.:2018/06/12(火) 19:14


(45)


 馬車は無事に動き出し王都と西ムーシの町の中間にある馬車駅を目指して進んでいる。私は傭兵団の団長と同じ、馬車に乗車していた。

「昨日伝えるのを忘れていたが、ロムソン村を襲っていた魔物は毒タヌキであったらしい。で、我々が村に来てからは一度も襲撃は無かった」

「えっ! それは本当なのか? 」

 毒タヌキの一件は魔物使いによる仕業であると推測しているが、それは毒タヌキが何故か森の奥深くを生息地とするにも拘わらず、森ではない道の真ん中で屯していたからだ。中でも特に不自然だったのは、そこでずっと立ち止まっており待ち伏せしているようにも見えたことである。

「村人がそう言っていたことは本当だ。退治しようにも胃液にやられて気絶するのは嫌なものだから、皆逃げていたらしい。まあ、そんなものだから有効な対処も出来ずに農作物はが荒らされて大変だとか言っていたな」

「そうだったのか。ところで、村に来てからは一度も襲撃が無かったらしいが、まさかな? 」

 我々(ユミ一行と傭兵団)が退治したあの毒タヌキが、村を襲撃していたとなると、辻褄が合う。しかも、あの『毒タヌキ』は魔物使いに使役されているものと推測しているが、これが本当だとすると、さらに村の襲撃も魔物使いによる仕業いうことになるわけではないか。

「あの毒タヌキの死骸が、あの時残っていればな……」  

 私が刻印の有無を確かめようと『毒タヌキ』との遭遇現場に着いた時には、既に傭兵団がその死骸を全部焼却処分をした後であった。

「あの時も気なっていたが、やはり何らかの理由で毒タヌキの死骸が必要だったみたいだな。すまない」

「いや、あれは善意無過失による焼却処分だったと私は結論づけている。これは、仕方のないことだ」
 
 まあ、あの時に刻印の有無が確認できていれば、はっきりしていたわけだが。
 
 ところで、私は思った。
 そもそもロムソン村が魔物に襲撃されているという話は、私は知らなかったのだ。というか、まずそんな噂すら立っていなかったと言える。ところが、何故かユミはその事実を知っていたのだ。果たして、ユミはどこでロムソン村が襲撃されているという話を知ったのであろうか?

そして、馬車は王都と西ムーシの町の中間地点にある馬車駅に到着したのであった。

71:アーリア◆Z.:2018/06/13(水) 23:00


(46)


 今俺は、馬車駅にいた。もちろん、同行している女も一緒に居る。

「2匹しか確保できなかったが、まああんなところで作業なんて続けられないわな」

 天使の焼死体(一部除く)を発見してからというもの、どうにも気分が優れずに結局のところ使役する魔物を2匹確保して直ぐに作業を中断したのだ。
 この魔物はオスとメスが○○中に確保したのだが、『火炎ウサギ』と呼ばれている。
 当然、そこらで年中発情中の野ウサギとはわけが違い、顎から長い角が生えておりそこから初級ではあるが火炎魔法を発動させることができ、さらにその角で敵を突き刺して攻撃することもできるのだ。尚、魔物の総合ランクは中級に分類されている(毒タヌキは準上級)。

「私は慣れていますので、あの森にずっと居ても平気ですが、死体に慣れていない人は、仕方ありません。私なんて最初のころは吐いてしまいましたし」

 ほう? あんな数の死体を見て平気なくらいに慣れているとは……この女、ヤバい奴だな。殺しの経験もありそうだよ全く。
 この女が、例えば連続殺人事件を起こした犯人だと言われたら、俺は信じてしまうぜ。
 とはいえ、女に負けるのは何だか恥ずかしい。

「恥ずかしい姿を見せてしまって、すまないな。一応はこれでも魔王軍の幹部の末席ではるというのに。この通り、魔物の死骸ならともかく、死体を見たのはあれで2回目でな」

 初めて死体を見たのは自殺した母親の死体だ。だが、俺がその死体と対面した時には葬儀業者によって綺麗に施された後であった。ハエまみれの死体を見たのは、あれが初めてなのである。

「現魔王軍の幹部で、死体を日常的に見てきたのは先代魔王が暗殺された頃に、現在の魔王様(当時は第一魔姫)に仕えていた者たちくらいでしょうね。あの頃の記憶は今でも鮮明に残っています」

 まじか。
 この女……いや、マリーア殿はずっと前から魔王様にお仕えしていたとは。そして、あの過酷な日々を過ごしてきた英雄殿の1人だったとは。なんて……なんて俺は馬鹿で屑なんだよ。
 『例えば連続殺人事件を起こした犯人』だ?
 ふざけるな! なんでこんなことを考えてしまったんだ俺は。

72:アーリア◆Z.:2018/06/13(水) 23:00

(47)


「知らなかったよ……。そんな昔からお仕えしていたとは」

「突然、土下座してどうしてしまったんですか? 別にその頃から仕えていたからと言って偉いわけでもありませんし。でも確かにあの頃は大変でしたね。魔王様を亡き者にしようとする奴らが多くて……私は仲間と敵に死体に囲まれて寝た日もありました」

「亡き者にか。当時は魔王様は何の力もない女子(おなご)ではあったではないか! あの天使共めっ! そういう力無き者まで殺そうとするとは、卑劣な連中だよ」

 現魔王様は女性であり、まだとても若い。そして先代魔王に比べると、その力は微々たるものであると言わざる負えないのだ(当然、俺よりは強いが)。つまり天使共には到底太刀打ちなどできないわけである。

「女子だから、というのは失礼ですよ。魔王様も既に魔王たる力を有しておりますし、天使側から見れば、弱いうちに殺しておく……これは当然の話です」

「理屈はわかる。しかし、俺の感情はそんなのでは抑えられない! 」

 現魔王様の、あの必死に魔王領を纏め上げようとする健気な姿をみると……いや、勇者一行がどこまで辿り着けるかにカネを賭けるような奴が言うことではないか。

「でも、私たちが苦労したのはほんの一時期でしたしたね。ある時から暗殺者やその集団による襲撃は一気に数が減りましたから」

「あの時から……? ああ、魔王領の帝政時代の幕開けがその理由だな」

「そうです。天使たちは、今まで先代魔王の子供たちを暗殺対象にしておりましたが、帝政時代が始まってからは、その暗殺対象を皇帝に変えたようですからね。余程、危険だったのでしょう。現に天使相手に戦争を始めてしまいましたし」

 皇帝ね。
 天使共からは悪の皇帝とか呼ばれていたらしいが、実は俺はその皇帝を見たことはない。元々、殆ど表には出なかったようで、さらに戦争が始まってからはずっと出征したようなのである。
 それにしても、戦争か。
 親父は、その戦争で死んだのだである。そしてその報せが届いて直ぐに母親も後を追って死んだ。

「あの皇帝がどういった人物なのかは知らないが、まあ自らが皇帝となったことによって天使共の最重要の暗殺対象になり、結果的とはいえ今の魔王様を救ったことは褒めてやっても良いかもな」

「皇帝……ですか。あまり私は好きではありませんね。天使たち相手に戦争をする意気はともかく結局その意気だけで魔王領を危険に陥れる無謀な行動をしでかしたのですから」

 まあな。その戦争が原因で俺の両親は死んでしまったしな。
 
「あら? そろそろ西ムーシ行きの馬車が出発する時間ですし、乗るとしましょう」

「おう。そうしよう」

73:アーリア◆Z.:2018/06/13(水) 23:15

訂正

出征したようなのである。



出征していたようなのである。

74:アーリア◆Z.:2018/06/20(水) 20:53


(48)


 途中の馬車駅を経由して、私たちはようやく西ムーシの町に到着した。
 到着してすぐに、傭兵団の面々は既に西ムーシの町に居る5人と合流すべく移動し、ブルレッド君は剣の回収の件があるため出来るだけ早く『魔王領』に戻りたいとのことで、今日中にプランツ王国の王都プランツシティまで行くとのことである。
 そして私は、西ムーシ商会の本店へとまずは向かった。


「カルロさん! ありがとうございます。おかげさまでロベステン鉱山を競落できました。本当に良かったですよ」

 当主はとても喜んでいるようだ。
 今後の財産的利益への期待に喜んでいるのか……或いは魔力を有する鉱石を某組織(当主自身が某組織の前身たる組織に所属していた)に供給することで、天使共に対して優位な立場になれるかもしれないという期待からからか、実はその両方から来る喜びなのか、それは私には判らない。
 だが、少なくとも私は『天使共に対して優位な立場になれるかもしれない』という期待はある。

「今回は色々と運が良かっただけだと思うがな。当日になってグランシス商会が競売参加をキャンセルしたわけだし……まあ、他の商会も競売に参加してギリギリで競落できた点、資金を集めつことができたのは良かったが」

 今回の競売は、アリムーシ商会の私的な競売で、競落した者(商会)は直ちに現金を支払わなければならないという決まりであったので、資金を集めておいたのは正解だった。要は手形を振り出すなり、又は他の商会が振り出した手形を所持していたとしても、それを引渡すことによる決済は認めてられていなかったのだ。

「グランシス商会のキャンセルの話は……カルロさんが何とかしたからですよね? 判っているのですよ? 私は貴方のことを、あの戦争前から知っているのですから」

「何とかってなんだよ……」

 この感じだと、どうやら当主は、初めらから私の商人としての能力など期待していなかったようだ(実際皆無だが)。恐らく、私が人には言えないような行為をすることを見込んで、私を副当主という役職に就けさせてロベステン鉱山の競売に係る権限を与えたのだろう。

「その何とかについてだが、王都大聖堂や天使共が絡んでいたのを知ったから謀っておいた。これだけ言えば、お前なら判るだろう? 」

 
「ああ、なるほど。ブルレッドさんの協力を得たりして『何とか』したわけですね? いやあ流石です」

 おいおい、性格の悪さが見え見えだぞ、全くもう。
 まあ、人のことは言えないが。

75:アーリア◆Z.:2018/06/22(金) 20:30


(49)


「そうそう。カルロさん、これは報酬です」

 当主はそう言って、袋を渡してきた。
 実際に受け取ってみると、ある程度の重量が感じられる。これはそこそこの額が入っているのだろう(全部銅貨や銀貨だったら話ならないが)。

「どうもありがとう。ありがたく貰っておくよ。それと、大事な話があってな……」

 大事な話とは、大聖堂から盗み出した本や資料の件だ。

「私とブルレッド君、そしてテオドルさんが王都で借りている貸倉庫に、資料を運んでおいたからそれを運んでおいて欲しい。出来れば以前から溜めこんでいる分よりも、優先的にな」

「なるほど…………どっかの教会でやったんですね? わかりました。早急に済ませておきます。というか、テオドル元議長にも協力してもらったのですか。今は結婚し、細々と酒場を切り盛りして幸福を掴んでいるというのに」

「テオドルさんには、倉庫だけ貸してもらっただけだよ。さて、そろそろ宿屋に行きたいからこのへんで失礼するよ」

 私はそう言って、西ムーシ商会本店を後にしたのであった。



 私が宿屋に入ると、ちょうどユミたちが宿屋の食堂で夕飯を食べようとしているところが見えた。

「あっ! カルロだ」
 
 ユミが、私に気づいてそう言った。声のトーンからして少し嬉しそうに感じたが……まあ、気のせいであろう。
 むしろ私が嬉しい気持ちになっているのかもしれない。

「おお、カルロ殿か。久しぶりと言うには、まだ短い期間かな? 」

「カルロさん! もう用事は済ませたのですが? 」

 続けて、ダヴィドやマリーアも声をかけてきた。一旦、旅を中断してからは2人とは一度も顔を合わせていなかった。

「ああ、用は済ませたが……私事で迷惑をかけてしまって申し訳ない。お詫びにと言ってはなんだが、これを買ってきたから食べてくれ」

 私はそう言って、お菓子の入った袋を1つずつ渡した。3人は早速、袋を開けて中身を確認しているようである。

「おやっ? このお菓子は高級品ですよね。わざわざ貰ってしまってよろしいんでしょうか」
 
 どうやら、マリーアはこれがそこそこ値の付くお菓子であることに気づいたようだ。私としても、このように気づいてくれた方が、それこそ高級品であるが故に申し訳なさが伝わってくれていると感じることができるからありがたい。
 まあ、こうやって心の中で思うあたり性格が悪いのだと自覚はしているが、仕方ないね。 
 人の感情なんてものは勝手に沸きだすのだから。


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