コクった彼氏は肉食系でしたよ

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1:猫又◆j.:2018/05/26(土) 21:52

こんにちは、猫又と申します。
駄作を書きます。
ラブコメディというか、ギャグです。
ただちょっとダークなシーンあります。
危ない作品ではないです。(多分)
読んでってくれると嬉しいです。

◇登場人物紹介

○鮎河繭美(あゆかわ まゆみ)
顔と妄想がうるさい。今回の主人公。
小学校まではムードメーカーだがやさぐれた。

根暗、コミュ症、友達0というフルコンボだが、
ゲームとアニメと妄想内になら彼氏はいる。
もとい、ゲームとアニメと妄想でしか恋愛してない。
神屋東中学校(こうやひがしちゅうがっこう)の2年生。
今回大胆にも憧れの先輩に告白したが……?

○井上奏馬(いのうえ そうま)
神屋東中学校の3年生。
おっとりしていて、人当たりがいいマユミの先輩。
少々抜けている部分があるが、男女問わずに信頼されている。

今回明らかに恋愛対象外と思われたマユミから告白されたが、
どうやら嫌な相手でもないらしく……?

○佐々原友恵(ささはらともえ)
高校1年生。マユミとソウマの先輩。
でもマユミからはトモちゃんと呼ばれている。
恋愛(?)に悩むマユミの相談役かつ友達。

○白凪千里(しらなぎ ちさと)
謎の人。高校一年生。
ちっこい。

それでは『コクった彼氏は肉食系でしたよ』
略して、『コク肉カレー』
スタートです。

2:猫又◆j.:2018/05/26(土) 23:19

◇プロローグ 〜あぁ、初恋は、儚くも〜

 一日千秋という言葉がある。
たった1日を千回の秋が巡るほどに待ち焦がれる様子を表しているらしいその言葉を私は今、想い人を待ちながら身を持って感じていた。
 井上奏馬(いのうえ そうま)先輩。
神屋東中学校、男子ランキング3位。
男子陸上部に所属し、温厚でのんびりとした性格からか男子・女子問わず周囲からの信頼は厚い。特に目立つような行動はせず、裏方に回っている。引っ込み思案ではあるがそのお人好しさゆえに彼女を志願する女子は少なくない。
それが私の想い人、ソウマ先輩だ。
ここまで言えば分かると思うが、並の女子が手を出して良いお方ではない。
特に私のような根暗、コミュ症、友達0が近づけるような存在では絶対に……無い。
――ハズだった。

「そ、その……す、好きれしたぁッ! 付きゃってくださいッ!!」
 この盛大にコケたセリフを私が吐いたのは昨日。
人目につかない校舎裏に先輩を呼び出した時のことだ。
 もちろん期待はしていなかった。
どうせ何もしないで諦めるくらいなら告白して玉砕しよう。
先輩のことだ、告白したことで私の悪口をいう人では無いだろうし、
他の女子が何をウワサしようと私のイメージはこれ以上悪くなりようもない。
そう考えての決行だった。

とにかくその時は告白して玉砕してテキトーにごまかして帰るつもりだったのだ。
だが、その玉砕覚悟の告白に対して返ってきた言葉は私の予想の遥か上、
雲どころか成層圏まで超えて宇宙まで届くほどの答えだった。
『考えさせてくれないかな。明日まで。……僕も君となら上手くいく気がするんだ』

「クワァ――ッ!!」
 若干頬を染めながらそう言った先輩。
その顔を思い出して、私はもたれ掛かっていたボイラー施設の扉をガンガンガンガンガンと叩きながら、奇声を発する。
 そう。先輩は言ってくれたのだ。君となら上手くいきそう。と
それはつまり、そう、つまり、そういうことですよ、えぇ!!

3:にしき:2018/05/27(日) 11:33

新作があがっているなと思って拝見させて頂いたらなんと猫又さんの作品ではありませんか!
タイトルの略のコク肉カレーも秀逸なネーミングセンスで素敵ですね

4:猫又◆j.:2018/05/27(日) 12:02

にしきさん、こんにちは!
読んでいただいて、ありがとうございます。
まだ最序盤ですけどこんな駄作に付き合ってくれたら嬉しいです。

・追記
にしきさんの作品、移行先でも見たいのでURLお待ちしてます。

5:猫又◆j.:2018/05/27(日) 12:12

「はぁっ……。はぁ……ッ」
 人目につかない校舎裏で息を荒げる私。
緊張しているからとはいえ絵面は完全に変態だった。
というかもうヘンタイでもいい!
今日この場所で先輩が私の望む答えさえ言ってくれれば、私は栄えての彼氏持ちぃッ!
今さら何を恐れるものがあろうか!
「さーて。先輩まだかな〜?」
 猫なで声100%。普段絶対に出さないトーンの声で先輩を待っていると、
超至近距離から柔らかいハスキーボイスが響いた。
「ごめん。待った?」

「ひゃ、ヒャぃっ!」
 ぞぞぞぞーっと首筋に寒気が走る。
またしても奇声を上げる私に対し、ソウマ先輩は私に歩み寄りながら優しく微笑む。
「さっそくだけど……その、一晩考えて……」
「は……はい……ッ!!」
 ありがたい笑顔の後光に気圧されながら、私は固唾(かたず)をのんで先輩の解答を待つ。
 元々期待していなかったとはいえ、ここまで来た以上、胸踊らずにはいられない。
期待と共にフラれる不安が膨らんでゆく私を、しかし先輩の言葉が打ち砕く。

「僕でよかったら……付き合ってもらえるかな?」

 っしゃァああああああああああああぁッ!!
 歓喜。ココロの中で妙に男じみた歓声を上げつつ拳を握り締める。
とにかく今まで感じたことのない幸福が私を満たす。
 やった! これで、これでやっと私も彼氏持ち……。
長かった……長かったなぁ鮎河繭美(あゆかわ まゆみ)。
 中学入学してからグロ系趣味のせいで周囲の女子からはキモいとハブられ、小学生までのノリで恥じらいの無い下ネタを連発した結果、男子から「女として終わっている」と笑われ、放課後になれば楽しそうにはしゃぐ同級生達の声をから逃げるように……ぼっち下校。

 でも、そんな日々は今日で終わり。
『今までの私』というマユを破り、今日から私は大空へ羽ばたく……。
――要するに。
「先輩さえ手に入ればお前らなど『へ』でもないわァ……ッ!」
辛かった回想シーンの果て、ラスボス的なセリフを超小声で呟く私。

「あの。ちょっといいかな?」
 それに気付いていないのか恥ずかしそうに声をかけてくる先輩。
「は、はい! 何でしょうか」
 思考が危ない方向に行きかけたので、急いで脳を恋愛モードに切り替えた。

6:猫又◆j.:2018/05/27(日) 21:13

 すると、先輩はらしくもなく「えっと……あの……」と頬を染めながら、
なにか言いたげに私を凝視する。

 え? なになに? もしかして手とか繋いでみたいとか?
いやいや、モテモテの先輩に限ってそんなことで……もっとハードなことだよね? ね?
 キスとかそういう……いや、でも告白してすぐにそれは……ちょっと。
あ〜でも男子にとって恋愛ってそういう行為のことなのかな?
い、いいよ…? うん。……こんな私でも好きになってくれたんだから、覚悟はしてる。
「ん。ん〜」
 とりあえずその気はあることを示すために、ちょっとだけ唇を尖らす私。
先輩はそんな私の顔を抱きかかえるように自分の顔を近づけ――ることなど無く。来てからずっと後ろに隠していた左手を差し出した。
「これ……できれば受け取ってほしい。僕と付き合うなら、肩身離さず持っていてほしいモノなんだ」
「えッ?」
 嘘っ!? プレゼント? 告白後にプレゼントとかそんな……嬉しい。
突然のサプライズに驚きながら差し出された先輩の左手に目を落とす私。
そこにあったのは結婚指輪サイズの――

――防犯ブザーだった。
「……は?」
 ナニコレ……。え? ドユコトこれ。
息子用? 将来生まれてくる息子に持たせる防犯ブザー!? え、気が早すぎない!?
 防犯ブザーと先輩を1秒間に3回のペースで見比べながらそう目で訴える私。
しかし先輩の口から出たのは想像以上の言葉だった。
「僕が、その、“いけないこと”しそうになったら危ないし……持ってた方がいいと思って」
「いけない!? そ……それって、どういう……」
 突っ込みと質問が口の中で追突事故を起こしたのかそれしか言葉が出ない私。
しかしそんな私など眼中に無いのか、さらに先輩は続ける。
「だって、もしかすると僕――」
 
「君を襲っちゃうかもしれないから」

 表情が見えないよう俯きがちに、信じられないセリフを真顔で吐いた、先輩。
その後、長い沈黙の後に「あの……今日からすぐっていうのも気まずいから。明日から学校近くのゲームセンターで待っててくれるかな。……うん、じゃあ。また明日」と言い残して先輩はその場を去って行った。

カァーカァーと……地味なカラスが鳴いている。
あぁ……あぁと地味な私が空を仰ぐ。
 あぁ初恋は、儚(はかな)くも。
そんな言葉で済まされるならまだ、よかった。

 いや……夢だ。うん、こんなの夢に決まってる。
きっとフラれたショックで見ているだけの夢なんだ……そうだ、現実を見よう。現実の方が、フラれていた方がまだ……幸せじゃない……ぃ……い。がッ。
「ごガぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
 限界だった。
私は腫れ上がるまで頬を引っ張っていた両手(こぶし)を突き上げ、大空に叫ぶ。
“夢ではない”と、ほっぺの痛みが証明するこの世界に吠える。

 こうして、私の初恋は始まったのだった。


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