コクった彼氏は肉食系でしたよ

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1:猫又◆j.:2018/05/26(土) 21:52

こんにちは、猫又と申します。
駄作を書きます。
ラブコメディというか、ギャグです。
ただちょっとダークなシーンあります。
危ない作品ではないです。(多分)
読んでってくれると嬉しいです。

◇登場人物紹介

○鮎河繭美(あゆかわ まゆみ)
顔と妄想がうるさい。今回の主人公。
小学校まではムードメーカーだがやさぐれた。

根暗、コミュ症、友達0というフルコンボだが、
ゲームとアニメと妄想内になら彼氏はいる。
もとい、ゲームとアニメと妄想でしか恋愛してない。
神屋東中学校(こうやひがしちゅうがっこう)の2年生。
今回大胆にも憧れの先輩に告白したが……?

○井上奏馬(いのうえ そうま)
神屋東中学校の3年生。
おっとりしていて、人当たりがいいマユミの先輩。
少々抜けている部分があるが、男女問わずに信頼されている。

今回明らかに恋愛対象外と思われたマユミから告白されたが、
どうやら嫌な相手でもないらしく……?

○佐々原友恵(ささはらともえ)
高校1年生。マユミとソウマの先輩。
でもマユミからはトモちゃんと呼ばれている。
恋愛(?)に悩むマユミの相談役かつ友達。

○白凪千里(しらなぎ ちさと)
謎の人。高校一年生。
ちっこい。

それでは『コクった彼氏は肉食系でしたよ』
略して、『コク肉カレー』
スタートです。

9:猫又◆j.:2018/06/08(金) 22:10

>>7-8
はい。ノロノロ更新ですが見てってくれると嬉しいです!

10:猫又◆j.:2018/06/08(金) 22:18

◇第1話 今日、私は先輩を真っ赤に染めました

 学校近くのゲームセンター。。
心躍る初恋の舞台に“昨日までは”なるハズだった場所。
「はぁ……っ、はぁ……ッ」
そこで私は獰猛(どうもう)に息を荒げていた。

 目の前には先輩。
嬉しいことに私だけを見てくれている。ラブラブだ。
――理性さえ失っていなければ。

「くそぅっ……」
 ゲームセンターの隅で私は静かに歯を食い縛る。
もっと早く、こうなる前に先輩を止めておくべきだった。
 もはや彼の瞳に理性は無く、私を襲うことだけしか考えられなくなっている。
おそらくもう、彼の耳に言葉は届かないだろう。

 覚悟を、決めるしかない。
そう自分を奮い立たせた私は、ゆっくりと右手に握っていた『モノ』を先輩に向ける。
そして何のためらいもなく“引き金を引いた”。

 銃弾を受け、先輩が後方へ吹き飛ぶ。
「がっぁああああ!」とその精神にふさわしく、獣のように喚き散らす先輩。
 しかし私は止まらない。撃ってしまった以上、止まれない。
右腕、右足、脇腹、首、左の手と腕。撃つたび先輩のカラダが何度も宙を舞う。
そして最後に、先輩の脳。眉間(みけん)に向けて銃口を合わした。

 文字通りハチの巣にされ、ボロぞうきんの様な姿で弱々しく呻く先輩。
それ見て、私はこんな状況にも関わらず笑みをこぼす。
 何が『君を襲っちゃうかもしれないから』……だ。
初恋女子に向かって、そんなバカげたことを言わない方がいい。
それこそ、こんな風に――。
「返り討ちにされるくらいなら」

 弾丸が先輩のアタマを抉(エグ)って……。そうして先輩は息絶えた。
『さようなら先輩』「さようなら先輩」
 名前も知らない女性声優さんの声と共に私は先輩に別れを告げ、静かに銃を下ろす。
勝利の余韻(よいん)に浸り、独り静かな時を楽しんでいた私に後ろから水を差す声がした。

「そんなにイヤか……まゆまゆ」
 トモちゃんだった。
本名はたしか、えーと……友恵(ともえ)だっけ?
私の中学のOB、つまりは卒業生で現在は高校1年生。
事実上、私どころかソウマ先輩の先輩ですらあるのだがトモちゃんだ。
トモちゃんはトモちゃんだ。

そんなトモちゃんに姿を目撃された私は――

11:猫又◆j.:2018/06/09(土) 22:42

「うん、イヤだ」
 特に気にすること無く目の前の機体に“銃型コントローラー”を戻して、トモちゃんに歩み寄る。トモちゃんはなんというか困り顔で私を迎えてくれた。
「急に死にそうな声で電話して来て、恋愛相談に乗れって言ったわりには元気ですねぇ、まゆさんや」
「カラ元気だよ。……こんなふざけた茶番やってないと、もう精神的にやばいんだって」
 今までやっていたゲームのエンデングを遠巻きに眺めながら、深くため息を吐く私。
しかしトモちゃんは相変わらずの苦笑いで続ける。

「だからってそのストレスをガンシューティングゲームに向けないでくれませんかねぇ、まゆさんや。なんか大声で叫んでたりとか、人撃つたびにニヤニヤしてたりとか……さすがの私も見てるだけで恥ずかしい」
「えーいいじゃん。この頃ゲーセンの客からも温かい目で見られてるんだよ?」
「うら若き中学乙女としてどうなのよ……。それ」
「別に? 私まったく気にしたことな」「気にしろ」
 なんだか最終的には怒られてしまった。
そんな女子力ゼロに厳しい先輩を尻目に、全く反省する気が無い私はゲームのリザルト画面を見ながら今日のスコアを確認する。

 私がプレイしていたのは『ブラッティハーツ』というゲーム。
ガンシューティングとしてはよくあるゾンビシューティングに、あろうことか学園ラブコメディをミックスさせた奇跡の一作だ。憧れの先輩と共に学園内を駆け回り、最終的には2人で脱出を果たすストーリーなのだ、が……。
「あー点数低い! 序盤で“たまたま”ルート選択を間違えたから先輩ゾンビ化しちゃって、射殺エンドだったからナー。こっちのルートだとスコア稼げないんダヨナー」
 アー失敗シター。
「何が“たまたま”だ。……明らかに『いのっち』への当てつけじゃないか」
「ちっ」
 なにやら部外者がうるさい。

 ちなみに『いのっち』とはソウマ先輩のことだ。
コミュリョクバカ……失礼、トモちゃんはソウマ先輩とも仲良しというか、ホント誰とでも仲良しな人なのでそんなあだ名で先輩を呼んでいる。
 さらに誤解がないように言っておくと、ゲーム内の先輩は終盤ゾンビだし、まったくソウマ先輩に似ていない。あくまで冗談でそんなことを言っていただけだ。
……まあ、少しだけ感情移入してたけど。

 ともかく。せっかく少しだけ鬱憤(うっぷん)が晴れたというのにまた不快な気分になったので、私はゲームセンターの隅で壁にもたれ掛かりつつ、ガチトークモードに入ることにした。

12:猫又◆j.:2018/06/13(水) 00:10

「いやさあトモちゃん。あんな無茶苦茶な告白された私の気持ちも考えてよ〜。いきなり襲うとか言われたんだよ!?」
「うん、まぁ…ねぇ」
 電話口でおおそよその事情を知っているトモちゃんもまた、
腕を組んで壁にもたれ掛かりながら困り顔に戻る。
「でもさー、まゆまゆはそういう積極的なアプローチって好きじゃないの?」
「え? だって……そんな。恥ずか――」
「いや。そういう女子アピールいいから」「…………」
 驚異的なツッコミの速さに、ある種の絶望ともどかしさを覚えながら私は続ける。

「うぅ……違うんだよ。攻略されるルートじゃなくて、『気弱で奥手な先輩と徐々に距離を詰めて、その間にだんだん大胆な行動も増えてきて、一時的にお互いの両親から引き離されても私がそれを振り切って、みんなの前で成長した私達を示して恋人としてゴールイン!』 ……みたいな、先輩を攻略“する”ルートに入りたかったのッ!!」
「どこの恋愛ゲームだよ」
 トモちゃんが私をどうしようもないモノを見る目で見ているのも気にせず私は続ける。
「それ以前に怖いし!」
「たしかに恋愛以前に人として怖いレベルの発言だと思う」
「でも先輩だし!」「ほう」
「大丈夫な気がしたからこうやって待ってるわけですよ」
「うん。それでも先輩を待つその勇気は称賛に値する」
「えっへん」「ははーっ」
 胸を張る私とひれ伏すトモちゃん。

 といった感じでいつもの漫才を終えた私達。
とりあえず真面目に話し合うため、近くにあった椅子に腰掛けることにした。
「ま。私もいのっちのことはよく知ってるから言うけど、少なくともそんなコトするような人間には思えないんだよねー」
 ぽすん、とイスに尻もちをつきながらトモちゃんが言う。
「多分、襲うの意味が分かってないとかそんな感じじゃない?」
 たはは、とあっけらかんに笑うトモちゃん。
いつもなら一緒になって笑う私は、しかしその笑みに沈んだ声を返す。
「うん。多分そうだと思ってるよ……私も」
 あの時はそりゃギャグか何かと思ったし、最悪だと思った。
でも、あれから一晩明けて今は……怒りよりも悲しみが大きくなっていた。

「そっか、マジで思い悩んでるワケだ」
 そう。冗談だとしても勘違いだとしても、正直ショックだったのだ。
私は……そりゃこんなだけど、本気で先輩に恋したのに、何であんなこと言ったんだろう?
本気にしてない? 遊びだと思ってる? それとも……
それとも先輩は……。
「どう思ってるのかって?」
 黙ってうなずく。
するとトモちゃんはふぅとため息を吐いてから、私にこう言った。

「そういうの。今はなるべく考えないほうがいいよ」

13:猫又◆j.:2018/06/16(土) 23:58

“らしくない”とても落ち着いていて真剣な声色だった。
私は何か説教でもされるんじゃないかと身を縮める。
しかしトモちゃんは相変わらずニコニコしながら言った。

「まだ付き合い始めてもないんだから。分からなくて当然だよ」
 そうでしょ? と私に言い聞かすように自分の発言を強調するトモちゃん。
その姿はどこか、どこか“トモちゃん自身にも言い聞かせている”気がして……。

「そりゃ、今回に限ってはいのっちが特殊すぎるけど」
 でも、それでも先輩はニカッと笑って私の背中をポンっと叩いて言い放った。

「相手が自分勝手なこと言ってんだから、アンタも自分の『好き』……投げ付けて来なよ」
 そうやって笑う先輩は私の初恋をとても喜んでくれていて――。

――同時に自分の初恋を思い出して、とても悲しそうだった。

14:猫又◆j.:2018/06/17(日) 23:37

 トモちゃんの初恋は小学生だったらしい。
まだ小さくて何も知らない子供のくせして本気で、自分の全身全霊を注いだ片思い。
本人が言うにそれは……。
“ひとりぼっちで終わった”そうだ。

 誰にも知られず、当然誰にも理解されずに『友達』のまま、今でも付き合い続けている。
そんな話を、踏み出せずに壊れた恋の話をたった1度だけ聞いたことがあったから――。
そのセリフの重みを、私は直感で理解した。

「ありがとう」
 何だか胸が苦しくなって私も“らしくない”言葉を吐き出す。
友恵はそれを知ってか知らずか、ますます微笑んで「いいね。今ので一気に女子力10ぐらい上がったよ」と、ケラケラ笑った。そんな友恵の姿を見ながら私は静かに立ち上がる。
「もういいの?」
「うん」
 短く頷(うなず)いて、私は歩き出す。

 後ろから「かーっこいーなー。やっぱオーラーが違うわー」なんて茶化して来る奴がいるけど、
「やっぱ恋はこんなポンコツでも変えるもんだね!」
 なんかヒトコト、フタコト余計な先輩がいるけど。
「大丈夫、後ろからばっちりストーキングするから! もしもの時も安心!」
 ついでに、ものすごくおせっかいかつ迷惑行為に及ぼうとしてる輩(やから)がいるけど。

 私はストーキングしてきたら本気でトモちゃんを殴ろうと決意しながら、先輩の待つゲームセンターの外へと踏み出したのだった。


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