「―――次の方、お願いします」
……来た!
私の、番。
「みさき はるな! 11歳です!夢は、みんなを元気にできるアイドルになることです!」
これから始まるんだ。アイドルへの、道が―――
アイドルガールズ 〜トップアイドルを目指して〜
この前と同じように、私達は駐車場に案内された。
「また、下見……?」
「そうみたいだね」
前と違うのは、まやが一緒なことだろうか。
「ここ、駐車場やけど、車一台もないやん!」
「はは……」
そう言えば、まやがここを見るのは初めてだったかも。
事務所の車も中々見つからない薄暗い駐車場に、まやは驚きを隠せないでいた。
「確か、この辺に……」
「……いた」
しばらく歩いていると、なつきちゃんの指差す方に、
前乗った大きなワゴン車が停まっていた。
「よし、三人とも来たな。乗ってくれ」
ドアを開けて、私達はワゴン車に乗った……
「プロデューサーはん、運転できたん?」
「ああ……って、こんなやりとり、前にもした気がするぞ」
まやも一緒に、車に乗ったわけだけど、
今回はどんな場所で、ライブをするんだろう?
「うう……こないだもそうだったけど、レッスンの後だから……ねむい!」
フカフカの座席が、睡魔となって襲ってくる。
寝てしまいたい……
「うちもや……はるな、肩貸して……」
「え、ちょっ、まや……!?」
まやは、私の方により掛かると、すぐに眠ってしまった。
「はるな、ごめんあたしも……」
「え!?なつきちゃん……」
なつきちゃんも、私によりかかって、すぐにぐっすり。
ああ……両端がすごく重いよ。
「美咲、お前も寝てていいぞー」
「……無理です」
左右から重みを感じているせいで、
到着するまで私だけ、寝付けないままだった……。
「ついたぞ……って、美咲、大丈夫か?」
「……はい」
ブレーキの音が聞こえて、車が止まるのがわかった。
同時にプロデューサーの声がして、私は目を開ける……。
ってことは、少しは眠れてたのかな?
さっきよりは、気分がいい。
「ゔっ……」
気分がいいと思ったのは一瞬で、左右に女の子二人がもたれかかっているのを思いだした。
掛かる重みは、相変わらず凄かった。
「二人共……起きてー……」
着いたし、そろそろ軽くなりたい。
そう思って、二人を起こす。
「えーもう着いたん……?」
「ふわぁ……着いたんだ」
まやの方はもう少し寝てたいって感じだけど、
なつきちゃんの方はゆっくり眠れたって感じで、すっきり起きていた。
「ここだ。明後日、STARSと共演するステージは」
「お、おお……」
車から降りると、目の前に大きな建物があった。
ライブハウスと書かれたその建物は、夕方なのに眩しいネオンが輝いていて、とても綺麗だ。
「ライブハウスで、アイドルのステージを開くん?」
「そうだ。中に入ってみろ」
プロデューサーについていくまま、私達はライブハウスの中に入っていく……。
「暗いね……」
「足元、気をつけて」
駐車場よりは明るいけど、それでも暗い通路を、ゆっくりと進んでいく。
「あれ?なんか聞こえへん……?」
「もうすぐか」
まやの言ったとおり、前の方からかすかに、音楽のようなものが聞こえてくる。
「ライブハウスだから、ライブやってるのかな……」
「多分ね……」
一歩ずつ足元に気をつけながら、音のする方へ進む―――
「……お、おお!?」
驚く私の声も聞こえなくなるほど、その部屋は盛り上がっていた。
ステージの上で歌うバンド。それを応援するお客さんたち……すごい!
「ラ、ライブハウスや……」
まやは、その騒がしい光景に目をキラキラとさせている。
「プロデューサー、私達……ここで歌うの?」
「らしいな。この客の中、行けるか?」
「……勿論」
なつきちゃんとプロデューサーが、何か話してたけど……
周りがうるさくて、私には聞き取れなかった。
「よし、帰るぞ。夜になっちまう」
また暗い通路をたどって私達は、入り口にある車まで戻った。
帰りの車は、もう遅いので一人ひとり送ってくれるらしい。
「あんなトコで歌うんか、明後日が楽しみやな……」
「ほんとだね……」
見学だけだったにもかかわらず、まやはすごく興奮しているようだった。
クーラーが効いてるのに、車の中は熱気に包まれている。
「今度はお遊びで登るんじゃなくて、アイドルとして立つんやな……」
「まや……どういうこと?」
お遊びで登る……まるで、登ったことがあるみたいな言い方。
なつきちゃんが聞くと、まやは上を向きながら言った。
「デパートの屋上で……あのステージにな……」
「え……!?」
まやの言葉で、私はとあることを思い出した。
―――それは、私がいつも感じている空気。
その人に見とれてしまうような……
一緒にいて、すごく心地が良い……
「まや……そ……れ……」
思い出した途端、意識が重くなって、遠くなっていく……。
「ん?はるな……寝てもうた」
その後私が目を覚ましたのは、自分の部屋のベッドの上だった。
それから2日後、ライブ当日だ。
「こんにちは、ノルンの皆さん」
「あ、イオリさん……」
私たちが控え室で待機していると、イオリさんが入ってきた。
「今日はライブだね。お互い、悔いのないようにしよう」
「う、うん!」
あのジュースの時といい、イオリさんはやっぱり優しいな。
「あ、ところで……ボクたちと君たちは共演という形になるけど、対決するわけじゃないからね。そこの所、よろしく」
そ、そうなんだ……
てっきり、ライバルユニットだし対決しなきゃいけないと思ってた。
「そうなんだ……じゃあ、お互い楽しまなくちゃね」
驚いて、私は少し間が空いたあとに答える。
「もちろん」
すると、イオリさんは思わず同性でもキュンときてしまうほどのかっこいい顔で微笑んだ。
「先にボク達のステージだから、見ててよ」
そして、イオリさんはそう言いながら控え室から出て行った。
……もう、ステージなんだ。そんな時に私たちの所に来てくれるなんてすごいな。
『みんな、STARSのイオリだよ』
『STARSのまどかです〜』
控え室のモニターに、会場の様子が映る。
2人は、衣装もメイクもすっごいキラキラしていて、星みたいで……とにかく、綺麗だった。
『じゃ、一曲歌うから。ボクたちの姿、見てて!』
それから、曲のイントロが流れてくる。透き通ってて、小さい音だからちょっと静かな曲なのかな。
そして、2人は歌い出した。
綺麗な歌声も、ブレひとつ無いダンスも。
2人は、キラキラしたステージに負けないくらい輝いていた―――
STARSのステージが終わった後。
「いよいよ、次はそっちだね」
「頑張ってくださいね、ノルンの皆さん」
イオリさんと美空さんが控え室まで来て、そう言う。
……もう、私たちのステージ直前なのだ。
「は、はい! ありがとうございます!」
私は、応援してくれる美空さんにお礼を言って、なつきちゃんとまやの方を見た。
「……頑張ろ」
「全力でいこうや!」
2人とも、気合いは十分みたい。
「じゃ、いこう!」
そして、私たちはステージの裏へと向かったのだった。
ステージまでは、デパートの時と似た感じで、少し長い階段がある。
私たちは、その階段の前でステージを待っていた。
「お前ら、頑張れよ」
「……大和プロデューサー」
すると、後ろからプロデューサーの声が聞こえてくる。
緊張しているから、この応援がありがたい。
「あんまりレッスンは見れなかったけど、お前らが頑張っていたのは知っている。失敗してもいいから、全力を出せ」
「……はい!」
うん、やっぱりプロデューサーの言葉は安心する。
それは2人も同じだったみたいで、緊張で堅かった表情が和らいだ。
「それでは、ノルンの皆さん。準備をお願いします」
「はい!」
いよいよ、ステージ。
私たちはステージへの階段を見上げる。
この先には、あの日下見で見たキラキラとしたステージが。そして、私たちはこの後そこに立つんだ!
「10、9、8、7……」
カウントが始まる。デパートの時みたいに、心臓の音がどんどん大きくなっていく。
「3、2、1……0!」
私たちは階段を駆け上がった。
――――この先には、ステージだ!
目がチカチカするほどのライト、見渡すと沢山のお客さん。
これこそが、私の目指してたアイドルのステージだった。
「こんにちは、ノルンです!」
緊張していたけれど、それがどんどん消えていく。
自分でもよくわからないけど、ステージに立つとなんでも出来るような気がするんだ。
「うち、凛々代真夜! ノルンの3人目の女神や!」
あ、そういえばまやって初めてお客さんの前に立つんだ。
お客さんが受け入れてくれないかもしれないのに、物怖じしている様子もない。
……すごい、まや。
「あはは!」
「いいぞ、真夜ちゃん!」
自信満々そうに言うまやが面白かったのか、お客さんたちにウケている。
「……えっと、今回も新曲。みんな、あたしたちの歌、しっかりと聞いて!」
「勿論!」
一方のなつきちゃんも、ちゃんと進行をしてくれている。
……そして、なつきちゃんのセリフに合わせて曲が流れた。
今回の曲は、なつきちゃんが歌い出し。
なつきちゃんが歌う横で、私とまやはひらひらと踊る。
「おお……」
なつきちゃんの間違いひとつもない100点の歌とダンスは、お客さんの注目を集めている。
そして、次はまやのパート。
まやが歌い出した瞬間、会場が湧いた。まやの声は人を魅了する力があるって、私は思う。
サビに入った。いよいよ、私の歌。なつきちゃんとまやがダンスの方に移る。
……失敗してもいいから、大きな声で。お客さん全員に聞いて貰えるような歌を、私は歌いたい!
そんな思いを込めながら、私は歌い切った。
曲の終わりのイントロ。私たちは、最初の切なげな踊りとは逆に、楽しそうなステップを踊る。
まるで、冷たい世界からあたたかい世界に変わったように……!
――――そして、曲は終わった。
「ありがとうございました!」
大歓声だった。ライブは、成功。
今までで1番やりきった。……私はそう思うけど、まだこれは終わりなんかじゃない。
「これからも、“3人の”ノルンを、よろしくお願いします!」
私達の夢は、まだまだ始まったばかりなんだ―――
「……そうか、ライブは上手く行ったか。向こうの事務所にも、礼を言わないとな」
―――社長室。
大原は、ライブハウスにいる大和と連絡をとっていた。
いい結果だと言われ、彼の顔は安堵の表情を浮かべている。
「じゃあ、帰ってくるのを待っているぞ」
そう言い残して、電話を切る。
「時間は掛かったが、お前の夢をようやく始められそうだ……」
携帯の待受を見て、大原は誰かに話しかけるように呟く。
「まだ、見守ってくれているか?……優奈」
待受画面には、あどけない表情をした可愛らしい少女が写っていた……。
Go To next stage……
・時々変なところで句読点打ってる
・心情表現が少ない気がする(自分が言えることじゃないが)
・改行が多すぎて逆に読みにくい
・ストーリー的には良い
・関西弁に違和感がある
・状況描写は良い