万里一空!

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1:まつり@ゆず◆Go @は全角:2018/06/25(月) 18:23


  

     青春を全力で!  

       >>2

10:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

「あっ凛条さん、やっぱりペットに異動してくれないかな」

 世界から色が消えた。

 
 《ブル部魂!》


 凜条 千図(りんじょうちず)、ピカピカの中学一年生。

 私立H大学附属新倉(にいくら)中学校に、そこそこの倍率の受験を乗り越えて入学した。

 同じ小学校からこの中学校に進学した人はいない。
 少しばかり心細かったけれども、そんなことは杞憂に終わった。

 一年生を迎える会、略して一迎会いちげいかいでの部活動紹介で、心を奪われたから。

 アンサンブル部――

 ノリの良さそうな、意外なことに男の部長さんの説明。

「活動していくなかで、楽器の個性を知ることができる。なんだろう、友達?相棒?……とにかく、一生の相手になるはずです」

 そのときは…ああ、良くあるセリフだな、と思った。
 どの部活も、そういう綺麗なことを大袈裟に言って。

 ……でもそれは、三年生にとっては大切なメッセージ。
 それをより教えてくれたのは、その次の演奏だった。

 曲名なんて、演奏が始まった瞬間に忘れたよ。
 一つ一つが合わさって、まさに一音入魂!って感じで。
 少人数編成だからか、すごくまとまりがあった。

 いいなあ。この部活。
 カッコいい。わたしも、一生の相手…楽器と、出会えるかな。
 こんな演奏、できるかな――

11:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

 というのが入部の動機で。
 わたしはユーフォニアム――通称ユーフォを希望した。

 なんかカッコいいし、オシャレな雰囲気もある。
 音だって……個性を知れば、自由に奏でることができるだろう。

 しかし、もうすぐ三年生も引退、わたしたちは本格的な練習に入ろうかとしているときに、この台詞だ。

 ……そう。ユーフォニアムは、希望者が募集枠よりも一人多かった。
 その分、トランペット――ペットの人数が一人減って。
 良しとなったはずなんだけど…。

 もしかしたら移動を頼むかも、とは言われた。

 でも、なんでわたし?
 もう一人の一年生、乙(おと)ちゃんでも良かったよね?

 ……と思ったので、訊いてみた。
 その答えが、

「乙凪(おとな)さんは少しだけど経験しているし、自分の楽器を持っているから……」

 とのこと。

 …………なによ。
 結局は経験じゃないの。

 なんて思ってしまうのは自然なことで。

 だって、初心者も大丈夫、って言ってたよね?
 ……そりゃあ、自分の楽器を持っていたらそちらを優先するかも、とも言ってたけど。

 ――良いよね、金持ちは……。自分の楽器を、買ってもらえてさ。

 うちに、何十万も部活動につぎ込めるほどの金銭的な余裕はなく。
 ユーフォニアムは、学校のものを借りることにしていたのだ。

 ……と悪態を付きまくるわたしの横には、部長さん。

「あのさ、説明のときに希望していない楽器になるかも、って言ったよね?」

 ああ、怒られるんだ。
 部長に怒られるなんて。

 そう考え、どんな中傷的な言葉にも耐えて見せようと、キッと部長さんを見た。

 ……睨んでる?そんなの知らないよ。

 「まあね、最初は苦痛かもしれないよ。仮に、キミがペットを悪く思っていたりしたら、特に」

 ……図星だ。
 わたしが、ペットを…ダサいとか、なんか嫌だとか思っていたのは紛れもない事実。

 そんなこと、思ってちゃダメなのに…。

 そこで部長も、「まあ、そんなことを思っているなんて、無いと思うけど」と。

「でもね、少し演奏してごらん。必ずその楽器を愛せるから。……先輩も、同じような経験をしている」

 なによ、そんな…。
 それでも、嫌なものは嫌で

「でも…」

 と口を開いた。
 だけど…なぜだろうか。
 口が動かないや。

「お前、分かっているだろう?合奏は、一人でやるものじゃない。だからこそ、誰かが少し我慢する必要だってあるんだ」

 言葉だけを聴くと、凄くキツいように思える。
 でも、そんなこと、わたしは微塵も思わなかった。
 その声は、不思議なほど優しかったから。

「ペットを、愛せたら…」

 少し、世界が変わるかな。
 なんて、なぜか前向きにとらえることができる。

「……分かりました。やります」

 下唇を噛み締めた。

 

 アンサンブル部、凜条 千図。
 全力を尽くします!!

 これがわたしの、ブル部魂!


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