リヴァシュナイダー
ユラ
フランチスカ
シーリン
アレクサンドラ
ユウ
マコト
彼らは求めていた、誰かの助けを。人の温もりを……
>>16
あざまっす!!w
顔を向けられて初めて彼は気がついた。
その男は、声こそ男らしく野太い声であるのだが……
顔は青年くらいの年のように感じる、そんな美形だった。
二重である目はやや釣り上がっており、その中に納められている瞳は貫かれるほどに濃く赤い色で、肌は病気のように白く、鼻はスラッと細長く、唇は笑みを浮かべるように上がっていて自信に満ち溢れているような印象を受けた。
「いきなり部屋に入ってきて倒れるとは……よっぽど疲れていたのだな。それは体か、心か……」
その男は彼の目線に合わせて屈み、彼の様子を伝えていた。
「両方だな。とにかく疲れたというより、辛かった……」
彼は顔を膝に埋める。今にも泣き出しそうだった。
「近辺の街で空爆が起きたのだったな。その時と照らし合わせて……君はその空爆によって孤児になったのか」
「いや、孤児だったのはもう少し前からだ。親が両方とも自殺したから、俺だけがこの世界に取り残されたんだ……」
その男は彼の服装を見る。
「……ボーイスカウターか。なるほど、その団体で世話になっていたのか……」
「……」
彼は、それ以降は口を聞こうとは思わなかった。
彼がこの城へ来てから一週間。ボーイスカウトで活動していたことの影響か、環境に慣れるのには時間を多くは要さなかった。
それでも、彼は積極的にその男と話そうと行動することはなかった。
「キャプテン!ブラックサンダー買ってきたわよ」
そこで入ってきたのは、目付きの鋭い……というよりは目付きの悪い、金色の長髪の女だった。豊満な胸にほどよく肉付いていて、そして引き締まっているモデル体型の女が部屋を訪ねて来た。
彼は、そういう女が大嫌いなのだ。
「何、そこのイケメン。新入り?」
「いや、ここを訪ねてきた孤児だ。まだここに住むという返答はもらっていない」
ふーん……といい、女は彼に近寄る。目の前から顔をまじまじと見ている。
「本当、イケメン来たって感じね……私はユラ。よろしくね」
軽く挨拶をして、女は去っていった。
変な女に好かれたものだ……彼は心のそこからそう考えた。
彼はぼう……と、夜空を見る。永遠と続く星空、月が照る空を。
気を落ち着かせようとせずとも、彼は夜空を見ることが習慣となっていた。
「そんなに、この空が気に入ったか?」
後ろから男が話かけてくる。猫を撫でているような柔らかい声色である。
「この空は遥か昔から何一つ変わっていない。そういう空なのだ」
「……何が言いたい?」
リヴァは、男が気に入らないのだ。明確な理由はないが、側にいられるだけでイライラするのだった。
それほどに、彼の情緒はささくれ立っていたのだ。
彼は気分を少しでも晴らすために、城の外へと出ていった。城という窮屈な環境から離れ、久々の解放感を味わっていた。
その代わりに、『森』という閉鎖的で陰湿な空気も味わうことになったけど。
森と言っても、ここは異常なほど広い。話を聞いていると、川は蜘蛛の巣のように伸び、泉は滴のように無数にあり、どこまでも遠く続く海もあり、輝く大きな地下へと続く洞窟もある。
リヴァシーは、椰子の木も生えている砂漠のオアシスのような泉の畔にいた。
……
つづく。
「……いつまでこうしているつもりなんだろう」
不意に、彼の口からこう溢れた。その景色を見ていると、自分は全く違う世界へと飛んでいっているような気がして、自分さえも美しく感じるようになっていった。
それでも、いや、むしろそれがキッカケで彼の心の戸惑いの気持ちが浮き彫りになっていってしまう。
「仮にも一人の男が、そんな弱いような顔をしてて……恥ずかしくないのかね」
後ろからかつての『ユラ』と名乗る女が現れた。
いつにもなく静かな雰囲気を放っている。
ユラが隣へ座って何十分も経ったとき、やっとユラは口を開いた。
「あんたには『自分だけのもの』っていうものは無いの?」
その声色は、優しいような印象だった。口先では自身に呆れの感情を込めているようでいても、ユラは最大限気を使っているのだ……と、リヴァにも分かったのだ。
「……無いね。あったとしても、どれもこれも誰かの影響を受けたものばかりだ」
一方、彼はすでに諦めに似た感情を思いきり含めていた。その様子は、ユラにとっては一瞥するほどのことでしかなかった。
「……当たり前じゃない。
何も無い状態から、何かを持つなんて、無理に決まってる……
誰かから貰った知識を自分で磨いていく、そうして自分だけの物ができるんだよ……」
彼にはもの言わせぬとでも言うように、ユラは続けざまに言う。
「あなたが目指していたものは何?」
そう言われて、リヴァはある人を思い浮かべる。
自分に情熱を注いでくれた恩人。自分を導いてくれた先駆者。
いつも自信に満ち溢れていたその瞳と、威風堂々とした立ち振るまいに、リヴァはいつも惚れ惚れしていた。
「……うわっ!?」
その最中、いきなり泉へと突き落とされた。空を映す水の鏡は波を立たせて震えた。
「何をするんだ!?」
「……ははっ、やっと個性が出てきた!」
いきなりの出来事に怒りに似た驚きを見せるリヴァを見下し、ユラは続けて泉へと飛び込む。
水を掛けあったり、泳いだり、潜ったり……純粋に少年少女のようであり、輝かしい笑顔が取り戻された瞬間でもあった。
いいぞ〜^^
誰を出すことにしたのですか?
>>25
あちらの本編(?)では、とりあえずマコトくんを出しました。。。
結局全員出ることになりそうですけどもww
「……随分帰りが遅いじゃないか」
「いつでもこんな景色なんだ、時間の感覚なんてマトモに保てるはずがねぇよ」
泉の世界で大いに遊んだリヴァたちは、散々濡れた状態で帰ってきた。
服のまま泉に飛び込んだためか、静かであった彼は更に大人しそうに見えた。
「……覚悟が決まったみたいだな」
魔王は空へと向けていた顔をリヴァに向き直し、貫くような赤い瞳を彼に向けた。
「君はここに残るのかね?」
「……いつかは出ていくが、しばらくはいさせてくれ」
その言葉を聞き、魔王は小さく頷く。
「契約だ、ここの孤児になる者には私から何かしらの力を与えることにしているんだ……
君が望む力はなんだ?」
そう聞かれ、リヴァの脳裏にはある人が浮かんだ。
水を纏わせ、その顔一杯に絶対なる自信を携えてきたリヴァの憧れ。
自信、歳に似合わぬ黒い制服姿、青い髪の毛、彼が唯一手にすることができなかった物は、水を操る力だった。
「俺に水を操る力をくれ」
……それこそが『フレデリック=A=リヴァシュナイダー』という男が誕生する瞬間だった。
もともとユラは、魔王の元へ来た初めての孤児であった。
とはいえ、その当時は既に17の歳をを向かえていたのだが。
リヴァシュナイダーとは違い、彼女が拠り所とするところは、生まれたときから無かった。
母親が娼婦であったためいつも夜は家にはおらず、その上父親などは分からず、親戚とも疎遠であった……
それでも彼女は陽気な女に育った。
普通人は親に冷たくされ続けるとサイレントベイビーという、非常に悲しい存在になってしまう。
それでも彼女は強く、優しい女に育った。