川上奈緒の事件簿 リターンズ <お嬢様学園のいじめ>

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1:りさ:2019/02/24(日) 16:49

***************キャスト***************
いじめられる側

・川上 奈緒(かわかみ なお)
普通の学校からお嬢様学園へ転校。
のちに罠にはめられ退学になる

・修倉 未南(しゅうくら みなん)
奈緒が転校後にできた最初の友達。
いじめによって自殺未遂に追い込まれる

いじめる側

・姫川 椿(ひめかわ つばき)
日本有数のお金持ちの一人娘。
未南の元大親友

・和田 萌奈(わだ もえな)
椿の親友。男子にモテモテ。
可愛くてお金持ちだが素行が悪い


・野村由香子(のむら ゆかこ)
姫川椿に忠誠を誓う家来のような存在。
父親は椿の会社の重役

142:りな hoge:2019/07/31(水) 23:52

(66)
午後六時過ぎ。
部活が終わった。
疲れた、疲れた。
早く着替えて帰ろう……。
部室で着替えを始めた。

「お疲れ様です」
着替え終わって、一足先に部室を出ていく大谷先輩に挨拶をした。

星野先生の体罰がなくなって以来
キャプテンは、いきいきとしている。

練習中のミスも少なくなった。
きっと、星野先生に怒られるから
緊張してミスを連発してたんだと思う。
何はともあれ、良かった、良かった。

「お先……」
なんて考えてると、央弥ちゃんが
ポツリと一言、言って帰ろうとする。

「待って! 一緒に帰ろうよ!」
制服に着替えずにジャージーを着たまま
帰ろうとする央弥ちゃんに声を掛けた。

「いいけど……」
央弥ちゃんは足を止めた。
聞きたいことあるんだ。
央弥ちゃんに……。

私は央弥ちゃんのあとを追うように
部室の外に出た。それから。お互いの
自宅に向かって、二人で肩を並べ歩き出す。

「何か話したいことがあるんでしょ?」
央弥ちゃんが話を切り出した。
「う、うん」
お察しの通りです。

「私の席に、水をぶちまけたの誰か知ってる?」
「知ってるよ」
やっぱり知っているのか!
誰がやったか見ていたってことだよね?

「誰がやったの? 榊田真紀?」
「やったのは真紀じゃない」
「じゃあ? 誰?」
「それ聞いてどうするの?」

どうするって? そりゃあ……。
「怒るに決まってんじゃん! 
もう最高に腹立ったもん!」
「なら、教えない!」
「???」
なんで?

まっ、まさか? あなたも? 
もしかして? あいつらの仲間なの? 
椿たち、いじめっ子組織の一員なんじゃぁ?
仲良くするフリをして、こっそりスパイとか?

「教えてよ! どうして教えてくれないの?」

「喧嘩になるじゃない、知ったら」
って……違った……。あのイタズラを誰がやったか
知ったら、喧嘩の火種になるからか……でも。

「いいんだよ。一度ガツンと言ってやらないと」

「あなた、自分がいじめの標的になってるの、
 わかってる? あなたのやってることは
 正しいかもしれないけど、他人のために
 犠牲になるなんて馬鹿らしいわ!」

「馬鹿らしいって何よ! 困っている人を助ける!
 いじめられてる子がいたら助けるのは当然じゃない!」
私は興奮気味に言った。

「私にはできない。他人のためにそこまでは……」

「央弥ちゃん。将来、医者になりたいんだよね?
 病気で苦しんでる人を助けたいって言ってたよね!
 それなのになんで? ウソだったの?」

「医師は、それが仕事だから! 当然のことを言っただけ。
 他人のために自分が犠牲になることとは別問題だよ。
 放っておけばいいのよ。いじめがエスカレートして
 大問題になれば、あいつらに大きな罰が与えられるから」

「その考え方は間違ってるよ。
 どうしてキャプテンが体罰を受けてたのに助けないの?
 いじめを受けてる子を助けないの?
 自分には関係ないからって助けないのは卑怯だよ。卑怯者だ!」
私は強い口調で責めた。

「あなたにそんなこと言われたくない! 
 私は卑怯者じゃない!卑怯なのは
 体罰をおこなった星野や、いじめをしてる姫川よ」

「いじめの傍観者は共犯者だ」

「人を犯罪者みたいに言うな! 私だって怖かったの。
 体罰に反発したらレギュラー外されたり、自分も体罰を受けるかもしれないし
 大好きなバスケを辞めることになるかもしれない。いじめを止めようとして
 自分がいじめられたり、クラスから孤立して一人ぼっちになるのも怖かった」

央弥ちゃんは目に涙をため、そう言うと、私を置いて走り去っていった。

うわー! どうしよう?
すごく傷つけてしまったみたいだ。
これから……央弥ちゃんとは……。
どうなってしまうの?
私は後悔と自責の念に駆られ、しばらく
呆然とその場に立ちつくしてしまった。

143:りな hoge:2019/08/01(木) 22:11

(67)
それから。
とぼとぼ歩いて帰宅した。
法律事務所に顔を出し。
お父さんに声をかける。
「ただいま」
「おかえり」

「元気ないなぁ、なんかあったのか?」
お父さんが心配そうに聞く。
「うん、まあ、ちょっとね」

わたしは、今日あった出来事を
振り返って、はあ、と溜息をつく。

「まぁ、その話はあとでゆっくり聞いてやる。
 それより、こっちは大変なことになったぞ! 
 悪い知らせだ」 

「え? 何?」
今日は厄日だから怖いよ。 

「修倉さんが起訴されてしまった」

「ええっ!」
私はびっくりして叫び声を上げてしまった。

なんで? なんで? なんでー?

「なんで起訴されちゃうの?
 客観的な証拠も少ないし、
 痴漢の被害者の証言だけじゃ
 起訴できないと思ったのに」

「俺もそう思ったんだがなぁ」

「なにやってんの? しっかりしてよ!
 起訴されないようにするのがお父さんの
 仕事でしょ?」

「まあ、そうだが。起訴するかしないかを決めるのは
 検察で、俺が決めるわけじゃないからなぁ」

「それじゃあ。さあ? これから
 痴漢事件の裁判になるってこと?」

「ああ」

「未南のお父さんは、いつになったら
 家に帰って来られるの?」

「保釈請求が認められればいいんだが
 認められなければ、裁判で被害者の
 証言が終わるまで保釈されんかもしれん」

「それって、どのくらい?」

「3ヶ月後か4ヶ月後か、どのくらいになるかわからん」

「げっ。そんなに長くっ」

痴漢で捕まると大変なことになるんだなぁ。
やってないって言ってるのに、起訴されて
裁判になるんだもん。それに何ヶ月も家に
帰れない可能性があるなんて……。

未南、落ち込んでるだろうなぁ。心配だ。

「私、ちょっと、未南に電話してくる」

私は、法律事務所を出て、家に戻り
未南に電話をかけた。

御飯どきだけど未南は出てくれるかな?

「はい」
未南の声だ。

「あっ、奈緒だけど。さっきお父さんから
 未南のお父さんが起訴されたって聞いて
 心配で電話かけてみたんだけど……」

「そうなんだよ……。私もお母さんもショックで。
 お母さんなんか、御飯も食べずに布団で寝てるし
 私も、食欲なんくて、ほとんど御飯食べてないよ」
未南はしょんぼりと、低いトーンで弱々しく話す。

「ごめんね。私のお父さんの力不足で。
 未南たちには本当に申し訳ないよ」
私は電話越しに頭を下げた。

「ううん。奈緒のお父さんのせいじゃないよ。
 でも……でも……。どうしてこんなことに
 なっちゃったんだろう……」
未南は涙声だった。

「そうだよね。いつもどおり通勤してただけなのにね」
私も同情して、ちょっと泣きそうになった。

「もしかしたら お父さん…………。
 ほんとは痴漢しちゃったんじゃないのかな?」
思いがけない未南の問い掛けに。

「えっ? と……そんなことないと思うけど?」
一瞬、戸惑って言葉に詰まった。

「でも、そうじゃなきゃ、捕まったりしないよね? 
 もし、本当にしたんなら、私は許せない……。 
 お母さんも、もしお父さんが痴漢してたら離婚
 するって言ってるし」

「待って、冷静になって考えよう!」
動揺する未南を落ち着かせるように言った。

「世の中には間違えて逮捕されたり。
 してないのに裁判で有罪になったり
 する人がいるのよ。TVや新聞でも目
 にするでしょ? お父さんがしてない
 って言うなら、信じてあげようよ」

「うん。信じたいよ。お父さんに限って
 そんなことするとは思えないもん」
未南がハッキリとした声で言った。

「私も協力するからガンバろう!
 裁判で無罪判決を勝ち取ろう!」

「うん」
未南は力強く返事をした。

144:りな hoge:2019/08/01(木) 22:15

(68)
翌日、朝練を終えた私は、教室の
自分の席でぼんやり考え事をしていた。

「おっはようっ!」

ボーとしている私の背後から。
未南が元気に挨拶してきた。

突然、声をかけられ。
どきんっ!
うわー! 
ビックリしたっ!

あわてて振り返り。
「あっ。おはようっ」
と挨拶を返す。すると
未南は笑顔になり明るい表情を見せた。

それを見て、ほっと一安心する。
昨日の夜は、すごく落ち込んでいて元気
なかったけど、今日は元気そうでなりよりだ。

「昨日は、ごめんね。長電話しちゃって。
 まだ御飯を食べてなかったんだよね」

「いいよ。いいよ。気にしなくて」

昨日は、かれこれ一時間ほど電話してたんだよなぁ。

「また色々と相談にのってね」

未南は、そう言いながら。
私の横の自分の席に座ると。
カバンを机の上に置いた。

「早退した分の授業のノート貸してあげるよ」
私は、とっさに数冊のノートを手に持ち
未南に聞いてみた。

「ありがとー。ほんと助かるよー」
ノートを手渡すと
未南から、おもいっきり感謝された。

そのあと、いつものように談笑していると

「未南。おはようっ!」

私の正面から。女性があらわれ
気品のある美しい声で挨拶をした。

誰だろう? 
と思って顔をあげると……。
そこには。
姫川椿が立っていた!  しかも
私達に向かって、天使のようにほほ笑んでる。

椿って本当に綺麗!
顔は整っていて、めちゃ綺麗なの!
髪はサラサラで、顔、小さいし。
すらっとスタイルが良くて。まるで
少女漫画から飛び出てきたような
本物のお嬢様って感じがするんだ。

145:りな hoge:2019/08/01(木) 22:16

「おはよ……」
未南は少しおびえた様子で挨拶を返す。


椿は軽く笑みを浮かべてみせてから。
「もう仲直りしましょう!」
と思いもよらない言葉を口にした。

椿の、あまりに突然の申し出に。
「えっ?」
未南も、私も、驚いて固まってしまう。

「昨日ね、奈緒が土下座してきたのよっ!
 未南と仲直りをしてくださいってね」

いや、正確には土下座させられたんですけど……。

「奈緒が私のために、そんなことを。
 ありがとうっ! 私なんかのために」

未南は目をうるうるとさせている。

私は軽く首を振る。

「いいよ。そんなこと気にしないで。
 仲直りできてよかったねっ! 椿と」

未南……。本当に、本当に良かったね。
これで、めでたし、めでたし、かな?

「待って、仲直りする前に、あなたはやらなきゃ
 いけないことがあるんじゃないの?」

ん? 私が、そう思った矢先。
椿がなにやら注文を付けた。
「???」
意味がよくわからなくて目が点になる。

「えっ? なんだろ?}
未南もわかっていないようだ。

椿の目つきが、きつくなった。

「修倉先生、痴漢で起訴されたようね。そのこと
 みんなに謝罪しなさいよ、いますぐにっ!」

戸惑う未南をにらみつけると

「名門セントマリア学園の名を汚したこと
 この場で、みんなに詫(わ)びなさい!」

椿が、かなりきつい口調で言い放った。

ああ、そのことか……情報、早いなぁ。
 もう、それ知ってるのか……。でも
それ今、言わなきゃ、あかんの?
また、なんか、たくらんでる?

「それ前にも謝罪したじゃん」

「だから,あらためてしろって言ってんのっ!」

椿がイラッとした口調で言葉を返す。

椿のきつい言い方に、未南が顔をこわばらせる。

「そうよね。みんなに謝罪しなきゃ……」

「そうよ。そうと、決まったら
 教壇へ行きましょうっ!」

椿は、未南の手を強引に引っ張り 
席を立たせると、二人で教壇へ向かった。
私も、慌てて席を立ちに
後を追うように教壇へ行く……。

146:りな hoge:2019/08/02(金) 21:08

椿と未南は並んで教壇に立った。

「みなさーん! 未南がお話があるそうよ!」
椿が、大声で言うと教室の生徒全員が
一斉に教壇の前へ集まってくる。

恥ずかしそうにうつむく未南が、顔を上げ
意を決したように口を開いた。

「痴漢で逮捕された父が起訴され
 裁判を受けることになりました。
 このような事態になり、みなさまには
 多大な迷惑をかけ申し訳ありません。
 心よりお詫び申し上げます」
未南は深々と頭を下げた。

「おいっ! 未南! その程度の謝罪で
 許されると思うなっ! 土下座しろっ!」
汚い口調で、罵声を飛ばしたのは、萌奈だった。

「土下座! 土下座! 土下座!」
さらに萌奈は手拍子をしながら土下座コールをする。

そうすると教室のあちこちから
同様の土下座コールが沸き起こった。

「土下座! 土下座! 土下座!」
クラスメートが声を合わせ土下座コールを繰り返す。
「土下座! 土下座! 土下座!」

なんだ? この異様な光景。 
ドラマじゃあるまいし。 何かがおかしい……。
まさか……。最初から仕組まれたシナリオなのか?

そうだ! 罠だ! 
これは罠なんだ! 
最初から仕組まれた! 
罠なんだ!

「未南、やめて! その謝罪で十分だよ!」
私は、未南の土下座を阻止しようを大声を上げた。

しかし声は届かず、未南はガックリと膝をつくと
両手を付き、床に頭を付けて土下座したのだった。
土下座したまま微動だにしない未南。

教室の土下座コールがやむと同時に
未南には多数の罵声が浴びせられる。

汚い言葉で罵(のの)る女子生徒たちは
未南に向かって容赦なく 紙クズなどを
叩きつけるように投げつけた。

未南を、めがけて誰かが投げたペットボトルが。
未南の頭部を直撃した……。

「痛いっ!」と未南は悲痛な声を上げる。

転がったペットボトルを見ると。
まだ中身、かなりの量が
入ってるじゃん!すごく痛そう……。

147:りな hoge:2019/08/02(金) 21:11

「もう! やめてー!」
私は、両手を横に広げ、その身を盾にした。

「未南をかばうなら、お前も敵とみなす!」
萌奈が脅すように言った。

「全クラスメイトが私たちに弓を引くなら
 その矢! この身で全部受けて止めてみせる」

「はぁ? お前なに言ってんの?」
萌奈が怪訝な顔で言う。
カッコつけたつもりが意味不明になってしまった。

それより未南は大丈夫かな?
私は急いで未南のもとに駆け寄った。
「未南? 大丈夫? 痛くない?」
私の問いに、未南は「平気だよ」と笑顔で
返事したが、目からは涙がこぼれ落ちていた。

「許せない……こんなひどいことするなんて」
いじめ行為に腹を立てた私は、みんなをにらみつけた。
「もうやめて! こんなことして何が面白いの?」

「面白くないわよ……。でも。
 ざまあみろって思うわっ!」
そう答えたのは椿だった。

「未南は友達だったんでしょ? それなのになんで? 
 なんで、そんなこと言うのっ?」
私の問いかけに椿は少し寂しげな表情を見せた。

「ずっと前から、未南こと憎んでた。
 自分より優秀なことにムカついてた」
椿は未南を見つめながら言った。

148:りな hoge:2019/08/02(金) 21:12

「えっ?」
どういうことだ?

「この子。 成績はいつも一番で、私が
 遊ぶのや寝る間を惜しんで勉強しても
 一度も勝てなかった。テニスだって
 そうよ。高校の全国大会で優勝したとき。
 笑顔でおめでとうって言ったけど。
 すごく嫉妬して、意地悪してやりたい
 って思った。だからと言って、その時
 何かしたわけじゃないけどね……」

切々と語る椿の声が教室に響く。
未南は激しく動揺していた。

「椿っ! ごめんね。私、そんなことに 
 ぜんぜん気がついてなかった。
 椿の気持ち、考えずに無邪気に喜んでた。
 私が、勉強やテニスで一番になることで
 椿は、いっぱい傷ついていたんだね。
 ほんとに、ほんとに ごめんなさい」
未南は錯乱したように髪を振り、号泣し始めた。

「お前なんか、いなくなればいいのよ!」
椿が未南に向かって叫んだ。

「今すぐ、この学校から出て行け!」
感情的になった椿は、容赦なくキツイ言葉を浴びせた。

ちょっと! 待ってよ!
さっき仲直りするって言ってたのに……。
ぜんぜん、そんな雰囲気ないじゃん。
友好ムードゼロ。まるで地獄だよ。

「もうやめて! 仲直りしようって
 言ってたの! 忘れてなあい?」
私は二人の間に割って入り、椿に向かって叫んだ。

「忘れてたわ……。でもこの状況見たら
 そんなの不可能ってわかるでしょ?」
椿は私に向かって、冷たく言い放った。

「真の友情って、こういうときに
 発揮されるんじゃないの?
 苦しんでいる友達を助けるのが
 見せかけではない本当の友情だよ。
 意地を張って永遠の親友を失うか
 仲直りして永遠の友情を得るか。
 ここは、大きな分岐点だと思うよ」

椿はしばらく沈黙したあと
「友情って? 先に裏切ったのは未南じゃない?
 勘違いしないでくれる? 私は被害者であって
 加害者じゃないのよ? 友情を破壊したの未南だから」

もろもろの事情はわかっている。
確かに椿の言うことも一理ある。
だが、しかし……。

「椿の言うとおりよ。 もうすぐ
 先生来るし、ここ片付けなきゃ」
未南がゴミの片付けを始める。
私も一緒に掃除を手伝い
せっせっと掃除して綺麗にした。

もう椿と仲直りなんて無理だよ!
口には出さなかったが、心の中で
そう、思った。

149:りな hoge:2019/08/02(金) 21:52

(69)
その後、担任が来て。
なんも事情を知らない先生が
「朝のホームルーム終わります」
あっという間に終わらせた。

ああ、言いてぇ。
さっき教室で起こったこと……。
先生に言いてぇ。
でも未南が先生に言うなって言うし。
ああ、マジで! 
先生!!!
未南が、いじめられてますって、大声で叫びてぇよ。

「先生! ちょっといいですか?」
「何ですか柄谷さん?」 

央弥ちゃん? なんだろう?
彼女が先生をことを呼び止めた。

「修倉さんが、いじめにあっています」 

えー!?  驚愕した!
央弥ちゃんは予想だにしない言葉を先生に投げかけた。

先生が、すんごく驚いた表情を見せる。
「え? 修倉さんがいじめられている?」

「はい。私は、それを知りつつ傍観者でいた卑怯者です」

「誰ですか? 修倉さんをいじめているのは?」

央弥ちゃんは、すっと立ち上がると
一人の生徒をゆっくりと指差した。

「そこにいる姫川椿です」
央弥ちゃんは、椿の名前を挙げた。

その瞬間、教室が静かになる。

「違います! 私はいじめなんてしてません!」
静まり返る教室で、誰よりも早く
声を発したのは姫川椿だった。

「嘘つくな! 今朝だってクラス全員で
 未南いじめてただろ? あっ、私と川上さん
 を除くクラス全員ね」
央弥ちゃんが椿の発言をあっさりとくつがえす。

「姫川さん、本当ですか?」
先生が椿に聞く。

椿は立ち上がり。
「柄谷さんの誤解です。今朝は、痴漢で捕まった
 修倉先生の件で未南が謝罪したいと言ったので。
 クラスメートに謝ったところ。激しいお怒りを
 受けただけのこと。それをいじめだと柄谷さん
 は勘違いしているだけです」
先生に向かって必死に釈明した。

150:りな hoge:2019/08/04(日) 10:36

「そのとおりです! 椿は私をいじめてなんかいません!」
私の隣の席に座っている未南が
椅子から勢いよく立ち上がって
大きな声をはり上げた。

椿は驚いた表情で未南を見た後、口元に笑みを浮かべると。
「そうよね! 未南。私、いじめてないよね!
 当然よね。私たちは親友だもんね……」
 
どういうこと? 親友じゃないじゃん!
先生の前では、そうやって、いい子振るわけ?
なんだんだー、こいつは! 信じられない!
 
結局、椿は巧みな話術で、このピンチを乗り切ってしまった。

151:りな:2019/08/08(木) 21:54

(70)

一時限目の授業が終了した直後。
私は未南を教室の外に連れ出した。
未南に聞きたことがあったからだ

未南?
「さっき。なんでいじめられていないと言ったの?」
央弥ちゃんの勇気ある行動を踏みにじる行為に
不信感を抱き、やや責めるような口調で聞いた。

「う、うん。ごめんね……」
未南が沈んだ様子で答えた。

「椿のこと、かばっちゃったんだ……。
 あんな風に言われて、困っているから
 助けてあげなきゃって思って。でも椿。
 私のこと親友って言ってくれたよね?
 私ね……すごく嬉しかったんだ……」
急に、未南の表情が明るくなった。

はぁ? 未南のこといじめてるかもしれない奴に
都合のいい時だけ親友って言われて何が嬉しいの?

「もう、椿の言うことなんか、簡単に信じたらダメだよ!」

「でも! 朝だって、仲直りしましょうって言ってくれたよ!」

「あんなの嘘に決まってるよ」

私だって最初は信じてしまったけど
あのあとの展開を考えたら、椿が
嘘をついたと、言わざるを得ないよ。

152:りな:2019/08/31(土) 22:55

(71)

椿と未南の仲直りなんて無理だよ!
と思っていた矢先……。
予想だにしない出来事が起こった!

「なにぃ? 椿たちと仲直りしたぁ?」

私は、すごくビックリして、おもわず大声を出した。

「椿がね。今までのことは全部水に流して
 仲直りしようって、言ってくれたの!」
未南は目をキラキラと輝かせて、嬉しそうに言った。

「それ、ホント? また、あいつら、なんか
 企(たくら)んでるんじゃあないの?」

153:りな:2019/09/03(火) 00:11

未南の表情がガラリと変わり
不安そうに私の顔を見上げる。

少し間があってから。

「大丈夫よ! 私たち、ずっと友達だったんだよ!
 今度こそ、本当に仲直りできる。してみせる!」
未南は、そう言って、笑顔で両拳をぐっと握りしめた。

「う、うん。そうなればいいんだけど……」
正直、そんなに簡単にうまくいくのかな?

154:りな:2019/09/18(水) 22:40

「ただ、ひとつだけ条件があってね」
未南は困った表情になった。

「条件?」
椿の出した条件って……まさか?

「奈緒の友達をやめること。口も利いちゃダメって」

「なぁ、なによ! それ!」
椿は以前、私にも同じ条件出したよね?
その時は、もちろん断ったけど……。

「まさか、その条件! のむつもり?」

「うん……」
未南は目をそらし、どこか後ろめたそうにしている。

155:りな:2019/11/06(水) 23:03

マジかよ! 未南に裏切られた!

私たちの友情って……。
この程度の物だったの?

未南の背信行為に怒り心頭だよ!

だいたい、いつ? 椿と話をしたっていうの?
休み時間、私とずっといて、椿とは会話してないじゃん!

156:思兎@白雪姫体質 白雪姫体質ってなんだよとか言わないで:2019/11/12(火) 20:52


未南、今までイイ子やなぁこいつって目で見てたけど今回のは草

未南とんでもないモンスターだった件について

これあとから裏切られるパターンだと思った
いつもそのタイミングで、今回の奈緒的な立場の子は
相手側つきゃいいのになんで許すんかって思う草草の草

やばたにえんの麦茶漬けなんだが

157:りさ hoge:2019/11/12(火) 22:10

本当のモンスターは姫川椿だけどね
未南の父親が捕まったのは、彼女が陰で糸を引いてます。
そのことがいじめ裁判であばかれると、事件に関与してない、親友の萌奈に
罪をなすりつようとする悪人ぶりです。当然、萌奈は罪をかぶるわけもなく
友情は崩壊します。
ちなみに。
未南は最初から最後まで悲劇のヒロインですが、ラストシーンでは
彼女がプロテニスの四大大会で優勝するシーンで幕を閉じます

158:りさ:2019/12/16(月) 21:46

(71-2)

「だいたい、いつ? 椿と話をしたっていうの?
 休み時間、私とずっといて、椿とは会話してないじゃん!」

心の中で思ったことをそのまま口に出す。

「スマホだよ……」
未南はすぐに答えた。

まぁ。そうだよね。
スマホあれば、会わなくてもコミュニケーションとれるもんね。

仲直りもそうだけど、愛の告白なんかも、最近はスマホってときもあるからね。

面と向かって言うのは気まずいときや、恥ずかしいってときには便利な道具だ。

とりま、謎は解けた。

でもでも、話はこれで終わりってわけにはいかない。

私、未南に言わなきゃいけないことがある。
未南のこと、本当に友達だと思っているなら、なおさらのこと。
私は椿の魂胆を見抜いている……つもりだから。

159:りさ:2019/12/27(金) 18:19

「スマホで仲直りしたの……。今から椿のところに行ってきていい?」
未南の声にハッとする。

しまった! 黙っていたら、未南がしびれを切らしてまった!

「待って!」
あせって、大きな声を出す。

未南! 椿のところへは行っちゃダメだよ!

160:匿名:2020/04/01(水) 09:59

「椿に呼ばれているの。早く行かなきゃ」
「で、でも! 行かない方がいいよ!」
私は必死で引き止めた。

「行くなって言うの?」
「いじめられるだけだよ」
「いじめられる?」
「そうだよ! 仮に仲直りしても、友達のフリをしていじめるつもりなんだよ」

161:匿名:2020/04/02(木) 22:11

「友達はいい人、クラスのみんなは優しい。将来はいい高校、いい大学に入り、いい会社に入りたい。勉強は大切、成績は上げたい」

162:匿名:2020/04/02(木) 22:12

間違えてかきこんじゃった

163:匿名 hoge:2020/04/02(木) 22:39


(71)未南が椿と仲直り。
(72)未南に絶交され、奈緒はぼっちに。
(73)同じく友達から絶交されて、ぼっちになった央弥と奈緒が友達になる。

(74)未南がいじめられてないか?奈緒は、いろいろさぐる。いじめの証拠みつけられず。
(75)未南、成績が一番から陥落、性格もどんどん暗くなっていく感じになる。

そうして、このまま一学期が終わり、学校は夏休みに入ります。 パート1 終了。

164:匿名 hoge:2020/06/11(木) 22:14

(76)インターハイ出場。結果はベスト8。転校前の学校と対戦して敗戦する。

165:匿名:2020/06/11(木) 22:16

(77)

8月10日 【AM10時 裁判所】

バスケのインターハイが終わって、結果はベスト8。

バスケロスみたいなのを感じてる今日この頃。

今日は、夏季補習を休み
未南のお父さんの裁判を
傍聴するため裁判所へ来ていた。

被告人の弁護人は私の父、川上正義。
弁護士事務所を開設して初めての
刑事裁判となる。

法廷の前に着くと
そこに、未南の姿があった。

未南はセントマリア学園の制服を着て
まだ開廷していない法廷の前に立っていた。

未南とはあれ以来、ほぼ口を利いてなかった。

会話するのは何だか、気まずかったが
こちらから声をかけてみることにした。

「未南……」
「あ...奈緒....」
声をかけると未南が気が付いてこちらを見た。

「お父さんの裁判、見に来たの?」
「そうだよ」

166:匿名:2020/12/05(土) 13:16

出会った当初とは打って変わり
未南は疲れ果てた様子でやせ細り
まったく覇気が感じられない。

いろいろ大変だったね。
でも……事件は解決するからね。
謎は、すでに解けた。

今回の事件の背後にいる真の黒幕は
やっぱり、あいつらだったんだ。

「安心して……。お父さん、痴漢の犯人じゃなかったよ」
「えっ? どういうこと? 真犯人みつかったの?」
未南は自分の耳を疑うように聞き返してきた。

167:匿名 hoge:2020/12/20(日) 09:03

もう終わりでいいかな

168:匿名 hoge:2020/12/20(日) 09:04

一度でも読んでくれた人、ありがとうございました。

169:匿名:2021/05/26(水) 22:09

さあ、ここから。
名探偵!奈緒の謎解き開始だ!
と意気込んだ瞬間。

目が覚めた……。
目に飛び込んできた光景は、私の部屋だった。
あれ? ここは家?
私はベッドの上で寝ていた。
なあんだ夢だったのかよ。

170:匿名:2021/05/27(木) 16:33

もしかして? すべて夢だったの?
そんな錯覚に陥る。いやいや。
そんなわけないよね、きちんと記憶があるもん。

転校してきたこと。
未南と友達になったこと。
そして、いじめにあったことも……。
しっかりと覚えている。

未南は椿たちと仲直り。
私は未南から絶交されてしまい。
のちに央弥ちゃんと友達になる。
ってところまではっきり記憶があるぞー。

(裁判シーンも書いたけどおもしろくないので終わり)

171:匿名:2021/05/27(木) 20:16

(78回)(未南がおごらされているところを目撃)

夏休みも終盤にさしかかった8月20日。
高級スイーツで有名な、とあるレストランに央弥ちゃんと二人で来ていた。
目の前には、店員が持ってきたバースデーケーキがあってテーブルを華やかに彩っている。
今日は私の誕生日なのだ。

「おいしい。さすがスイーツで有名なお店だね」
高級な甘味が、私の舌いっぱいに広がる。
「私からの誕生日プレゼント、喜んでくれて嬉しい」
「本当に、おごってもらっていいの?」
「いいよ、プレゼントなんだから」

172:匿名 hoge:2021/05/28(金) 20:10

それから、私たちは2時間ほど食事をして楽しい時間を過ごした。

「じゃあ会計は私がするね」
会計伝票を右手に持ち、央弥ちゃんが席を立った。
私も席を立ち、二人でお店の入口付近にあるお会計に向かう。

173:匿名:2021/05/29(土) 23:41

視線の先には自分と同じ年頃の女の子4人組がいる。
雰囲気的に、この四人組も今から会計に向かうのかな。

あれ? もしかして? 
この四人組は椿たち? だよね?
椿に、萌奈に、由香子に、未南だ。

「最悪、姫川たちじゃん」
ぼそっと低い声で央弥ちゃんが言い放つ。

央弥ちゃんも椿たちの存在に気が付いたようだ
正直、このレストランにいるの気が付かなかったわ。

174:匿名 hoge:2021/05/30(日) 13:07

椿たちも、恐らく私たちに気がついてないだろう。
話しかけようかな? どうしようかな? 迷う。

クラスメイトでも仲がいいわけじゃないし
最近は未南も、私のことをガン無視してるし。

今は話したくないかな……。
央弥ちゃんも同じ考えなのか、無言のままだ。

ここは、とりあえず様子見ってことにして。
ちょっとだけ歩調を緩めて歩く。

175:匿名 hoge:2021/05/30(日) 20:24

私たちに気が付くことなく
椿たちが先にレジに到着した。

「会計、お願いします」
未南が会計伝票を渡すと
「お会計15980円になります」
店員が明るい声で言った。

一人当たり4000円か? 高い!
まあ、この人たちはお金持ちだもんね。
このくらいは普通かぁ……。

176:匿名:2021/05/31(月) 14:38

面白いですね頑張ってください

177:りさ hoge:2021/05/31(月) 17:08

ありがとうございます

178:りさ hoge:2021/05/31(月) 18:58

未南が店員とやりとりをして
現金で支払いを終えると
4人は出口へ向かって歩いていく。

もう友達でいられないのかな? とか思いながら
私は、寂しげな視線を未南の後ろ姿に向ける。

「ごちそうさま」
椿が未南にお礼を言ったように聞こえた。

「ゴチになりまーす」
萌奈が、とても嬉しそうな声をあげた。
これは未南に向けられた言葉なのだろうか。

由香子が先に店のドアを開けて状態をキープ。
4人は、そのドアを抜けて外へ出て行った。

179:りさ:2021/06/01(火) 19:15

「ん?」
未南がおごってあげたの?

何気ない会話の中に出てきた、”おごり”
を連想させる言葉が妙に心に引っかかる。

少額ならいいけど万を超える金額だ。
まだ、おごってあげたならいいけど
もし、おごらされてるなら大問題だ。

いじめの可能性も考えられるし
どうにかしなきゃいけないような。

過去のいじめでは、小学生や中学生が
何百万もおごらされた実例だってある。

勘違いかもしれないけど
追いかけて事実を確かめなくちゃ。

「央弥ちゃん、ちょっと椿たちと話してくるね」
「はぁ? あんな奴ら無視しとけばいいでしょ」

「ちょっとだけ用事があるの。ごめん、いくね」
今、事情を説明している時間はない。
急いで椿たちを追って店の外に出た。

180:りさ:2021/06/02(水) 16:30

外は猛烈に暑くて真夏の熱気が体にまとわりつく。

「どこいった?」と周りを見渡すと……。
少し先を歩いている椿たちの後ろ姿をみつけた。

「居たっ!」と慌てて追いかけていき。
「待って!」と背後から声をかけた。
声に気が付いた4人が一斉に後ろを振り返る。

「奈緒! こんなところで会うなんて偶然ね。
 いま暇? 暇してるなら一緒に遊ばない?」

予想外の反応だった……椿が喜んでいる。
正直のところ、ムカつかれると思いきや、椿は
友好的な笑顔を見せ高圧的な態度を取らなかった。

「えーーー。こいつ仲間に入れるの反対!!」
萌奈が不満そうに唇を尖らせた。

「いいじゃない。私、奈緒のこと好きよ」
え? 椿の言葉にちょっとだけ照れる。
いっそ、一緒に遊びに行っちゃおうかな?

「私も嫌。奈緒を仲間に入れるのは反対だよ」
ここで意外な反応を見せたのは未南だった。
この前まで友達だったのにそーゆー態度なのかよ? 
私は一時期、ぼっちになってすごく辛い思いしたんだよ。

181:りさ:2021/06/02(水) 20:29

「……」
まあ恨み節を言ってもしょうがない。どっちみち
央弥ちゃんを裏切って、椿の仲間にはなれないし
未南は椿に、私と絶交する約束してるんだよね。

「みんな、奈緒のこと嫌ってるのね、どうしましょう?」
椿は困ったような表情を浮かべた。

「あのね。それより」
遊ぶ、遊ばないの話は置いといて本題を切り出したかった。
「ちょっと別の話がしたいの? いいかな?」

「なあに?」
椿が聞き返す。

182:りさ hoge:2021/06/03(木) 19:05

どういう風に話そう? ちょっと迷ったけど。
ここは単刀直入に話を切り出した。

「さっきの食事の料金、未南のおごりなの?」

「なによ、急に……」
「私、見てたんだから、いいから答えて」

「そうよ、今日は未南のおごりってことにしたの」
「全員分を1人で払ったの?」

「ええ……」
「なんで未南がおごらきゃいけなの? かなりの金額だったよ」

「なんでって? 今までのツバキ会では全部
 私がおごってたのよ。たまにはいいじゃない」

ツバキ会とは椿が主催する女子会のようなもの。
ツバキ会のお金は全額出しているとは聞いていた。

それなら、たまに未南がお金出すのは道理が通っているのか?
未南も納得してるなら、それでいいのか? 判断に迷った。

「無理やりおごらせたんじゃないの?」
そんな疑惑が消えなかった。本当は強要しているのでは? 

「何が言いたいわけ? 話を聞いてなかったの? 
 わたしは、あの何百倍もおごってきたのよ」
椿はあくまで自分の正統性を主張している。

「う、うん」
納得してないけど、即座に反論できない。

183:りさ hoge:2021/06/03(木) 19:16

ならば、未南はどう思ってるの? 本当は嫌じゃないの?
未南のお父さんは、お金に厳しく贅沢させてないらしいし。
そんなお金はあるの? 直接本人に気持ちを聞いてみよう。

「未南は、どう思ってるの? おごらされて嫌じゃなの?」
「別に嫌じゃないよ。仲間が喜んでくれたら嬉しい」

「もし嫌なら、ハッキリ断るべきだよ、どうなの?」
「嫌じゃないって言ってるでしょ、しつこいよ」

「私は未南のことが心配なんだよ、いじめられてないか」
「心配してくれなくてもいいよ。もう友達じゃないんだから」

「成績も落ちてるし。性格もどんどん暗くなっていく感じだし。
 無理して椿たちと友達続けなくてもいいんじゃない?」

「無理なんかしてないよ。成績とか気分が沈むのは
 お父さんのせいで友達はぜんぜん関係ないんだよ」

「ここ抜けて、もう1回、私と友達になろう? そうしよう。
 悩みも聞いてあげるし、未南を裏切ったりしないから」

「結構です。奈緒とは絶交するって言ったじゃん」

未南の態度が、辛く悲しいと同時にイライラっとした。

184:りさ hoge:2021/06/04(金) 20:22

どうせ、私の誕生日も忘れているんでしょ?。
友達なら一緒に祝ってたかもしれないのに……。

「強引に絶交させるとか、それ自体がいじめでしょ」
「違うよ。奈緒をグループに入れたくないだけだよ」

「なんかイライラすんなぁ! そんな話どうだっていいんだよ」
萌奈の唐突な一言で、思わず「え?」となった。

「そうね。なんか、いろいろ不愉快だわ」
椿は、そう言うと。きつい視線で私をにらんでいる。

「ごめん、椿、奈緒がいろいろ言ってるけど
 奈緒とは、もう友達とかじゃないからね」
未南が椿に釈明している。

「私は今でも友達でいたい。無理やり絶交させたのは椿たちでしょ?」

「萌奈が奈緒のこと嫌って言うからそうしたのよ」
私の質問に答えたのは椿だった

「そうだよ。だれがお前なんかと友達になるかよ」
萌奈は私を、ひどく毛嫌いしている。

「未南と私の仲を裂いて、いじめるのが目的じゃないの?」

「そんなの被害妄想だよ。私は椿たちといると楽しいよ!」
未南が横から口をはさむ。

「いや別に妄想とかじゃなくて、仲直りしたのだって
 いじめが先生にばれそうになったからじゃないの?」

「違うよ。なんの根拠あって言ってるの!」

「未南の言う通りね。ほんと奈緒の妄想ってひどいわ!
 こんな子、ほおっておいて、もう行きましょう!」
結局、怒った椿たちは、私を置いて、いってしまった。

心配で、不安で。いろいろ疑ってしまう。

いじめられてないならそれでいいんだけど……。

友達グループ内でのいじめってのもあるしなぁ。

のちのち大きな問題にならないといいけど。

185:りさ:2021/06/05(土) 10:50

(79回)(痴漢裁判)

8月25日、ここは裁判所。今日は
未南のお父さんの痴漢事件の裁判が始まるから
お父さん、美鈴さん、未南と裁判所に来ていた。

再び、裁判所にやってきたような感覚!
夢で見た光景と似ている。
まるで、デジャビュー!
違うのは、何も事件が解決していないということ!
夢じゃあ、真犯人をみつけていたのにね。

「そろそろ中へ入ろうか」
時計を見た父かそう言った。開廷の時間が近づいているようだ。

186:りさ:2021/06/06(日) 08:49

法廷に入ると弁護人席に父が座る。
隣には、父の事務所で働く新米弁護士
松岡美鈴、25歳が着席する。
二人は被告人(起訴された者)を弁護する役割だ。

弁護士席の正面奥には検察官。
検察は犯罪を立証する被害者の味方だ。

私と未南は傍聴席の中央に並んで座った。

定刻になると
奥の扉から未南の父親である被告人が
刑務官2人に付き添われ法廷に入ってきた。
両手には手錠を付けられていた。

続いて、裁判官が入ってくる。
それと同時に、検察側にいる女性が
「起立」と言った。

私と未南は一瞬、戸惑ったが、
立ち上がり裁判官に礼をした。

187:りさ:2021/06/06(日) 22:20

「開廷します。被告人は前へ」

裁判官に促され未南の父が証言台に立った。

まず裁判長が被告人に対し人違いでないことを確認するため
氏名、生年月日、職業、住居、本籍等を確認した。

「名前は?」

「修倉大造です」

職業は教師。
年齢は偶然にもお父さんと同じ43歳だ。

次に、検察官が起訴状の朗読を始めた。

「公共の乗物において、被害者に対し
 着衣の上から臀部を触り、人を著しく羞恥させ
 又は人に不安を覚えさせる行為をしたものである。

 罪名、および罰条。公衆に著しく迷惑をかける暴力的
 不良行為等の防止に関する条例違反」

わかりにくいが、これは俗に言う、迷惑防止条例違反だ。

次に、裁判長は被告人に対し黙秘権等の権利を告げる。

「これから、今、朗読された事実についての審理を行いますが、審理に先立ち
 被告人に注意しておきます。被告人には黙秘権があります。従って、被告人は
 答えたくない質問に対しては、答えを拒むことができるし、また、初めから
 終わりまで黙っていることもできます。もちろん、質問に答えたいときには
 答えても構いませんが、被告人が、この法廷で述べたことは、被告人に
 有利・不利を問わず、証拠として用いられることがありますので、
 それを念頭に置いて答えて下さい」

長い……、ようは自己に不利益な供述を拒否する権利のことだ。

188:りさ hoge:2021/06/07(月) 17:48

続いて罪状認否。
「公訴事実、つまり検察官が読み上げた起訴状に
 事実と違うことがありますか?」

「あります。痴漢をした事実はありません。
 これは間違いなく冤罪です。」

未南の父は裁判官から聞かれた、公訴事実を否定した。

「被害者と同じ電車に乗っていたことは間違いありませんか?」

「間違いありません。しかし着衣の上から臀部を触る行為はしてません」

「弁護人のご意見は?」
裁判官が私のお父さんに聞いた。お父さんは立ち上がり

「被告人と同意見です。被告人は痴漢行為をしておりません。
 しかし被害者と同じ電車に乗っていた事実は認めます」
と述べたあと、イスに座る。

「被告人はお戻りください」
裁判官に言われ、未南の父が席に戻る。

「証拠調べに入ります。検察官は冒頭陳述をどうぞ」
裁判所書記官が検察官に冒頭陳述を求める。

189:りさ hoge:2021/06/08(火) 17:11

冒頭陳述とは刑事訴訟で、証拠調べのはじめに、検察官が証拠によって証明しよう
とする事実を明らかにする陳述。そのあとで、被告人側も同様のことができる。

【検察側の冒頭陳述】

「1、午前7時ごろ。被告人の乗る車両に、被害者の当時14歳の女子中学生が
 同級生の友人と一緒に乗車した。被害者は、被告人の真横に立つことになった。

 2、電車が発車した直後、被告人は真横にいた被害者の臀部を着衣の上から触り
 下車する10分間、執拗に撫で回し公訴事実記載の犯行に及んだ。被害者は生涯で
 初めて痴漢に遭遇し、恐怖のあまり、声を出すことも抵抗することもできなかった。

 3、被害者と友人は被告人と同じ駅で下車。下車直後に被害者は、痴漢されたことを
 友人に相談した。相談された友人は、被告人を捕まえると、被害者に言い、被告人は
 改札に向かって歩いているところを、被害者の友人により現行犯逮捕された」

190:りさ hoge:2021/06/08(火) 23:13

検察側の冒頭陳述が終わった。
「弁護側は冒頭陳述をどうぞ」
裁判所書記官から声をかけられると
お父さんが立ち上がり冒頭陳述を始めた。

【弁護側の冒頭陳述】

「痴漢した事実はない。被告は無罪。過去に性犯罪、犯罪の事実もありません。
 被告は教師となって13年間。常に法規を順守してまじめに取り組んできた。

 犯行を目撃した人物や微物検査(容疑者の手に被害者の衣服の繊維が付着して
 いないかの検査)などの人的、物的証拠もなく。本人も犯行を否認している。

 痴漢が事実であれば被害者の犯人、犯行の誤認であり、真犯人が存在すると思われる。
 そうであった場合 この事件は犯人を誤認逮捕した冤罪事件であると考えられます」

弁護側の冒頭陳述が終わった。
 
その後。証拠(書証・物証・人証)提出 ← 証拠認否

(続く)

191:りさ hoge:2021/06/09(水) 19:57

(80回)(痴漢裁判2)

「次に証人の取調べを行います」

証人尋問が始まる。
証人尋問とは,検察官や弁護士が証人に対し質問をして
証人の供述から証拠を得る証拠調べです。

「それでは証人尋問に移ります。証人を入廷させてください」
女の子が入廷し、証言台の前に立つ。

証人尋問をするには、まず証人の人定質問が行われる。
人定質問では証人の氏名、年齢、住所、職業等を質問する。

人定質問は、裁判官が証人カードを見ながら質問する。

「住所,氏名,職業,年齢は証人カードに記載したとおりですね?」

「はい,間違いありません」

友人は女子中学生で被害者のクラスメイトらしい。
事件があった日、通学のため同じ車両に乗っていた。

192:りさ hoge:2021/06/10(木) 16:49

人定質問の後は,すぐに宣誓書の朗読。

「宣誓書を朗読してください」

「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず
 偽りを述べないことを誓います」

裁判官に言われて、証人によって宣誓が読み上げられる。

続いて裁判官は証人に偽証罪の告知をし、そのうえで尋問を開始する。

「証人は今、宣誓したように、本当のことを証言してください。
 もし宣誓したうえで虚偽の証言をすると偽証罪で処罰される
 ことがあります。では、そこに座ってください」

被害者の友人が証言台のイスに座る。

「それでは、検察官、尋問をどうぞ」

193:りさ:2021/06/11(金) 17:09

【証人尋問(証人=被害者の友人)主尋問】

宣誓が終わると検察官の尋問が始まった。

「5月8日。あなたは痴漢事件があったこの車両に乗っていましたか?」

「はい」

「あなたは、そのとき誰かと一緒にいましたか?」

「友人と一緒にいました」

「その友人は、この痴漢事件の被害者の少女ですか?」

「はい」

少女は少し緊張気味だがきっぱりと返事をする。

194:りさ hoge:2021/06/12(土) 08:25

「被害者は、あなたから見て、どの位置にいましたか?」

「私の右隣りにいました」

「友人が痴漢の被害にあっていたときも一緒にいましたか?」

「はい、車内ではずっと一緒でした」

「痴漢をした被告は同じ車両に乗っていましたか?」

「乗っていたと思います」

「被告が下車した駅は、金有駅です。あなたと被害者も同じ駅で降りましたか?」

「はい、同じ駅で降りました」

少女に、おどおどした様子はなく。
ハキハキと検察官の質問に答えていった。

195:りさ hoge:2021/06/13(日) 09:37

「駅のホームで。被告を痴漢の犯人として私人逮捕したのはあなたですね」

「はい」

「そのときの経緯を説明してください」

「金有駅に降りた直後、友人が、痴漢をされたと言いました。
 友人は、スーツを着た男に、痴漢されたって言いました。
 二人で犯人を捕まえよう、ってことになって……。
 私は友人が指さした男性を追いかけて、捕まえました」

「痴漢の犯人を捕まえた際の具体的状況を教えてください」

196:りさ hoge:2021/06/13(日) 19:08

「私は、男性が逃げないように腕を掴み、痴漢したでしょ?と聞きました。

 男性は痴漢なんてしていない、何かの間違いだ、と言ってきました。

 友達が痴漢されたと言っているので。罪を認めるように言いました。

 でも犯行を認めないので、私は友人に、駅員を呼んでくるように言いました。

 男性は自分が教師で、学校に行かなければならないと言い、逃げようとしました。

 私は逃げないように男性を必死に捕まえました。やがて友人が駅員を連れてきてくれて。

 駅員は男性が逃げないように捕まえて駅事務所まで連れて行きました」

少女は事件当時のことを思い出すように話した。

197:りさ:2021/06/14(月) 17:51

「駅事務室へは、あなた達もいってますね。そのときの様子を説明してください」

「はい。4人で事務室に入り、事情を聴かれました」

「あの? 4人とは、あなた、被害者、被告、駅員でいいですか?」
検察官が少女に質問した。

「はい」

「続けてください」

「はい。男性はずっと痴漢していないと言い続けていました。
 友人は痴漢された お尻を触られたって駅員に話しました。    
 しばらくして、駅員が警察に通報して、警察が来ました。

 警察にも二人は同じことを話していました。話し合っても
 男性は罪を認めませんでした。それで私は学校に遅刻するから。
 もういいですか? と警察の人に聞きました。警察の人は。
 警察署で事情聴取するから、君たちは学校に行ってもいいよ。
 と言うので、私たちは駅事務所を出て、学校へ向かいました」

198:りさ hoge:2021/06/15(火) 16:51

「はい、わかりました。それでは犯人と、被告人の同一性の
 確認のため。証人に甲15号証の犯人の写真をしめします」

検察官が少女のところまに歩み寄る。

「この写真の人は、5月8日、友人が痴漢の被害にあったとき。
 あなたが捕まえた犯人ですか?」

「はい」
少女は間をおいて返事をした。

「以上です」

検察官の主尋問が終了した.

199:りさ hoge:2021/06/16(水) 17:56

【証人尋問(証人=被害者の友人)反対尋問】

続いて弁護側による反対尋問が行われた。

「反対尋問をさせていただきます」
お父さんが弁護人席から立ち上がった。

「被害者は電車が発車した直後に痴漢に遭い、下車するまでの
 10分間、執拗に、臀部を着衣の上から触られたようですね」
お父さんが証人の少女に視線を向ける。

「あなたは車内で友達の異変に気が付きましたか?」

「いいえ」

「それはおかしいですね。10分間も痴漢の被害に遭っていれば。
 何かしら、様子がおかしいと思うはずですが……。それに?
 なぜ被害者は、あなたに助けを求めなかったのでしょうか?」

「怖かったり、恥ずかしかったりで、声に出せなかったんだと思います」

「被害者は抵抗したり、嫌そうな顔はしていませんでしたか?」

「はい……」

「そのほか、なにか様子がおかしいとは、思いませんでしたか?」

「はい、でも、わたしが鈍感で気が付かなかったのかもしれません」

「そうですか。では被害者は、その場から逃げたりはできなかったのでしょうか?」

「満員電車で、簡単には移動できなかったと思います」

200:りさ hoge:2021/06/17(木) 17:51

お父さんの尋問は続く。

「あなたは? 電車内で犯人を見ていますか?」

「見ていません」

「犯行も目撃していませんよね?」

「目撃してません。痴漢を目撃してたら、すぐに助けるか、犯人を捕まえてます」

「そうですよね。では、自分の周囲に、だれが乗っていたのか、覚えていますか?」

「あまり覚えていません」

「重要なことです。時間をかけて考えてください。
 被告人は、被害者の真横、右側に居ました。でも。
 痴漢は、被害者の背後に居た乗客にも可能ですよね」

「はい。でも、あの日。後ろに誰が居たのか覚えていません」

201:りさ hoge:2021/06/17(木) 21:10

「では痴漢じたい、嘘だった可能性はありませんか?」

「あの子は、そんな嘘を付くような子じゃありません」

「痴漢の事実はあったと、あなたも思いますか?」

「はい」

「被告人は、一貫して犯行を否定してます。それでも犯人だと思いますか?」

「……。思います」

「事件後に被害者から、痴漢の犯人を間違えたかも。
 事件は嘘だったなどの発言はありませんでしたか?」

「ありません」

「二人で共謀して、でっちあげたという事実もありませんよね?」

「絶対にそんなことはありません」

「失礼しました。質問を変えます。あなたは被害者が指をさした人を捕まえたんですよね?」

「はい」

「あなたは被害者の言葉だけを信じて、被告人を逮捕した。間違いありませんね」

「はい」

「被害者が犯人を間違えた場合、被告人が犯人ではない可能性があります」

「はあ、まあ」

「では駅事務室での様子についてうかがいます・・・・・・・
「〇〇〇〇〇〇」
「〇〇〇〇〇〇」

その後もなんとか無罪のために、証言を引き出そうと尋問を続けたが。
決定的な証言が得られず、この証人尋問が終了すると法廷は閉廷された。

(推敲不足でぐだぐだですがサブ​プロット終。メインプロットに戻ります)

202:りさ hoge:2021/06/18(金) 16:53

第二章 (〜 未南 自殺未遂)

203:齋藤:2021/06/20(日) 23:58

はじめまして。

204:りさ:2021/06/21(月) 16:23

はじめまして。

205:りさ:2021/06/21(月) 16:28

第二章(1回)(椿たちに恋愛を強要され、未南に彼氏ができる)

「あいつ、会わないって言ってるのに、また連絡してきたよ」
椿の自宅の寝室で、萌奈は親友である椿に向かって言った。

夏休みも終盤。萌奈は、椿と夜遊びした後、泊まりに来ていた。

「誰? こないだの合コンの男? いいじゃない。遊びで付き合っちゃえば?」

「こいつ、結婚してるんだよ。私はそういう人とは付き合いたくないの」
萌奈は、男遊びは派手だが、浮気や不倫は嫌っていた。

「嫁がいるのに、JK(女子高生)と遊びたいとか最低だよね」
 
椿は言ったあと、しばらくして、思いついたように口をひらいた。
「そうだ! いいこと思いついた! こいつ未南に紹介しちゃおうよ」

「付き合わせるの? あいつ、彼氏いたことねえじゃん。無理っぽくね」

「いまならちょっと強く言えば、断れないんじゃない?」
 
「おもしろそう、あの未南が不倫野郎と交際とか、きゃはは、ウケル」
萌奈は、真面目な未南が傷つくことを確信して言っていた。

「私が未南に連絡してあげる」
そう言って、椿は未南に電話をかけた。

206:りさ:2021/06/21(月) 20:44

「はい」

未南は、スマホの着信音にハッとして、ベッドから起き上がり、電話にでた。

疲れてベッドに横たわっていると、いつの間にか眠ってしまったようだ。

「いまどこ、いえー?」

椿がなんのために電話してきたか、未南にはわからなかった。

「家だよ、横になってたら、いつの間にか寝ちゃった」

「最近、いつも眠そうで、疲れてるよね」

実際、父親が痴漢で捕まったことは、未南の精神を落ちこませ、眠れない夜も多々あった。

「うん、まあ」

未南は力なく答えた。

「そんなことより」

椿はすぐに本題に入った。

「萌奈の知り合いなんだけど、あなたと付き合いたいって男性がいるんだけど、どう?」

「急にそんなこと言われても、困るよ」

未南は、ほとんど考えることもなく、即座に返事をした。

「元気ないんだし、恋愛でもしてみたら? 最近の未南、暗い話ばっかりで、つまんない」

「ごめん、いま、恋愛とかする気分じゃないんだ」

207:りさ:2021/06/22(火) 19:38

「私が紹介してるのに、断る気なの?」

「……」
未南は椿に嫌われるのが怖くて、不安な日々が続いている。

断ったら嫌われるんじゃないか、そんな心理状態に陥っていた。

「黙ってないで、何か言いなさいよ」
椿は思い通りにいかないと、機嫌を悪くした。

「恋人になるか、わらないけど、とりあえず会ってみる」
未南は、ひどく当惑し、動揺している。

「それじゃあ、相手に連絡先教えるね」

「うん」

「あとは二人で話し合って、どうするか決めてね」

椿は、そう言って電話を切った。

208:りさ:2021/06/23(水) 18:13

「やった! うまくいったわ」

椿は、部屋で息をひそめていた萌奈に話しかけた。

「あいつに連絡する。私より可愛い子、紹介してあげるって」

萌奈はスマホをいじり始めた。

「ふふ、なんだか、おもしろいことになりそうね」

椿はクスリッと笑った。

209:りさ:2021/06/23(水) 20:36

(2回)
男の名前は西出冬馬。大企業の御曹司であった。
妻が妊娠中にも関わらず、女遊びをしようしていた。

そんなこととは、つゆ知らず
未南はメールやLINEでやりとりした。
やがて西出の提案で、電話で話すことになった。

初対面の男性と話すと思うと緊張感が高まり
未南の心臓の鼓動がバクバクと速くなる。

じっとスマホを見つめていると、電話のベルが鳴った。

「はい」
未南が電話にでる。

210:りさ:2021/06/24(木) 16:42

「はじめまして」
男の優しい声だった。

「はじめまして」

「冬馬です」
男は苗字を名乗らず下の名前だけを言った。

「修倉です」

それから、しばらく、二人は、たわいもない会話を続けた。

「会ってくれる?」
唐突に冬馬が本題を切り出す。

「……」
未南は、別に会いたいわけじゃない、と思った。

「ね、金曜の夜、ドライブしよ? 俺が家まで迎えにいくからさ」

「…………」
未南は戸惑った。見知らぬ男性とは、会ってはいけないと思っていたからだ。

「ええ」
だが、椿との約束を守るために、しかたなく会うことにした。

「決まりだね。詳しいことは、あとで連絡するよ」
そう言って、冬馬は電話を切った。

未南は、ひとつため息をついたあと
倒れこむように、ベットに横になった。

好きでもない男性と会って、デートすることが。
なぜかとても悲しい。さまざまな感情が入り交じって。
全部なかったことにしたいほど、悲しかった。

211:りさ:2021/06/24(木) 21:50

(3回)(ギャル化させられる未南)

夏休みが終了して、2学期が始まった。

教室は大勢の生徒たちで、にぎわっている。

未南は髪の毛を茶髪に染め、ミニスカート姿で教室に入ってきた。

未南の外見の変化に、教室がざわついた。

清純とばかり思っていたクラスメイトは驚きを隠せなかった。

「似合うじゃない」
椿が未南に声をかけた。

「スカートそれくらい短い方がいいよね」
ミニスカートから飛び出した細くて綺麗な未南の足が妙に色っぽかった。
萌奈が満足げな笑みを浮かべる。

「彼氏を作るなら、そのぐらい派手な方がいいよ。未南、地味だったもの」
椿が無邪気な笑顔で言った。

校則の緩い学校であったが、未南が派手な格好をすることは一度もなかった。

未南の意志ではなかった。地味な女はモテないと言って

未南をギャル化させたのは椿たちのしわざだった。

「似合うかな……」

私を思って言ってくれてる、未南は自分の心にそう言い聞かせていた。

212:りさ hoge:2021/06/25(金) 21:09

(奈緒、未南に話しかける)

未南の姿には、奈緒も驚いていた。

「どうしたの? その格好(かっこう)?」
奈緒が尋ねた。

「別に……」
未南の返事はそっけなかった。

「誰かに強制されてない?」
「……」

「もし椿たちに、そうしろって命令されたなら言ってほしい」
「ただのイメチェンだよ」

「困ってるなら相談してよ」
「好きでやってるんだから、ほっといてよ」
未南は冷たく言い放つ。

「心配してるんだよ」
「……」

未南は、泣きたくなった。
目に涙がにじんで、こぼれ落ちそうになるのを、必死にこらえた。

213:りさ:2021/06/26(土) 15:09

(奈緒、担任に相談)

朝のホームルームが終わったあと。奈緒は担任を追いかけて話しかけた。

「先生、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」

「修倉さんのことで相談があるんです、いいですか?」
「ええ、どうぞ」

「この前、偶然、目撃したんですけど修倉さんが、姫川さん、和田さん、野村さんの
 4人で食事をしたとき、食事代、15980円を、おごらされてました」

「かなりの金額ですね。それは強要されたということですか?」

「いえ、合意の上とか言ってました」
「合意したとはいえ、あまりいいことではありませんね」

「あと髪を染めてたの、気が付きましたか?スカートもミニスカートになってました」
「髪の色は気が付きました。私も少し驚いています」

「あれも自分の意志じゃないかもしれません」
「そうなんですか?」

「あと、修倉さんと姫川さんが仲直りするかわりに、私と修倉さんは、絶交させられました」
「それは、ひどい話ですね」

「いじめの可能性があるので先生に話しておこうと思って」

「そうですか、いろいろ話してくれて、ありがとう。
 あとで修倉さんに話を聞いてみます」

214:りさ:2021/06/27(日) 18:44

(担任に呼びだされる未南)

放課後、担任は未南を職員室に呼びだした。

「最近、元気がなさそうなときがありますね」
担任が優しい口調で未南に話しかけた。

「悩み事はありませんか?」

「特にないです」
未南は嘘をついた。

「その髪の毛はどうしたの?」
担任は未南の髪に目を向けた。

「うちの学校は校則が厳しくないので、問題はありません」
頭髪や服装に関する校則はほとんどなく、校則で禁止なのは無断アルバイトくらいである。

「急に茶髪にしたり、スカートを短くしたのはなぜですか?」

「別に……こうしたかったからです」
未南は、ぶっきらぼうに答えた。

215:りさ hoge:2021/06/29(火) 22:16

「まあ、それならいいんですが……」
担任は、この件について、これ以上追求しなかった。

「友人関係はうまくいってますか?」
担任は話題を変えた。

「はい」

「姫川さんたちと仲良くしてるようですね」

「親友です。あの子たちと一緒にいると楽しいです」

「川上さんは?」

「……。いまは友達じゃありません」
未南は正直に話した。

216:りさ hoge:2021/07/01(木) 16:25

今朝、奈緒が言ったことと一致する。

担任は、いじめの可能性を疑った。

「修倉さん、いじめられていませんか?」

「いじめられていません」

「もしいじめを受けているなら、正直に話してください」

「椿のおかげで、クラスメイトからの嫌がらせがなくなりました」

「本当にないんですね」
担任は念を押した。

「はい」
未南はきっぱりと答えた。

217:りさ:2021/07/01(木) 16:53

いじめの可能性を払拭できず。

担任は別の質問をぶつける。

「姫川さんたちに、食事代をおごったと聞きました」

「……そんなこと誰から聞いたんですか?」

「川上さんです」

「奈緒が……」

「事実ですよね」

「はい」

「高額だったようですね。相手の言われた通りに、行動するのではなく。
 嫌なことは、嫌だと、ハッキリ言った方がいいですよ」

「別に嫌じゃありません。好きでやったんです」

「高校生が、おごったりするのは、いいことではありません」

「椿は、いつも私におごってくれました」

担任の言葉に、未南は、かすかな反発を覚えた。

218:りさ hoge:2021/07/02(金) 19:57

「そういうのはやめましょう。のちに金銭トラブルになるかもしれません」

「……。先生、椿たちにも話をするつもりですか?」

「まだ予定してません」

「やめてください、変なこと言って、仲が悪くなったら先生のせいですよ」

「トラブル解決も、教師の仕事だと思ってます」

「私は、もう子供じゃありません。自分でどうにかします」

「まだ子供です。大人に頼っていいんですよ。
 自分だけの問題だと思わないでください。
 悩みごとや、困ったことがあったら
 一人で苦しまず、周りに相談しましょう」

219:りさ hoge:2021/07/03(土) 12:12

「周りに迷惑かけたくありません」

「親が困るとか、先生が困るとか考えなくていいです」
担任は少し大きな声で言った。

「特に親にとって、相談してくれなかったことが
 あとで、大きな後悔になることがあります」

担任の言葉に、未南の胸が強く痛んだ。

あの痴漢事件後。両親は、苦しんでいる。
未南は、そう思うと辛くなった。

「はい」
未南は返事しつつも、誰にも相談できないと考えていた。

220:りさ hoge:2021/07/17(土) 21:58

(4回)

(未南、望まない交際を強要されて、悩み、苦しみ、傷つく)

221:りさ:2021/07/17(土) 22:23

金曜の夜がきて。
大企業の御曹司、西出冬馬と女子高生、修倉未南がデート。
西出は結婚していることを隠し不倫状態に。

デートを終え、車を降りようとする直前に
未南は、いきなり唇にキスをされた。
未南にとってはファーストキスだった。

未南は放心状態のまま車を降り、西出と別れるが
パニック状態に陥り、部屋で泣きじゃくる。
その後、精神的不安により過呼吸を起こす。

222:りさ:2021/07/18(日) 00:05

”呼吸しているのに酸素が入ってこない。苦しい”

呼吸が止まってしまったのではないか? このまま死ぬのか?

未南は、死について強い不安を抱く。

しばらくして。症状は軽くなり、過呼吸は止まった。

心が少し落ち着いた未南は、椿と話がしたくて電話をかけた。

”あの人と交際したくない”

不安や辛さから、交際中止を求めるつもりだった。

223:りさ:2021/07/18(日) 16:25

「デートどうだった? 楽しかったでしょ?」

未南の耳に、明るい声が飛び込んできた。

”全然楽しくなかった”

正直、苦痛ですらあった。

椿への後ろめたい気持ちで、未南の心が重くなる。

同時に、親友だった椿に助けてもらいたい気持ちにもなった。

「なんか辛い、もう会いたくない」

未南は本音を打ち明けた。

224:りさ:2021/07/19(月) 17:51

聞いて、椿は激怒した。

結婚している男性を、未南と付き合わせるつもりだった。

これでは、せっかく上手くいきかけていた計画が台無しになってしまう。

椿は、それを認めるわけにはいかなかった。

「だめよ! 彼を紹介した私の顔に、泥を塗る気なの? それは許さないわ」

椿は、未南に望まない交際を強要する。

「あの人のことを思うと苦しい」

「なんか変なことされたわけ?」

椿が、非難がましく問いつめた。

「キスされた」

「たかがキスくらいで、なに言ってるのよ。いいじゃない」

「男の人とキスするの初めてだったんだよ」

「あっそう。よかったじゃない。キスできて」

椿が、さげすんで笑う。

「そういうことは、結婚したいと思える人としたかった」

未南は泣き出しそうな声だった。

225:りさ:2021/07/27(火) 00:06

「そういうこと言ってて、今まで彼氏いたことないよね」

椿が言ったように、未南に恋人がいたことはなかった。

しかし未南に恋人ができる機会がなかったわけではない。

知り合った男性から交際を申し込まれたことが何度かあったが

恋愛するには年齢的に早いと思い、付き合うことはなかった。

「せっかく、初彼氏ができたんだから、簡単に別れちゃダメよ」

椿は念を押すように言う。

226:りさ:2021/07/30(金) 23:48

「うん」

未南は渋々承諾することにした。

仲直りして以来

未南は椿に嫌われるのが怖くて従順になっていた。

友達が離れていってしまわないか不安になると

無茶な要求でも簡単に受け入れてしまうのである。

初めから、まったく望んでいない恋愛であったが

椿は未南の意志に反して無理矢理に付き合わせることに成功した。

「またデートしたら、何があったか、いろいろ、報告してね」

椿は、思惑通りになって大いに喜んだ。

227:匿名 hoge:2021/08/30(月) 21:03

(5回)

初デート後も、未南への行為は、さらにエスカレートする。
何度もドライブに誘い出し、キスをする、抱きしめる。
スカートの中に手を入れて太ももを触る、胸やお尻を触る。
ホテルに誘い体を触る。などの行為を西出は繰り返していた。
未南はわいせつ行為を受けた直後から自殺願望をいだくようになった。

228:匿名 hoge:2021/09/03(金) 15:46

(デートのあと、西出の偽の自宅に連れ込まれる未南)
(自宅は独身を偽装するために借りたそこそこ高級なマンション)
(西出は恋人気分で、未南と接する)
(未南はかなり嫌な様子。でも椿との約束を守るために我慢して耐える)
(未南は正直、好きじゃない。別れたいと思っている)

229:匿名 hoge:2021/09/03(金) 16:08

(6回)ガールズトーク

(学校で、未南と椿たちが会話)
(萌奈が、西出との関係がどうなったか?聞く)
(未南は別れたと言うが、椿は付き合うを続けさせる)
(椿、炎上させるのが目的で、未南にインスタを始めさせる)
(未南は父親からSNSを禁止されているが、渋々、始める)

230:匿名:2021/09/03(金) 16:23

「彼とはどうなった? もう最後まで、やっちゃったとか?」
萌奈が興味深そうに聞く。

「そんなわけないでしょ、私はまだ高校生なんだよ」
腹立ちを覚えながら、平静を装って未南が言う。

「ふーん。でも、キスはしたんでしょ?」
私は高校生でも、もう経験済みだけどね。萌奈は心でそう思った。

「まあ、キスは……」
これ以上この話をしたくない、思い出したくない、と感じながら未南は答えた。

231:匿名 hoge:2021/09/09(木) 19:34

(7)インスタ いじめ
椿から恋愛のことをSNSに投稿すること強要される。
未南のSNSにスクールカースト下位の地味子とかから
恋人ができたことによる非リア充の妬みとかも原因で。
誹謗中傷のコメン投稿されるようになる。それに未南は傷つく。

232:匿名 hoge:2021/09/09(木) 19:42

(8)未南、酔った西出に襲われかける
西出の部屋に連れ込まれ、しきりに酒をすすめられるも断固拒否。
ひどく酔った西出にベッドに押し倒され身体を触られる。
服も脱がされそうになった未南さんは、激しく抵抗。
もみ合ったあと、突き飛ばして、部屋から逃げて、その後は疎遠になる。

233:匿名 hoge:2021/09/09(木) 19:49

(9)不倫暴露
椿と萌奈が、未南のSNSに西出が結婚してて
未南と不倫してることを投稿する。
未南はようやくその事実に気が付く。

234:匿名 hoge:2021/09/09(木) 19:52

(10)SNS炎上、いじめ再燃。
SNSも炎上。未南の不倫はクラス中の噂になり
いじめも再燃。未南は死にたくなるほどのショックを受ける。

235:匿名 hoge:2021/09/09(木) 20:12

(11)
不眠、食欲不振、自殺願望など。未南、重度のうつ状態になる。
でも精神科などには行けず、誰にも相談できず一人で苦しむ。

236:匿名 hoge:2021/09/16(木) 20:53

(12)
椿たちは西出のわいせつ行為を、警察に訴えて、西出を奈落の底へ落とそうとする。
そう言われた未南は、西出の家庭を壊したくないと、何もされてないと嘘をつく。

237:匿名 hoge:2021/09/17(金) 17:39

(13)
未南の不倫は学校中の噂になり、担任の耳にも入る。
担任が未南を呼び出して事情は聞くと。未南は不倫を認めた。
真面目な生徒と思っていた担任は大きなショックを受ける。

238:匿名 hoge:2021/10/01(金) 20:03

(14)奈緒と未南の会話
不倫の噂は奈緒の耳にも入る。
心配して声をかけるも冷たくあしらわれる。
「椿たちにハメられたんじゃあ」と奈緒が
言っても、未南は聞き耳を持たず。

239:匿名 hoge:2021/10/04(月) 05:05

(15)合コン
椿は落ち込む未南を励ます名目で合コンをすることになった
未南は合コンで飲酒をすすめられたり、王様ゲームとかで
はずかしくて、できないことを命令をされて、嫌な思いをする。

240:匿名 hoge:2021/11/06(土) 08:24

(〜2章おわり)

それからはいろいろあり、季節は冬になっていた。

未南は、いじめなどの影響で突然パニック症状が現れるPTSDを発症していた。

病気を治療中の登校時に発症してしまい、学校の校舎から飛び降りを決意してしまう。

241:匿名 hoge:2021/11/06(土) 08:34

第三章 (未南 飛び降り〜奈緒 退学まで)


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