神鷲の艦隊

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1:2F長官:2019/05/06(月) 00:51

神鷲の艦隊:黎明編 第1章:闇夜の提灯
第1話:敵巡洋戦艦を撃沈せよ!(上)

1904年、対馬沖で一人の英雄が死んだ。その名は東郷平八郎。
戦いの最中、たまたま敵砲弾が戦艦「三笠」の甲板−−−−それも東郷長官のいた−−−−所に命中したため、骨の一本も残らなかった。
幸い、バルト艦隊は壊滅し、日露戦争も日本も勝利に終わった。しかし、東郷長官の死は日本国民だけでなく、他国の国民まで悲しませ、国葬の際には各国の艦隊が集まり、弔砲を撃った。

それから幾年過ぎ、世界大戦の折。英国は雷撃機による雷撃を世界で初めて行った。だが、英国海軍はそれだけでは満足せず、雷撃機でドイツ艦隊を撃滅することを考えた。
しかし、ドイツ艦隊の実力は然る者。大型艦を撃沈した経験のない航空雷撃に賭けることは危険である。よって、まず危険度の少ないトルコ艦隊を攻撃し、その戦果によって可否を決めることにした。
1917年にトルコ軍によって撃沈された水上機母艦「ベン・マイ・クリー」の敵討ちとも言えるこの作戦は1918年1月に決行された。充分な準備期間がなかったので、出撃できたのは水上機母艦「カンパニア」と少数の護衛艦艇のみだった。指揮官こそ、空母部隊の指揮経験があるP・F・フィルモア少将であったが、この「カンパニア」は元々スコットランド方面に居たため(一時的ではあるが)対トルコに回すことに反対するものが多かった。それだけでなく、乗員が急な気候の変化に対応できるのかという心配もあった。
また、トルコ艦隊を見つけられなかった場合には即帰投するという条件もあり、絶対失敗すると思われていた。実際、この無意味な作戦自体、大艦巨砲主義者が航空主兵主義者に現実を見せつけ、黙らせるためのものであったのだから。

この艦隊は1月中旬、インブロス島付近に向かった。ここに来るまでずっと行なっていた、たった10機の水上機を使っての索敵は無意味なものと思われていた。しかし、このインブロス島付近にトルコ海軍の巡洋戦艦「ヤウズ・スルタン・セリム」と巡洋艦「ミディッリ」や水雷艇を発見することに成功した。この敵艦二隻のすぐそばには英国のモニター艦など2隻が航行していた。

−−−−どう見てもこちらが不利だ

フィルモア少将は思った。このまま戦友を見捨てるわけにはいかない。すぐに準備をすればギリギリ間に合うか−−−−

「インブロス島方面の敵艦隊を攻撃する。発艦準備を始めよ」

フィルモア少将は汗をぬぐいながら命令した。もし、航空攻撃が失敗したら、モニター艦が沈没するだけでは済まない。自分たちも打ちのめされる。
戦艦の主砲弾になすすべもなく引き裂かれる「カンパニア」の艦体が少将の脳裏をよぎった。

−−−−巡洋艦の砲ですら致命傷なのだ。最悪水雷艇にも狩られる。駆逐艦の数だって満足ではない。滅茶苦茶だ!

少将は憤りを感じたが、そんな暇はない。万が一の時のための対策を立てる方が先だ。

15:2F長官:2019/05/23(木) 22:32

【緊急連絡】修正報告

>>14
>少々失礼であったが、もっと大きな問題が起こった。



>少々失礼な回答であるが、そこは問題にならなかった。別のところで大きな問題が起こった。

16:伊藤誠一:2019/05/26(日) 17:58

第12話:怒れる国民


日本の各新聞社は、米新聞社によるバッシング事件を、【NYタイムス記事捏造事件】と名付け、

「極めて悪辣」
「同様の記事を書いた全ての新聞社は訂正の上、謝罪すべきだ」
「政府は強気になるべきだろう」
「NYタイムスなどの行動に、今後米国に対する反感が強まりそうだ」

と過剰といえるほど、叩いた。こんな記事が書かれてしまったので、国民の対米感情は最悪のものとなり、暴動を起こすのも時間の問題とされた。
米国の新聞社も、ここまで批判されてしまったので、煽り返すような記事を書き、

「謝罪するべきは近衛首相である」

と口々に言った。無論、この記事によって国民は怒り、ついに暴動が起こってしまうようになった。

外相の野村吉三郎は流石に危機感を覚えて、

「首相、我々に一切の落ち度はありませんが、ここは謝罪すべきです。民族で対立すれば、国家がどれほど努力しても、水泡に帰してしまいます!」

と辞表を突き出していった。謝罪しないのならば、やめるというのである。辞職をもって、首相を脅したのだ。
鬼気迫る表情で訴えた野村外相に対し、近衛の反応は冷淡だった。

「断る。弱腰外交は国家の恥辱になる」

というだけで片付けてしまった。納得できない論理ではない。しかし、これは近衛の本心ではなかった。拒否した本当の理由は、謝罪により、国民の怒りを買って、殺されることが怖かったからである。中国と講話しただけの米内でさえ、射殺されたのだ。謝罪などすれば、蜂の巣どころでは済まないだろう。
それに、近衛は新聞社がわめいているだけのことで、日米関係が悪化するなどありえないと思ってもいた。要は、つまらないことの為に頭を下げたくなかったのである。

一部の暴徒によって米国の日本大使館が襲撃されたのは、これから一か月後のことである。

17:2F長官:2019/05/26(日) 18:01

もし、設定資料集が見つからないままならば、次回作をつくる予定です。
タイトルは、遥かなるインパール。
詳しいかたなら主人公が誰かわかると思います!

18:2f:2019/06/07(金) 21:33

第13話:立ち込める暗雲

一部の暴徒による米国の日本大使館襲撃事件について、合衆国政府は即座に謝罪を行った。この襲撃では大使館の一部が焼け落ち、20人以上の死傷者を出した。日本を怒らせるに十分すぎる大事件だ。しかし、明らかに日本人が被害者なので、謝罪によって、批判を避けようと考えたのだ。
結局、日本側が米国とのこれ以上の関係悪化を恐れ、深く追及をしなかったので、合衆国の思い通りになってしまった。さらに、日本政府が一切の追及を行わなかったので、唯一の代弁者を失った国民は怒りのやり場を失った。彼らがより一層両国政府と米国民への敵愾心を増したことは言うまでもないだろう。
これを知った在郷軍人会の一部の者は、新聞社に更なる圧力をかけようとした。近衛内閣を倒して、強気な政府を作ろうと目論んでいるのだ。

かくして、新聞社らは米国を毎日毎日、飽きもせずに叩き続けた。在郷軍人会に逆らったら新聞社としてやっていけないから仕方ないといえば仕方ないのだが。
ともかく、近衛は新聞社の米国叩きに怒った。戦争への可能性を増やすことにしかならないではないか。しかも、元は彼ら新聞社が国民を扇動したのが悪いのではないか。さらに野村吉三郎がくだらないことで辞職した今、日米関係の修復は一層厳しいものになった。近衛は首相官邸の外を見つめて、深いため息をついた。晴れた空とは正反対である。

「もう、無理かもな……」

その声を聞いたものは誰もいない。しかし、軍人も政治家も皆、同じ事を考えていた。日中講和成立に希望を抱いていたが、結局消極的な誤魔化しにしかならなかった。解決策は、真正面から米国を打ち破るしかなくなったのかもしれない。だが、それだけの軍備を整える国力がどこにあると言うのか。陸海軍の無茶な計画なんぞ、気休めにもならないのだ。
空にはいつのまにか、赤黒い雲が立ち込め、矢弾のような雨が降っていた。

19:2F長官:2019/06/08(土) 00:39

第14話:ドイツへ(1)

日本国内を多くの怒りと僅かな不安が覆う中、喜びの声を上げるものが一人だけ居た。技術士官の伊藤庸二大佐(電探開発が評価され昇進)である。嫌がらせのように、ほとんど人員と予算が割り振られなかった電探開発に比較的多く予算が回ってきたのだ。これには、海軍のハンモックナンバー制度が深く関わっていた。
小沢治三郎が一航艦司令長官に昇進したので、戦隊司令官の南雲中将は、予備役にするか昇進させるかしかなかった。席次が上にも関わらず、後輩の小沢に地位の上で追い越されることになってはいけないからである。
海軍の上層部、山本五十六などは南雲の真面目さを評価し、予備役編入や予備中将扱いはまずいと考えた。そして、なんと南雲は連合艦隊司令長官(GF長官)に親任されることになった。そのため、時のGF長官の山本五十六は海軍大臣に親任されることとなった。
山本提督はレーダーの重要性をある程度理解しているので、多く予算をくれたのだ。ハンモックナンバーのような毒でも使いようによっては、良くなるものだと実感させられた。

伊藤大佐は上機嫌に谷中佐を呼び出した。そして、

「君にはドイツに飛んでもらう」

と言った。すると谷は深く笑顔を作ると、

「ウルツブルクですね」

と言った。興奮して、早口言葉のようになっている。それだけ、ウルツブルクは彼らにとって重要なのだ。そう、ウルツブルクとはドイツの開発した傑作レーダーのことなのだ。

「みんな噂してるからな。知っているか。では、はっきりした日時は不明だが潜水艦で来てもらう。君は直接ドイツに行け」

「しかし、電探以外に何の目的が?」

谷は被りを振って、頭を掻き毟った。伊藤大佐が何を言い出すのか予想がつかないのだ。

20:2F長官:2019/06/08(土) 19:15

間違って下書きのまま投稿してしまいました。書き直します。

21:2F長官:2019/06/08(土) 22:41

第14話、修正版:ドイツへ(1)

日本国内を多くの怒りと僅かな不安が覆う中、喜びの声を上げるものが一人だけ居た。技術士官の伊藤庸二大佐(電探開発が評価され昇進)である。嫌がらせのように、ほとんど人員と予算が割り振られなかった電探開発に比較的多く予算が回ってきたのだ。これには、海軍のハンモックナンバー制度が深く関わっていた。
小沢治三郎が一航艦司令長官に昇進したので、戦隊司令官の南雲中将は、予備役にするか昇進させるかしかなかった。席次が上にも関わらず、後輩の小沢に地位の上で追い越されることになってはいけないからである。
海軍の上層部、山本五十六などは南雲の真面目さを評価し、予備役編入や予備中将扱いはまずいと考えた。そして、なんと南雲は連合艦隊司令長官(GF長官)に親任されることになった。そのため、時のGF長官の山本五十六は海軍大臣に親任されることとなった。
山本提督はレーダーの重要性をある程度理解しているので、多く予算をくれたのだ。ハンモックナンバーのような毒でも使いようによっては、良くなるものだと実感させられた。

伊藤大佐は上機嫌に谷中佐を呼び出した。そして、

「君にはドイツに飛んでもらう」

と言った。すると谷は深く笑顔を作ると、

「ウルツブルクですね」

と言った。興奮して、早口言葉のようになっている。それだけ、ウルツブルクは彼らにとって重要なのだ。そう、ウルツブルクとはドイツの開発した傑作レーダーのことなのだ。

「みんな噂してるからな。知っているか。では、はっきりした日時は不明だが潜水艦で来てもらう。君は直接ドイツに行け」

「潜水艦ですか!?」

谷は顔をしかめた。潜水艦でドイツへ行くとなると、生きて帰れるかわからない。さらに、乗船中は過酷な生活が待っているのだ。潜水艦では飯は缶詰ばかり、水はほとんど使えない。敵襲にあえば息苦しい思いをすることになる。鍛え抜いた古参軍曹ですら失禁をし、トラウマになるのだ。未経験の技術士官が乗るとなれば、言うまでもない。

「そしてその後、イギリスへ飛んでもらう。フランス・パリの飛行場に用意してある飛行艇で行ってもらう。操縦士は君と潜水艦に乗ることになっているから安心してくれ。ただ、パリに行くまでは気をつけろよ。全て君の責任になるからな」

続けて伊藤大佐が言った。飛行艇を使うと聞いた谷は、では日本から補給しつつ飛行艇で行けばいいじゃないかと心の中で愚痴った。誰が悲しくてドン亀乗りになるというのか。

「イギリスも電探開発に必死だからな……あと、くれぐれも、奴らの二枚舌に騙されんようにな。しっかり頼むぜ。それと、イギリスで電探を見たら次はアメリカへ飛んでもらう」

谷は大佐の発言に違和感を覚えた。独、仏、英に行く理由はわかるが、米国に行く理由がわからない。米国の電探技術は英独ほどではないし、仏のように移動のために必要になるわけではない。なのになぜ、行かねばならんのか。違和感がもやもやと残る感じが気にくわなかった中佐は率直に大佐に尋ねた。

「アメリカですか? 何の目的ですか?」

谷は被りを振って、頭を掻き毟った。伊藤大佐が何を考えているのか予想がつかないのだ。

「彼の国の技術を見てみたいんだよ。米国の長所というのは製品の高性能さではない。彼の国の長所を我が国はある程度模倣せねばならない。要はスパイだ」

中佐は絶句した。


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