シティウォーボーイズ

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1:るーね:2019/07/29(月) 22:33

それはとある少年の冒険譚。

少しの努力で才能が開花し、
知恵と工夫でどんな敵をも討ち倒す。
可愛いヒロイン達と恋に落ち、
地位も権力も金も運良く手に入れてしまう。
勇気があり体も強く、
顔も良ければ性格まで完璧。

そして何より、巡り来る運命を受け入れていた。

少年は数々の冒険を乗り越え、
とても幸せなハッピーエンドを迎えたのだった。

2:るーね:2019/07/29(月) 23:04

高梨斗輝は読んでいた小説を閉じ、机に置いた。
目を瞑り、大きく息を吸い込む。
「全く、ひまりのヤツも下らないものを読ませる」
ため息と共に吐き出す、大きな独り言。
聞く相手もいないはずだった言葉は、
いつの間にか部屋の扉の前にいた少女に咎められた。
「下らないとは何よ!それ今1番流行りの小説なんだよ!」
「ひっひまり!?いつからそこに?」
驚く斗輝をよそに、ひまりと呼ばれた少女は、
部屋に入ってきて机の上の小説を手に取った。
「いつからでもいいでしょ。
この本、お気に召さなかったみたいね」
憎まれ口を叩くひまりに、斗輝も応戦する。
「あぁ、そうだな。
そんなコッテコテで、キッラキラで、
ちゃっちいファンタジーなんか気に食うか」
それを聞き、たちまち憮然とした表情になるひまり。
険悪な空気を感じ取ったのか、
斗輝は咄嗟に臨戦態勢に入った。
「そこまで言わなくたって良いじゃない!
もういい、帰る!」
声を荒らげ、部屋を出ていくひまり。
取り残された斗輝は、
今度こそ誰にも聞かれない独り言を、
「てゆーか勝手に来てなんなんだアイツ……」
ポツリと呟いた。

3:るーね:2019/07/29(月) 23:49

斗輝は何気なく時計を見た。
午後8時23分を指す針。
ひまりの家はそう遠くない。
が、流石に怒らせた相手でも
独りで帰らせるには気が引けた。
壁の上着掛けからパーカーを取り、
階下に向かったひまりへ声をかける。
「おい待ってろ、送るから」
返ってきた言葉は、
突き放すものだった。
「いらない!ばーか!」
ついでにとばかりに罵声。
そしてガチャリとドアが閉まる音。
「ばかとはなんだ……」
それでも階段を降りて靴を履き、
鍵を取り出しドアを開けた。
「ひまり?」
ドアの向こうに少女の姿は無い。
通りを見渡すも先が暗くて見えなかった。
「アイツ逃げたのか」
鍵を閉めるために振り返り、
斗輝は違和感を覚えた。
「ん……?」
一瞬では気づかない程の違い。
そして鍵を閉め、
通りをもう一度見渡した時、
「なんだ?」
ようやく気づいた。
斗輝の家は住宅街の通り沿いにある。
夜ではあるが、本来なら
通りの先が暗くて見えない事などない。
道の脇には街頭が灯り、
その間隔は決して広くはないからだ。
しかし、本来街灯がある所は、
夜の闇に飲まれていた。
「何が……」
自分の家の明かりはついている。
停電ではない。
そして、
もうひとつの違和感に気づいてしまった。
「他の家……明かりが……」
ついていない。
急に不安と恐怖が襲ってくる。

4:るーね:2019/08/12(月) 17:03

斗輝は闇の中を見つめていた。

「なにが…いや…どうして…?」

口をつく疑問に答えなどない。
何も無い、いや、あるかもしれない空間は、
なに一つ教えてくれなかった。

「そうだ、ひまりは…!」

一呼吸置いて、斗輝は怒らせた少女を思い出す。
少女は、この闇の中へ消えたのだろうか。

「…っ!」

闇が、余計に黒く見えた。
更に押し寄せる畏怖の感情に、
斗輝は指も動かせなくなる。
なぜだ、なんでた、どうして、なにが。
意味の無い言葉だけが頭を高速で巡っていく。

5:るーね:2019/08/12(月) 17:04

次から書くのがちょーっと過去編みたいに書くけど本来プロローグみたいにするべきものなんで、順番気にしないで読んでくれるとありがたい

6:るーね:2019/08/12(月) 17:20

蝉の音もうだるような湿度も無い、凍るように冷たい部屋。
その冷たさに慣れた少年は本のページをめくる。
世間一般では高校生と言われる年齢の少年には、
難しくはない、むしろとても解りやすい物語であった。

「ふん…」

ページを一つめくる度に鼻を鳴らす少年。
少年には、この物語は不快であったのだろう。
やがて1つの賞を読み終わったのか、1度本を閉じた。

「なんだこれ、キラッキラじゃねえか…」

呟く言葉は続いていく。

「こんなもん、俺には無いものだらけじゃねぇか」

口をつく言葉は、少年の心の闇を浮き彫りにさせる。

「金も女も力も勇気も知恵も権力も顔も……」

続く言葉を探そうとして止め、唇を噛む。

「クソッ…」

7:るーね:2019/08/12(月) 17:21

>>6>>2の前だと思って下さい。
整合性付けるために表現をいくらか変にしてるのは気にしないで…


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