時間戦士 アシタ☆ガールズ

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1:ふたば◆r.:2019/08/02(金) 19:00

いつもと変わらない街並み。
いつもと変わらない人々。
いつもと変わらない日常。


……変わらないまま、時が過ぎていた。
と、言うより、過ぎる時すらその場所には存在しないのである。

全ての時が、止まっているのだから。



「……はあっ、はあっ!」

全てが止まった世界で、ただ一人動いている少女がいた。
その少女は、腰にバックルを巻き、肩や脚に防具のついた青色の戦闘服に身を包んでいる。

「誰か、誰かいないの?誰か、止まっていない人は……!」

その少女は、探していた。
手に持ったもう一つの同じバックル……タイムドライバーを託せる人間を。


「居るはずないだろ?俺らが全部止めてんだから」

「くっ……また、あなた!」

少女を嘲笑い、立ちはだかる若い青年。
長丈の服を着た青年の隣には、怪獣をそのまま小型化したような異形の怪物が従えられていた。

「ぐるるるる……」
「ま、負けないんだからっ……勝って、明日を取り戻してみせるんだから!」

少女は、戦闘用手袋で覆われた両手をしっかりと構え、戦闘態勢を取る。


「やれ」

青年の合図で、怪人が少女に襲いかかった。
そして少女も、怪人に向かって飛びかかり、そして………!



光が、彼女たちを包んだ。

2:ふたば◆r.:2019/08/02(金) 19:18

「きりーつ、れーい!」
その合図で、静かだった教室が一気にざわつき始めた。
生徒たちは一斉に立ち上がり、机を片付けて教室を飛び出して行く。


「こらー!教室も廊下も走るなよー!?」

やんちゃな小学生の彼等を受け持つこの教師。
注意はするがそこまで怒ってはいない。

「ふぁあ……疲れた!帰ったら……寝よう!」

ランドセルを背負い、教室を後にする一人の少女がいた。
名札には、今川あすかと書かれている。学年は四年生。遊び盛り真っ盛りの時期だが、彼女はとても眠たく、早く帰りたかった。

なので、学校を出る足取りもゆっくりであった。



街は、今日も賑わっている。
道ゆく人々は皆笑顔で、犯罪など起こらない。至って平和な場所。
そこを歩くあすかもまた、笑顔である。

「うにゅ……寝そう……」

人混みを小さな身体で潜り抜けるあすかは、いまにも寝てしまいそうなほど眠かった。

そこで彼女は、ある場所に寄ることにした。

人々の笑顔が集まり、あんしんして休憩できる場所……
公園である。

公園は、遊ぶ子供達でいっぱいだった。
あすかの知った顔も何人かいる、馴染み深い場所。
その中にあるベンチに座り、彼女は……

「眠い……少し、寝よう……」

うとうとし始め、そのまま目を閉じた。
やがて寝息が聞こえ始めたが、人並みの音にかき消されていった。

3:ふたば◆r.:2019/08/02(金) 20:17

「……はっ!」

ノンレム睡眠……そんな言葉をあすかは知らないが、
夢を見ないまま、彼女は目を覚ました。

何時間寝ていたかもわからない。
十分、一時間、それ以上かもしれない。

先ほどまであった疲れは、すぅーっと消えていた。

「うー……寝過ぎたかな。ふらふらする」

寝起きのだるい身体をゆっくりと起こし、あすかは立ち上がった。
そこで、彼女は気付く。

「あ……あれ? なに、これ……」

あすかは、目の前で起きている出来事に驚きを隠せなかった。
人も動物もみな、時間が止まったように動かない。

ちょんちょんとつついてみても、なにも反応がなかった。

よく見れば、時計の針も進まないままで……
あすかは気づいた。時間そのものが止まっていることに。

「なんで……どうして……?」

自分以外の全てが止まっている。体験したことのない超常現象。
その場に、立ち尽くすしかなかった……。


「それはね、俺が時間を止めたからだよ」
「え……?」

何もかもが動かない、なにも聞こえなくなった空間で、若い男の声が聞こえてくる。
あすかは声のした方を向いた。

「俺はラノーマ。なんで君だけ時間が止まってないの?」

長丈の服を着た、青年。ラノーマと名乗ったその青年は、
不思議そうにあすかを見ていた。

「……ま、それだったら、力づくでやるだけなんだけど」

ラノーマは、指をパチンと鳴らす。
するとその背後から、怪人が姿を現した。

「ひっ……!」

鋭利な爪、強靭な身体。テレビドラマで見る怪人そのものだった。

「よし、やれ」
「ぐるるるる!」

ラノーマが手を下ろすと、怪人は爪を振りかざしながらあすかに襲いかかる。

「あ……いや……」

このままでは、死ぬ。あすかは確信を持ってそう思えた。

4:ふたば◆r.:2019/08/02(金) 21:42

その時だった。
あすかやラノーマの目の前に、大きな光が現れる。

「うわっ……」
「何だ?」

眩しさに目を背けるあすか。すると直後、横目に人影が映る。

「たああっ!!」

その人影は、怪人に拳を向け、思い切り殴りつけた。
怪人は衝撃に悶え、後ずさる。


「あれ?ここ……どこ?」
「えっ?」

目の前で怪人を攻撃したのは、自身より少し年上に見える少女だった。
青い戦闘服を着ていて、腰には腕時計のようなベルトを巻いている。

その少女は、いま自分が置かれている状況を飲み込めていないらしい。

「だ、だれ……?」

あすかは、キョロキョロとしている命の恩人に、名を尋ねた。

「え、時が動いてる人なの……?私はサキミラ。あなた、早くここから離れるの!」

サキミラと名乗った少女は、あすかに逃げるよう促す。

「で、でも、みんな、時間が止まってて……」
「大丈夫!私は、その時間を動かすために戦ってるから!」

そう言ってサキミラは、腕時計型ベルトの上部に付いたスイッチを押した。
すると、時計のアナログな針がぐるぐると回り始める。

「break time!」

ベルトからは、英語の音声が流れる。
それと同時に、サキミラの右足に力が蓄えられた。

「くっ……」

ラノーマは、今から起きるであろう出来事を予測し、ゆっくりと後ずさった。
そして……

「てやああああっ!」

空中で大きく一回転し、怪人に向かってキックを繰り出すサキミラ。

……その時だった。サキミラの身体が発光し、変身が解けたのは。


「って、きゃああっ!」

必殺キックが決まる直前、サキミラは地面に落下した。

「へえ……」

その様子を笑いながら見るラノーマ。まるで弱みを握ったかのようだった。


「だ、大丈夫?」
「なんで、変身が……」

サキミラに駆け寄るあすか。
当のサキミラは、変身解除が起きたことにかなり困惑している。


「ぐるるるる……」

怪人が、生身の状態になったサキミラや、戦えないあすかに迫る。


「う……戦えなきゃ……ダメなのに……!」

サキミラは唇を噛んで悔しがった。
自分どころか、後ろの少女の命も危ない。
戦えなくなって、どうしようもなくなっていた。


「これ……」

後ろにいたあすかは、サキミラの懐から落ちたある物を拾っていた。


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