家賃1000万、六畳一間

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:七光ドエススキートフ◆gU ホィ(ノ゚∀゚)ノ ⌒dice6:2019/08/21(水) 23:57

こちらは[半殺し屋の骨牌録]
https://ha10.net/novel/1565924412.html
のスピンオフになります。

未登場の筒中色之助とその相棒、竹柴索子のコメディ寄りサイドストーリーです。
独立しても読めますが、本編に繋がる話もあったりするので、そちらも同時に読んで頂ければ幸いです。

>>02 登場人物

2:七光ドエススキートフ◆gU (ノ>_<)ノ ≡dice5:2019/08/21(水) 23:57

[筒中 色之助 (つつなか いろのすけ)]
借金を残して失踪した父親に復讐することを目指す大学生。(19歳)
借金返済のため、新聞配達や中華料理屋のバイト、内職などを掛け持ちしている。
重度の貧乏性で、道端の草や川で釣った魚で食い繋いでいる。


[竹柴 索子 (たけしば もとこ)]
色之助と同居することになる女性。(22歳)
両親はマカオで大規模なカジノを経営している裕福な家庭で育つ。
カジノゲームはもちろん競馬、丁半、麻雀、パチスロなど、あらゆるギャンブルに精通している。
両親を継いで、カジノのオーナーになるため修行中らしい。


[筒中 静(つつなか しずか)]
色之助の母親。
昔ホステスとして働いており、客だった浦之助と交際していた。
借金の連帯保証人にされた上に逃亡され、現在はスーパーのパートで働いている。
お人好しで騙されやすい。


[筒中 水花(つつなか みずか)]
静の母で、色之助の祖母。
仕事で忙しかった母に代わって色之助の面倒を見ていた。
厳格な性格だが優しく、色之助を立派な青年に育て上げた。


[東塚 浦之助 (ひがしづか うらのすけ)]
色之助の父。
妻を殺害して19年間逃亡しており、あと1年で時効が成立する。
高レートの賭け麻雀や博打に明け暮れており、を連帯保証人にして借金をした。
色之助の他に、黒之助という息子がいる。


[春寺(隣のおばさん)]
色之助のアパートの隣室に住むおばさん。
一人暮らしの色之助を気にかけており、おすそ分けなどをしてくれる。
その正体は敏腕スパイであり、秋南紗宵と深く関わりがある。


[東塚 黒之助 (ひがしづか くろのすけ)]
新米のキャリア刑事で、色之助の実兄。
幼少期に母を殺害した父を逮捕するため、密かに捜査している。

3:七光ドエススキートフ◆gU ホィ(ノ゚∀゚)ノ ⌒dice6:2019/08/21(水) 23:58

俺は筒中 色之助(つつなか いろのすけ)、19歳。
第一志望だった赤山学院の法学部に合格し、今年で大学生一年生となった。
夏休みも終わり、二学期からも頑張って学んでいこうと気合を入れた日のことだ。

「筒中君、出席日数足りてないよ? これじゃあいくら試験の成績やレポートが良くても、奨学金特待生からは外すしかないねぇ」
「そんなぁ……! 教授、そこをなんとか……っ」
「過去に戻って出席でもしない限り無理だね。まぁ退学じゃないだけマシだろう」

ラジオ体操の柔軟運動のように、腰を90度曲げて頭を下げた。
が、脂ぎったデブ教授は淡々とした声で断った。

「とにかく、今学期からの奨学金は無しだからね」
「ゔぅ……」

退学じゃないだけマシだと教授は言ったが、俺にとって奨学金の打ち切り=退学を意味する。
俺は月々の家賃を払うのも精一杯で、ましてや私立大学の学費なんて払えるわけがない。
この大学には貸与型の奨学金もあるが、利子が結構つく上に返済期間が短い。


大学を後にして、近くの河原をとぼとぼ石を蹴りながら歩く。
夕焼けが草木を飴色に照らした。
このままだと大学に行けない、つまり就職困難、借金も返済できない──。

「そもそも、あいつがいけないんだ……」

東塚 浦之助(ひがしづか うらのすけ)。
俺の父親──だと言われている男。

この男が母さんを連帯保証人ににして1000万もの借金をしたからだ。
家賃や光熱費、借金のためにバイトを掛け持ちした結果、出席日数が足りなくなった。

あぁ、クソ、いつか絶対見つけて復讐してやる。
後で分かったことだが、その男は妻を殺害して逃亡中の身だったらしい。
現在でも行方は分かっていない。

母さんがこんな男と結婚しなくてほんと良かった。
もしあのまま一緒にいれば、殺されていたのは母さんだったかもしれない。
それに母さんは名前が静(しずか)だから、東塚 静(ひがしづか しずか)って変な名前になるし……。

お金に余裕が出来たら、ダメ元で探偵とかにも依頼してみよう。
実の兄がいるとも話を聞いていたし、ついでにその実兄にも会いたい。
とにかく今はお金が必要だ。

4:七光ドエススキートフ◆gU (=゚ω゚)ノ ―===≡≡≡ dice2:2019/08/21(水) 23:59



「食費も切り詰めてかねぇとな……」

川のほとりで雑草の群生地を見つけると、食べられそうな雑草を引き抜いてビニール袋に入れた。
可憐な花をつけたミゾソバは目立ちやすい。
秋から夏にかけて水辺によく生えており、おひたしにすると美味しいのだ。

「あら色之助君、草むしり?若いのにえらいねぇ」
「あ、春寺(はるでら)さん、こんばんは」

背後から俺を呼び掛けたのは、アパートのお隣さん、春寺さん。
いつも作りすぎたから、とおすそ分けを持ってきてくださってくれる、本当に親切な方だ。
夕飯用の草を収穫しているという恥ずかしい姿を見られたが、どうやら草むしりしていると勘違いしてくれたらしい。

「草、捨ててきてあげるわよ?」
「ダダダダメです!」
「え?」
「あーいや……俺が勝手にやってるんで春寺さんの手を煩わせるわけにはいきません! そ、それじゃ!」

せっかくの大量収穫を失う訳には行かない。
俺は春寺さんから逃げるようにしてその場を去り、暗くなる前へ公園に向かった。

「オオバコ、ミゾソバ……あとはギンナン拾って帰るか」

5:七光ドエススキートフ◆gU (ノ>_<)ノ ≡dice5:2019/08/22(木) 00:16

夕方の公園というのは大抵子供が多いが、ギンナンがあるペンチャン公園は小さくて遊具もあまりないので、滅多に人が来ない。
ペンチャンってなんだろう。

「ギンナン、ギンナン〜」

独特の匂いは臭いと敬遠されがちだが、慣れてしまえばどうってことは無い。
公園に足を踏み入れ、イチョウの木へ向かおうとした時だった。

「……え」

蛾の集まった街灯に照らされていたのは、一人の女性。
それも意識を失い、倒れている状態だ。
年は俺とそう遠くない、女子大生くらい。
肩までのサラっとした髪が、地面に扇形に広がっている。

もともと黒かったであろうパーカーは砂で汚れて鼠色になり、頬や額には小さい切り傷があった。
ショートパンツから伸びる脚にも、白い肌には似つかわしくないような擦り傷ばかり。
なんというか、全体的にボロボロで、ただの発作などで倒れたのではないのが一目で分かる。

「生きてる……のか……?」

一応小さく体を上下にさせて呼吸しているので、生きてはいるらしい。
大きな黒いボストンバッグを大事そうに抱えて眠っている。

「大丈夫か? おい……」

肩を揺らして呼びかけるも、小さなうめき声が漏れるだけで返事はない。

「マジかよ……と、とりあえず怪我ひでぇし、手当てだ手当て……っ!」

女性を左肩に抱え、ボストンバッグを右肩にかける。
中に何が入っているのかは分からないが意外に重く、引きずるようにしてアパートへ向かった。

6:Dreadnought:2019/08/22(木) 00:22

こっちはラノベ的な感じですね。コメディ的で面白いです。主人公が公園で野草を取っているのは特にクスッときた。

ただひとつだけアドバイス。まだ本編未登場のキャラを主人公にしたスピンオフを描いても、読者は感情移入がしずらいんじゃないかと思いました。


続きを読む 全部 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新